逆説の日本史 17 江戸成熟編 (小学館文庫 い 1-31)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094060553

作品紹介・あらすじ

幕末前夜の「闇の歴史」を暴く!

第1章では、東北地方から北海道、さらには千島列島まで、独自の文化を育んできたアイヌの歴史を照射する。和人が蝦夷地に進出する契機となった北東北の争いから和人の過酷な仕打ちに端を発した「アイヌ三大蜂起」。さらには、老中・松平定信が蝦夷地調査報告書を黙殺した理由にも迫る。
第2章では、幕末に燎原の火の如く盛り上がった尊皇攘夷思想の源流ともいえる国学思想の成り立ちを、荷田春満、本居宣長、賀茂真淵、平田篤胤ら「国学四大人」の軌跡を通じて解読する。
第3章では、天保の改革に挑んだ徳川幕府が「祖法大事」と変革の波に乗り遅れる様を詳述。優秀な官吏が国の行く末を見誤っていく歴史をあますところなく活写する。
第4章では、「なぜ日本の道路舗装率が中国・韓国などより低いのか?」という命題から、いたずらに開発に走らず、身の丈にあった暮らし、完全リサイクル社会を実現していた江戸の暮らしに陽を当てる。

感想・レビュー・書評

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  • 随分、江戸時代に付き合わされている感もあるが、それだけ長い時代であったのだろう。

    この巻はアイヌとの交渉史、及び、朱子学の功罪が語られている。
    アイヌについては、知らない事ばかりであったので勉強になった。朱子学は井沢氏の言う通り、罪な部分の方が多いのだろう。

    江戸期の日本人の生活は基本的には満ち足りていたのだろう。今の、競争社会の厳しさを考えると、幸せって何なのか改めて考えてしまう。

  • アイヌの歴史は正直ほとんど知らなかったからかなり勉強になった。

  • 今回も、前巻までに引きつづいて江戸時代の歴史があつかわれており、アイヌの歴史、本居宣長と平田篤胤の思想、ロシアの来航とそれに対する幕府の対応、そして薩摩藩や長州藩の藩政などが解説されています。

    幕府の対外政策については、朱子学的な発想によって現実を正しく見ることができなかったという、従来の著者の主張がくり返されています。著者は、朱子学を「宗教」だと断じていますが、このばあいの「宗教」は現実を歪めて認識させるイデオロギーというくらいの意味なのだと思います。そのうえで著者は、現代の「常識」にもとづいて、「宗教」的な認識のゆがみに対する否定的評価をくだしています。

    著者のようなしかたで、明快に歴史的な事実に対する評価をくだすべきなのかという点では、どうしてもためらいを感じてしまいます。また、このような歴史の見かたが可能なのも、朱子学的なものの見かたから距離をとることができる現在の立場にもとづいていることへの留意も必要ではないかという気がします。たとえば中国史のように、歴史と思想がいわば骨がらみになっているようなばあいには、本シリーズのようなしかたで「常識」と「イデオロギー」を明確に切り離して歴史を語ることの意味が問いなおされることになると考えます。

  • アイヌ、国学、幕府外交と天保の改革、ユートピアとしての江戸。
    唐突にアイヌ!と思ったら…松平定信によって歴史から消されたアイヌ。
    アイヌの歴史は地方史ではなく日本史全般として扱って当然と思える内容だった。
    差別と同化は、その思想の根は同じであるとはハッとした。日本人が好む「同化」は、野蛮人に文化なるものを教えて差し上げ、彼らにもっと便利な生活を教えて差し上げる(上から!)という「正義感」から来ているので、たちが悪いと猛反省。

    そしてユートピアとしての江戸とは、「近代化反対」だと開国を拒んだ幕府や江戸町民たちのこだわりや完璧なエコ社会を紹介し、「近代化が絶対に正しい」とはいえないこと…万人にとって絶対に正しい主張はあるのか…を問いかけてくる。

  • アイヌと江戸の三大改革がネタなので、ワクワクするような巻ではありませんでしたが、幕末へと続く歴史のうねりのようなものを感じさせてくれました。

    電子書籍版もあるのですね。18巻以降はキンドルにしようかな。

  • 流し読み。本書は当初の「歴史を再定義」する役割から「歴史を再認識」する役割に変わったように思える。当時の状況を推察して歴史を考察する姿勢は歴史研究家に欠ける点でもあり評価に値する。アイヌの併合と差別の違いや黒船来航の衝撃はなるほどなと唸らされる。

    第1章 北方世界の歴史・アイヌ民族のルーツと展開編
    第2章 幕末維新への胎動1・国学の成立と展開編
    第3章 幕末維新への胎動2・幕府外交と天保の改革編
    第4章 幕末維新への胎動3・ユートピアとしての江戸編

  • 毎回、著者の過激な言論と既存の歴史研究に対する挑発には辟易するが、読み物としては面白い。
    田沼意次が本当に悪いのか、等の視点を提供してくれる。
    特に最後の維新後の近代化は、江戸時代より幸福か、という視点は目からウロコ。

  • アイヌ民族と幕府崩壊の謎
    第1章 北方世界の歴史
     アイヌ民族のルーツと展開編
      松前藩の卑劣な手口と幕府の無策を暴く!

    第2章 幕末維新への胎動Ⅰ
     国学の成立と展開編
      明治維新の精神的支柱となった四大人の思想

    第3章 幕末維新への胎動Ⅱ
     幕府外交と天保の改革編
      社会を混乱させた頑迷な「祖法大事」政治

    第4章 幕末維新への胎動Ⅲ
     ユートピアとしての江戸編
      なぜ、日本の道路舗装率は今でも低いのか?

  • 教科書で教えられてきた歴史の裏で、実際に歴史を支えてきた流れは何だったのか。
    ひとつ大きな影を落とすのが朱子学。

    朱子学は歴史を理想どおりに改竄する傾向をもつ。
    その朱子学に染まった幕府の閣僚たちが自ら幕府を崩壊せしめる江戸後期のお話。

  • 今回も面白く読んだ。
    前半はアイヌ。
    国学の成立~各藩の藩政改革などなど。

    日本の舗装率の低さと、江戸文化というかその頃の思想、生き方はなるほどなぁと思った。
    それにしてもエコな社会だったようだ。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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