池上彰の世界の見方 中東: 混迷の本当の理由

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093885553

作品紹介・あらすじ

中東情勢の基本が驚くほどよくわかる

国際紛争の震源地ともいえる中東。
イスラム過激派によるテロが頻発し、大勢の難民が欧州に流入。
なぜこんなことになってしまったのか?
その答えを見いだすには、歴史のどの地点から見直せばよいのか?
池上さんは、現在の中東の混乱は、1978年のソ連によるアフガニスタン侵攻から振り返るとわかりやすい、と言います。
自称「イスラム国」(IS)が誕生して世界でテロが頻発するようになるまで、約40年の間に何があったのか?
大国の身勝手、イスラム教の宗派対立、土地や資源をめぐる争い。
理解しがたい中東の真実が、池上さんによって鮮やかに解説されます。
本書は、池上彰が選ぶ独自のテーマで、世界の国と地域を解説する『池上彰の世界の見方』シリーズの4冊め。
中東とイスラムの基礎・基本がよくわかります。

【編集担当からのおすすめ情報】
中東だけをテーマに、基礎からじっくり解説した池上さん初の「中東本」です。
こんがらがった糸をほぐすように、誰にもわかるように解説する、池上さんの真骨頂の本です。

感想・レビュー・書評

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  • この本は中高生向けに書かれたということですが、それでも中東は、宗教や民族のあたりが難しく、理解しにくい箇所もありました。でも、今まで全く知らなかったことがかなり理解できました。中東を理解する1冊目の本としてはかなり良書だと思います。

    第一章「混乱の始まり」から見る中東
    第二章「戦争とテロ」から見る中東
    第三章「地理・民族・歴史」から見る中東
    第四章「イスラム教」から見る中東
    第五章「石油利権」から見る中東
    第六章「難民大発生」から見る中東

    特に一番の問題点であると思われる「戦争とテロ」の項目のまとめを覚書のため、以下抜粋します。

    ソ連が「国境を接している国に、自分たちのいうことを聞く政権をつくろう」という勝手な都合で、アフガニスタンに攻め込んだことがそもそもの発端でした。東西冷戦でソ連と対立していたアメリカは、これはソ連を叩く絶好のチャンスだと考え、アフガニスタンの反対勢力を支援した。その反対勢力の中からオサマ・ビンラディンという鬼っ子が生まれた。
    湾岸戦争をきっかけに、オサマ・ビンラディンはアルカイダを使ってアメリカに対し大規模なテロを仕掛けた。それに怒ったアメリカが、アルカイダのいるアフガニスタンを攻撃し、さらにブッシュ大統領の私怨もあってイラクも攻撃し、フセイン政権を倒した。しかしアメリカのいい加減な統治で、イラク国内は大混乱し、内戦が勃発。その中からさらに過激な自称「イスラム国」が生まれ、世界中でテロを起こしてきた。

    要するに、ソ連とアメリカの身勝手な思惑によって、中東の大混乱が引き起こされたということです。
    とりわけアメリカの責任が大きい。
    いろんな国の思惑や民族・宗教が複雑に入り混じって、理解するのは容易でないと著者も語られています。

    あとは第五章「石油利権」の問題もわかりやすく、興味深かったです。

  • K図書館
    シリーズ4 2017年

    1章 混乱の始まりから見る中東
    2章 戦争とテロから見る中東
    3章 地理 民族 歴史から見る中東
    4章 イスラム教から見る中東
    5章 石油利権から見る中東
    6章 難民 大発生から見る中東

    《感想》
    シリーズの中で一番難しい
    根底に民族と宗教問題があり、次に植民地として統治した国があり、そしてアメリカとロシアが介入する
    思惑も絡めつつ、複雑で一筋縄でいかない情勢だ
    事実は小説より奇なり、である

    裏切りやそそのかすことが当たり前
    資金や武器も着服されている
    だからスパイを使って情報戦が必要で、侵攻される前に侵攻したりする
    この地域の平和は程遠いと感ずる

    《内容》
    中東人口:3億 4520万人
    宗教:イスラム教徒80%、キリスト教徒10%、ユダヤ教徒5%、仏教徒5%
    政体:大半の国が共和制、 他 君主制 首長制

  • 歴史を見るときは、現代のモラルの尺度ではなく、その時代背景を踏まえて考えないといけない。と以前出口治明さんの本から学んだ。池上さんも似たようなことを言われており、歴史の正しい見方とはこうあるべきなのだと改めて感じた。ひとつの衝突から始まった出来事が、どんどん他の場所にも影響して波紋のように広がっていく様子を分かりやすく解説してくれている。

    以下、本書より抜粋
    「どちらの国から見るかによって、同じひとりの人物が英雄になったり、テロリストになったりする。世界の歴史はそういう視点を持って読み解かないといけない場合もある。ということを知っておいてください。」

  • イスラエルの事が書いてあったので手に取った。
    テレビ番組を見ているような分かりやすさ。東京都立国際高校での授業を書籍化したものだった
    イスラエル建国のいきさつがよく分からなかったのだ。これによると、

    「イギリスの三枚舌が、パレスチナ問題の原因」
    ・第一次世界大戦時、現在のトルコからイラク、シリア、ヨルダン一帯はオスマン帝国(1299~1922)に支配されていた。
    ・第一次世界大戦中、イギリスは敵国(同盟側:独・オーストリアハンガリー帝国、ブルガリア、オスマン帝国)のオスマン帝国を倒したい。そのためにはオスマン帝国の支配地域に暮らすアラブ人たちに反乱をおこさせればいいと考えた。
    ①「フセイン・マクマホン協定」(1915年) エジプト駐留のイギリスの高等弁務官のマクマホンがアラブの大首長フセインに「アラブが反乱をおこして、オスマン帝国を倒せば、そのあとにアラブの国を作る」と約束。映画「アラビアのロレンス」はこれを描いた
    ②「サイクス・ピコ協定」(1916年) フランス、ロシアとオスマン帝国が崩壊したらこの領地を英仏露で分割しようと協定。
    ③「バルフォア宣言」(1917年) イギリスの外務大臣バルフォアはイギリスのユダヤ人コミュニティのリーダーにオスマン帝国が崩壊したら、パレスチナにユダヤ人のための「ナショナルホーム」を作ることを認める、という書簡を送る。
    ⇒サイクス・ピコ協定でパレスチナはいったん国際管理地域となったうえでイギリスの委任統治領となる
    ⇒ユダヤ人が移り住む。最初は受け入れるアラブ人も新しい住民として受け入れていた。
    ⇒第二次大戦後、ユダヤ人の過激派は、イギリス軍は出ていけと頻繁にテロを起こすようになる
    ⇒1946.7.22 イギリス軍司令部のあったキング・デイヴィッド・ホテル爆破
    ⇒ 過激派シオニストがイギリス軍兵士二人を殺し街中に吊るした ⇒この事件を機にイギリスはパレスチナからの撤退を決めた。その後のことは国連に丸投げした
    ⇒次々とユダヤ人が入植しはじめアラブ人と様々なトラブル発生
    ⇒国連による分割案。56%はユダヤ人に(ウランのあるネゲブ砂漠がある部分)、43%はアラブ人に 1%はエルサレムで国連の国際管理地
    ⇒1948.5.14 イスラエル建国宣言
    ⇒1948.5.15 第一次中東戦争:独立宣言の翌日エジプトなど周辺アラブ諸国から爆撃受けるがイスラエル勝利。 ⇒ヨルダン川西岸地区やガザ地区にアラブ人が逃げ込む=パレスチナ難民の発生(パレスチナから逃れてきたという意味)

    ○アフガニスタン 
    イスラム教の王国だったが、第二次世界大戦後国内でクーデターが何度も起き、政権が次々に代わるようになる。ソ連は危機感を抱き1979年12月、アフガン侵攻を開始。大統領を殺害。ここから現在の中東イスラム諸国の混乱が始まる。⇒アメリカは対ソ戦略としてアフガン国内の反政府勢力を支援 ⇒その反政府勢力の中からオサマ・ビンラディンが生まれる ⇒湾岸戦争をきっかけにオサマ・ビンラディンはアルカイダ(戦士)を使ってアメリカにテロ ⇒アメリカは怒りアルカイダのいるアフガンを攻撃 ⇒アメリカはさらにイラクをも攻撃、フセイン政権を倒す ⇒アメリカのイラク強行統治でイラク国内は大混乱し内線勃発 ⇒その中からさらに過激な自称「イスラム国」が生まれ、世界中でテロを起こした

    2017.8.6初版第1刷 図書館

  • 中東はひたすら物騒な印象で、宗教に血眼で偏狭なイメージを持っていました。正直今でもそういう印象は拭い去れないです。これだけ世界中にイスラム教徒がいて身の回りには全然いないのも影響しているのかなと思います。個人に立ち返ったときに、一つの国にも色々な主張や生き方が有る事が分かるのだけれど、集団として捉えた時にはひと塊の「イスラム方面の人たち」としてしか見えないのが現状です。
    国ごとの成り立ちや主張、ニュースで散々見てきた事件や戦争の意味。先進国と言われる国々がいかに他国を食い物にしてのし上がってきたか。パレスチナ問題なんて普通に考えたらまともな国がするような事ではない。ここまで火種が大きくなって誰も消せなくなっているのに、それでもまだ各国の思惑が入り乱れている。人間は愚かだと照明するような出来事です。
    と、偉そうに書いては見たものの、ぼんやりととらえていた中東の問題を分かりやすく書いてくれている本書のおかげです。非常に分かりやすいうえに他の国、時間軸も整理されれ因果関係というものを実感する事が出来ます。僕のように物事よく分かっていない人間にとても効く本です。

  • いまの中東の戦争の背景を知りたいと思い購入。
    中東は複雑すぎて何回同じことを学んでもあんまり覚えられないのですが、安定のわかりやすさですぐに読めた。
    中東戦争の背景だけでなく、自分が生まれる前のロシアのアフガニスタン侵攻、湾岸戦争やイラク戦争、9.11、イスラム国誕生、シリア内乱なども知ることができて本当に読んでよかった。イスラム教や石油問題、難民問題についても取り上げている。
    無知はテロに屈すること。その通りだ。こういう社会問題や歴史に興味を持って学ぶ人が増えてほしい。そうすればもっと平和な世の中になるんじゃないか?

  • テーマが知りたいこと、かつそれぞれで前段の歴史を解説しているのでとてもわかり易い。読んで良かった一冊。
    近年の中東の混乱に関して、自分の中に落とし込めた。
    もっとボリュームがあっても良かった。

  • 世界史が苦手だった私が面白く読めた。何考えてるかよく分からなくて恐い中東のイメージだったが内戦やテロなどの背景が分かって少しでも貢献したい気持ちになった。アメリカやヨーロッパが背景に大きく影響していて、他の国の歴史も知りたくなった。

  • 湾岸戦争の経緯
    イラクによるクウェート侵攻
    クウェートはもともとオスマン帝国時代、イラク南部の州だったが、そこを占領したイギリスが勝手に独立させる→もう一度自分のものにしようとイラクが侵攻
    パパブッシュは多国籍軍を組んでイラクを攻撃した。これは、イスラム教vsキリスト教の構図になるのを防ぐために多国籍軍を組んだ

    イラクから自分も攻められる、と思ったサウジアラビアが、アメリカに助けを求めた
    このアメリカ軍駐留に猛反発し、国外追放されたのがビンラディン

    アメリカがアフガニスタンのタリバン政権を攻撃したが、多くはパキスタンに逃げ込む。タリバン政権崩壊後はアメリカ軍とNATO軍がアフガニスタンに駐留。政権打倒後も、ブッシュはアフガニスタンをほったらかしにした。
    その後、イラクが核査察を拒否し、核兵器を持っているのではないか?という疑惑だけでイラクを攻撃。(湾岸戦争のとき、イラクvs米多国籍軍で戦っているため、もともと仲が悪かった。)アフガンに駐留している部隊をイラクに転戦させた。
    フセイン政権打倒後に、一党独裁だったバース党の党員を首にしたところ、公務員が全員いなくなり大混乱に。→その後の自由選挙で多数派のシーア派が政権を握り、スンニ派への復讐が始まる→内戦状態に
    ここから、スンニ派の中で過激派組織が台頭。アルカイダが接近。こうしてイスラム国が生まれた。
    お隣のシリアもアラブの春の影響で、独裁政権打倒の機運が生まれる。
    アサド政権(イラン・ロシア支援)vs反政府軍(アメリカ・サウジ支援)の内戦が始まり、そこに目をつけたのがIS国。

    アラブ首長国連邦→7つの首長国が集まって構成された国家だが、大統領はアブダビ首長、副大統領はドバイ首長が世襲している。

    もともとあったパレスチナ国と後からできたイスラエル国で、国土の99%を占め、残りの1%はエルサレム(国連管理地)とした。中東戦争でイスラエルがパレスチナ全土を占領。ガザ地区、ヨルダン川西岸地区も奪取

    1993年、イスラエルとPLOが、ノルウェーの首都オスロで秘密裏に和平交渉を行う。(オスロ合意)
    この結果、ガザ地区とヨルダン川西岸地区がパレスチナ自治政府のものになる。

    石油が出るサウジのような国が豊かになる一方、出ない国が貧しくなる「南南問題」が勃発
    シェール革命によりアメリカが世界最強の産油国になる、世界的な石油価値の下落→米はOPECに加盟していないため、アラブ国により価格統制が効かない
    ロシア(OPEC非加盟)はアラブ諸国と組んで減産方針を取ったが、アメリカは対立路線を貫いた。
    →そのため、サウジと米との関係が少しずつ悪化している

    日本はほぼ難民を受け入れていない。第3国定住(難民の出身地の近くの国が受け入れられた後、裕福な遠くの国に移すこと)がこれから始まるかもしれない

  • 中東の勉強したく、読みました。石油観点、イスラム教観点など、いろんな観点で中東について詳しくなれます。他の国との関係も本当にわかりやすいです。総合して地政学的に詳しくなれるので、オススメです。何度も読み返したいと思います。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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