低欲望社会: 「大志なき時代」の新・国富論 (小学館新書) (小学館新書 お 7-2)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252862

作品紹介・あらすじ

”アベノミクスのパラドックス”を読み解く

〈安倍政権が「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」「切れ目のない経済対策」「第2次安倍政権以降最大の28兆円」などと喧伝すればするほど、国民は日本経済の先行きは暗いと思ってしまう。これこそアベノミクスでも景気がいっこうに上向かないパラドックス(逆説)の仕組みであり、私が「心理経済学」として提唱していることである。〉(新書版まえがきより)

なぜ「アベノミクス」では景気が良くならないのか?
日本が“借金漬け”から脱する日は来るのか?
「皆が等しく貧乏になる国」で本当にいいのか?
……それらの難題を読み解くカギは「低欲望社会」にある。

日本では今、世界に先駆けて未曽有の危機が進行している。人口減少、超高齢化、欲なき若者たちの増加……。この国に必要なのは人々の心理に働きかけ国全体を明るくする新たな国富論だ。

世界的経営コンサルタントによる話題の一冊を再編集して新書化。今こそ読まれるべき大前流「心理経済学」決定版。


【編集担当からのおすすめ情報】
参院選でもアベノミクスが国民の信任を得たとして、安倍政権は引き続き大規模な経済対策の実施を明言しています。しかし、人々の生活実感としての景気動向はほとんど変化なく、むしろ年々苦しくなっているのが現実ではないでしょうか? 昨年、経済書のベストセラーにもランキングされた話題の一冊がコンパクトな新書判となりました。これを機に、ぜひ著者独自の視点と分析が詰まった大前流「心理経済学」をお読みください。

感想・レビュー・書評

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  • 衣食住にはとりあえず不自由を感じることはなく、安全な暮らしができる。だた、経済の成長は見込めず、将来についてはなんとなく不安があり、だから背伸びはせず、貯蓄を抱えて生きていく、そんな「低欲望社会」には、従来の経済学(ケインズ理論など)は効果がない。先送りされ続け、日本の長期停滞、これからさらなる縮小につながる各種の改革(税、教育、農業、少子化対策等)に取り組まなければ、本当に日本は沈没する。。
    大前さんが昔から主張してきた内容と大枠はあまり変わっていない。でも、長い間、日本の制度は抜本的に変わることはなかったように思う。気が付けば、先進国といえる地位からは滑り落ち、東アジア、東南アジアの国々の後塵を拝すことになりつつある。高齢化した国民に野心を持てというのは難しいだろう。ならば、今となっては、移民、教育で10年計画で社会の根幹を強化しなおすことしかないのではないか。そう考えさせられた。

  • 偏ったデータや意見の羅列

  • 全米屈指のエリート校・MIT(マサチューセッツ工科大学)の博士号を持ち、数多くの起業家を輩出する名門コンサルティングの「マッキンゼー」日本支社長を務め、現在は自らが立ち上げた企業「ビジネス・ブレークスルー」の社長として経営指導や人材育成を行う大前センセイ。肩書きも顔も、そして発言もいちいち「エラソー」なのが魅力である。アベノミクスによって期待された日本の景気が一向に良くならない原因が、戦後の成長期のように給料も希望も右肩上がりだった時代とは違い、今はもう人々が豊かさを追い求めない「低欲望社会」となっている事にあると指摘する。特に20~40歳の若い世代が、将来に対する不安と失望から「結婚しない」「子供つくらない」「家は持たない」ことを選択する傾向にある日本を「皆が等しく貧乏になっていく国」と危険視する。世界的な経営コンサルタントであり、「ビジネス界のゴッドじいちゃん」と呼ばれるセンセイが、今の日本を復活させる処方箋として提言する「日本のための心理経済学」とも呼ぶべき一冊。本書は2015年に単行本(\1,620)を出版しながら、その翌年にすかさずこの新書版(\864)まで出していて押し付けがましいのが笑える。他にもいろいろ本を出されている大前センセイだが、どれもこれも、タイトルから帯から写真から、何とも「エラソー」である。

  • 本書は、大前研一流「国富論」であり、著者が考える日本経済を良くするための施策を提言している。

    形としてアベノミクス批判のようにも見えるが、結局のところアベノミクス以前からある問題について、「著者の提言が実行されれば良くなるはずなのに何故アベノミクスではしないのだ」という内容で、大前研一ほどの大御所が無理にブームにのらなくてもよかったのではないか、と思います

    例えば、
    ・将来の不安を政府がきちんと保証すれば、貯蓄している金融資産が社会に流通するはず
    ・「働き方改革」のように新たな規制を作るのではなく、裁量に任せる規制撤廃のほうがよい
    ・資産は相続するのだから、格差拡大を是正するためには資産課税が必要
    ・年金を掛け金方式にすれば、負担分が自分の老後に直結するのだから、年金離れは起こらないはず
    ・大企業はきちんと節税対策をしているので、法人税を下げてもあまり関係ない
    ・首都高改修は東京オリンピックのためではなく地震対策で行われなければならない
    ・農水省は戦争時等における食料備蓄のため国内農業の保護が必要とは言うものの、戦争時には石油がなくなり、そうなればそもそも農業ができない
    などなど

    おもしろい提言だし、思考実験的にもいい題材なのでが、どうにも実現しないのが残念である

  • 豊かな世の中で国民のほとんどが低欲望になった日本。それに合わせた経済政策をすべきなのにできていない日本。


     この低欲望社会という日本の特徴を理解していないと、20世紀の経済成長前提の経済政策は無意味でしかない。それなのに、今の経済担当はそれしかできない。

     結局、新しいことができない日本の悪い癖だと思う。既存の経済政策しかできないのは、言い訳が立たないからである。これはエライ人に独断させられないからでしょう。

     偉い人を信じないなら、国民が自分たちで頑張るしかないのに、国に頼り切っている。国からの補助や給付に喜ぶばかり。そういう大きな政府の日本社会を脱しないとねー。

     今一番必要な政策はあらゆる補助をなくしていくことだろう。

     自立した日本を、国民が作ろうとしなければ、政治家はポピュリズムに走るばかりだ。

  • 「将来への不安」は個人消費や設備投資の減少など、日本経済にとってはマイナスです。
    若者に対しての意識調査に今の社会状況が如実に反映されています。
    高校生の7割が「不安を感じる」という結果が出ています。

    政府や企業があの手この手を使って消費を喚起していますが、
    将来への不安から貯蓄率は増加傾向です。
    今の社会状況を変えるにはどうすればいいか?この議論は長い間されています。
    個人的には日本社会の適応力は、世界史を見ても群を抜いていると思います、
    変わる時は、かなり短期間で一気に変わる(明治、敗戦から復興等)、
    ただ今回の変わり方は、大多数の人を幸福にはしないかなと思います。

  • 税制等、抜本的改革が必要なのはわかるが、国債が暴落してハイパーインフレになる理屈が分からない。そもそも、日本国の破たんとは何を指すのか、その辺を具体的数字で書いて欲しい。

  • コンサルタントである著者が統計データや世界中を見てきた所感を混じえ論理的に喝破し日本再生の道筋を展開。
    そう上手くはいかないとは思いつつ頷ける点もかなり多い。
    不安さえなくせば日本は大丈夫!と坂の上の雲を見よ、君たちは大丈夫なのだよ、と最後にはエールも。
    思考停止に陥っている日本人には一読の価値あり。

  • そんなに目新しくはないけれども安倍政権への嫌悪感アップにはすごく有効

  • 著者は“低欲望”とでも呼ぶべき傾向に関して「内向き、下向き、後ろ向き」と纏め、「それで善い筈もないが、事実なのだから、受け止めて“仕切り直し”をして行こうではないか!そして、今やらなければ本当に“機会”を逸してしまう…」としている。
    本書では、“声が大きい”人達が声高に主張することに関して、実はかなり多くのことが“見当違い”とか、“小手先”に過ぎて仕様も無いというようなことが、新書の限られた紙幅の中で手際良く指摘されている。一つ、一つ大きく頷ける話しだ。或いは、そういう状態であるのが“危険”なのかもしれない…
    “低欲望”とでも呼ぶべき最近の日本の状況は、著者によれば「古今東西に類例が余り思い当たらない」ような状態なのだそうだ。どういう状態か?何故か?そして様々な分野の状況に関して、非常に詳しく解説され、「こういう考え方は如何か?」と提言が在る…大変に有益だと思う。或いは“声が大きい”人達が声高に主張することに対して「こういう少し違う観方」ということを教えてくれる一冊だ。こういう本は“必読”かもしれない…

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著者プロフィール

1943年、福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。(株)日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。 以来ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を務める。現在はビジネス・ブレークスルー大学学長を務めるとともに、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして活躍のかたわら、グローバルな視点と大胆な発想で、活発な提言を行っている。

「2018年 『勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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