- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101128238
作品紹介・あらすじ
耳の越に刻まれた《音》の記憶をもとに半生を再構築する。《音》は茫漠たる過去を鮮から照らし出す。-ヴェトナムの戦場で体験した迫撃砲の轟音。家庭をかえりみない夫に対して妻と娘が浴びせかける罵声。アマゾンで聞いたベートーヴェン…。昭和29年にサントリーに入社し、芥川賞を得て作家となり現在に至るまでを、一人称「私」ぬきの文体で綴る野心作。日本文学大賞受賞。
感想・レビュー・書評
-
(1990.02.18読了)(1989.12.26購入)
(「BOOK」データベースより)
耳の越に刻まれた《音》の記憶をもとに半生を再構築する。《音》は茫漠たる過去を鮮から照らし出す。―ヴェトナムの戦場で体験した迫撃砲の轟音。家庭をかえりみない夫に対して妻と娘が浴びせかける罵声。アマゾンで聞いたベートーヴェン…。昭和29年にサントリーに入社し、芥川賞を得て作家となり現在に至るまでを、一人称「私」ぬきの文体で綴る野心作。日本文学大賞受賞。
☆開高健さんの本(既読)
「オーパ!」開高健著、集英社文庫、1981.03.25
「もっと広く!(上)」開高健著、文春文庫、1983.12.25
「もっと広く!(下)」開高健著、文春文庫、1983.12.25
「破れた繭」開高健著、新潮文庫、1989.12.20詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
取り寄せただけで読めてない。いまぱらぱらとめくってみたら、面白そうなかんじなので、いつか読もう(読む読む詐欺の予感200%)
-
開高健氏の自伝。本物語は2冊構成となっており、本作は下巻となる(一作目は『破れた繭』)
サラリーマン時代から、作家50歳の頃まで。
相変わらずも、憂鬱と酒を友としながらの悶々とした日々がユーモラスで豊かな表現で描写されている。
サントリーの宣伝部にて働いていた頃から、小説家への未練を頭の片隅に残して過ごす日々だった。
結局、働きながら小説を執筆し、見事に賞を受賞し、満を持して(というわけでもなく)小説家へと転向する。
小説家になったはいいものも、アイデアも浮かばず、上手く筆が進まない日々が続く。酒場から酒場、宿から宿へと転々とする毎日。
ウイスキーの量も自然と増える。
大人の知恵熱とでも言えばいいのか、鬱蒼とした気持ちに日々悩まされる。
そんな彼を救ったのは、<海外逃亡>だった。それは、彼の幼い頃からの夢。
フランスでの経験は、そのまま『ロマネ・コンティ・一九三五年』へ。
ベトナム戦争での従軍記者としての経験は、『輝ける闇』へ。
そして、その後のアラスカ、北米、南米への釣り三昧の旅は、彼のその後の珠玉のエッセイとつながっていく。
本作品ではないが、他エッセイ『知的経験のすすめ』で彼は、こう記している。
「頭だけで生きようとするからこの凝視の地獄は避けられないのです。手と足を忘れています。分析はあるけれど綜合がない。下降はいいけれど上昇がない。影を見ているけれど本体を忘れている。孔子のいうように、バクチでもいい。台所仕事でもいい。スポーツでもいい。畑仕事でもいい。手と足を思い出すことです。それを使うことです。」(エピローグより)
彼にとって、旅とは、足へと回帰する道だったのか。
釣りとは、手へと回帰する道だったのか。
ますます、ナレッジワーカーとして、頭脳を求められる時代になりつつある昨今だからこそ、生きるいいヒントになるこの言葉。
それは、彼の苦悩と摸索の日々から紡ぎだされている。 -
2008/6/7購入