池上彰の世界の見方 イギリスとEU: 揺れる連合王国

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093887335

作品紹介・あらすじ

EU離脱がつまずいた理由とは?

日本が政治の手本としたイギリスは、なぜEU離脱で泥沼に陥ったのか。

2016年6月に行われたEU離脱の是非を問う国民投票で、EU離脱が決まったが、地域によっても、年代によっても、投票の結果が大きく異なったのはなぜなのか。

池上彰が、歴史的な背景を踏まえてわかりやすく解説。今まで知らなかった、イギリスの姿が見えてくる!

(以下、内容の一部)

・イギリスはイングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズからなる連合王国。スコットランド人に「Are you an English?」と聞くと嫌な顔をされる。

・サッカーに「イギリス代表」は存在しない。

・8つの銀行がイギリス紙幣を発行している。

・EU離脱賛成者は年配者に多い。
もっと若者が投票していればEUに残留していた。

・国民投票以前、アイルランドとの国境問題が、EU離脱の関門になるとは誰も 思わなかった。

・アイルランドの問題の源は宗教問題。ある王の恋愛トラブルがすべてを引き起こした。

・英国の迷走が、他国のEU離脱派を黙らせた。

など、「そうだったのか!」と思わず膝を打つような、わかりやすい解説を掲載。

都立大泉高校で大評判だった授業に大幅加筆。受験生、就活生、ニュースの背景を知りたい社会人にも最適の1冊です。





【編集担当からのおすすめ情報】
世界の国と地域を学ぶ人気シリーズの最新刊です!
この本の既刊については、読者の方から大変好評をいただいています。
曰く、
「暗記科目だと思っていた社会科の本当の面白さがわかった!」
「少し前の現代史がわかると、今起きていることがよくわかると、この本を読んで知った」などなど。
今回の「イギリスとEU」編も、EU離脱でイギリスがつまずいた理由を、「連合王国としてのイギリス」「階級社会」といった、さまざまな面から見ていきます。
わかりにくいEU離脱の事情だけでなく、イギリス社会の複雑さなども、池上彰さんの解説で、手に取るようにわかります。
ぜひ、ご一読ください。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスという国の複雑さを知ることのできる、学びがいのある一冊。

    日本と同じ島国であり似ている部分もあるが、階級社会などまったく異なる部分もある。
    ヨーロッパ大陸からは物理的に離れていて、アメリカとは海を挟んで隣という地政学的な面白さ。

    現時点(2023年6月)で発行から三年たっているため、EUを離脱した後のことは書かれていないし、表紙のジョンソン首相もすでに退陣して今はスナクだ。
    インド系のスナクが選ばれた背景や、その前のトラスが秒殺された経緯などには勿論言及されていない。
    しかしそれでも十分に読む価値はある。

    MI6(現SIS)の情報収集力の高さ、植民地で大学を作ってエリートを育ててきた手法などから、イギリスという国の政治の老獪さがよくわかる。

    衆議院と貴族院の二院制、保守党と労働党という二大政党制、小選挙区制度などを日本が手本にしたことはなんとなく知ってはいたが、改めて知識を補完できた。

    議会の開会時にエリザベス(今だとチャールズ)が出向いて演説している間、バッキンガム宮殿に人質の議員が送り込まれるエピソードは面白かった。

    日露戦争時に日英同盟を組んでいたとき、イギリスがバルチック艦隊にいろいろな嫌がらせをしたという話は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」でも描写されていたのを思い出した。

    近年は「ハング・パーラメント」となり、二大政党制では多様な価値観を吸収できなくなっていること。

    若者が投票に行かないという日本と同じ現象が起きているが、それが原因で離脱賛成の高齢者ばかりが投票し、まさかのEU離脱が決定してしまい、若者たちが後悔していること。

    イートン、ウィンチェスター、セントポールズ、ラグビー等のパブリックスクールで少人数教育を行い、さらにオックスフォードやケンブリッジのカレッジで、徹底的にエリートの社会的責任を教え込むこと。
    ノブレス・オブリージュの思想。

    上流階級の発音クイーンズ・イングリッシュと労働者階級の発音コックニー。

    ヘンリー八世のわがまま放題の影響の大きさ。
    「奥さんと離婚して愛人と結婚したい」欲望が、いまの英国国教会を作ったこと。
    カトリックからの分派だが、プロテスタントと違って教義に反対したわけではないので教会の装飾がカトリックに似ていること。
    ついでに修道院の土地もすべて没収したから、いまでもイギリス王室は地主として地代の収入が莫大であること。

    ジャージー島がタックスヘイブンなのは、この島の持ち主が王室なので税金を取り立てられないからであること。
    MI6もマネー・ロンダリングでここを使っていること。

    「ボイコット」の言葉の起源。
    イギリス人農場主ボイコット大尉のアイルランド小作人追放に対する抵抗運動がもとであること。

    アイルランド共和軍「IRA」の話も出てくるが、むかし読んでいた漫画「MASTERキートン」にもよく出てきていたのを思い出した。
    IRAはイギリスの特殊空挺部隊SASの敵としてテロを起こす悪役という程度の認識で、歴史レベルではよくわかっていなかったのでこれも参考になった。

    EUの国同士は資本主義経済で民主主義、キリスト教の国ばかりだから連帯しやすいが、アジア諸国だと文化背景も経済力も違いすぎて共同体を作るのはむずかしいこと。

    池上さんの「聖書を読めば世界が見える」と合わせて読んで補完できる知識も多かった。

  • 「池上彰の世界の見方シリーズ」第9弾。
    私にとっては7冊目。
    (「導入編」と「アメリカ」を読んでいないから。)

    毎回中高生相手の授業を池上さんがします。
    今回のお相手は都立富士高校の生徒さん。
    さすが優秀。

    イギリスについて初めて知ったことがいっぱい。
    「イギリス」で調べてみたら
    私がレビュー始めてから
    これで12冊目なのに…
    初めて知ってビックリすること満載。
    エリザベス一世とかヘンリー八世には妙に詳しいんだけどな。

    「階級社会」「軍事大国」が今回よくわかったかも。
    最近『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだし、BSで『小さな恋のメロディ』を見ました。
    おかげでよくわかりました。


    やはりBSで『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』『英国王のスピーチ』を観たのを思い出し、「本と映画、並行して進めるのがいいな」と思いました。

    しかし、この本がでた後、EU離脱が本当に決定となり、いろんなことが気になりますね。

  • ■ Before(本の選定理由)
    このシリーズは5作目。国際社会の大国ながら、どこか独善的というか、孤高な雰囲気を感じる。日本と同じ島国である彼等は、現状をどう捉えているのだろう。

    ■ 気づき
    階級を当然に捉えて、貴族はノブレス・オブリージュ=恵まれた者は責任を伴う、を体現する。あくまで別世界であって、労働者階級の人が卑屈になるということは無い。元植民地という繋がりに始まる英連邦には、カナダ・オーストラリア・インド・南アフリカも加盟していて、良い関係を構築しているという。ポルトガルの植民地支配とは大違いだ。

    ■ Todo
    国家元首(しかも10数カ国)たるエリザベス女王の偉大さを実感した。政治や経済は色んなことがあるけれど、揺らがない価値。日本の皇族は同じように言えるだろうか?きっとそうなのかな、と感じた。大日本帝国憲法の序文を思い出す、日本は万世一系の天皇が之を治(しら)す所なり。

  • 東京都立富士高校での講義。

    メモ
    ・ECの前身、ECSC欧州石炭鉄鋼共同体が1951年にできた。フランスが西ドイツを警戒し、石炭と鉄鋼産業を共同管理しよう、という発想。
    ・ドイツ小噺(フランスは冷涼なドイツに比べ豊かな自然がある)ドイツ:フランスだけ豊かな国土にするのは不公平です 神様:それじゃあフランスにはフランス人を置こう
    ・フランス小噺 周りの国:フランスだけがこんなに豊かな国だと不公平です 神様:それじゃあ、フランスの隣にドイツを置こう 
    ・イギリスが申請から10年たって1961年にやっとECに加盟できた理由:ド・ゴール大統領が死んだから。ドゴールは戦時中イギリスで亡命政府を作っていたにもかかわらずイギリスが大嫌いだった。
    ・イギリスへの移民 2017年時点 ポーランド人102万1000人 ルーマニア人41万1000人 アイルランド人35万人 インド34万6000人 イタリア人29万7000人 この数字を見るとイギリス映画やドラマでこれら移民が出てきたのが理解できた。
    ・2004~2015年の12年間でイギリスに住むEU域内からの移民は100万人から300万人に増えた。
    ・イギリスはユーロ未使用、自由な行き来ができるシェンゲン協定にも参加していない。平和的な欧州統一をめざしたヨーロッパ大陸と、共通市場の経済利点が目的のイギリスで考えの違いがある。
    ・EU離脱の国民投票は1975年にもやっており、その時は国は残留派でその御墨付きのための投票だった。今回も投票を決めたキャメロン首相と議会は残留派で御墨付きのつもりだった。若者は残留派が多く、きっと離脱にはならないだろうと投票にいかなかった、これが離脱になってしまった遠因にもなっている。
    ・現在のイギリスはヘンリー8世から始まった。自らの離婚のためにイギリス国教会を作り、カトリックを禁止し修道院を解散させ財産と土地をすべて取り上げ王室のものとした。イングランドの土地の5分の1が王室に移動したといわれる。
    ・リージェントストリートの大家はイギリス王室。賃料をとる。ハイドパーク、マン島、チェネル諸島、ガーンジー島、ジャージー島も王室。
    ・地主が借用期間を決めて、建設業者などに一定の賃貸料で土地を貸す。建設業者は自費負担で土地の開発をしたり建物の内装を変えて住居や店舗にして貸し出す。賃貸期間が終われば開発した物件をそのまま地主に返す。
    ・MI6は海外スパイ活動、MI5は国内スパイ活動。MI6はジャージー島に架空の会社を作り、そこに金を送り、民間の会社からの送金ということで活動。
    ・MI6は国家公務員。
    ・ボイコットの語源 ヘンリー8世はアイルランドを植民地化したが、1880年イギリス人の農場支配人のボイコット大尉はアイルランド小作人を追放しようとしたが、アイルランド人は物を売らないなどボイコット一家に抵抗した。このアイルランド人の抵抗運動がボイコットと呼ばれるようになった。
    ・本当の上流階級の家にはカーテンが無い。広大な敷地なのでカーテンは必要ない。・・なるほど映画やドラマでカーテンの無い家がよく出てくる。でも見える所に別な家はある方がおおかったが。
    ・イギリスは植民地の人を優秀な人材に育て植民地経営をする方針。なので現地に大学を作った。フランスは現地人をフランスの大学に連れてきてフランス人としての教育をさせ現地に返した。ので独立後の国家は大学が無く人材育成に苦労した。
    ・インドのシーク教徒(ヒンズー教とイスラム教の中間の宗教)は教育熱心だったのでイギリスは重用した。ターバンをするのがシーク教徒。
    ・ファイブアイズ アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの五カ国はそれぞれのスパイ組織が相互に情報を送りあっている。ヨーロッパに関してはイギリスが情報を集約してアメリカのNSA(アメリカ国家安全保障局)に送っている。・・携帯電話やメールは全部チェック。・・米英犯罪ドラマですぐ携帯の通話記録を調べる場面があるが、このせい?
    ・青森県三沢基地 白いゴルフボール状のものがあるがそれがレーダーのパラボラアンテナ。アメリカではファイブアイズで得た情報のうち日本に知らせた方がいいというものは日本に伝えてくる。日本の情報は三沢基地で盗聴。
    ・フランスの仮想敵国はソ連とドイツ。
    ・日露戦争時、イギリスはロシアのバルチック艦隊の情報を逐一日本に送っていた。

    2019.12.3初版第1刷 図書館

  • T図書館
    シリーズ9 2019年
    高校の授業を元にした本

    1章 連合王国から見るイギリス
    2章 EU 離脱 から見るイギリス
    3章 歴史から見る今のイギリス
    4章 2大政党制から見るイギリス
    5章 階級社会から見るイギリス
    6章 軍事大国としてのイギリス

    ポンドはプラスチック
    10ポンドの裏面はダーウィン、20ポンドは画家のターナー
    イングランド、スコットランド、 北アイルランドの3地域において、全部で8つの銀行が紙幣を発行している
    注意があって、イングランド銀行以外の紙幣は、イギリス国外では使用も両替もできない

    ブレグジット
    投票行かなかった若者は後悔している
    以下の国境問題もあり、一般人にはわからなかった問題が露呈することになった
    82アイルランドとの国境問題
    イギリスがEUから離脱すると、北アイルランドとアイルランドの間に国境線が復活し、人や物の往来が自由にできなくなる
    警備のために軍が配備されると、再び紛争を 引き落とすのではないかと 懸念されている

  • おもしろい。留学へのモチベーションを高めようと思って軽く読んでみた。昔世界史が好きだったなーというのを思い出した。高校生向けに話しているので、とても読みやすいしポイントを抑えている。わかりやすく説明しようとするあまり一方的で根拠のない部分もあるように思えるが、とにかく読みやすくてイギリスという国をイメージしやすかった。
    議会制民主主義、二大政党制、健康保険制度など、日本がマネした部分も多い。大英帝国、植民地、軍事大国、保守党と労働党、ビートルズ、シェイクスピア。スコットランド、北アイルランド、ウェールズ、イングランド。オックスフォード、ケンブリッジ、イートン校、ノブレスオブリージュ。ヘンリー8世、イギリス国教会、ピューリタン、クロムウェル、名誉革命、産業革命。シェンゲン協定、ブレグジット。

  •  タイトルにイギリスとEUとあるが、イギリス中心の解説。
    イギリスの階級社会についてや、ノブレス・オブリージュについてが興味深い。
     皇太子がアフガニスタンの戦地に行ったというニュースは報道でみたことがあり、すごい皇太子だな、と思っていたが、この皇太子特有の性質ではなく、特権階級だからこそ、最前線で戦う、という意識が根底にある、など考えたこともなかった。
     ハリポタで、成績優秀者が寮長になり、服装からそれがわかり尊敬されること、などの描写があったが、これはイギリスの特権階級が通うパブリックスクールがモデルというのは、なるほど、と思う。
     世界史でイギリスはよく登場するし、ニュースでも見かけるので結構知った気になっていたが、初めて知ることが多く面白かった。
    (イギリスがEU離脱することが話題になっているからタイトルにEUを入れたのだろうけれど、EUについては「ドイツとEU」で語っているので、そちらを参照、ということで、イギリスについてが話の中心だった。自分は、イギリス中心の解説を読みたかったので、それで良かったのだが、タイトルにEUを入れるべきではないのでは?)

  • このシリーズのドイツ・インドが良かったので購入。

    少し古い話題ではあるものの、ブレグジットと英国の歴史・仕組みおよび課題が短時間で把握できる良書である。

    ヘンリー8世が開いたイングランド国教会、貴族制度やアイルランドとの紛争などについては、おぼろげながら知っていたものの説明できるほどではなく、改めて整理された知見が得られた。

    次はロシアかな…。

  • このシリーズはいつも学生産の賢さに驚かされます。イギリスについて知ってることも知らないこも、歴史的なところは多少これまで学んできましたが、現代とか政治の視線が入ると違った肉付けがされて興味深かったです。
    英連邦王国の話や軍事大国としての英国などについては、その情報自体にあまり触れたことがなかったのでとても面白かったです。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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