白菊-shiragiku-: 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花
- 小学館 (2014年7月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093883764
作品紹介・あらすじ
日本一感動する花火の原点はここにあった
「三尺玉」「ナイアガラ」そして復興祈願花火「フェニックス」……。
日本三大花火大会の一つに数えられ、毎年百万人もの観衆を集める新潟県・長岡の大花火は、見ているだけで涙を誘われる“日本一感動する花火”とも評されている。
なぜ、花火で泣けるのか?
「涙の理由」を知るべく、著者は、半世紀以上にわたって長岡花火を打ち上げ続けてきた花火師・嘉瀬誠次(九十二歳)への取材を重ねた。その花火づくりに大きな影響を与えてきたのは「戦争」「シベリア抑留」という苛酷な経験であり、嘉瀬が亡き戦友への想いを込めてつくった花火「白菊」にこそ疑問を解く鍵があった――。
「伝説の花火師」の生涯をたどり、感動の真実に迫るノンフィクション。
【編集担当からのおすすめ情報】
毎年8月2日・3日に長岡まつり大花火大会が開催されています。地元出身の著者もまた、長岡花火を見るたびに涙してきた一人だったそうです。他の花火大会を見ても、そのような思いになることはなく、なぜ長岡花火だけそうなるのか……その理由を知りたいと思ったことが、本書の出発点でした。それから、取材・執筆を重ねて、最終的に「花火」というものの奥深さをじんわりと感じられる一冊になっていると思います。
感想・レビュー・書評
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【2022年39冊目】
なぜ、花火で泣けるのかーー煽り文を見て興味を唆られて読みした。人混みが苦手なのでもう何年も夏祭りにも花火大会にも行っていないのですが、今作を読んで無性にリアルで花火が見たくなりました。
本著の主人公である花火師の嘉瀬さんは、戦争経験者でもあることから、花火の話だけでなくシベリア抑留の際の話も書かれています。特に戦争を経験したからこそのアムール川花火大会の話には心を打たれるものがありました。
一人の偉大なる花火師だけでなく、戦争にもフォーカスした良書であると思います。 -
伝説の花火師と言われた嘉瀬さんと長岡花火大会について綴った1冊。1つの花火大会、そして1人の花火師にこれだけの物語があったことをていねいに伝える1冊で、読んでてとても興味も惹かれました。そして、自分のまちの花火大会にもきっとそんなメッセージや、それをつくりあげてきた人たちの思いが込められているんだろうと思いながら読んでいました。長岡の花火、1度見に行きたいですね。そして鎮魂のメッセージが込められた花火を「キレイだね」で終わらすのではなく、その時間だけでも、ともに生きている人やこれまでにお世話になった人たちのことに感謝する時間にできたらいいと思いました。
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ノンフィクション
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「なぜ、花火で泣けるのか」という問いが回収されていない。その一方、嘉瀬誠次さんの話はアンバランスに多い。しかも彼のコメントが正確すぎる方言のままで何を言ってるのかよく分からないところがキツイ。伝説の花火師の体験を読んでなぜピンとこなかったかというと、彼自身が空襲を経験しておらず、主に抑留体験者への鎮魂という意味で捉えている。その一方、花火にこめられた鎮魂の意味を市民たちは空襲被害者への鎮魂と捉えていること。そのギャップではないだろうか。
花火師の話とするなら、日々の実験の話とか嘉瀬煙火工業の経営ぶりとか、花火を打ち上げていく中での軋轢とかを描くべきだし、花火で泣けるかということをメインにするなら嘉瀬さんの話はこんなに要らなかった。この大会を育ててきた長岡の人たちこそ、取材対象者なんじゃないだろうか。空襲被害者や空襲後の長岡の復興に汗を流してきた人たち。つまりどうやって長岡が戦後、復興してきたかがキモでしょう。嘉瀬さんに話を聞くにしても聞くべきは昭和20-30年代の時代のことでしょう。
著者の思い入れの大きさが取材のバランスの悪さにつながったんじゃないだろうか。私も似たような失敗をしただけに、そうだと確信している。
あとそれと彼女の出たがりなところとか、基本褒めてばかりの温泉紹介が中心でネガティブな話を書くのがあまりうまくないというところも、この本ではマイナスに出てしまったかな。正直深みがなかった。 -
『ギンカムロ』という小説を読んで、鎮魂の花火「銀冠」についてい知りたくなって、いろいろと調べていたらこのドキュメントにたどり着きました。
「白菊」と名付けられた嘉瀬さんの花火が、僕の知りたかった銀冠なのかはわかりませんが、鎮魂の花火、ということに興味を覚えて手に取りました。
戦後、シベリアに抑留されていた嘉瀬さん。亡くなった仲間のためにシベリアで鎮魂の花火を上げたいと、ハバロフスクで嘉瀬さんが花火を上げるくだりでは、読んでて涙が出そうになりました。
その花火大会のクライマックスで上げられた白菊。
「ハバロフスクの観客は、その意味を知ってか知らずか、声を出さずに、静かに見守っていた。手を合わせ、祈りのポーズで見上げる女性もいたという」(p.155)
この文章を読みたくて、この本を読んでいたのかもしれない、そう思うくらい印象的な文章でした。
ハバロフスクでは今でも嘉瀬さんの花火が語り継がれ、またこの花火大会を契機に生まれた相互交流は今でも続いていると言います。
言葉に言葉を尽くしても、伝わらない想いもある一方、雄弁には語らなくても技術と作品で人を動かしてしまうところはまさに職人の中の職人さんだなと感じました。
そういったところに嘉瀬さんのひたむきな人柄を感じます。 -
長岡花火を打ち上げているのは、新潟煙火工業、小千谷煙火興業、阿部煙火工業、山梨県のマルゴーなど6社
長岡花火 天保12年 1841 依頼主は長岡の芸者衆
嘉瀬誠次 嘉瀬煙火工業 シベリア抑留
1990年 アムール川花火大会 -
毎年8月に行われる長岡花火。その最初に打ち上げられる花火、白菊。それは、花火師・嘉瀬誠次の魂を込めた鎮魂の花火である。
見ているだけで涙を誘われる“日本一感動する花火”とも評されている長岡花火。
長岡出身の筆者が、長岡花火に感動してしまう理由を解き明かす。
花火師 嘉瀬誠次は、日中戦争に従軍し、戦後シベリアに連行され、強制労働に従事させられる。劣悪な環境の中、戦争を生き延びた仲間たちの多くを喪った。
また、1945年8月1日にアメリカ軍によって行われた空襲によって長岡市民が多く犠牲となる。
長岡花火は、これら戦争及び戦争関連犠牲者慰霊の為に打ち上げられる花火である。
そしていま、その鎮魂の思いは、新潟県中越地震、東日本大震災の犠牲者にも捧げられている。
その花火に込められた思いが、長岡花火を知る人に、そして長岡花火を知らない人にも確実に伝わってくるのだろう。
著者は、混浴ライターとしても知られる山崎まゆみさん あの、BE-PALで温泉の記事を書いていた彼女は、長岡出身で嘉瀬誠次を直接知る関係にあった。 -
「伝説の花火師」の半生を辿る。
今までたくさんの打ち上げ花火を見てきたけれど、あの一発一発にも花火師の様々な想いが込められていたのか。
やはり、知らない世界のことを垣間見るのは、とても面白い。
これからは、花火を見るときも今まで以上にちゃんと見ようと思う。