- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094065701
作品紹介・あらすじ
入手困難な日本ワインの知られざる誕生秘話
日本のワイン造りは、世界の常識からかけ離れていた。
ワイン用ぶどうではなく生食用ぶどうを使い、また、海外からワインやぶどう果汁を輸入して造ることも多かった。
そのような状況に異を唱えた人物がいる。
「海外の銘醸地にコンプレックスを感じながら日本でワインを造る時代は終わった。君たちは本気で海外に負けないワインを造りなさい」
日本のワイン造りを主導した醸造家・麻井宇介(うすけ)の教えを受けた岡本英史、城戸亜紀人、曽我彰彦の3人は、師の遺志を受け継ぎ「ウスケボーイズ」と自らを名乗る。
そして、それぞれが日本では絶対に無理と言われたワイン用ぶどうの栽培から醸造までを一貫して手がけるワイン造りにすべての情熱を傾けるようになる。
日本で“本当のワイン造り"に打ち込んだ青年達の出会いから、ワイン造りを目指し、葛藤しながら成功していくまでの物語。
小学館ノンフィクション大賞受賞作、待望の文庫化!
解説は翻訳家の鴻巣友季子氏。
本作を原作とする映画『ウスケボーイズ』が2018年10月20日公開。渡辺大、橋爪功、安達祐実ら豪華キャストが出演。
感想・レビュー・書評
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多少、日本ワインに興味がないと「?」って感じの「岡本英史、城戸亜紀人、曽我彰彦」がワインと出会い、作るまでの物語。映画化もされている。
やっぱり少しおかしな(普通でない)人、計算しない(できない)人でないと、こんなワインを作ろうなんてしないんだろう。凡人かつ計算高い私には無理だ。
今も昔も飲み物や食べ物の宣伝手法は「体にいい」。本格ワインが入ってきたときも「甘くないものはまずいという認識であり、しかし、アルコールを添加していない天然のワインだから薬としての効用は高いという」という打ち出しだったようだ。少し前も「ポリフェノールは体にいい」で赤ワインが大ブームになった。
本書では、ワイン造りの方針をめぐって対立したと書かれていた曽我氏の弟、曽我貴彦氏も後に作り手として大成功した。そのワインも高い評価でかなりレアな一品となっている。元メルシャンの味村氏など、業界の著名人も登場。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恥ずかしながら、飲むのは好きだがワインについての基礎知識は皆無で、少し難しい箇所もあった。
2018年以前、酒税法が改正されるまでは原料自体が国産でなくても、加工さえ国内で済ませれば国産ワインとして販売できていたことを初めて知った。
ワインを楽しむのは、なんとなく華やかなイメージがあるが、本書に登場する国産ワインの革命児たち、ウスケボーイズたちは自身の目指すワインの形に向かってまっすぐ、ただ地道に葡萄と向き合っている。
これからは、味だけでなく、少なくともそのワインが出来上がるまでの背景もイメージしながらワインを楽しみたいと思った。 -
おすすめ資料 第487回 (2020.01.10)
本書は、ワイン造りに人生を捧げた青年たちを描くノンフィクション作品です。
その情熱と功績は、解説で「『嗚呼、無情』として部分的に翻訳紹介されていたヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の全訳に取り組み、この大作の全貌を新訳で見事に紹介するばかりか、日本語の芸術として昇華させた」と喩えられています。
著者の河合香織さんは、本学ロシア学科の卒業生です。
著者の方に思いを馳せながらする読書は、作り手を思いながら飲むワインのように、きっと味わい深いものとなるでしょう。
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ワイン通でもないしそもそもボトルを買うことなんて年に2回あるかどうかという程度なんだけど・・・、俄然、日本のワインに興味がわいた。「国産ワイン」が輸入原料を使っていることはなんとなく知っていたし、2018年から「日本ワイン」という呼び方が定義されて純粋に国産のものが見分けやすくなったことも聞きかじっていた。
しかしその、日本で採れた(とくにワイン用の品種の)ぶどうから作るということが、こんなにも障害が多く、また認められにくかったことだったとは知らなかった。フランスなどの一流産地にかなうわけがない、だって日本はぶどうの栽培に適していないから・・・という、はなから諦めた「宿命的風土論」に皆とらわれていたのだという。
それに異を唱えた麻井宇介氏の、志と教えを継いだ3人の若者の奮闘を読んでいくうちになんだかぶどう畑の中に立っているような気さえした。3人それぞれの想いはとても深く、ぶどうと一心同体のよう。芽吹きから実りまでの様子や、畑の広がる景色がよく描写されていることもあって、臨場感もたっぷり。のめりこむように一気読み。