謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.39
  • (44)
  • (25)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 480
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101021515

作品紹介・あらすじ

ミャンマー奥地で遭遇した、納豆卵かけご飯。日本以外にも納豆を食べる民族が存在することをそのとき知った。そして著者は探求の旅に出る。ネパールでは美少女に導かれ、湖南省で味噌との関係に苦悩。東北秋田で起源について考える。“手前納豆”を誇る人びと。夢中で食べた絶品料理。愛する食材を追いかけるうちに、アジア史までもが見えてきた。美味しくて壮大な、納豆をめぐる冒険の記。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本の文化といえば、納豆。

    そう思っておりましたが、冒頭の1ページはおろか、タイトルからすでに、そんな幻想が消え失せてしまい、衝撃とともに。

    納豆で思い出すのは、茨城へ旅行へ行った際、味噌汁にも納豆が入っていて驚いたこと、本当に藁に入った状態で販売されていたことです。

    発泡スチロールに包まれた納豆しか見たことなかった自分にとって、あのときもなかなかの感動がありましたが、それをいとも簡単に超えてくる、納豆の世界がこの本の中にありました。

    肉も魚も取れない、山岳地帯において、重要なタンパク源とされた納豆。
    発酵という製造工程を経ているので、保存も効く上、健康にもよい。そんな便利な食品だからこそ、各地で独自の進化を遂げてきたのでしょう。

    納豆を軸にした、アジアの文化史。
    日本の納豆というフィルターを通してみた、アジアの納豆。そして、逆にアジアからみた日本の納豆。

    そんな納豆論が、ものすごく新鮮で、惹きつけられました。

    実はワラでなくても納豆は作れるのです。
    読み終えて、納豆に関する幻想が吹き飛ぶことでしょう。

    そして、読み終える頃には、納豆を買いに出かけること間違いなし!

  • 大好きな高野秀行さんの文庫新刊!
    しかも、この八月にはアフリカ納豆verが出るらしい(笑)
    いや。とりあえずめっちゃ好きなんだなというのは伝わってきます。犬も。犬って納豆食べるんだね。

    納豆って日本食だと思っていた、けど、タイにミャンマー、ネパール、中国の、しかも奥地の民族に受け継がれるソウルフードだったとは!
    辛そうなやつもあれば、臭そうなやつも。
    個人的には焼いておせんべいみたいにした納豆は、一回食べてみたいな……。

    なんて言うけど、私も数年前までは納豆なんて絶対食べない!と思っていた。
    大体、糸を引く食べ物に惹かれなかった。
    きっと、その時にこの本が出ていても、買わなかったと思う。すいません(笑)

    思えば、割と独特な食べ物よな……納豆。

    高野さんの軽快なトークは相変わらずで、するする読んでいけるのだけど、ソマリランド辺りでプンプンしていたダーティー感は今回はなし。
    当たり前なんだけど、あのハラハラ感に触れたくなる、ある種の中毒性を持っている。

    辺境グルメレポと言えば、随分趣旨は違うものの『ハイパーハードボイルドグルメリポート』も最近読んで、テレビも見て、ハマった。
    ハラハラ感も欲しいなって方は、オススメ。

  • 納豆というと、よく、「なんで豆腐が“豆が腐った”で、納豆は“納豆”なんだろう?」と言われるが。
    それは、「納豆は、豆を藁苞に納めるから“納豆”」。
    「豆腐は“腐”が中国で四角く固めるという意味があるから“豆腐”」って聞いて、ずっとそれを信じてたんだけど……、
    そんな話、これっぽっちも出てこない。
    もはや何が何やら…!?(^^;

    東南アジアの山間部で、納豆やコンニャクが食べられていることは知っていた。
    あ―、それって、つまり「照葉樹林文化圏」ってことだよねって、ずっと信じてきたんだけど……、
    この本によれば、それはそれでまた微妙に違うらしい。

    ていうか、現在、日本で食べられている納豆というのは、
    ご飯に絡めて食べるというニ―ズに沿って作られた工業生産品(品質や衛生が管理されたといういい意味で)というのも目からウロコ(^^;
    納豆=糸を引くだけど、本来はあんなに糸を引くものじゃないなんて!w
    (そういえば、「甘納豆」は何で“納豆”っていうの?)

    ていうか、読んでいて出てくる納豆料理が旨そうで旨そうで(^^)/
    おかげで、つい料理に納豆を使っちゃうもんだから、最近はやたら納豆を買う(爆)
    ちなみに、冷蔵庫には今現在、例の3個パックのやつが4つ入ってる。今晩は納豆回鍋肉にするつもりだw
    納豆は大好きだけど、例えば納豆を食べた箸でマヨネ―ズがかかったサラダなんか食べると、マヨネ―ズが糸を引くのがイヤなんだよね。
    だから、納豆を調理に使うと旨いのはわかってたけど(だって納豆スパゲティは絶品!)、イマイチ使いたくなかったのだ。
    この本の終わりの方で納豆協会の人だかが「これからは糸ひきが弱い納豆など、いろんな納豆を作らなければならない」って言っていたけど、それは本当にそう思う。
    著者も、ラタトゥイユに納豆を使ったら旨くなかったけど、糸引きが弱い納豆で作ったらすごく旨かったと書いている。
    もはや、ご飯かけ用納豆、調理用糸引き弱納豆、旨味調味料用納豆等々、あらゆるニーズに応えた商品構成にしない納豆会社の社長は職務怠慢!と言われても仕方ない(爆)
    というか、それは納豆会社よりも流通の仕事かなぁ―。
    自社で工場は持たずに、様々なニ―ズに沿った納豆を他社に製造をお願いする、納豆業界のアップルはどこだ?w
    (そういえば、以前ス―パ―で「テンペ」が売ってたけど、今でも売ってるんだろうか?)


    そんな様々な目からウロコのこの本だけど、「醤」と「納豆」を区別したい著者のこだわりはイマイチわからないw
    自分は、調理や旨味調味料として使ってるというのを読んだ時点で、ああこれはもはや「醤(味噌)」なんだな―と思ったけど。
    個人的には、ご飯にかけて食べるのは、いわゆる「納豆」。調理に使ったら、それはいわゆる「納豆」ではないという風に考えちゃうけどな(^^ゞ

    そういえば、今の中国人はカレ―ル―を調味料として(つまり「醤」として)使うらしいけど、それはどっちも「カレ―ル―」だと思うのだ。
    確かに、カ―ル―でいわゆるカレ―を作ったら「カレ―」という料理だけど、カレ―ル―をチンジャオロ―ス―の味付けに使ったら、それはチンジャオロ―ス―だ。
    でも、味付けに使ったのはどっちも「カレ―ル―」だって思うのだ。
    確かに、著者が言う、漢民族に追われた人たちが住む地域(=漢民族の住む周り)では納豆が食され、漢民族の住むエリアでは醤が食されるという区分けは明確だ。
    でも、一方でタイやミャンマ―の海に近い方で納豆は食されず魚醤が使われるのは、海が近いからその材料が手に入りやすいという単純な理由のわけだ。
    なら、漢民族が醤や豆鼓を使うのも(or周辺部で納豆を使うのも)、海が近いから魚醤を使うみたいに単純な理由なんじゃないのかな―。
    だって、毎日のメシのことでしょ?
    普通に考えれば、旨いからとか手に入りやすいみたいな単純な理由のはずだよね。
    なんらかの単純な理由で、一方では納豆、一方では醤や豆鼓を使うようになった。
    それらをまとめて「納豆文化(or醤文化)」とするでいいような気がするんだけどな―(^^ゞ。
    ただ、ま―、それは、“納豆=ご飯にかけて食べるもの”という意識が強い自分と、“納豆=旨味調味料”の現場を沢山見てしまった著者の納豆に対する認識の差なのかなもしれないw

    ていうか、納豆を料理に使っていて思ったんだけど、納豆って他の食材に隠れちゃうんだよね。
    あんなにクセがあるのに、料理に使うとそのクセが消えちゃって。そのクセが料理の味に生かされない。
    でも、「醤(味噌)」は違う。使えば、料理の味が決まっちゃう。
    つまり、平地や沿岸部は塩が手に入りやすいので、塩を加える「醤」の方が味が決まって便利ということで広まったけど。
    山間部は塩が手に入りにくいので、塩を加えない「納豆」を旨味調味料として使った。
    個人的には、そういうことなんじゃない?なんて思った。


    この本には、アジア納豆のことと日本の納豆のル―ツをさぐる話が書かれている。
    どっちも面白いのだが、日本の納豆について書かれている章の方がちょっとだけ面白い。
    それは、たぶんアジア納豆については見たことを淡々と書いているのに対して、日本の方はそのルーツについて謎っぽく描かれているからだろう。
    本を読む上で、謎で読者の興味を引くは読むエンジンとしてやっぱり大事だと思うのだ。
    最後の章で、照葉樹林文化と東亜半月弧なんて出てくるが、むしろそれは最初に出した方がよかったんじゃないのかなぁーw
    とはいえ、すごく興味深い話で面白かったのは確かだ。
    サピエンス納豆の方もぜひ読んでみたい(ただし文庫になったらw)。
    ていうか―、ぜひレシピ本も出して欲しいぞ(^^)/

  • 納豆食べない関西人なので納豆にどうしても興味が持てず単行本出たときは見送ってたんだけど、この度文庫になったので一応読んでみるかと思って買った。
    今後も納豆食べることはないだろうけど高野さんが納豆にはまってる様子はおもしろかった。

  • 図書館で借りた。
    アジアの山奥で出会った、納豆そっくりな料理…これは一体何なのか、なぜこんなところに日本独自の料理と思っていた納豆があるのか、他にもこんな海外納豆はあるのか…果ては納豆はどこから来たのかと、納豆を探す調査旅記録だ。
    しかし単なる旅日記ではない。納豆レシピ本の側面もあり、日本を見つめ直す日本学的な価値もあり、なんなら社会科学の論文的価値もある…とにかく、ものすごい本だ。面白いだけじゃない。

    他の方のブクログ感想に著者の評判が書いてあったが、とても好評だ。…私も著者の他の本を漁りたくなった。続編的な本?もあるようだ。これは読まなければ。

  • 高野さんの納豆愛・辺境愛が炸裂した一冊。
    そして、最強の飯テロ本。
    これを読んでいる間、何パックの納豆を食べてしまったことか。
    そして、私の故郷である東北が紛れもなく辺境で、納豆文化の中心地であることを実感した。
    納豆汁で育てられ、夕ご飯に何を食べたいかと聞かれたら常に「納豆!」と答え、盆にも正月にも納豆餅をしこたま食べる。さらに、土曜日には「ひとりあげ」に納豆をぶちこんで食べていたことをありありと思い出しながら読んだ。
    あと、西和賀(夫の実家のすぐ近く)が「何でこんなとこにわざわざ住むのか」って言われたりしてて、ちょっと笑っちゃった。さすが、元無医村。高野さんをもってしてもびっくりの辺境なのね。地吹雪すごいし、道が崩れればすぐ陸の孤島化するしね。でも、それだけに食に関しては個性とエネルギーが凄くて、観光地としては優秀だと思う。まさか、納豆でも有名なところだとは思わなかった。地元民だけど(だから)、蒙を啓かれた思い。

    発酵文化は、本当に面白い。
    人間が生き延びるための知恵と勇気の結晶だと思う。
    それが場所を変え、文化を超えて各地で納豆という最高の食品に結実していることがとても面白いと思わされた。
    さて、この勢いのまま『アフリカ納豆』に突入!

  • 面白すぎる・・・。
    パワーワード連発。

  • ☆☆☆2021年2月☆☆☆


    納豆。日本特有のものだと思っていた。
    アジア各地には、日本人以外にも納豆を食する文化がある。
    納豆を食べるのは「辺境」に住む人々だ。
    ワラ以外の葉でも大豆を包む。ビワ、シダ、バナナ。
    あらゆる葉っぱに納豆菌は生息している。


    探検家の高野氏が、アジア各地、そして東北地方をフィールドワーク。
    そこで得た知見をまとめる。その実験精神は素晴らしい。
    納豆せんべいとか、納豆汁とか、僕には想像がつかない。


    納豆とは奥が深い食べ物だ。

  • アジアで作られているという"アジア納豆"を探しに行くドキュメンタリー。
    作り方は違うものの匂いや味は日本の納豆に近いという。
    いつも食べている納豆なのに知らない事だらけ。
    まさかアジアにも納豆があるだなんて…

    結構分厚いけどおもしろいのでどんどん読めます!
    学者さんじゃないのに好奇心だけで
    ここまで追い求めるのはすごいと思いました。
    (間違っていたらすみません)

    地名や民族に馴染みがないので
    途中途中わからなくなることがあったので
    自分でわかりやすい様にメモを取りながら
    読み進めていますが、
    自分で自分がどこを目指しているのか
    分からなくなりました。

    そしてアフリカ編も出ているので早く読み終えなければ…!

    • bookblessyouさん
      面白そう! 読んでみようかな! とりあえず明日の朝ごはんは納豆にしよ!
      面白そう! 読んでみようかな! とりあえず明日の朝ごはんは納豆にしよ!
      2020/12/10
  • まさか納豆からここまで驚きと発見に溢れた一冊になるとは。500ページ近い長さでも最後までワクワクしながら読めた。そしてとにかく納豆が食べたくなる。

    納豆文化圏の民族が強く生きてきた歴史を知ることができたとともに、納豆を介して旅先で高野さんが出会った人々の日々の団欒が垣間見えた気がした。私もいつか現地へアジア納豆を食べに行きたい!

全41件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

高野秀行の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
高野 秀行
川越 宗一
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×