灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094512915

作品紹介・あらすじ

人間関係も勉強もそつなくこなし、万事如才ない高校生となった飯嶋直幸。県下でもトップレベルの進学校に入学した彼は、なに不自由ない学園生活を手にした。そんな雰囲気に突然水を差したのは、クラス代表となった小早川千尋。代表に立候補し、履行の邪魔なので副代表は不要と言いはなった眼鏡女子だ。常にテンション高め、ガチガチの規律でクラスを混乱に陥れる彼女のその手に、直幸は炎の剣を幻視する。そして彼女の心の闇を知るのだが-。田中ロミオ最新作は、ヒロイン観察系ラブコメ。

感想・レビュー・書評

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  • トップレベルの学校に入ったものの、クラスはすごかった。

    自由、とは言いひびきですが、本当の自由とは
    こんな縛られた中の自由、ではありません。
    やりたい事だけを! というのに引っ張られて
    数の暴力で押し付けたクラスメイト。
    本当にトップの学校? と聞きたくなるくらい
    その後の事を考えていません。
    流れに乗っかるのもいいですが、それを考えないと
    小学生よりも劣る選択です。

    しかも主人公をスパイに送り込んだのはいいものの
    誰も協力しないし、文句だけを言う状態。
    うわぁ面倒なやつらどもめ、なクラスメイト。
    そりゃ頼っても仕方がない、と思えます。
    むしろ、こいつらに仕事渡したら…という考えに
    一票入れます!

    怒り出さない彼女と主人公は、大人だなぁ…と。

  • 空気を読みすぎる主人公と空気の読めなさすぎるヒロイン(で更に学園モノ)という田中ロミオお得意構成なので、ある種の安心感を持って読めた。ヒロインの厨二病の方向性が逆なだけで「AURA」とほぼ同じ設定だから、どっちかにハマればもう片方も楽しめると思う。どちらも主人公がある時点でヒロイン側に吹っ切れてからが気持ちいいのに、すぐ後に挫折させるのがロミオ流。鬼畜だけど、主人公結局いいやつでなんとかなるのがズルい。あっさり終わっちゃうのがラノベの良いところでも悪いところでもある。

  • 1冊。
    この作品をオススメしてくれたブクログ氏ありがとう!

    学校とか1Bのような真面目で頑張っている人を集団で嘲笑いいたぶり楽しむ10代の少年少女の醜さか描き出していた。一方、"空気"に逆らって奮闘する人達がいることに感じ入った。とても眉をひそめ、でも胸がきゅんとさせられた良い作品でした。

    で、小早川千尋という正義感に溢れ、苛烈で、自尊心が高くて、打たれ弱くて、可愛くて、意外にスカート短い女の子に会えて良かった。千尋をサポートする飯島くんのように『いいこと、○○くん』って呼ばれたい。小早川千尋も大切なキャラクターの一人になりました。

  • 田中ロミオさんの小説はキャラがブレなくていい
    あとモノローグも違和感ないし
    文章がニガテな人でも頑張れば読み進められる
    なんか視点の感情移入のさせ方が上手な気がする
    状況に対するカメラの置き方もそうだけど、
    内面へのカメラの向け方も丁寧
    だからブレないのかもしれない

  •  「クラス崩壊」は私も経験があって、よく理解できた。はやく静まって欲しいのに、呆然とした先生があきらめて出て行ったことがあった。私が所属するクラスはいつも一番やんちゃでごんたでダメなクラスだった。だから常に私もダメな人間のように思えていた。一番落書きが多く、一番私語が多いところに、中学から高校までずっといた気がする。一度も男性の先生にあたったことはなく、クラスのヤンキーのようなしっかりした女子が最後の気力で動かして、なんとか体裁を保つ、それで乗り切ってきた感がある。逆に、こんだけ崩壊してても、乗り切れるものなんだと思ったものだ。私は、クラスの出し物とか、できるだけ協力したのは覚えている。
     「クラスを手伝うのが恥ずかしい」。これに対して、この主人公二人以外はまったくブレないのがすごい。主人公とヒロインが逆に、ブレそうになったり、飲み込まれそうになったり、崖っぷちで頑張り続ける。そして、写真屋をなんとか開催したとき、せっかく準備してなしとげた株を、クラスの一切手伝わなかった連中に奪われてしまう。その空気もよくわかる。結局、怒りではどうにもならず、主人公のような、ある意味で悪人のような人間でないとクラスはまわらない、最も最初に大人になったのが主人公というかたちで、小早川さんがそれに続く。かなりいい小説だったけれど、ちょっとは「好きだ」とか告白してもよかったんじゃないか。いや、主人公はこういう男なのだ。これでいい。
     設定として、「優秀」な学校なのに、崩壊している、というのが良い。頭が良い分、中途半端に何もしないし、もっとも空気に流されやすいのだ。よく読むと、ものすごく大衆批判というか、鋭いところをついている。一番の大衆とは、こういう、無駄に優秀で自由ぶっこいてる奴。いじめるやつも、そういうやつ。P78【ひとりひとりは、軽い気持ちでやっている気がする。だがクラス全員分が集まってしまうと、それはまったく別種の殺傷力を宿す。誰かをマットで簀巻きにして、上にのしかかる。最初はやられるほうも笑っている。仲間同士の悪ふざけ。だがのしかかるほうがふたり、三人と増えていくと、簀巻きにされるほうの顔から笑顔が消える。五人のしかかると、カエルを潰したような悲鳴。十人でのしかかるのは、笑いが止まらないほど楽しい悪ふざけだろう。そうして気がつく頃には、日本人口がひとり減っている。いじめですか。いいえ、悪ふざけです。】
     それから、ブログで彼女の本心を覗けているという設定も良い。ものすごい正義の女子が、最後に精神が崩壊して、自撮りをブログにあげているところとか。しかも学校がばれている。主人公の「オーマイブッダ!」の反応が面白い。

  • 数々の国宝級18禁ゲームを世に送り出してきた伝説的シナリオライター・田中ロミオ氏が手がける学園ドラマ。コメディに比重が置かれていた『AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』とはテイストが異なり、本作は一年間を通じて男女の関係変化を実直に描いた恋愛小説となっている。主人公・飯嶋直幸は規律を重んじるクラス代表の小早川千尋を牽制すべく、副代表の職務に協力することになるが……という話。ごく普通の生徒で構成されるクラスのはずが、集団浅慮のために誰一人として学級活動に協力する者はなく、結果的に直幸と千尋の二人だけで全委員活動や文化祭の準備に立ち向かうはめになる。平凡な学生生活の中で規律と怠慢の二項対立を誇張することにより、極限状況が生み出されているのが面白い。厳格な秩序を求める千尋も、一年B組においては無秩序という和を破壊する異端者にすぎない。当然、集団は異物を排除する。学園だけではない。職場や家庭、あるいは小規模な友人関係においても一年B組のような環境は常に身近に存在する。同調圧力なき共同体などあり得ないのだ。我々は社会の一員である以上、常に空気を読むことを求められている。安易な和に埋没せず、炎の剣を振える人間でありたいと強く思う。共同体の危うさを描くことに長けた田中ロミオ氏ならではの良作である。

  • 『AURA』と同じく高校というある年齢集団が集う学校環境が舞台の人間関係もの

    「恋愛」という小説分野わけがあるのだから
    広く包括して「人間関係」という小説分野があってもよさそうだが
    人間が読み手である以上人間関係を描かない小説もないわけか
    登場人物が作者視点のほかに人間のいない小説でも作者と読者は人間であるし
    文章を自動生成して生成命じた本人が読む場合も生成命じた過去の自分と読む現在の自分
    あるいは生成しなかった自分など自意識に対する人間を想定比較するのであって

    またcommunicationの語が伝達連絡なのにそれが交わされる界場として使用される日本語の
    空気という概念の呼び方はなんであったのだろう

    この作品の場合高校という場だが
    幼稚園でも家庭でも職場でも老人ホームでもあの世でも人間が自らを人間と認識する限り
    人間関係はなくならないが
    例えば小説分野わけにそれに対するものが「恋愛」くらいしかないのも面白い
    「教養」「青春」「冒険」として「与えられたもの」「過ごすもの」であり
    交わすものではないわけだ

  •  現代の高校を舞台に、まわりの「空気」に流されてどんどん怠惰になっていくクラスメートたちと、そんな「空気」をものともせずクラス改革に邁進する熱血まじめ系委員長タイプ少女の小早川さんとの対立の日々。そして、まわりにうまく合わせながらも、小早川さんに興味を抱きひそかに観察している、主人公の飯嶋直幸らが織りなす青春物語。

     クライマックスの手前くらいまではかなり引き込まれた。このクラスで起こっていることや、クラスメイトたちの行動などが自分の学生時代を思い返した時に、すごく既視感のあるもので、かなり心に刺さるものがあったのだ。はたしてどのような結末を迎えるのだろうかと、期待したのだが…。

     おそらく僕のようにラストに少し疑問を感じる人も出てくるだろうと思うが、終盤くらいまでは文句なく面白いので、読んで損はないだろう。

  • ネットオフで購入して読み。「人類は衰退しました」の田中ロミオなので。


    「人を踏みつけにしても、保身をはかっていい、と言っているだけだ」(p29)っていう超ドライな両親に育てられた、万事卒がなく、空気を読むのに長けた直幸が、小早川さん(正直クラスにこんな子いたらめんどくさいだろうなあー)と出会って変わっていくお話。

    直幸と同じタイプの中目黒(作り笑いが上手で、あらゆることに冷淡で上手にクラスの空気を読んで立ち回るタイプ)の描写とか、ああ、こういう子いるなあ…。と思いながら読んだ。

    見てる側(ブログを読んでる直幸の方)が見られる側(小早川さん)より優勢、だと思ってたら気が付いたらいろんな価値観がひっくり返って関係性に優劣がなくなってた、っていうのが面白いと思った。

    超ドライな直幸の両親についても掘り下げてほしかったなー。子育て中の身としては、建前だけではなくて、「保身をはかっていい」、って子供に教えられるって結構すごいことと思ったので。

  • 懐かしや学校生活。

    いやー、こんな学校生活は絶対に送りたくない。送りたくないけど、ちょっとかっこいいかも。

    よくあるラノベとすると、ヒロインの心理描写がかなり少ない。こういうの珍しい。

    複数のテーマで書かれているのもすごい。

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著者プロフィール

小説家・ゲームシナリオライター。代表作『CROSS†CHANNEL』『人類は衰退しました』『Rewrite』(竜騎士07、都乃河勇人との共著)『ミサイルとプランクトン』など多数。

「2016年 『アウトロー・ワンダーランド 1 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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