ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001531

作品紹介・あらすじ

2019年10月7日イラストレーター和田誠さん逝去

和田誠が描くミュージシャンの肖像に、村上春樹がエッセイを添えたジャズ名鑑。ともに十代でジャズに出会い、数多くの名演奏を聴きこんできた二人が選びに選んだのは、マニアを唸らせ、入門者を暖かく迎えるよりすぐりのラインアップ。著者(村上)が所蔵するLPジャケットの貴重な写真も満載!単行本二冊を収録し、あらたにボーナス・トラック三篇を加えた増補決定版。

感想・レビュー・書評

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  • ジャズという音楽に浸りたいと、寄る年並みのせいか(?)思うようになった時に、この本を手にした。丁度、村上春樹作品を読み耽っていたタイミングと符合した。Apple musicのプレイリストに本にあった人らの曲を放り込んで、マイリストを作り終えた。音楽を聴きながら、もう一度読み返したいと思えた一冊。

  • 55人のジャズミュージシャンを取り上げている。まず絵があって、それに文章をつけるという順番だったらしい。なのでミュージシャンの選別も和田誠のほうとか。

    音楽をここまで感じとり、文字に置き換えることができるのか。そしてジャズはこんなに奥が深いのか ため息しか出ない世界だ。それがどの頁にもあるというのも素晴らしい。ジャズ評論というのはこれだけのレベルがあるのだろうか。
    今は彼が推薦したアルバムの多くをアマゾンミュージックで無料で聞けてしまうのが嬉しい。これは利用するしかないなと思う。検索するとジャズのアルバムの多さにびっくりする。ちょっとしたライブでも一枚のアルバムになるので、ポップアルバムよりは多いのでないかと思う。ジャズファンはこれを丹念に聞いていくのだろう。村上春樹が推薦しているアルバムは40枚近くあった。少しずつでも聞いていきたい。そうなると朴念仁なワタシには完全に理解できないので、この本を手元に置いておいた方がいいのかなと思う。
    『幸福に音楽的に天寿をまっとうしたミュージシャンを-たとえばエリントンやルイ・アームストロングを-目にするのは素晴らしいことだ。しかしハードワーキングで移ろいやすいジャズの世界にあって、そのような例はむしろ稀である。彼らの音楽の輝きは往々にして短く、その人生は厳しい障害に満ちている。そのようにいくつかのたしかな恒星の光と、流星のいっときのあやしい輝きが入り混じって、そこに全体としてのジャズ・シーンがくっきりと、魅惑的に浮かび上がることになる。』

  • 村上春樹のjazz愛が文章から溢れてている。
    同氏が愛聴していたアルバムをAmazon musicで聴きながら読むと2倍楽しい。

  • アーティストについての批評かと思えばそうではない。

    村上春樹のアーティストとの思い出の物語がこの本には多く書き出してあった。本当にジャズを好きでないと語れない熱量で。

    ここまで丹念に1曲1曲を聴きたいものです。


    この本のせいで、買いたいLPが10個ぐらい増えて困ります。笑

  • 和田誠さんの絵、村上春樹の文章。それだけでお酒が飲めそうなコンビ、青春と自分だけの時間、それをジャズの名盤というよりも村上春樹の好きな盤を一つセレクトし、その人や音楽についてさらりとエッセイを添える。という感じか。セロニアスモンク、やっぱり自分もこれだけはというのはキースジャレット。アートブレーキーとかMJCとか、やっぱり素敵な音楽とは、自分が好きなものを好きなように聞くということであって、誰かのおすすめとか、自動的にマクロ的に出されるおすすめではないんだろうという、アプリへのアンチテーゼにも感じる。音が、解体と統合を行う過程のジャズの面白さ。思わず、自分の家のレコードと比べてみてしまったり、そうか、そういう考え方もあるのか、なんて素敵な時間を過ごせた気がする。思わずキーズジャレットのワルツフォーデビーをターンテーブルに乗せてしまった。

  • 「楽器楽しいよ」
    退職後に楽器を始められた先輩に感化され、1年前から楽器教室に通いはじめた。
    音楽の基礎知識なし、音感なし、指はもつれる。周囲に迷惑ばかりかけているけれど、週1回無心に楽器を奏でる。
    なるほど、こんなに面白かったのか。もっと早く始めればよかった!

    本書は、ジャズの歴史を彩った名プレイヤーたちの肖像をイラストレーターの和田誠さんが描き、村上春樹さんが文を寄せる。

    従来のジャズ名鑑はある程度の専門知識が前提になっていて、話についていけないことが多かったけれど、本作はプレイヤーの個性伝わるポートレイトと、村上さんの紹介がうまくブレンドされていて、これからジャズを聴こうという人も十分楽しめる。

    テナーサックス奏者のスタン・ゲッツ。
    実に村上さん好みのプレイヤーで、文章に愛があふれている。本書の白眉だろう。

    ◆スタン・ゲッツは情緒的に複雑なトラブルを抱えた人だったし、その人生はけっして平坦で幸福なものとは呼べなかった。スチームローラーのような巨大なエゴを抱え、大量のヘロインとアルコールに魂を蝕まれ、物心ついてから息を引き取るまでのほどんどの時期を通して、安定した平穏な生活とは無縁だった。

     しかし生身のスタン・ゲッツが、たとえどのように厳しい極北に生を送っていたにせよ、彼の音楽が、その天使の羽ばたきのごとき魔術的な優しさを失ったことは、一度としてなかった。

     僕はこれまでいろんな小説に夢中になり、いろんなジャズにのめりこんだ。でも、僕にとっては最終的にはスコット・フィッツジェラルドこそが小説(the Novel)であり、スタン・ゲッツこそがジャズ(the Jazz)であった。

     (セッションを組むメンバーの)リズム・セクションは息を呑むほど完璧である。とびっきりクールで簡素にして、それと同時に、地中の溶岩のようにホットなリズムを彼らは一体となってひもとく。
     しかしそれ以上に遥かに、ゲッツの演奏は見事だ。それは天馬のごとく自在に空を行き、雲を払い、目を痛くするほど鮮やかな満点の星を、一瞬のうちに僕らの前に開示する。その鮮烈なうねりは、年月を超えて、僕らの心を激しく打つ。
     なぜならそこにある歌は、人がその魂に密かに抱える飢餓の狼の群れを、容赦なく呼び起こすからだ。彼らは雪の中に、獣の白い無言の息を吐く。手にとってナイフで切り取れそうなほどの白く硬く美しい息を…。そして僕らは、深い魂の森に生きることの宿命的な残酷さを、そこに静かに見て取るのだ。


    すばらしいプレイヤーと出会い音楽世界が広がる喜びを感じさせてくれる一冊。

  • 折に触れて丁寧に読みたい

  • ものすごくジャズが聴きたくなる本。
    まあ聴いたところで私が同じように感じられるとは思わないし、違う好みもあるだろうけれど(それは本人も述べている通り)、音楽をここまで映像化したり、温度を感じられる文章で表現しているのは珍しい気がする。
    まさに全身で受け止めている感じ。
    私ですら名前を知っている人もいれば「へぇ有名だったんだ」という人もいるけれど、かなり興味深いです

  • 村上春樹のエッセイの中で断トツ・ベストの出来だと思う。独自の柔軟な視点で、ジャズミュージシャンの、個々のアルバムの素晴らしさが、自身の思い出とともに、愛と熱を持って、腹から出た言葉で、語られている。たとえば、ソニーロリンズについての記述。「あっという間に唄の懐に入り込んで、その中身をひとまずゆるゆるにほどいて、それから自分勝手に組み立てなおして、もう1回かたくネジを締めてしまう。」。こういう表現は評論家はなかなかなしえない。自分はこの本に導かれて、ジャズを聴くようになり、この本に載っていないミュージシャンを含めてその魅力に気づかされることとなった。それだけの吸引力を持った本である。以下、本書でのマイベストの章

    ・ビリー・ホリディ(人生の晩秋の赦しとしてのビリーホリディ)
    ・スタンゲッツ(村上春樹のスタンゲッツ賛歌)
    ・ビル・エバンス(青春の、ナイーブさの象徴として)
    ・モンク(謎の男)

  • ジャズの入門書としてよいかも。
    もちろんジャズをそれなりに聴いてからでも、そういう聴き方があるのかと参考になる。
    ジャズ批評家の書いた偏見丸出しの文章にはない、知性と文章力と余裕がある。

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著者プロフィール

一九三六年大阪生まれ。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)卒業。
五九年デザイン会社ライトパブリシティ入社。六八年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。
六五年創刊の雑誌「話の特集」アート・ディレクターを務める。
講談社出版文化賞、講談社エッセイ賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞など受賞多数。
七七年より「週刊文春」の表紙(絵とデザイン)を担当する。二〇一九年死去。

「2022年 『夢の砦 二人でつくった雑誌「話の特集」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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