池上彰の世界の見方 東欧・旧ソ連の国々: ロシアに服属するか、敵となるか

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093888509

作品紹介・あらすじ

ロシアとウクライナの情勢を徹底解説! 「ロシアと西側諸国の間に緩衝地帯を設けたい、プーチンの個人的な思いとは?」「クリミア併合時、プーチンがついた嘘とは?」「クリミア併合後、クリミア住民がロシアに対して抱いた意外な感情とは?」「ウクライナの反ロシア感情の原点は、ウクライナであった大飢饉。いったいなぜ起きたのか?」等、ウクライナ情勢を、歴史的な経緯から詳しく解説。ロシアによるウクライナ侵攻の背景がわかります!さらに、「東京都が日本を乗っ取ったようなソ連邦解体」「チェチェン弾圧で大統領になったプーチン」「杉原千畝ゆかりのリトアニアが持つ悩みとは」「世界から孤立し、ロシア頼みのベラルーシ」「民主化したポーランドとハンガリーが右傾化したのはなぜ?」等、旧ソ連の崩壊の歴史や、東欧・旧ソ連諸国の現状まで、幅広く紹介します。近年、これらの国では大きな事件が発生しています。ウクライナはロシアから戦争をしかけられ、ベラルーシは国家がハイジャック事件を起こしました。カザフスタンなど「スタン」がつく国には独裁者が多くいます。なぜそんな事態になったのかについても、池上彰が徹底解説いたします! 【編集担当からのおすすめ情報】 本書ではロシア・ウクライナ情勢はもちろん、旧ソ連諸国や東欧諸国の現状も詳しく扱っています。ウクライナについてはできるだけ新しい情報を載せるべく、ぎりぎりまで加筆や修正を行いました! ロシアは、ウクライナ以外の東欧諸国・旧ソ連の国々については、EUやNATOへの加盟を黙認しました。しかし、なぜウクライナに対しては軍事行動を起こしてまで阻止を図ったのでしょうか。ぜひその理由を本書でご確認ください。 尚、本書は東京都立青山高校での白熱授業を元にして書籍化しました。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    「池上彰の世界の見方」シリーズ13作目。本シリーズは、世界情勢に重大な変化があれば、その当事者国に強く焦点を当てて解説してきた。IS誕生のときは中東を、アメリカ大統領選挙のときはアメリカを、ブレクジットのときはイギリスとEUを取り上げている。今回はロシアのウクライナ侵攻を受け、旧ソ連と東欧諸国の国々を解説している。

    ロシアの軍事行動の土台となるのが「緩衝国家」の概念である。EUやNATOといった西側諸国とロシアとの間に一国を挟むことで、敵の侵略に対して時間的余裕を確保する狙いがある。ソ連時代にはロシア共和国以外の各共和国を衛星国家として周りに配置し、西側諸国に対する壁として機能させていた。その衛星国内部に対しても自治州を設置して民族の分断をあおり、ロシア本国への反抗を封じている。この影響が、中央アジアの「〇〇スタン」国家群や、コーカサス地方に乱立する自治州として今でも残り続けている。

    究極のところ、ロシアに接している国は否が応でもロシアの影響から逃れられない。
    しかしながら、日本人は「日本もロシアのお隣の国」という意識が希薄である。
    ロシアにターゲットを向けられているのは主に東欧や中央アジアの国だが、シベリア側に目を向ければ、中国や日本、そしてアメリカでさえもすぐそばに位置している。巻末で池上さんが「この本をきっかけに日本のあり方に目を向けてみて欲しい」と残しているが、まさにその通りで、地政学的には日本も他人事ではいられないのだ。ロシアが強大な軍事力を活かして周辺国にどのような外交を展開してきたのか、そしてウクライナなどの(比較的)小国家はどのように対応してきたのかを学ぶことは、露中に圧迫されるように太平洋に位置している日本にとっても、決して無駄ではないはずだ。
    ―――――――――――――――――――――――――
    本書を読んで、やっぱり池上さんの本は非常に分かりやすいと思った。もともとが学生への出張講義をベースに組み立てているだけあって、分かりづらいことをかみ砕いて説明しながら、かつ専門的になりすぎないようにバランス良くまとまっている。各国がどういう歴史を辿って今に至るのかと、今後どのように外交を展開しようとしているのかを、初学者向けに細かく解説している。学生だけでなく、大人にもおすすめな一冊だ。
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    【まとめ】
    1 ソ連の建国
    ソビエト連邦を構成する15の共和国を現在の国名で言うと、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギス、エストニア、ラトビア、リトアニア。

    ソ連は連邦国家のため、本来は州ごとに法律を持つ地方分権国家なのだが、資本主義国家からの干渉による侵略を恐れたソ連は、社会主義体制を維持することを重要視する。結果、ロシアのスターリンを中心とし、東ヨーロッパの国々を隷属関係に置く独裁国家が誕生する。
    連邦国家を維持するために、アゼルバイジャンやジョージアの国内に「自治州」を設置し、民族同士を分断させることでロシアに反抗できないようにした。また、中央アジア地域のトルコ系イスラム教徒たちを分断し、複数の国(〇〇スタン)を作った。


    2 ソ連崩壊
    スターリンの死後、フルシチョフが第一書記となりスターリン批判を展開する。その後ブレジネフ政権を経て、1985年にゴルバチョフが書記長に就任。停滞する経済を立て直すため、ペレストロイカとグラスノスチによる民主化政策を実施すると、各共和国に内政干渉をせず自由な活動を認めるようになる。1989年にはブッシュ大統領と会談し、核兵器の削減に合意して冷戦終結を宣言した。同年11月にはベルリンの壁が崩壊。東ヨーロッパ各国で共産党政権が倒され、独立機運が高まっていった。

    ゴルバチョフ(間接選挙によるソ連の大統領)の内政に不満を抱いた政府高官がクーデターを企てるが、エリツィン(直接選挙によるロシア共和国の大統領)により阻止される。これによりゴルバチョフとエリツィンの力関係が逆転。エリツィンがソ連共産党の活動禁止を命じ、ソ連の財産を全てロシア共和国に移す。同時に、ウクライナ、ベラルーシのトップと秘密会議を開き、ソ連の解体と独立国家共同体の創設を発表する。1991年12月25日、ゴルバチョフがソ連大統領を辞任し、ソ連が消滅した。

    崩壊後、15の共和国がソ連から独立したが、資本主義へ切り替わろうとしても産業がない。結果、圧倒的な大国ロシアを頼るか、ロシア以外の国々と関係を築いて自立を目指すか、どちらを選ぶか迫られることとなった。現在でも多くの国は、ロシアの影響から完全に逃れられていない。


    3 ベラルーシとウクライナ
    ベラルーシの第一回大統領選挙で当選したルカシェンコは、就任から2年後に大統領の権限を大幅に強化する憲法改正案を提案し、国民投票で承認させた。2001年に再選を果たすと、今度は大統領の3選禁止規定を削除する憲法改正案を承認させて、独裁者の地位を固める。その後、2020年の選挙まで大統領6選、27年に及ぶ長期政権を続行中であり、「欧州最後の独裁者」と呼ばれている。
    2020年の大統領選挙が不正だったとして反政府運動が盛り上がると、ルカシェンコはプーチン大統領にすり寄る。プーチン側はベラルーシを支援するかたちで、ロシアの支配下に置こうと考えていた。

    ウクライナは世界を代表する穀倉地帯である。
    ウクライナがソ連の一部だった時代、スターリンが進めた集団農業の影響によりウクライナ全体で深刻な飢饉が起きる。これをきっかけとしてウクライナ人の間で反ロシア感情が生まれることとなった。

    ソ連から独立したウクライナは西側諸国と手を結ぶことを模索する。しかし、ウクライナの東部にいるロシア系の住民がこれに反発し、西のEU派と東のロシア派に分かれて内戦状態が生まれる。

    ウクライナの南部で黒海に面したクリミア半島はもともとロシアに属していたが、フルシチョフがウクライナを懐柔するため、ロシア領だったクリミアをウクライナにプレゼントした。歴史的にクリミア半島は長い間ロシアに属しており、またクリミア半島にある不凍港セヴァストポリは軍事戦略の要衝であったことから、ロシア政府にとって非常に面白くないものだった。
    そこでプーチンが突然、クリミア半島はロシアのものであると宣言する。これを受けてクリミア自治州では、ウクライナから独立をしてロシアに帰属するかどうかを問う住民投票が実施される。投票の結果「編入に賛成」という票が多数を占めたと発表され、クリミアはロシアに併合された。

    2022年2月2日、プーチン大統領は親ロシア派が樹立した自称国家「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認する大統領令に署名し、ロシア軍の派遣も指示する。そして2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した。現在、ウクライナはNATOから武器の支援を受けて一人で戦っている状態だ。

    ロシアが、親ロシア派が多いウクライナの東半分を編入しないのは、ウクライナの東半分(親ロシア派)がロシアに編入されたら、西半分(親EU派)がEUに入ったり、NATOに入ったりするかもしれないから。そうなると、ロシアは、EUやNATO軍が駐留するような国と国境を接することになる。ロシアはあくまで緩衝地帯を置きたいだけであり、ウクライナを全部ロシアのものにしようとは考えていない。ウクライナあるいはベラルーシを、ロシアにとっての緩衝地帯にしようとしている。


    4 ポーランドとハンガリー
    ドイツとソ連により分割統治されたポーランドは、第二次世界大戦後ソ連の衛星国のひとつになる。
    ソ連崩壊により民主化したポーランドは、1999年にNATO、2004年にEUに加盟する。もともと社会主義国であったポーランドは国民の教育水準が高く、労働賃金は極めて安かったため、EU加入後には多くのポーランド人が域内に出稼ぎに行った。なかでもイギリスへ向かう人が多く、100万人のポーランド移民がイギリスに住むようになった。この結果、イギリス人の仕事が減少し、EUから離脱する原因のひとつを作ったと言われている。

    ポーランドでは2015年から現在まで、右派政党「法と正義(Pis)」の政権が続いている。同政権は、裁判官の人事やメディアへの政府の介入、性的少数者の権利の侵害など、民主主義のありようをEUから再三批判され、改善を求められてきた。2021年10月には、ポーランドの憲法裁判所がEU基本条約のうち一部の条項は同国憲法と相いれない、つまり「ポーランドの国内法がEU法に優先する場合がある」と宣言した。これをきっかけにEUとの溝が深まっている。

    そうしたポーランドを支持しているのがハンガリーだ。
    ハンガリーは2010年にオルバーン・ヴィクトル政権が発足してから、憲法を改正して報道機関への統制を強めるなど、言論の自由、表現の自由が失われつつある。また、セルビア国境にフェンスを設置し、北アフリカや中東からの難民入国を阻止している。

    2国はEUの基本方針と対立しているものの、EUから多額の資金援助を受けているため、イギリスと違って離脱することはないだろう。

  • 昨年一度図書館で借りて期限内に読み切れず返却し、また順番を待って借り直した。

    今回で全部読み切ったが、「頭の中ごちゃごちゃ・前の方で出てきていたことを覚えていられない・でもちゃんと把握してしっかりと覚えておきたい」→だから「付箋貼りたい・マーカーひきたい・書き込みしたい・他の所蔵本とつき合わせしたい」

    ということで、これは購入することにする。

  • 2021年9月に東京都立青山高等学校での授業が基。出版が2022年4月26日ということで、今回のウクライナ侵攻のことは加筆されている。タイムリーな出版。あまり知識のない東欧、旧ソ連の国について概略を知ることができた。副題の「ロシアに服属するか、敵となるか」が国の位置からくる逃れようのない立場を現している。

    メモ
    ・ロシアの現在の民族紛争の元凶はスターリン? スターリンの民族分断の政策が今日の紛争の種になっている。
    ・各民族が独立しないよう、居住地域を割って国境線を引き自治共和国とした。
     ・コーカサス地方:オセット人の住むオセチア地方を、北オセチア(ロシア)、南オセチア(ジョージア)に2分割した。アルメニア人(アルメニア正教)が住むナゴルノ・カラバフ地方を、アゼルバイジャン人(イスラム教)の国内の自治州とした。
    ・旧ソ連:15の社会主義共和国、ほかに自治共和国20、自治州8、自治管区10 (1990年)小規模な民族のために設けられた行政区分。100以上の民族。
    ・スターリンの民族強制移住政策
     ・1930-50年代:カザフスタンやシベリアに強制移住
      ・第2次大戦中、反ロ感情の強いチェチェン人が攻め入ったドイツに協力するのを恐れカザフスタンの砂漠へ。スターリンの死後コーカサスへ戻る。
      ・同様にクリミア半島のタタール人もドイツ協力の嫌疑でウズペキスタンに移住させる。その後にはロシア人が住み着く。スターリンの死後追放措置は解かれるが、戻ったのはソ連崩壊後。2014のクリミア併合後は、併合に反対したタタール人が迫害を受けているという報告もある。
     
    <カザフスタン> カザフ系67.98%、ロシア系19.32%、ウズペク系3.21%、ウクライナ系1.47%、ウイグル系1.47%、タタール系1.47%、ドイツ系0.97%、その他4.5%(2019カザフスタン統計)
     ドイツ系はロシア帝国時代にヴォルガ河沿岸やクリミア、コーカサスなどにまとまって住んでいたが、独ソ戦が始まると、カザフスタンやシベリアに追放された。

    ○が、ソ連時代は、みんなが平等、ということを徹底したので表立った民族差別は問題にはなっていなかった。

    <スタンシリーズの5つの国>
    カザフスタン、ウズペキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスタン
    ・タジキスタン以外はトルコ系で、宗教はみなイスラム教。
    ・ロシア帝国は19世紀半ば、クリミア戦争に敗れ、中央アジアへ進出。ウズペク人のブラハ、ヒバ、コーカンドというハン国(君主国)を征服した。ソ連建国時、これらのトルコ系イスラム教徒を分断して複数の国を作った。
    ・ソ連時代は地域ごとに産業の割り振りをしたので、崩壊後独立すると1国に1つの産業しかない、などの事態になった。カザフ、トルクは石油や天然ガスがある。他3国は資源が無いので貧しい。

    東欧の国が社会主義化したのは?
    ・第二次世界大戦中、ドイツに占領され、それを解放したのがソ連だった。
    ・唯一ユーゴスラビアはチトーがパルチザン部隊を率いて独自でドイツ軍を追い払った。→ソ連にも西側にもくみしない自主自立の存在。→国家の介入なしに労働者が自分たちで会社を管理する「自主管理社会主義」という独自の社会主義路線。
    ・「一つの国、二つの文字、三つの宗教、四つの言語、五つの民族、六つの共和国、七つの国境線」チトーは民族の対等を強調して治めた。
    ・ソ連や東欧よりはそこそこ経済的にうまくいったが、やはり働いても働かなくても賃金は同じなので、やがて停滞した。
    ・1980年にチトーが亡くなると、内紛、分立。

    <ゴルバチョフ>
    東ヨーロッパのことに、もうソ連はいちいち口を出さない。責任も持てない。内政干渉しないから、どうぞご自由に、という方針を打ち出した。

    <ポーランド>
    1989年9月、「連帯」が勝利。東欧圏に第二次大戦後初の非共産党政権が誕生。

    <ハンガリー>
    1989年10月、民主化は政権政党だった社会主義労働者党が自ら変革した。政権交代はなく一滴の血も流れなかった。社会主義国で初めて一党独裁が否定され複数政党制になり政党活動の自由が保障された。

    1989年11月 ベルリンの壁崩壊

    ・ポーランドと日本のエピソード
    ロシア革命時(当時ポーランドは独ソに分割)シベリアにはポーランド人の政治犯の家族や難民がいた。悲惨な状況だった孤児をみかねたウラジオストク在住のポーランド人たちが救済作戦。シベリアに出兵していた日本は孤児の救済を受け入れ(欧米各国もシベリア出兵していたが欧米が支援する反革命軍が負けそうになると本国に引き揚げ、日本だけが残った)、1920-22の間に765名のポーランド孤児を救出。日本で治療や休養の後ポーランドへ返した。(ポーランドは1918に復活)
    ・阪神淡路大震災や東日本大震災時、子供たちをポーランドに招いて交流。


    2022.4.26初版第1刷 図書館

  • ◯◯スタンの国々のことがあやふやなので、シリーズのロシア巻とともに読み、世界情勢の理解が深まって良かった。
    某ポッドキャストで「ハンガリーはEUのガキ大将」のようなことを言っていたが、その所以も知れた。
    授業相手である学生さんの質問がレベルが高く、素晴らしいと思う。

  • 池上さんはたくさんのシリーズものを書かれていますが
    私はこのシリーズが特に好きで
    導入編の「15歳に語る現代世界の最前線」と「アメリカ」以外すべて読みました。

    今回は2021年9月東京都立青山高校での授業をまとめたものですが、その後ウクライナ侵攻があったのでかなり加筆しています。

    7か月前に前巻を読んだときに私は
    「来春には「東欧・旧ソ連の国々」その後には「中南米」などを予定しているそうで、とても楽しみ♪」
    と書いていました。
    当時はまさかこんなことが起こるとは予想もしていなかったです。

    3年半前にもロシアについての本が出ていました。
    その時は「不気味」でした。
    今回は〈東ヨーロッパや旧ソ連の国々の心配と苦悩を軸に歴史を振り返ってみましょう〉と池上さん。

    いろいろ勉強になりました。
    とりあえず日本に生まれて良かった。
    でも本当に「不気味」は要注意ですよね。

  • ■ Before(本の選定理由)
    このシリーズを読むのは4冊目。奇しくも、ロシアのウクライナ侵攻で地殻変動が起きている東欧諸国のことをもっと知りたい。

    ■ 気づき
    毎度ながら分かりやすい!講義を実施した都立青山高校の生徒もよく予習していて質問の精度がもの凄い。ロシア側の思考・背景は同シリーズのロシア編を以前読んだが、そんなロシアや、旧侵略国のドイツと不運にも挟まれている国々の様子を詳しく知ることができた。スターリンの悪行は実に深刻。トラブルの火種を思いつくと、民族毎カザフスタンに移住させ分断を生み出すようにした。

    ■ Todo
    今回のロシアによるウクライナ侵攻は悲劇であるが、酷い国と貶すだけでなく、なぜそのような事態に至ったかの背景を理解しようとすること、物事を多角的に捉えて自分の行動を変えることが肝要。

  • T図書館
    シリーズ13 2022年

    1章ソ連中央に支配された連邦の国々と東欧
    2章 ソ連が崩壊し15の共和国が誕生した
    3章 ロシアの脅威に身構えるバルト三国
    4章 スタンの名がつくイスラム諸国
    5章 ロシアにすり寄ったベラルーシ、侵略されたウクライナ
    6章 EUとの溝が深まるポーランドとハンガリー

    《杉原千畝の部分》
    ユダヤ人たちはポーランドからリトアニアに逃げ込んだ
    ユダヤ人たちにとって逃げ道は、もはやシベリア鉄道を経て東に向かうルートだけに
    1940年7月難民はカウナスの日本領事館に殺到した
    杉原は外務省に命令に反し「人道上否定できない」と無条件でユダヤ人に大量のビザを発給した
    ルートはシベリア鉄道→ シベリアを横断→ウラジオストクから船→福井の敦賀→横浜、神戸→カナダ、米、豪など世界各地に船で避難
    ビザの発行の内、ユダヤ系は1500枚と推定
    ビザは1 家族に1枚だったから、ユダヤ人の数は少なくとも6000人を上回ると言われている
    戦後イスラエルというユダヤ人の国ができ、その人達がイスラエルで暮らすようになった杉原千畝の行為が結果的に、イスラエルと日本の関係を良くしている

    《感想》
    小さな民族が多いと紛争が多いし、わざとソ連から独立できないような仕掛けをしておく
    ソ連の悪巧みにはもうお腹いっぱいになった

    クリミアに行った池上氏
    クリミアの生活改善として、ロシアは年金の支給額を引き上げインフラ整備を始めた
    皮肉なものでロシアのものになって良かったと言っていたそうだ

    杉原千畝の名誉回復は2000年10月だった
    (wikiより)
    生きているうちにしてほしかったものだ

  • この「世界の見方」シリーズ、表紙に各国首脳の顔写真が使われているが、いい表情とアングルを選んでいるなと思う。

    東西冷戦のときの衛星国家、くらいの知識しかなかった旧ソ連の社会主義国のあらましを丁寧に解説してくれた。
    東欧や中央アジア各国が世界地図でどの位置にあるのかも曖昧だったが、何度も地図を参照しながら読んだのでけっこう覚えられた。

    池上さんは毎回、歴史を変える鍵となった人物を紹介し、その人物のどんな行動が現代へ影響を及ぼしているかを解説してくれるのでわかりやすい。
    この本の場合、その人物とはヨシフ・スターリンだった。

    スターリンがその異常な猜疑心で、自分に逆らう勢力が結束しないよう民族を移動させまくったことが原因で、ジョージアと南オセチアの対立、アルメニアとアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフ紛争も起きたのだということがわかってくる。
    チェチェン紛争も遡ればスターリンによってカザフスタンに強制移住させられたチェチェン人がロシアに恨みを抱いたことがそもそもの原因になる。

    またカザフスタンや"豊かな北朝鮮"トルクメニスタンなどの中央アジアは能動的に深堀りしたことはないので、興味深かった。
    バルト三国も何かと三つひとくくりにされがちだが、バルチック艦隊の集結地リバウ港があるラトビア、杉原千畝のビザ発行で有名なリトアニア、電子立国エストニアとそれぞれの色がある。
    宗教も南へ行くにしたがって正教会が減り、カトリックが増えてくる。
    エストニアのITの発達ぶりはよく聞くが、電子政府というバックアップを取るアイデアまで実現していたとは驚きだった。
    独ソ不可侵条約の秘密協定に抗議したバルト三国の「命の鎖」は当時テレビで報道していたのを何となく覚えていた。

    ウクライナが豊かな穀倉地帯であったがためにたどった苦難の歴史、スターリンの集団農場政策の失敗や人肉が市場で売られたほどの大飢饉「ホロドモール」にも言及されている。

  • 東欧・旧ソ連の国々の政治的特色と関係がわかる本。ここ1年の国際ニュースを読む参考書としてかなり役立つ。プーチン大統領に関しては、著者はスターリンと重ねている部分が大きいようで、実際どうなのかわからないが、スターリンの政策については大分わかりやすく解説されていて、今の東欧・旧ソ連の抱える問題の背景が明確に浮かび上がる。また、第6章最後にあるように、『自分の国に引きつけて』考えられるよう導いていることが随所に見られる。良書。

  • 地図を見ながら読み進めると、かなり理解が深まった。

    バルト三国、東欧、中欧、スタン国。。。
    最低限の情報と、特徴的な国家元首やイベントをコンパクトにまとめることで、クドくなく、サーッと読めた。

    やはり、池上さんは、すごい!

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池上彰の作品

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