- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050416
感想・レビュー・書評
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11月25日は、憂国忌。1970年三島由紀夫割腹自決事件。明日ですね。憂国とは、国の現状や未来を心配すること。艶やかな言葉だなあと思います。とか、書いちゃってるけど、初読です。初読ですので、覚書多めです。および、順不同。自選短編集全13編。
「憂国」
二二六事件外伝として。
新婚の美しい中尉。皇軍のクーデターを知らされず、友人達の討伐が任務となる。皇道派への忠誠心として、彼は、妻と共に死を選ぶ。ぷはー。
死を前にした二人の最後の夜。1Q84よ、生と死の間のエロスはかくあるべきと思うのよ。
戦場の孤独な死と美しい妻との共在。
三島自身が、1冊だけ読むならこの1冊をとしている作品です。
「詩を書く少年」1954年
15歳の少年時代を描く三島。自伝的作品。
少年は、自分を天才だと思っている。そして、詩は楽に溢れてくる。少年は、詩により微妙な嘘のつき方を覚えた。彼は、嘘をつく美しい言葉を探す為辞書を引く。
少し前、淳水堂さんが、詩が苦手というレビューをされていて(たぶんかなりの謙遜をされていると思ってます。)嬉しくなって、私も苦手なんです!と
告白したのです。そして、この作品を読んで、そうだこれだ、私は自分が詩を作った時(学校でね。)綺麗な言葉を探して嘘をついていたからだ。と、すごく納得したんです。
少年は、先輩の恋愛相談を受け、詩の源泉について思い、自分の詩が偽物であったことを知る。感受性の乏しい自分が詩人となり得ない。と気付く。
かなり短編で、難解だけど、詩そのものについても考察されていると思う。
「海と夕焼け」
鎌倉建長寺(月と蟹で行って来ました。)の、フランス人の年老いた寺男。彼に起こった神託と、その後の不幸を鎌倉の山の上で、海と夕焼けを見ながら語る。フランス人は子供十字軍に参加していたが、奇跡は起こらず、信仰を捨て、日本の禅寺に住まう。
三島の奇跡願望と沈黙の神の短編。
「花ざかりの森」16歳の処女作
本人は、もう作品としては、お気に召さなかったらしい。これは、わからないのよねえ。天才少年が、古今東西の書籍を読みまくって、その時点の知力を結集して読者のレベルを考えないで書いちゃった感じ。とはいえ、ぼんやりと読めるのは、私という語部が、いくつかの時代の祖先達と会う。その家系は海に関係している。といえば、螺旋プロジェクトに重なるとこがあるようなないような。
「遠乗会」1971
良家の子女であった善良な婦人。彼女の息子への偏愛。若かりし頃の淡い記憶の自己愛。現社会とのズレ感。
「新聞紙」
映画俳優の自宅で、息子の看護師が出産してしまう。リビングは血に染まり、許されざる出産は、新生児のお包みを新聞紙とする。妻は、この異常な状況を受け入れられない。彼女は、思考の逃避を自分と息子の幸福度に求める。
妻は、皇居の桜舞う公園で意識を逃避させる場面が見事。小説としてかなり好み。
「牡丹」
牡丹園に580本の牡丹。それは、園の所有者の南京大虐殺の大佐が、殺した女の数だという。
「百万円煎餅」1960
堅実な夫婦の浅草巡り。しっかり貯金、きちんと節約。この夫婦、仕事は、本番行為のショービジネス。夫婦の生活とのギャップと、富裕層の婦人達の放漫さの対比。風刺コメディ。
「橋づくし」1956 戯曲化
橋を巡る願掛け。ルールに従って橋を渡り続ける女達。一人又一人と願掛けから脱落。最後まで行けたのは意外な人物。小洒落たコメディ。近松、名残の橋づくしエピグラム。
「女方」
冷艶な女方に思いを寄せる作家の男。新劇監督の男に惚れる女方に、幻滅と嫉妬を同時に襲われる。
これは、現代でも充分にドラマ化もできてしまいそうなストーリー。
「卵」
謎のコメディ。ちょと厳しめの童話の様な。三島の頑張ってるギャグ。本人は、純粋な馬鹿らしさと自評してるみたい。
5人の大柄で無謀な大学生が、卵警察に捕まって卵裁判にかかるけど、何故かめでたしめでたし系。
「月」
しんしんみりみり。で爆笑。
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13編からなる自選短編集。「憂国」「海と夕焼け」がとんでもなく良い。「花ざかりの森」「卵」「月」は読まなくてもよかった‥‥かな。
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ジャンル:短めで耽美な純文学
こんな人におすすめ:
短編で三島由紀夫の美しい文体を手っ取り早く読みたい人
三島由紀夫の作品は美しい文体が特徴と評される事が多いが、ほんと日本語って美しいなと思わされる。 -
「憂國」三島本人が主演の映画も能楽の舞台のようで興味深い。しかしやっぱり小説が秀逸。
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「そうして時間は燦めきを放ち、宝石のようになった。」
繊細な綺麗な言葉で紡がれた物語。
「憂国」が中でも一番好きです。 -
三島由紀夫の短編集。
知人に薦められ読んでみた。
印象に残る作品はたくさんあったが、「憂国」を読んでしまったら、その描写に全て持っていかれてしまった。
小説を読んでから三島由紀夫自身が出演する「憂国」の動画を見たけれど、小説そのままで「音声なし(厳密には声なし)、白黒」でよかったと思った。
再読するためにはまたエネルギーを溜めなくては…
追記
「百万円煎餅」からの「憂国」…という並び順。
戦後の日本に憂国しちゃう…笑
丁寧なお返事ありがとうございます。
詩とか歌詞が苦手、という理由が 、よく理解できました。
逆に自分は、『三島...
丁寧なお返事ありがとうございます。
詩とか歌詞が苦手、という理由が 、よく理解できました。
逆に自分は、『三島由紀夫』は、『なんか難しそう…!』と、10~20代のころ、『金閣寺』を読んだだけで、『よくわからん』と、挫折し、それ以後、敬遠しておりました。 中年になった今なら、三島由紀夫を受け止めることができる?かも?
瀬戸内寂聴さんも生前、『三島由紀夫さんのことを書きたい』と、高橋源一郎ラジオ『飛ぶ教室』の対談の際、話していたので、いつか、三島由紀夫にも挑戦してみたいと思いました。
『太宰治』『芥川龍之介』は、作者の思いを『そっか、そっか~、わかるよぅ~』と、バッチリ受け止めながら読めるのですが……。
その辺りと、三島由紀夫を比べてみるのもおもしろいかも!と、思いました。
おびのりさんの書評や、ブクログの交流を通じて、自分の知らない本や、新しい世界が広がったこと、とても嬉しいです(*^^*)
これからも、 本棚に遊びに行くと思うので、よろしくお願いしま~す(^-^)/
詩のおすすめ、どのように読んでいるか、教えてくださいましてありがとうございます。
私が「詩が苦手ですー(・...
詩のおすすめ、どのように読んでいるか、教えてくださいましてありがとうございます。
私が「詩が苦手ですー(・・;」と言ったら、色々な方におすすめしていただき興味が広がります。
詩や短歌俳句は、言葉が短いので素直な言葉で感性が直接伝わるというのが良いのだろうとは感じます。
自分が何かを感じたときには、俳句のよえな短く素直に的確な物が浮かぶことがあります。「貯金たまらない~」というより「じっと手を見る(石川啄木)」というほうがなんか分かりあえるようなw
workmaさんが吉野弘で「沁みる」もそのような感じなのでしょうか。
「のはらうた」は1冊ですが読みました。
もぐらくんの「天気いい、元気だ、散歩だ」みたいな(うろ覚えなので違ってたらすみません)素直に前を向いた感覚が良かったです。
私も小学校のときは、詩書いて提出するのは全く苦でない、むしろ楽しかったんですよ。
おそらく今苦手なのは、感性が直接伝わるぶん、わからないものは本当にわからない(意味はわかるが感覚がわからない)からなんだろうかと思ってます。
おすすめしていただきありがとうございます!
丁寧なお返事ありがとうございます。
こんなやりとりは、普段なかなかできる機会がないので、お二人の会話に乱入した(?(^^;...
丁寧なお返事ありがとうございます。
こんなやりとりは、普段なかなかできる機会がないので、お二人の会話に乱入した(?(^^;)おかげで、交流できて、ほんとに嬉しく思っています。
時々、淳水堂さんの本棚にも遊びに行きますので、よろしくお願いしま~す(*^^*)