- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094062090
作品紹介・あらすじ
衝撃の結末が加わった傑作長編小説の完全版
15年前、ある地方都市のマンションで男が撲殺される事件が起こった。凶器は金属バット。死体の第一発見者は被害者の隣人で、いまも地方検察庁に検察事務官として勤める古堀徹だった。事件は未解決のまま月日は流れるが、被害者の一人娘・村里ちあきとの思わぬ再会によって、古堀徹の古い記憶のページがめくれはじめる――。
古堀は事件当時、隣室に暮らすちあきの母親・村里悦子と親しい間柄だった。幼いちあきを預かることも多く、悦子が夫の暴力にさらされていた事実や「もし戒める力がどこにも見つからなければ、いまあなたがやろうとしていることは、あやまちではない」という彼女の人生観に触れる機会もあった。その頃の記憶にはさらにもう一人の女性の存在もあった。女性はある計画について村里悦子を説得したはずだ。「一晩、たった一度だけ、それですべてが終わる」と。
よみがえる記憶を頼りに組み立てたひとつの仮説――交換殺人という荒唐無稽な物語が、まぎれもない現実として目の前に現れる! サスペンスフルな展開に満ちた長編小説『アンダーリポート』に加えて、新たに衝撃的なエンディングが描かれた短編小説『ブルー』を初収録した完全版。
【編集担当からのおすすめ情報】
著者の佐藤正午さんは、「嘘をほんとうに見せることに僕は魅かれるんです」と言い切ります(『書くインタビュー2』小学館文庫より)。本作でも“交換殺人”という、現実にはあり得ないと思えるような「嘘」がモチーフになっています。けれども本作を読んでみてください。あり得ないと思えていた絵空事が、読み進めるうちにあり得るかもしれないと思え始め、いつのまにか読者のみなさんの足元にまで迫ってくるはずです。「嘘をほんとうに見せる」ためには手間を惜しまない作家の真骨頂ともいえる、読む愉悦に溢れた作品です。
※併録の短編小説『ブルー』は、単行本『正午派』のために書き下ろされた作品で、今回初めて所収されます。
感想・レビュー・書評
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第1章読んでる時はあまりに唐突すぎて、そして初めての佐藤正午に慣れてなくて、読みにく!とおもった
でもその文学的で単調な描き方とだんだんわかってくる輪郭が面白くなってきた
自分にとっては、特に感情移入することも考えさせられることもあんまりない本だったけど、こういう話もあるね、と読了後思った
ブルーが収録されていないものを読んだからそちらも気になるけど、あまり多くを語らないほうが好きだから蛇足だと感じてしまうかも、とはいえあると知ったら読んでみたいんだけれど
佐藤正午もう1冊くらい読んでみよう詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古堀くんは何をしたいのか?何を言いたいのか?読みながらイライラすることもあった。でも、そうするしかなかったのかもしれないとも思う。
それにしても読み始めるとなんとも言えない気分に包まれる。佐藤正午の世界。心地いいというものではない。どちらかというと気持ち悪いのだけれど。 -
隣人が殺害された現場で嗅いだ香りを思い出し、昔の事件の真相を追う話。主人公が過去を振り返りながら真相に近付き傍観者ではなくなる過程にゾッとする。私も主人公同様血の巡りが悪いから、最後のブルーで何でって息を飲んだ。遅効性の毒が回ったようだった。
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最後の章を最初に持ってくるという大胆な構成にびっくり。読みはじめはこれが最後につながるんだなぐらいにしか思っていなかったのだけど、最後そのものだったとは。
現在から過去を顧みながら、まずは主人公と関わりがあるもう一人の人物に焦点が当たって話は進んでいく。ここでいったん最初の章が頭から離れるのも面白い。
主人公は確信を深めていきながら、それと同時に傍観者から当事者に知らないうちに立場が変わってしまうところが恐ろしかったし、主人公に肩入れしている読者にもそれを気付かせないのも見事だった。
犯人も動機もほぼほぼわかってしまっているのに事の成り行きが気になって仕方がなくさせるこの文章力。佐藤正午さんを読むのは2冊目だけど特別なものを持っていると思う。近々新作が出るのも楽しみだし、既刊を読んでいくのが今一番楽しみな作家だ。 -
主人公とは、性別も年も職業だって何から何まで共通点はないはずなのに。
とことん感情移入してしまい、、、
わたし自身もモヤモヤした日々を送りました。
後半にさしかかり、
あれ?これって一番最初に書かれてなかったっけ?と読むと同時に過去の記憶をたどる私。
ああ、もう主人公じゃんわたし。
記憶と記録と、そして体感に残るもの、香り。
記されるもの、記されないもの。
存在するもの、しないもの、でもたしかにあるもの。
丁寧に、細やかに辿っていった先に待っていた結末に鳥肌ゾクゾク、ぞわぞわ。
自分がまさに殺されると思いながら、
どこか切なさを感じながら読み終えました。
佐藤正午さんにハマりそう!
次は何を読もうかな。 -
手の込んだミステリーというわけではないけど
一つ一つが丁寧に書かれている印象。
挿絵があるわけでもないのに登場人物がイラストとして頭の中で現れて動いている感じ。
古掘さんの人生は綺麗で平和なんだろうな -
記録
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アンダーリポートのみを収録した方を先に読み、
もうひと展開ほしいと思ったので星3つ。
と書いたが、続きがあると知り早速読んだ。
な、なるほど、、、
なぜこんな構成にしたのか、最初から決めていたような気がするけど、なぜなのか、、、
物語としてはスッキリしたけどスッキリしない。
怖い。色々と怖い。
でも、この構成のおかげで、後日譚を読むまでの数日間、ずっとモヤモヤしてた。
きっと主人公も、あのカフェを訪ねてからずっとこんな気持ちだったのかな。
もしこれが狙いだとしたら、怖すぎ。
最高。