語るに足る、ささやかな人生 (小学館文庫 こ 13-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094081947

作品紹介・あらすじ

人口三千人足らずのアメリカのスモールタウン。サウスダコタ州のドライブイン・シアターのある町、ウィスコンシン州のカフェに座る身寄りのない女性と中学生の女の子、アイオワ州の幽霊屋敷のようなホテル。小さな町だからこそ、そこには「物語」がある。アメリカのスモールタウンを旅して紡いだ珠玉のストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • まるでボブ・グリーンみたいな片岡義男みたいなちょっぴり村上春樹みたいな。個人的にものすごーく好き。アメリカ好きにはたまらない。アメリカが好きじゃない人が読むとどう思うのかはちょっとわからないけれど。アメリカの本当になんにもない田舎の小さな町を訪ねる旅行エッセイなんだけど、その町の人々の生活の断片を切りとった短編集みたいな感じもあって。感動的なストーリーなわけでもないし、オチがあるわけでもないんだけど、その淡々とした感じがすごくよくて。人生、というものを考えさせられるような。

  • 人口三千人にも満たないアメリカのスモールタウン
    ばかりを訪ねて描かれた一冊。

    ジャンルで言えば旅行記ということになるんだろうが、
    この美しさと爽やかさはもはや旅行記のそれではない。
    巻末解説にある通り「素晴らしい短編小説」のそれだ。

    小さい町だからこそ持ち得る時間や責任、そして、
    小さい町だからこそ分かるつながること、つなげて
    ゆくことの重要さ。

    それぞれのスモールタウンの空気がありありと伝わって
    くるのは、著者の研ぎ澄まされた五感が成せる業だろう。
    暖かい空気だけでなく、嫌悪と反感の入り混じった空気
    も正確に感じとって、かつ、それを感情的にならずに
    受け止めているのが、なんともスマートだ。

    うん、久しぶりにアメリカに行きたくなった。


    本書は、往来堂書店の「D坂文庫 2010年冬」のライン
    ナップ。さすが往来堂。脱帽。

  • 人生がひとつの物語だとしたら…つまり人生という不確かなものが、物語として紡がれることによってようやく意味や形状を得るものだとしたら、その物語は記憶によって構成されている。
    胸のなかの然るべきところに収まっていた記憶が時間を経て発酵をして、そして然るべき時間を自分で選んで表層に浮上してくる。それを人は人生の感触として受け取り、さまざまな過去を生きてきた遠近法を描く。そのようなものがひとつひとつ、あやふやな自分の支えとなっていく。

  • 十年ぶりぐらいに再読。本当に、スモールタウンでしか、向き合う人の人生の全体像を描けないのだろうか、という疑問は常に持ちつつ。古き良きアメリカを理想化し、そのフィルターを通してしか、アメリカを見ようとしてないのではないだろうか。そう、常に問いかけ続けながら、読み進めた。スモールタウンだけをめぐるアメリカ旅行。各都市各都市では、コミュニティの緊密さがあたたかみを生み出したり、自然との共生がうまくおこなわれていたり、そういったケースが見受けられる。/女の子より馬のたてがみが好きという理髪店ではたらくカウボーイ。1950年にオープンしてからずっと同じ機械を使い続けていることを誇るドライブインシアターのオーナー。ちいさな街のまんなかでぶらぶらと若者があつまる”ミーティング”。すべて顔見知りで経営されていた店がすたれ、顔の見えない関係におそれをいだく住人。われわれや子供達にとって報道価値があるかどうかなんてどうでもいい、と語る虐待から子供を守る施設の職員。ひとりひとりの役割が多くて、退屈してるひまなどない人々。「そんなことしたくない」という理由で、家に鍵をかけず、車のキーもぬかない人々。街ですれちがっても人が挨拶しないことを想像しづらい人。さまざまなアメリカの断面を垣間見ることができる。

  • 小生、70年代中盤から80年代初めにかけて、アメリカの田舎町にての生活をしており、まさしく本書にあるような暮らしに接していたので、深く共感する。文章も優れており、私の記憶が本書を読みながら鮮明に浮かんで来た。

    古き良きアメリカはこういうものなんだよね。

  • 映画「パリ、テキサス」あたりが好きな人は気に入ると思う。

    レンタカーでアメリカ本土を横断し、スモールタウンを訪れる旅。気ままに、車を走らせながら滞在地を決める自由さ。

    この作者のことは調べてもあまりよくわからないが、文体やテーマがかなり自分のツボである。

    時間がとまったような、何もないスモールタウンと、情報やモノにあふれた都会と、果たして人間はどちらが幸せなのだろうか?

    重要なのは、どんな境遇にいようと地に足をつけて、現実に向き合っていくことなのだろう。

  • アメリカのスモールタウンを巡る話。タイトルがその内容を示しています。著者の作品は初めてですし、失礼ながら知りませんでした。

  • きっとおしゃれな人で、格好良くない文章は書かない人なんだろうなと、ぼんやり感じる。

    アメリカの一部の地域は特別な思い出のある場所だけど、
    読んでいる中で、ちょいちょいあのときの感情を思い起こせた。

  • 旅行記。
    アメリカに膨大にある、なのに
    一体化していて見えない
    「スモールタウン」のみを訪れる旅。

     
    置き去りにされた人生、
    小さなコミュニティ。

    生活はどこでも同じように繰り返される。
    小さなスモールタウンでしか
    考えられないもの、
    得られないもの。

    ただ、どこも同じことで
    捨てられてしまったもの、
    求めても手に入らないもの。

    ないまぜになって、小さな町が語るものを
    作者が丁寧にひろっていく。

    大きなアメリカの
    人口3000の小さな町たち。

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著者プロフィール

1961年東京都生まれ。雑誌『SWITCH』の編集者を経て、作家・翻訳家に。主な著書は、小説に『人生は彼女の腹筋』(小学館)、『夜はもう明けている』(角川書店)、ノンフィクションに『語るに足る、ささやかな人生』(NHK出版/小学館文庫)、『地球を抱いて眠る』(NTT出版/小学館文庫)、『アメリカのパイを買って帰ろう』(日本経済新聞出版)、翻訳に『空から光が降りてくる』(著:ジェイ・マキナニー/講談社)、『魔空の森 ヘックスウッド』(著:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/小学館)、『スカルダガリー』(著:デレク・ランディ/小学館)など。2012年逝去。

「2022年 『ボイジャーに伝えて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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