ちいさなかみさま

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 91
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093883863

作品紹介・あらすじ

石井光太が描く珠玉の小さなストーリーたち

厳しい現実の中で絶望を感じると人は必死に光を見出そうとします。そんな救いを求めた時、支えとなるものを石井氏は“ちいさなかみさま”と名付けました。

本書は、石井氏が実際の市井の人々に取材をするなかで見つけた、それぞれの人々の心に宿る“ちいさなかみさま”を描いたものです。

その小さいけれども胸を打つストーリーの数々は、閉塞感と生きにくさに満ちた時代の中で、あなたに「生きる希望」を感じさせてくれるでしょう。

【編集担当からのおすすめ情報】
ビッグコミックスペリオール誌で2年間連載をショートストーリー「ちいさなかみさま」。好評を得た同連載を1冊にまとめて単行本化しました。ノンフィクションにとどまらず、数多くの読者層から支持を受けている石井氏、繊細で独特な画風が魅力の今日氏という二人のコラボレーションをぜひご一読ください!

感想・レビュー・書評

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  • 話の主たる人に嫌な人が出てこない、それだけで心がじんわりと温められた気がしました。

    そして、ちょっとした行動や何気ない一言が、心を軽くしたり力になることが数多あるんだということを改めて感じました。
    それはまた逆になることも同じくらいあるはずで、自分のこれまではどうだったかとも省みました。

    やさしい気持ちが連鎖し続ける世の中を望むだなんて「絵に描いた餅」と笑われるんだろうけど、少しでもそこに近づける心がけだけは忘れたくない、そんなことを今さらながらに考えました。

  • 石井光太が実体験したこと、身近で聞いた話を集めたショートストーリー集。

    生きるとは厳しいこと。
    そんな中にも、ちいさな幸せ、信じられることは必ずある。
    それを「ちいさなかみさま」と表現する。

    いわゆる「いい話」を集めたものだけど、ただただ甘い話ではないところが良いところ。
    道徳の授業のような押し付ける感じもない。

    信じるというのは、その人が信じる姿勢になれるということ。そこに人間の底力、素晴らしさがあるのだと思う。

    大切な人や、大切な何かを失う事、そんな中、非現実的なことであれ、人生を肯定するためにフィクションでも、嘘でも信じ、生きていけること、例えば「二人のシャーム」「雲の上の順番」「一月の蝶々」「大切な嘘」「妻の名前」など。

    世の中から疎んじられ、価値を認められないような弱い存在の人たちが、地域の老人などから暖かく受け入れられている、挨拶などを心待ちにしていること。そこに大きな価値がある。世の中捨てたものじゃない。

    人の行い、人生への向き合い方は、当人が決めること。
    物事を肯定的に捉えることも、否定的に捉えることもできる。
    過酷な状況の中で、悲観的に考えがちな状況で、一見なんてことない事象の中に、大切なものを見つけ、信じること。それが嘘でもフィクションでも、肯定的に捉えるための物語を考えること。それは、暗闇に光る小さな光のようである。「おはよう兄さん」「オードリー」

    それが、それぞれの人の中にある「ちいさなかみさま」なのだろう。

    個人的には「同級生」の話が一番心に残った。
    小学生時代のトランスジェンダーであったはずの同級生がいつの間にか学校に来なくなったこと。長崎であった女装の男性と二重写しになる。そして物語ラストの女装の男性の心遣い、トランスジェンダーとして生きていくことの過酷さと仲間への心使い、自ら色々批判を受け、生きてきたこと、老いが奪っていくもの、人生、世界に対するアラーム。色々なものが混じっている。
    それが切ない。

    今日マチ子の絵はただただかわいらしく、いつもの毒のようなものがない。話を忠実に移したイラストという感じで、お話しを見つけるためのインデックス記号としていいかも知れない。

  • 石井光太さんの本ということで、期待して読みました。悪くはないのですが、ちょっと物足りなさもあって☆3つ。

    この本を読んで感じたのは、「私はひとりぼっちじゃない、気にかけてくれている人がいる」その思いが、人に生きる力を与えるということ。

    紹介されているエピソードはどれも心温まるもの。

    「お茶、いかがですか」と、お店の喫茶スペースにやってくる人に声を掛けるおばあちゃんの話。

    痴呆症で老人福祉施設にいる夫を見舞う妻の話、「妻の名前」。

    大人が怖くて、大人を見ると大泣きをする小さな女の子。その女の子が「人生のセンパイ」である小学生たちと出会って、大人が怖くなくなるエピソード。

    どんな悪天候の日でもジョギングをする知的障がいのある青年。会う人会う人に「おはよう!」と声を掛けるから「おはよう兄さん」と呼ばれている。無視する人もいるけれど、彼の「おはよう!」の声かけに元気をもらっている人やワンちゃんもいる。このエピソードもよかった。

  • 辛い現実から目を逸らさないめ見続けている人だからこそ、ちいさな、でも大切な優しさに敏感なのかもしれない。
    日々の暮らしの中の些細な言動に隠れた優しさに気づかせてくれる。

    ちょっとしたさりげないことだけど、ほんのり心を温めるちいさなかみさまに日々気づくことができ、かみさまが心の中にいてくれますように。

  • 珍しい出来事ではない中にいる、「ちいさなかみさま」の話。
    自分の行動範囲の中にも「ちいさなかみさま」がいるかもしれない。それに気がつくかどうかは、自分の感性しだい。
    相手の行動や、何かをした人のことに気付く気持ちを持って生活したい。

  • どんなに辛く、大変な状況でも、多くの人たちに「ちいさなかみさま」がいることに心が温かくなります。
    私の大切な人にも「ちいさなかみさま」がいてほしい。そう思いました。

  • 一見、非合理的に見えることでも「だれかにとって」の大切な心のよりどころとなることもある。「だれかにとって必要でないこと」が「だれかにとって必要なこと」である、ということ。そんな話を集めた、ショートストーリー。読みやすくて、絵もかわいくて、いい本。
    「三十年前のサッカーボール」という話が好きです。ちいさなかみさま、という平仮名表記も、いい。石井光太さんの、やわらかい感性がうかがえる。

  • 好きな作家同士のコラボ。
    本屋で見かけて即購入。
    内容は超短編集で一話を5分くらいで読み終える。
    おそらく雑誌掲載のものをまとめた単行本だと思うが最初はただまとめただけという印象があったが読み進めるうちに少しずつ物語に入り込めるようになってきた。
    石井光太の文章は『遺体』もそうだったが感情移入をするのが他の作家よりも遅い感じがする。
    しかし一度物語に入り込むとかなり気持ちの奥のほうにメッセージが届くように思う。
    また主人公が第三者と作者自身とどちらの場合もあるがやはり人から聞いたことよりも実体験したことを表現した物語のほうが気持ちに残った気がする。
    『雲の上の順番』『蜜の味』『笑顔は幻でしょうか』などが印象的。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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