神様のカルテ (3) (小学館文庫 な 13-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094060188

作品紹介・あらすじ

シリーズ275万部のベストセラー最新作!

栗原一止は、信州にある「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医である。医師不足による激務で忙殺される日々は、妻・ハルの支えなくしては成り立たない。昨年度末、信濃大学医局からの誘いを断り、本庄病院残留を決めた一止だったが、初夏には恩師である古狐先生をガンで失ってしまう。 夏、新しい内科医として本庄病院にやってきた小幡先生は、内科部長である板垣(大狸)先生の元教え子であり、経験も腕も確かで研究熱心。一止も学ぶべき点の多い医師だ。
しかし彼女は治ろうとする意思を持たない患者については、急患であっても受診しないのだった。抗議する一止に、小幡先生は「あの板垣先生が一目置いているっていうから、どんな人かって楽しみにしてたけど、ちょっとフットワークが軽くて、ちょっと内視鏡がうまいだけの、どこにでもいる偽善者タイプの医者じゃない」と言い放つ。彼女の医師としての覚悟を知った一止は、自分の医師としての姿に疑問を持ち始める。そして、より良い医者となるために、新たな決意をするのだった。

【編集担当からのおすすめ情報】
映画「神様のカルテ2」映画化決定!
2014年3月21日(金・祝)、全国東宝系にて公開!

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった〜
    しかし…
    こんな激務の中で、自分の行く道を決めていくのはしんどいで…

    信州のゆったりとした雰囲気に、ホッとはするけど…日常は、ゆったりとは正反対!
    この激務で、更に自身を高めようとする。この意気込みだけで、敬服するわ。
    凄腕と言われるお医者さんも、過去には色々とあるなぁ…
    そういうのを乗り越えて、今がある。失敗をしない人はおらんし、それを糧にして更に高みへ。
    でも、失敗からだけではしんどい!やはり、周りにいる人達のサポートがあっての事。
    そういう意味では、本庄病院は恵まれている。

    しかし、戦場で言えば、一流の隊員ばかり、ここに留まっていけるのだけでも成長するんかも?

    でも、更なる高みへと、一歩(^-^)v
    もっと、凄い人になってな!

    違うな…自分自身が納得出来る人になれば、それでええか。多分、それが一番やな。

  • 初めて読む作家である。ドラマが始まるから紐解いたわけだが、なぜ「3」から始めるのか。それは映画の「1」も「2」も観ていて感心していたので、効率を選んだというわけだ。ストーリー的にはなんの問題もなく入っていけたが、やはり原作と映画は少し違っていた。

    信州松本平にある24時間体制の本庄病院で働く6年目の内科医・栗原一止(いちと)やその同僚たちの日常を描く小説である。医者の労働環境がブラック企業並みの酷さというのは、最近になってしられてきた。コロナ禍の去年は更に知られただろう。それでも彼らは、人の生命を守るために献身的に医療に従事する。私は映画の(悔しくも適役の)櫻井翔が「医師の話ではない!私は人間の話をしているのだ」と哲学的・文学的に叫ぶクライマックスが大好きなのだけど、もう原作ではそういう「私は」と、大上段に語る口調がずっと続いて堪らなくなる。しかも予想外の、これは文体が「医療ハードボイルド」なのである。頭脳の回転の速い人たちばかりが登場するから、自然と会話は機知と比喩と揶揄と箴言に満ちている。栗原一止に至っては、それに文学的教養がついてくる。確かに医師が文学書を紐解かないのはおかしい。「人間」を相手にしているのだから。と、言いながら時間のない医者にとって暇があれば漱石を紐解いている一止は充分変人なのである。

    さて、偶然にも終盤の、第四章「大晦日」を私は大晦日31日に読んだ。偶然にも原作中でも大晦日に信州は吹雪だった。その中で、一止は重大な決断をする。その日、現実世界では奇しくもコロナ感染者は東京・全国共に最大を数え、労働環境と家族と医者としての使命との3つのせめぎ合いは、全国の医療従事者の悩みの種になっていた。到底この小説内で型のつく話ではない。

    宮崎あおいが、これ以上にない佇まいで医療現場という戦場に傷ついた栗原一止を迎えていた映画が、果たしてテレビドラマではどうなるのだろうか。

  • ふと気がついてみると「3」(シリーズ第3巻)を読み終えていた。作品の背景。信州の大自然、いい人たちばかりが出てくる展開。人間の生死に真剣に向き合う人々の真摯な姿。心地よい語り口。とにかく時間を忘れて、安心して読み進めてしまう。ストーリーの展開が読む手を止めてくれないのだ。

    主人公を取り巻く人々の生き方には涙腺を刺激されてしまうのであるが、この第3巻はことのほか「細君」のハルさんの存在感が大きかった。ここまで素晴らしいスーパー細君を現実世界で見出すのは難しいであろう。しかし、この作品の中では極めて自然に描かれている。

    人の生死をモチーフとした医療小説であるにも関わらず、人間の本性と向き合い、清々しく描ききる。夏川さんの凄さを思い知る。

    この第3巻が世の中に出た時点では、「今後、主人公がこれまで舞台としていた病院を後にし、大学病院へ行くことによって一体どのような展開になるのか?」とてももどかしかったのではないだろうか?

    このシリーズが出てからすでに十年の月日が流れている。この作品の後もシリーズが続いていることを知っていることが幸せなことなのか?それともワクワクハラハラ感を減じてしまうのか?わからない。ただ、第4巻を読むことに変わりはない。

  • 自己満足で患者の傍にいるなんて偽善者よ。
    栗原一止は、信州にある「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医である。
    医師不足による激務で忙殺される日々は、妻・ハルの支えなくしては成り立たない。
    昨年度末、信濃大学医局からの誘いを断り、本庄病院残留を決めた一止だったが、初夏には恩師である古狐先生をガンで失ってしまう。
     夏、新しい内科医として本庄病院にやってきた小幡先生は、内科部長である板垣(大狸)先生の元教え子であり、経験も腕も確かで研究熱心。一止も学ぶべき点の多い医師だ。
     しかし彼女は治ろうとする意思を持たない患者については、急患であっても受診しないのだった。
    抗議する一止に、小幡先生は「あの板垣先生が一目置いているっていうから、どんな人かって楽しみにしてたけど、ちょっとフットワークが軽くて、ちょっと内視鏡がうまいだけの、どこにでもいる偽善者タイプの医者じゃない」と言い放つ。
    彼女の医師としての覚悟を知った一止は、自分の医師としての姿に疑問を持ち始める。
    そして、より良い医者となるために、新たな決意をするのだった。



    このシリーズは何巻でもハズレ無しで面白い(*^-^*)
    一止の風変りな個性も、読書好きにはたまらないところがあるが、
    それぞれクセのある医者がとてもいい雰囲気を醸し出している。

    今回は小幡先生。
    この先生は味方なのか!?それとも和を乱す敵なのか!?
    何となくハラハラしながら読みすすめ、最後はいつもほっこりな気分にさせられる。

    物語ヨシ。文章ヨシ。読後もヨシの三重丸間違いなしの本(*^-^*)

  • 読み物としては語りすぎはアレだけど、いい先生方ばかりなんだけど、もうちょっと自分のこと話せばいいのにとは若干思う。

    自分が病院にかかるとき、患者としての気概を考える必要もあるんだなぁと、小幡先生、一止先生を見て思った。

    すでに4作目(0を合わせて)、変わらず良い作品です。

  • シリーズ3ですが、これまた面白く読了。
    一止が大学病院へ行く決心をすることになるきっかけとなった、小幡奈美医師との出会いをメインに、夏から早春までのお話しで、誤診?や色々なエピソードが入ってます。
    4から大学病院になるのだろうけど、本庄病院の様々なキャラクターが出てこないと思うと残念な気もしてくる(でも砂山次郎はいるのか)。
    とはいえ、早く4を読みたいものだ。

  • 深刻な地域医療の現場を、ユーモアとオブラートで包み、主人公を漱石を敬愛する諧謔でユニークなキャラにしたこのシリーズ、主人公栗原一止の独白やセリフがクセになる。
    「細君がいるだけで、殺伐たる未踏の砂漠も、緑豊かなオアシスへと転じようと」
    「30歳になったからといって、朝日が格別の便宜をはかって、私の人生を照らしてくれるわけではない」
    「東西(看護師の名前)がいくら動揺し、私がどれだけ頭痛に苦しんだところで、動揺と頭痛が治まるまで、世の中という汽車が出発を延期してくれるわけではない」
    「人生を続けていくのに、必要なものが二つある。知っているか?・・・前に向かって歩く足と、一服したときに飲むうまいコーヒーだ」
    もちろん主人公ばかりでなく、同期で同僚の新藤辰也や砂山次郎、内科部長の大狸先生、転任してきた使命感溢れる小幡先生、救命部師長の外村さんや主任看護師の東西さんなど、魅力溢れるキャラクターが周りを固める。
    しかし一番魅力的なのは主人公の細君ハルだろう。
    一止を理解し、いつもポジティブに彼を支える。世の中の男にとって理想的な嫁さんと言っていい。
    そんな一止の前に、このシリーズ第3作で、強烈なキャラの女医が登場したことで、一止に転機が訪れる。
    かつて大狸先生のもとで研修医をして今や第1線のベテランの内科医である彼女は、研究熱心で、生きることに不真面目で治ろうとしない患者は診察しないと、医療に対する覚悟が違う。
    彼女の「医者っていう仕事はね、無知であることがすなわち悪なの」という言葉に息をのむ思いの一止。彼女に触発され、また患者の病理診断に限界を見、焦りを感じた一止が、己のレベルアップを図るべく、本庄病院を退職し、大学病院へ。
    まだ、第4作第5作があり、読まずにいられない。
    さらに、主人公たちが居酒屋などで飲む場面で登場する酒の銘柄『復原』『天法』『かたの桜』『杉の森』等々。日本酒は得手ではないが、「九兵衛」や「吉」を訪ねて飲んでみたくなってしまう。

  • 前作の2作品は涙に溢れたが、今作は淡々と読めた。生きることに不真面目な患者には診察を拒否する先輩女医が出てくるが、多少の同意はするもののアルコール依存症の場合は、その依存症の治療も必要ではと思う。イチと同様に哲学の違い。根治が難しい膵癌の誤診は、誤診であって誤診ではないような。ただ、医療に詳しく無い家族にとっては理解が難しいと思う。このことで自分の医療に苦悩を深めるイチにハルさんが優しく寄り添うのが良い。

  • 信州松本の『24時間、365日対応』の本庄病院、内科医・栗原一止。

    患者で溢れかえる本庄病院。一止は休む暇もなく、働き続ける。

    そんな中、新任の女医・小幡からの一言が胸に突き刺さる。
    『栗原くんには失望したのよ。』
    『医者っていう仕事は、無知であることがすなわち悪なの』。

    常に最新、最高レベルの医療を提供する義務があると考える小幡。
    目の前の患者を捨ててはおけない一止。

    医者は神ではない。人間である。
    すべてが医者に委ねられるわけではない。
    最後は患者が決めることだろう。
    医者はそのために患者に真摯に向き合わなくてはならない。
    医者はそのためにコミュニケーションを取らなくてはならない。

    小幡のいうことも尤もだが、一止のように真摯に向き合ってほしい。

    一止は、大学病院で医者として、大きくなるんだろう。



  • 新たな旅立ちで完結しましたネ(^^)
    ラストの狸先生の粋な送り出しはジーンときちゃいましたー! 細君との将来が少し気になりますが、続編がでたら読みたいなぁ!

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

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