人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.70
  • (57)
  • (64)
  • (111)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 792
感想 : 74
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101098166

作品紹介・あらすじ

明治末、12年間の米国留学から帰った星一は製薬会社を興した。日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展したが、星の自由な物の考え方は、保身第一の官僚たちの反感を買った。陰湿な政争に巻きこまれ、官憲の執拗きわまる妨害をうけ、会社はしだいに窮地に追いこまれる…。最後まで屈服することなく腐敗した官僚組織と闘い続けた父の姿を愛情をこめて描く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 星新一さん(ショートショートで有名)の父親を中心とした話。こんな人の子供だから、子供の自由な発想になるのかな?
    まぁ、今も昔も、菅!あっ!間違えた!官は腐っとる!
    ※前の首相です!まさか、同姓の人が首相になるとは(*_*)

  • 人民は弱し 官吏は強し。

    まず、小説の舞台はあくまで戦前、ということは認識しておきたい。その上で。
    行政、官憲を敵に回してしまうとどれだけ理不尽な目に遭うか。
    そして、敵に回す気はなくとも、新しいことに挑戦しようとすることがどれだけ行政、官憲を警戒させることになるか。

    もちろん、官庁で真面目に働いている人にとって、この本はこの本でかなり一方的な主張をしているように思う点もあるだろう。私も思っている。

    しかし、一人のサラリーマンとして、この本にはいいしれぬある種のリアリティを感じざるを得ないことも事実だ。そして、罪とも言えない罪で報道され、全てを失い、しかし大衆はそれをすぐに忘れてしまう、そんな事件はこれまでも無数に繰り返されてきたはずだ。

    後味の良い本ではない。
    私のように、星新一氏のショートショートを中高時代に貪るように読んだかつての若者、今のおっさんにとっては、ああこういう物語も書いていたのか、という驚きがあるだろう。
    そしてページをめくる手が止まらない圧倒的な読みやすさは長編でも変わらないこと、現代でもまったく色褪せないビジネス論、起業論、人間論が語られていることにも驚くだろう。

    繰り返すが、ここまでの善玉悪玉ぶりをどこまで真実と取るか、バイアスと取るか、これは読者それぞれだ。

    なお、左翼言論人の大物、鶴見俊輔氏の解説がいっこうに要領を得ないことが読後感を下げてしまっている。私は図書館の古い文庫で読んだが、(本編とは異なり)すっかり時代遅れになっているこの解説は、版を重ねる中であるいは別のものに置き換えられているかもしれない。

  • これか事実だとすれば官憲は酷すぎます。この本で描かれている欲しかった一氏は序盤ではとても真っ直ぐで行動力と発想力に長け、優れた実業家として日本の製薬界の発展に寄与できたはずで、医療分野において他国から遅れていると言われている勢力図が変わっていた可能性すら感じます。野口英世やエジソンなどとも交友があったのはすごいですね。始めは私怨であった保健局による星の会社への嫌がらせが、国の保身から星の会社を国をあげて貶めることとなり、物語の序盤から始まった営業妨害が最後まで続き、とても鬱になります。序盤て感じた偉人伝記的な本ではなく子孫による仕返し告白小説となっています。
    今もこのようなことが行われかねないと想像するとゾッとします。
    本書の中では独身のままであった星一氏にはこのあと結婚して子供となる作者が生まれる授かるはずですがその気配がまったくないです。
    作者の父親がこんな才能があり、苦労人だったこと、作者がショートショート以外にこんな作品を書いていたことに驚きました。
    救いがない内容の本書、あまり人におすすめ出来る本ではありませんが、怒りを溜め込みたい方は読んでください。

  • ショートショートで有名な星新一のお父さんの話。

  •  史実なのかフィクションなのか読み進めるうちに気になってひょいと解説をのぞいてみると、どうもこの作品は星新一さんの父の伝記であるらしいことを知りました。図書館に並ぶ星さんの文庫から偶然手に取った一冊です。神のイタズラですか。今でもきっとある公の強さとその強さの理由がうかがえる良い作品でした。
     ただ星新一さんはやっぱりショートショートがいけてます。

  • 星一のエネルギッシュな人柄が文章からもとても強く感じられ、読み始めると止まらなかった。同時に、軌道に乗っている人を追い越そうという意識より、引きずり落とそうとする日本人の感覚。昔から変わらずあるのだなと感じた。星一ほど快活にはなれないが、前向きに生きたい。

  • 潔癖で実直な素晴らしいアイデアマンであり実業家の主人公にこんな理不尽なことが起こるなんて、全くやるせない、憤りを感じる。このようなことが起こらない世の中であることを強く望む。

  • 解説:鶴見俊輔

  • 星一(はじめ)の生涯に興味が沸き、調べてみるとSF作家の星新一のお父さんであることが判明。さらに、星一の作った「星薬科大学」のHPに、この本の紹介があり、手に取った。

    こんな昔から役人の不正や嫌がらせがあったことに腹が立ち、読み進めるうちに日本が嫌になる。

    読了感がすっきりしない為、★3つ。小説というよりは、ドキュメンタリーとして読んだ方がよい。

  • 妥協は悪魔なり

全74件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

星新一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×