- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094063721
作品紹介・あらすじ
ポーランド発、完徹必至の傑作ミステリ上陸
ポーランド北部オルシュティン市の工事現場で、白骨化した遺体が見つかった。現場に向かった検察官テオドル・シャツキは、現場が病院に続く地下の防空壕だったことから、戦時中のドイツ人の遺体と考えていた。ところが検死の結果、遺体の男は10日前には生きていたことが判明、この短期間で白骨化することはあり得ないという。さらに調査を続けると、複数の人間の骨が入り交じっていた。やがてこの男は、大量の顆粒の配水管洗浄剤に生きたまま埋められて死んだことがわかる。そして真相に手が届こうとした時、シャツキ自身の身に思いもよらぬ事件が……。
ポーランド本国でベストセラーとなり、欧米では「ポーランドのP・ルメートル」と大絶賛された本邦初登場の作家による、大傑作ミステリ!
感想・レビュー・書評
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ドイツ占領時代に亡くなったドイツ人の白骨死体が始終発見されるポーランド北部の地方都市「オルシュティン」。事件を担当するのは〝正義の鉄槌〟で悪のはびこる世界を正そうと意気込む検察官(テオドル・シャツキ)だが、捜査意欲をそそる刺激的な事件に飢えていた。そこへ、工事現場で発見された白骨死体の検死を行ったフランケンシュタイン博士(!)からのあり得ない報告「白骨死体の主は、10日前にはまだ生きていた」・・・月並みなありきたりの事件が、猟奇的な怪事件へと急展開し、衝撃の結末が待ち受けるポーランドのクライムノベル。
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検察官シャツキが活躍するポーランドミステリー。三部作の第三作。
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上巻だけでは、まだ、まだ、未知数!こっからどうなる?
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フランケンシュタイン博士。テリー・サバラス。ピーター・セラーズ。これらの有名人を想像させる人物が次々と登場する。軽口を交えながら、どこに向かうのかわからないシャツキ最後の事件を追う。何せポーランドの彷徨えるスター検察官テオドル・シャツキの三部作の最終編なのだ。好奇心の向かう先は、どのようにシリーズを閉じるつもりなのか? この一点に尽きる。
読者のツボを読み取ってであろう。エキセントリックなシーンで始まる序章はこれから始まる物語のクライマックスであろうかと思われる。
続いてシャツキのその後の変化が、語られる。時代は、前作『一抹の真実』でサンドミエシュを舞台にした連続殺人事件の三年後。シャツキは一度ワルシャワに帰ったらしいが、現在は北部の地方都市オルシュティンで本業以外に講演を仕事を依頼されたりしている。前作までの事件ですっかり事件を解決する一匹狼の保安官イメージをまとったシャツキは、ポーランドで最も有名な検察官となっているらしい。しかも常にぴしりと決めた硬派ファッション。白髪。五十代に手が届きそうな年齢。
彼は、一人娘のヘレナ、新しい恋人・ゼニアと三人で奇妙かつ綱渡り気味の生活をしている。ヘレナはすっかり大人に近づき、本書ではとても重要な役を割り振られる。
ポーランドの町は相変わらず暗く、被征服国家としての歴史の重さに打ちひしがれている。季節は12月で、雪になり切らぬ冷たい着氷性の霧雨と分厚い雲に覆われている。
事件もまた相変わらずエキセントリック。見つかった白骨は過去のドイツ兵の亡霊だとばかり思いこんでいたものの、一週間前に溶かされたものと判明。なんて奇妙な!
新しい街なのでシャツキを取り巻く捜査陣はまたも新たなキャラクターばかり。風土描写ばかりではなくキャラにも決して手を抜かないのがジグムント・ミウォシェフスキという作家である。シャツキを取り巻くのは、個性豊かな存在感抜群の男女ばかり。前作で印象的な登場を果たした精神分析医クレイノツキも相変わらずの個性とドンパチの的中度を誇るが、解剖医のフランケンシュタイン博士(まさに実名までもが)は衝撃的なまでに印象に残ることだろう。
取り上げられるテーマはDV。家庭内で決して誰にも気づかれることなく精神的に追い詰められてゆく静かな被害者たちと、仮面の加害者像が、時折カットバックのように挿入される。無名で。そして次第にシフトアップ。街の緊張が高まり、シャツキの表情がこわばる。静かな家族たちとその裏側に奥行きを見せる影なる暴力。
街に跋扈する復讐の足音。過酷なまでの制裁。後半は、なぜかシャツキ自身が巻き込まれてゆくことで物語に疾走感が生まれる。ページターナー。予断を許さぬ展開。予測を超える真相。シャツキの物語の終焉はどうなるのか? やはりこの三部作は順番に読まなくてはいけない。日本の読者にとって如何に不幸な出版順序であっただろうか? 順番通りに読むことのできた幸福が、この本を閉じるときにしっかりと胸を満たしてくれたのは言うまでもない。 -
検察官が主役の話。男性の白骨が見つかった。なんか昔事件があったのかもねー。皆そう思う。違った。1週間前に生きてた人間の骨だったみたい。色々調べてみて、自然にこうなった説は覆され、やっぱり事件で、誰かがわざと、お肉を溶かすようなことをしたらしい。しかも複数の人間の骨みたい。話はゆっくり。作者がそうなのか、主人公が辛辣で偏屈で性格悪くていい。何もかもが気に入らなくうんざり。大人だから我慢してるけどね、というストレスの貯めぐわいもいい。久々に「下巻も絶対読むぞ」と心に誓った一冊でした。
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こ れ は ひ ど い。
何がひどいって、三部作完結巻からの訳出。それもシリーズ全体を貫く大きなオチがあり、それは順を追い、時間をかけてキャラクターたちに付き合っていってこそ、しみじみと味わえる種類のもの。おかげさまで台なしである。
本作単体でもこの手の裏切り・肩すかしが目立ち、かく言う私もそれに惹かれて手に取った「年季の入った白骨に見えた死体の主が、実はつい10日前まで生きてピンピンしていた」というネタは完全なる出落ち。全体の1/4ほどでこのトリック(これ自体はよくできている)が解かれて以降は、ひたすら偏屈なおっさんのぼやきに付き合わされるだけであり、謎解きの歓びは皆無となる。
共感しがたいおっさん(離婚は泥仕合だったよーとか思春期の娘が扱いづらいよーとか繰り言をほざくが、終盤でそもそもの原因はおっさんの不倫にあると明かされる。ふざけるな、だ)が、共感しがたいマッチョ社会(北欧>アメリカ>東欧の順にひどい。とはいえ、我が日本はぶっちぎりで最下位なのだが)でおまけに天候も陰鬱な街を背景に右往左往するのを見せられたあげく、犯人がポッと湧いて、およそ共感しがたい結末に至る。これを、どう愉しめというのか。
あと、どうでもいいが他社の文庫を読んだ後で小学館のそれを見ると、やたら活字が大きく、そのくせ余白が小さい字組みに息が詰まる。高齢化社会対策なのか、昨今の読書人は阿呆になったとバカにされているのか。「文字サイズが自由に変えられるから」kindleを愛用する人の気持ちが初めて、少しだけわかった気がした。
2019/1/6〜1/7読了 -
レビューは下巻にて。