さよなら エルマおばあさん

著者 :
  • 小学館
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (59ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784097272496

作品紹介・あらすじ

いつまでもわすれないよ。スターキティが語るおばあさんの思い出。ある夏の終わり、エルマおばあさんは、お医者さんから病気でもう長くは生きられない、と言われました。これは、おばあさんといっしょにすごした最後の1年間のお話です。

感想・レビュー・書評

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  • 発売当時かなり話題になり、ベストセラーにもなったらしい。
    にも関わらず読む勇気がなかなか出なかった一冊。
    でも、読んでよかった。本当に、良かった。
    読後しばらくすると、生きる勇気のようなものがさざ波のように押し寄せて来る。

    主人公は、平凡な老婦人。
    重い病にかかり、余命あと一年と知ったとき、死への準備をすすめていく。
    その一年間を、愛猫の目線で克明に語った写真絵本だ。
    だんだんに弱っていく姿も、容赦なく載せられている。
    命の尊厳とはどういうことだろう。
    病院での延命治療よりも、自宅で過ごすことを選択したエルマおばあさん。
    自分の一生を書き残し、身辺整理をし、会いたい人たちに最期の挨拶をし、毎日メイクを欠かさず、家族ひとりひとりにあてて手紙を残す。
    エルマおばあさんはこうも言う。
    【わたしはね、これまでの人生で今がいちばん幸せだよ】
    自分と、自分に関わるものとの全てを受け入れ、全てを赦し、あるがままに生きることの尊さ。
    そしてそんなエルマおばあさんの選択を尊重して、見守る温かい家族たち。
    窓の外からおばあさんの姿を探す猫の姿には思わず涙したが「こうありたい」と願う最期の姿が、ここにある。

    思えば、いのちの大切さを学校で教えるようになってから久しい。
    それが恐ろしいほどの欺瞞だとは、誰も思わないのだろうか。
    「死」はいつも、「生」のすぐ隣にあるというのに。
    汚いものを忌み嫌うかのように、大人たちはそれを遠ざけてきたのだ。
    快適な環境と、好きなものだけに囲まれた子どもたち。
    それが、どれほどかれらの成長を妨げていることか。
    言葉を尽くし心を尽くして教えることは、実はそんなに難しいことではないはず。
    この一冊が、その一助になってくれるのではないだろうか。

    死に向かって歩む自分の姿を、写真絵本として残すことを著者に許可されたエルマさん。
    その崇高な気持ちに応えるためにも。

    • だいさん
      「死」、「生」。

      表裏ですかね?慈悲かな?
      memento mori 自分の位置を知るために必要と思います。
      そんなことを考えまし...
      「死」、「生」。

      表裏ですかね?慈悲かな?
      memento mori 自分の位置を知るために必要と思います。
      そんなことを考えました。
      2015/09/06
    • nejidonさん
      8minaさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      【自らの死を静かに受け入れていくお姿は、強く尊いですね】
      その通りですね...
      8minaさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      【自らの死を静かに受け入れていくお姿は、強く尊いですね】
      その通りですね。。。
      元気なうちから後悔のない日々を送るに越したことはありません。
      私の両親はそのタイプでした。
      寝たきりになっても幸せそうでしたから。
      願わくばそうありたいものですが、今の私には出来そうもないです(笑)
      2015/09/07
    • nejidonさん
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      メメント・モリという言葉も久々に聞きました。
      誰しもが明日をも知れぬ命を抱え...
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      メメント・モリという言葉も久々に聞きました。
      誰しもが明日をも知れぬ命を抱えていると知れば、
      他人の「生」を妨げたりはしないし、自分もまたそうだろうと。
      でも若く健康なときは命への驕りもあって、忘れてしまうのですよね。
      傍らにこういう書があることは、そんな自分への戒めになりそうです。
      2015/09/07
  • 悲しいけど、良い話だと思った

  • 第50回小学舘児童出版文化賞、
    第32回講談社出版文化賞、
    第11回けんぶち絵本の里大賞
    それぞれ受賞。


    『ある夏の終わり、
    エルマおばあさんは、
    お医者さんから、
    病気でもう
    長くは生きられない、
    と言われました。


    でもおばあさんが亡くなるまで、
    ぼくたちは
    幸せいっぱいに暮らしました。


    これは、
    おばあさんといっしょにすごした
    最後の一年間のお話です。』



    多発性骨髄腫(血液のガン)の
    告知を受けた
    エルマおばあさんが
    自宅で静かに
    死を迎えるまでの1年間を、

    おばあさんが可愛がっていた
    8歳のオス猫
    スターキティの目を通して綴った
    胸を打つ写真絵本です。

    日本ではまだ
    ガン告知をすること自体少ないけど、
    アメリカでは
    本人にちゃんと告知されます。


    そして患者本人が
    どうするかを決めるようです。

    おばあさんは死を前にして
    家族の歴史を書く決意をし
    必要以上の延命治療を受けない
    自宅療養(リビングウィル)という方法を選びます。


    会っておきたい沢山の人々と会い、
    家族のあたたかい介護を受ける日々。


    死を目前にしても
    おばあさんは
    優雅で穏やかで
    落ち着いていて、

    凛とした姿を
    最後まで見せてくれます。


    『死ぬってことは
    魂がこの体を出て、
    こことは
    別の世界に行くことなんだよ』


    衰弱していくおばあさんを
    見つめる
    心配気なスターキティ。


    死んだおばあさんを
    窓から探す
    スターキティの表情には
    涙があふれて止まりませんでした。


    子供でも分かるように書かれた文章と、

    アメリカのガン告知の在り方や
    死に至るプロセスを
    克明に捉えた
    繊細で神々しくもある
    モノクロの写真。


    それは日本での
    高齢者の延命治療の問題も
    深く考えさせられます。


    自分らしい最後を迎えた
    凛としたおばあさんの生き方は、
    生きるということを
    本当の意味で
    見せてくれます。


    死は決して怖いものではないということを
    自らの最期を捉えた写真で教えてくれる、
    一人でも多くの人たちに読んでもらいたい一冊です。

  • 猫のスターキティの飼い主のおばあさんがこの世を去る1年間を見届ける写真の絵本です。
    この本に私の感想などはいりません。

  • 余命宣告されたおばあちゃんの写真絵本。
    生きるってなんなのか
    死ぬことをどう感じるのか
    人それぞれだと思うけれど、お手本にしたいなと思える生き様でした。

  • 大塚 敦子

  • おばあさんが死ぬ直前の話。

    自分が死ぬときってなんとなく悟ることができるんだなーと思った。
    内容を知らずに子供に読み聞かせで読んだ。途中で気づいて出来るだけ明るい調子で読んだからか、余計死が自然で当たり前のことに思えた。

  • 死について考えさせられる一冊。子供はどこから来るのか話すのに、死んだあとのことを考えるのは避ける傾向があるというコメントに納得した。

  • 涙で何度も字が見えなくなった。なんて素敵な最後の一年なのか。エルマおばあさんはいう。「このさき、ひとつひとつ、いろんなことができなくなっていくだろうけど、それは、体が旅に出る準備をしているからなんだよ。」死を間近にしたとき、怖いのはどんどん弱っていく自分の体だ。それに対してこんなに心強い言葉が他にあるだろうか。おばあさんを見送るご家族も素晴らしい。寂しくないわけがない、辛くないわけがないのに。見送られる立場になっても見送る立場になっても、その時が来たら私はこの本のおかげできっと強く穏やかでいられるだろう。

  • 図書館で息子が図鑑を音読している間に手に取った本。
    ひとりのおばあさんが自宅で最期を迎える日々を写真で追った本。
    淡々と、でも考えさせられる。

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著者プロフィール

大塚敦子
1960年和歌山市生まれ。上智大学文学部英文学学科卒業。パレスチナ民衆蜂起、湾岸戦争などの国際紛争を取材を経て、死と向きあう人々の生き方、自然や動物との絆を活かして、罪を犯した人や紛争後の社会を再生する試みなどについて執筆。
『さよなら エルマおばあさん』(小学館)で、2001年講談社出版文化賞絵本賞、小学館児童出版文化賞受賞。『〈刑務所〉で盲導犬を育てる』(岩波ジュニア新書)、『はたらく地雷探知犬』(講談社青い鳥文庫)、『ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の再出発』(講談社)、『いつか帰りたい ぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ』(小学館)など著書多数。
ホームページ:www.atsukophoto.com


「2020年 『シリアで猫を救う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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