芸術は爆発だ!(小学館文庫): 岡本太郎痛快語録 (小学館文庫 R お- 12-1)
- 小学館 (1999年10月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094036718
作品紹介・あらすじ
岡本太郎もイジメられっ子だった。高圧的な先生に反抗して登校拒否、一年生で四つも学校を変えるがどこにもなじめない。入った寄宿舎では子供たちから酷いイジメを受け、パリ留学の後、三十歳で入隊した軍隊では下士官に毎晩のように殴られる…。しかし、岡本太郎はくじけない。己を貫き、闘いつづける。「誤解される人の姿は美しい」と。鮮烈な印象を与えつづける岡本太郎の言葉と、秘書・養女として約五十年にわたり一挙一動を見守ってきた岡本敏子の解説の組み合わせによる、岡本太郎伝の決定版。
感想・レビュー・書評
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岡本太郎(1911~1996年)氏は、漫画家の岡本一平、歌人で小説家のかの子の長男として生まれ、小学校には馴染めずに何度も転校した後、慶應幼稚舎で理解ある教師に巡り合い、慶應普通部を卒業し、東京美術学校に進んだが、一平の転勤に伴ってパリに渡った。パリでは、(パリ大学)ソルボンヌ大学で美学を学び、美術団体アプストラクシオン・クレアシオン協会に参加して、ピート・モンドリアン、ワシリー・カンディンスキーらと出会い、また、「何のために絵を描くのか」という問題意識から、文化人類学者マルセル・モースの下で民族学を学び、思想家ジョルジュ・バタイユらとも親交を深めた。1940年にドイツのパリ侵攻をきっかけに10年振りに日本に帰国した後、徴兵され、中国で5年を過ごしたが、復員後、「新しい芸術は岡本太郎から始まる」と宣言して再び制作を始め、1970年の大阪万博の「太陽の塔」で一般人の間でも有名になり、その後、TV番組やCMにも頻繁に登場するようになった。
岡本敏子(1926~2005年)氏は、東京女子大文理学部卒、出版社勤務を経て、岡本太郎主催の会で太郎と親しくなり秘書となった。事実上の妻で、後に太郎の養女となった。
本書は、50年に亘り太郎の公私を傍らで見てきた著者が、太郎があちこちで語り、記した言葉・文章の中から選び、その背景や真意を綴ったもので、著者は「はじめに」で次のように語っている。「あの独特な肉声の魅力を、片鱗でもいいから、人に伝えたい。あの言葉は、こんな時に、こんな風に出てきたのよ、と。言葉の背景には、いろいろな場面や状況がある。そこに、なま身の岡本太郎が生きている。あの魅力的な岡本太郎。それを一人占めしているのはあまりにも勿体ないので、思い出すままにまとめてみようと思う。」
また、本書の構成は、第1部:岡本太郎の人生 1911-1945、第2部:岡本太郎の恋愛論、第3部:岡本太郎の人生 1946-1996、となっており、第1部と第3部を併せて、太郎の伝記的にも読むことができる。
私は、暫く前に太郎の書いた『自分の中に毒を持て』、『今日の芸術』を読んでおり、今般偶々新古書店で本書を目にして読んだのだが、上記の通り伝記的に書かれているため、太郎が如何にして太郎となったのかがよくわかったし、また、太郎の最も傍にいた、太郎の最大の理解者・賛同者の目を通して、太郎の魅力を改めて感じることができた。
また、読んだ後、もう少し岡本太郎を見たく、川崎市岡本太郎美術館にも足を運んでしまったのだが、太郎は『今日の芸術』の中で、芸術は「うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない。」と語っており、確かに、決して心地よくはないにもかかわらず、なぜか繰り返し見たくなる、不思議な作品達であった。
太郎の伝記として、また、最大の理解者の目を通して太郎を知ることができるものとして、意義のある一冊である。
(2023年4月了)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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「字は絵だろ。絵だって記号だ。どちらも呪術をはらんでいる。」
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この本は、
文化人類学者かのようなこの一言に尽きます。
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敏子さんのように慕い続けて、
まとめてくれるひとがいるって素敵ですね(*'ェ`*)
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「岡本敏子」が「岡本太郎」の遺した言葉を記録し解説した作品『芸術は爆発だ!―岡本太郎痛快語録』を読みました。
少し元気づけられる作品を読みたくなったんですよね。
-----story-------------
誤解されたっていいじゃないか――「岡本太郎」伝の決定版
「岡本太郎」もイジメられっ子だった。
高圧的な先生に反抗して登校拒否、一年生で四つも学校を変えるがどこにもなじめない。
入った寄宿舎では子供たちから酷いイジメを受け、パリ留学の後、三十歳で入隊した軍隊では下士官に毎晩のように殴られる…。
しかし、「岡本太郎」はくじけない。
己を貫き、闘いつづける。
「誤解される人の姿は美しい」と。
鮮烈な印象を与えつづける「岡本太郎」の言葉と、秘書・養女として約五十年にわたり一挙一動を見守ってきた「岡本敏子」の解説の組み合わせによる、「岡本太郎」伝の決定版。
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「岡本太郎」の秘書・養女だった「岡本敏子」が、「岡本太郎」の言葉に解説を付けながら、「岡本太郎」の生い立ち、人生や恋愛論をまとめた作品です。
■第一部 岡本太郎の人生 1911-1945
・オレは進歩と調和なんて大嫌いだ
・芸術は爆発だ!
・「形」でない形、「色」でない色をうち出すべきだ
・今までの自分なんか蹴トバシてやる ほか
■第二部 岡本太郎の恋愛論
・「女房のおかげだ。感謝しとるよ」なんて、無神経なヤツらだ
・人間はひとりだけでは全体になりえない
・私は男女が同じだとは思わない
・恋愛ってのは、必ず片思いなんだよ ほか
■第三部 岡本太郎の人生 1946-1996
・絵画の石器時代は終わった
・死んで何が悪い。祭りだろ。
・「お互いに」とか、「みんなでやろう」とは言わない
・「なんだ、これは!」それこそ芸術だ
・誤解される人の姿は美しい
・老いるとは、衰えることではない ほか
「岡本太郎」といえば、子どもの頃、TVで流れていた、
「芸術は爆発だ!」 とか、
「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」
という言葉のイメージが強く印象に残っているのですが、本人のことは、ほとんど知らなかったので、本作品を読んで初めて「岡本太郎」の生き方に触れた感じがしました。
読んでいると、何だか力が漲ってくるような、不思議な魅力がありましたね。
印象に残っている言葉、、、
「憤り、己をつらぬき、表現することこそ、最も純粋な人間の証である。
むしろ、憤りこそ人間行動の最初のモチーフだと思う。
言うべきことを言う。
憤りを、生きがいとしてつき出してゆく。
抵抗の火の粉を身にかぶる。
楽しいではないか。」
何て前向きな考えなんでしょうねぇ。
でも、突き進んで闘うだけじゃない… 精神的に疲れた人には、
「あんまり一所懸命にならないこと。
オレがやらなきゃ、と思わない。
完璧に、オチ無くこなそう、としょっちゅう緊張していると、その下痢は治らないよ。
とんでもないミスにつながりかねない。
自分で、いまやれるだけのことをやればそれでいい、と覚悟を決めるんだよね。」
と声をかける等、目配り、気配りができる一面もあり、とても共感できましたね。
「岡本太郎」への興味が深まる一冊でした。 -
「自分の中に毒を持て」に続いて読了。これは、「自分の中に毒を持て」を別の角度から読んだ感じで面白い。こんなに深い理解者がいることは、なんと心強いことか。そして、岡本太郎のチャーミングなところが随所にあらわれ、小さい頃にテレビで見た、岡本太郎の姿と、なんとなくリンクした。今、もう一度、あの姿を見てみたい。
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野暮ったい文章だ!
岡本太郎本人の著作が幾つもあるんだから、それらをおすすめする -
岡本敏子さんの書いた、岡本太郎語録。子供の頃は岡本太郎は目をむいて「芸術は爆発だ」と叫ぶ変なおじさんにしか過ぎなかったけれど、改めて作品を見たり、著作を読んでみると圧倒されます。
本著に出てくる言葉も、様々な著作に書かれたり、岡本太郎本人が話したことをまとめたものですが、一貫してブレが無い事がよくわかります。 -
1996年1月7日に亡くなった
あの芸術家岡本太郎さんの遺した言葉を、
元秘書であり、養女でもあった岡本敏子さんが並べ、解説を付した「岡本太郎伝」。
数年前に読んだ物を、何となくまた読みたくなって引っ張り出してみた。
編者である岡本敏子さんも2005年に亡くなられたので、
以前これを読んだ時は、まだ生きてらしたのになあ。と、ちょっと感傷的になったりしつつ。
私が子どもの頃にはまだ太郎さんもご存命だった。
CMで見た、
目をぎらぎらさせて力の限り魂を込めるようなしゃべり方がとても印象に残っている。
でもその頃の私には彼の作品は「落書き?」くらいにしか思えなかったのだけど。(失礼)
今は、凄く、好き。
彼の作品を見ると、なんだかわくわくするから。
あのぎらぎらした姿を思い出し、
「ああ、力強く生きている人だったんだなあ」と、改めて感心する。
そして、この本も、岡本太郎という人の、力が詰まっていて読んでいるとわくわくする。
あきれるほどまっすぐな、一貫性のある発言・行動に、
心躍る。
「畏れず、進め!」と、背中を押される気がする。
岡本太郎さんの著書も幾つか読んだが、
太郎さんに非常に近しい敏子さんの視点によって編集されている本書は、
かなり読みやすく仕上がっている。
岡本太郎をちょっとだけ知っている人には、特にオススメの本。 -
岡本太郎の言葉に養女である岡本敏子さんが解説をくわえたもの。
一言だけだと、誤解がありそうな言葉も、裏を知ると「なるほど」と思えるもの。
岡本太郎の本では感じられない、人柄が浮かんできておもしろい。
縄文時代を歴史の教科書に定着させた功績など、知らなかったことも多くて興味深いものでした。
迷ったときにとても勇気づけられます。 -
この本を読むまで 岡本太郎氏のことは 敬遠していた。
ドギツイ赤のきいた絵のエネルギーの強さが 我の強さに感じられて
距離をおきたいなぁ、という感じだった。
母岡本かの子、パリでの生活、軍隊・・・生い立ちやエピソードの数々を読むと そのエネルギーの源がなにか、がわかってくる。「誤解される人の姿は美しい」と言い切る彼の痛みがつたわってくる。
語録にある言葉の切れ味は 痛快だ。
p.188 字は絵だろ。絵だって記号だ。どっちも呪術をはらんでいる
べ平連に頼まれて、ニューヨーク・タイムズの全面広告になった
「殺すな」
は、漢字のわからないアメリカの人々をも圧倒したらしい。
p.196 子どもはみんな天才だ
人間全部天才だ
どうして本来のままの自分にならないんだ。絞め殺さないでくれ。