シークレット・レース (小学館文庫 ハ 11-1)

  • 小学館
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感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (551ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088014

作品紹介・あらすじ

自転車競技を支配するドーピングに鋭く迫る

過酷なまでの勝利の追求がもたらしたドーピングとその隠蔽――自転車レースを支配する闇の世界に、ランス・アームストロングのマイヨジョーヌに貢献した元プロ選手タイラー・ハミルトンとノンフィクション作家ダニエル・コイルがメスを入れた。
そこは、煌びやかなプロ自転車競技界の裏側にある幾重にも連なった腐敗と恐ろしいまでに不穏な世界だった。
「現時点における、自転車競技の薬物問題に関する最も包括的で、誰もが入手できる報告である」(NYタイムズ)。

感想・レビュー・書評

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  • ランス・アームストロングの元同僚のタイラー・ハミルトンが述懐した、当時のロードレーサーたちのドーピングについて、ノンフィクション作家が文章にまとめたノンフィクション。アームストロングのドーピングについて知りたいなと思って読み始めてみたけど、基本的にはハミルトンがなぜ、どんなドーピングを、どんなふうに行っていたか。そして、彼が知り得た周りのアームストロングはじめ、ロードレーサーたちのドーピングの実態、言動が事細かに描き出される。しかし、ここで問題なのは、なぜドーピングをしたのか?という、なぜ、の部分に他ならない。当時のワールドツアーに出るようなロードレーサーはほとんどみんなが、ドーピングをしていた。つまりは、ドーピングした状態が最低限のスタートラインだったわけだ。ドーピングをしたら、トレーニングせずにレースに勝てるわけではなく、その上で必死にトレーニングして、死ぬ気で走った1人が勝てる世界。そんな世界で生きるためには、まずドーピングをしてスタートラインに立たなければならなかったのだ。みんなで一斉にやーめた、と言うまで、または、一斉にやめさせられるまで。ドーピングをする人間は心が弱くて、ずる賢こい怠け者だなんていう、表面的なドーパーに対する認識はどこかに行ってしまった。意地悪な見方をすると、それがタイラーの狙いと言われるのかもだけど、そうではないだろう。ロードレースファンでなくとも、読んで視野が広がる本だと思う。

  • 【内容紹介】

    ドーピング、隠ぺい、手段を選ばぬ勝利の追求―自転車レースを支配するシリアスな闇の世界に、ランス・アームストロングのマイヨジョーヌに貢献した元プロ自転車選手のタイラー・ハミルトンとノンフィクション作家のダニエル・コイルがメスを入れる。

    煌びやかなプロ自転車競技界の裏側にある幾重にもつらなった腐敗を暴き、かつ恐ろしいまでに不穏な世界を暴きだす。
    元プロ自転車選手ならではの心理を克明に描いた傑作ノンフィクション。

  • 希望の持てる終わり方でよかった。前半の高揚感、中盤からの緊張感、そして危機と終焉。構成もすばらしい。
    結局、ランスですら真実を告白せざるを得なかった、ということは、やはり”不正”はひとの心を蝕む、ということなのだろう。「みんなやってる」というのはこころの奥底には効かない、ということなんだろうな。

  • 面白い。ノンフィクション。アスリートのストイックさに胸を打たれる。有力選手がほぼ全員ドーピングをしている中で、ドーピングを拒絶することが真のフェアプレーといえるのか。状況次第で善悪やフェアの概念は変化し得るかとの疑問を投げかけている。

  • 一流へと上り詰めた自転車レース界のヒーローたちが行っていたドーピングについてを告発した本。
    タイラー・ハミルトンへのインタビューをもとにして著者が物語調で作り上げたものとなっている。

    子どもたちの憧れにもなっていたようなランス・アームストロングをはじめとする選手たちが、ドーピングという禁止行為を行って記録を更新し続け、世間を欺いてきたという内容である。
    ただドーピングはスポーツ界に蔓延しており、今度も無くなることはないように思える。
    運悪く見つかったか、密告されたかの違いであり、密告者本人も使用者だったりするような足の引っ張り合い状態である。

  • ロードバイクの世界を知ると同時にロードレースの最高峰、ツールドフランスの激しく熱く戦う世界に夢中になりました。毎年のテレビ観戦を心から楽しみにしていました。これほど過酷な競技で、しかもなんと癌を克服した上で7連覇もしたアームストロング氏の書籍を読み感銘を受けたころにドーピング事実が発覚、しかも彼自身認めたとのことを知り大変な衝撃。

    ただ本書を読むことによって、当時の世界ではドーピングしなければ絶対に勝てないどころか選手としては生きてはいけないほど蔓延していたという事実を知りました。ドーピングを受け入れるか?選手としての人生を下りるか?という究極の選択を、まさに今、夢が実現しようというところで迫られます。巻き込まれるのは状況的にどうしてもいたしかねないと感じさせられること、もしそういった状況に身を置かれると誰もが手を染めかねないと思わせられる衝撃。

    その事実を、アームストロング氏と同じチームに所属された経験があり彼の優勝にも貢献してきたタイラーハミルトン氏の選手時代のドーピングにまつわる全てのストーリー、そして引退後にその全ての事実を世間に公表したことを記された物語となっています。

    ただこの物語を読むことで、世界的なヒーローだったはずのアームストロング氏のイメージが事実とはかけ離れたつくられたものであったという別の意味の衝撃もありました。

    現在のロードレースの世界はクリーンになっているのでしょうか?過去にこれほどのドーピングシステムが構築されていたものを完全にクリーンにすることができるものなのでしょうか?
    現在のロードレースの世界を信じたい気持ちになりますが…選手たちの言葉を信じたい気持ちになりますが…たたドーピング問題は決して選手たちの判断だけでは行われないこと、スポンサーや主催側の営利目的が原因でもあること。
    そしてそれはロードレースの世界だけに限らずどのプロスポーツにも当てはまるので、当分は心の中で葛藤しながらのスポーツ観戦が続きそうです。

  • 事実は小説より奇なり。
    という言葉が正に当てはまるようなタイラーの半生が綴られている。
    特に興味深かったのはランスがどういう人物だったかという描かれ方で、死の淵を覗いた者は必ずしも他人に優しくなれるのではなく、自らの欲望を加速させ何物をも省みなくなるような刹那的で危うい生き方をする者もいるのだと思った。
    倫理的かどうかはともかく限りなくドラマティックであり退屈などという言葉とは無縁だ。
    タイラーが母へ真実を告白する時には思わず涙が出た。
    私は怪物が観たいのではなくてレースを通して人間が観たいのだと改めて思った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「レースを通して人間が観たい」
      きっと、それが難しいんだろうな(競争とは距離をおいてるけど判ります)。
      「レースを通して人間が観たい」
      きっと、それが難しいんだろうな(競争とは距離をおいてるけど判ります)。
      2013/07/22
  • サイクルロードレース界の長きにわたるドーピングの実態について、元プロ選手タイラー・ハミルトンの語りをノンフィクション作家ダニエル・コイルがまとめる形で執筆した「シークレット・レース」。

    暴露本のような下品さはなくて、プロ選手の苦悩、人間としての葛藤、友情、家族、幸せとは何かなど、丁寧に書かれています。

    自分はクリーンに懸命に準備してきた。でも周囲は不正をしていて、このままでは自分に勝ち目がない。会社は自分にも不正を勧めてくる。その時自分はどうするか?という、自転車選手でなくても誰にでもあてはまる問い。懸命に準備している人ほど悩むと思います。

    読んでみて、今年もツールを応援しようと思えたのでよかった。

  • 自転車レース界のドーピング話。内容はさておき、助詞の間違いや脱字が多いのに辟易。小学館の本、あまり読むことないけどこんな感じなのかな。

  • ツール・ド・フランス7連覇の栄光をドーピングにより剥奪されたランス・アームストロング。
    そのチームメイトであり、後にライバルとして戦ったタイラー・ハミルトンの自叙伝。
    当時の自転車ロードレースの最高峰、その中でどのようなことが行わてていたのかが良くわかる。
    暴露本のジャンルに押し込んでしまっては惜しい良書。

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