- Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101003429
作品紹介・あらすじ
幼い頃に養父を亡くし、母親の愛人から日常的に暴力を受けていた刀根秀俊に、十四歳のとき初めて気の置けない存在ができた。同じクラスの美月、陽菜乃、亮介だ。四人で過ごすかけがえのない時間は、しかし、ある事件で一変する。それから二十年。秀俊は暴力の連鎖から抜け出せず、彼を思う美月、そして陽菜乃と亮介もまた、秘密と後悔にもがいていた。絶望の果てに辿り着く、究極の愛の物語!
感想・レビュー・書評
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あまり長さを感じることなく、読み応えもあり、ディープでダークな一冊だった。
逃れられない圧倒的で暴力的な世界。
14歳の中学生が抱えて生きていくには、余りにも重すぎる罪と秘密。
相手の苦しみを自分のものとして、自己犠牲を伴う相手を思う嘘。
それは悲しい嘘。だけど優しい嘘。
大事な人を守るための嘘。
本心を隠すことで自分にも相手にも嘘を突き通す。
そんな生き方しか出来ない彼等がとても不憫だった。
それでもその中でも希望を失わずに、小さな光が見えていたことだけが救いだったように思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
悲惨な家庭環境の刀根は、中学で気のおけない仲間を得た。しかしある性犯罪によって、その青春の煌めきが漆黒の闇へ消えた。
海や川が物語の背景としてとても印象的で、うねりや渦、湿度を感じつつ、押し流されるようにしてラストまで運ばれました。タイトルの意味を知るとせつなさに窒息しそうです。 -
Love Lies 愛のある嘘
互いが互いを想いやるための嘘
それは苦しくて暖かい。
秀俊は幼少の頃より母、江利子の愛人南条による暴力に日々晒されていた。
母親の愛に触れることなく誰のことも信じずに生きてきた秀俊。
その日、小学校から戻ると裸の江利子と南条に邪魔をするなとばかりに庭に蹴り出されてしまう。そうして近くの川原で川面に息が切れるまで石を投げた。その時、九十九(ツクモ)に声をかけられる。
秀俊、亮介、美月、陽菜乃
中2…人生に置いて何より多感な季節に出会ってしまった4人。
秀俊からすれば〝自分とは生きる世界〟がまるで違う普通の中学生である3人。
距離を置いていたはずが、知らず知らずと心を許していった。
冗談を言い合う初めての友人、戸惑う淡い恋心。学校帰りのお好み焼き。電車を乗り継ぎ遠出した海。
このまま穏やかに過ぎてくれたらいいのに。
そんな時、事件はおきた。
4人の人生の歯車が大きく歪み絡まりどうしようもない方向へと進み始める。
青春もラブロマンスもハードボイルドもぜんぶ詰まった欲張りな一冊。
ドキドキハラハラでどんどん進みます。
感情の表現が丁寧で個々の喜びや戸惑い、嫉妬、哀しみが繊細で女性らしいなと思う一方で、裏社会の荒々しさがとことん。
村山由佳さんだよね?と表紙を確認し直したほど男っぽい場面との落差が凄い。
物語の幸せと不幸せの背中合わせが、表社会と裏社会とで描かれている感じ?
登場人物それぞれが哀しい嘘をついているのだけれど、最後には呪縛から解放される。
決して全員がハッピーと言うことはないにしろ十分に「良かったなぁ」と思える安心の読後感。
2021.09.15
今年の13冊目(やっと笑)
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誰にも言わないでおこうと思っている事がわたしにもある。自分の都合で噓を混ぜてごまかしながらしゃべることもある。
自分を守るために言わないこと、大事な人を守るために嘘をつくこと。どちらも誤りではないような気がするが、他に方法が無いのかという気もする。
「生徒諸君!」を思い出した。 -
幼い頃に養父を亡くし貧乏で母親の愛人から日常的に暴力を受けていた【刀根秀俊】
神社の娘で、あまり役に立たない不思議な力を持つ【桐原美月】
人様の目を気にして過干渉気味の母親を持つ【中村陽菜乃】
勉強が出来る陸上部、そして世渡り上手な上にクラスの委員長タイプの【正木亮介】
彼ら四人は中学生という甘酸っぱい青春時代を過ごしていたが、とある事件により彼等の人生に非常に重い物がのしかかる事になる・・・
四人の中学時代と20年後の話が交互に繰り返される。
良い意味で読んでて苦しくなる一冊!
マイルドな馳星周のようだなぁと思っていたら解説が馳星周! -
4人とも大人びた中学生だなと思いました。家庭環境や元の性格によるものだと思うけど、それぞれ大人の部分とまだ子供な部分が違っていて、平和な時はそれがお互いを補い合い、いいバランスを保っていたのだと思う。
ただ、“ある事件”が起きた後も、やっぱりそれぞれが良くも悪くも大人だったせいで、歯車がどんどん狂っていったように感じた。
秀俊を取り巻く環境は特に壮絶だし、耐えられないようなことばかりだけど、秀俊も含め、美月も亮介も陽菜乃に甘えすぎのように思う。
無意識だとは思うけど、みんなが陽菜乃の強さと優しさに頼りすぎていて、一番救われてほしいのに一番我慢して耐えていて、読んでいて辛かった。 -
今年読んだ本の中で1番面白かった。
映画にするなら誰?考えるけれど刀根にあたる人が思いつかない。背が高く無骨だけれど優しくて繊細で、俳優年鑑で探してしまった。
イメージだと市原隼人、綾野剛、小栗旬かなぁ。