セイレーンの懺悔

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864527

作品紹介・あらすじ

少女を「本当に殺した」のは誰なのか――?

葛飾区で発生した女子高生誘拐事件。不祥事によりBPOから度重なる勧告を受け、番組存続の危機にさらされた帝都テレビ「アフタヌーンJAPAN」の里谷太一と朝倉多香美は、起死回生のスクープを狙って奔走する。警察を尾行した多香美が廃工場で目撃したのは、暴行を受け、無惨にも顔を焼かれた被害者・東良綾香の遺体だった。
クラスメートへの取材から、綾香がいじめを受けていたという証言を得た多香美。主犯格と思われる少女は、6年前の小学生連続レイプ事件の犠牲者だった。

少女を本当に殺したのは、誰なのか――?

”どんでん返しの帝王”が現代社会に突きつける、慟哭のラスト16ページ!!




【編集担当からのおすすめ情報】
「警察では公表できないことがある。法律では裁けないことがある。そいつを自分の目で見たいとは思わないか」――宮藤刑事が多香美に投げかける言葉の意味とは。最終頁まで息もつかせぬノンストップ・ミステリーです。

感想・レビュー・書評

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  • 葛飾区の生コン廃工場で、誘拐されていた女子高校生が、暴行を受け、顔を焼かれた状態の他殺体として発見された。

    BPOから、三度目の勧告を受けた、帝都テレビで〈アフタヌーンJAPAN〉の社会部記者、朝倉多香美と里谷太一は、自社テレビ局の不祥事を挽回する為、独自の捜査をする。
    その結果、犯人を特定し、番組のスクープとして、報道したが・・・。

    事件解決後に、多香美がカメラの前で
    「力と責任は比例します。巨大な力を持つマスコミは、だからこそ、報道した結果についても、責任を負わなくてはなりません」
    と言う。
    昨今、ミスリードが目につく、左傾化したマスコミにも、責任を負っていただきたい。

  • 刑事ものを読んでいると、刑事という職業がとんでもなく大変なものだと思わされる。事件が起これば、ずっと働きづめで休む暇もないし、捜査・聞き込み、どれもハードだ。しかも、警察内部での張り合い、軋轢、上下関係の鬱陶しさ、いやはやという感じだ。それに対して、記者の仕事もとんでもなくハードだが、被害者や容疑者やその家族たちに容赦なくズカズカと土足で踏み込むような振る舞いに、いったいどんな正当性を感じているのか。刑事たちには、犯罪者を捉えて正義を示すという使命感があるのだろうが、記者にはそんな堂々とできる使命感などあるのか。視聴者の好奇心を満足させるために働いているだけではないのか。いろいろなことを考えさせる小説だ。
    テレビ局の報道番組の記者の朝倉多香美は、組んでいた先輩ん記者の里谷と殺人事件の大誤報をやらかしてしまう。多香美は、記者の存在価値についてぐしゃぐしゃに悩みながらも、取材を続ける。最初は、ちょっと危なっかしくて鬱陶しい多香美に、だんだんと肩入れしてしまう。最後は、まあある程度予想されたどんでん返しかな。イケメン刑事の宮藤はなかなかかっこいい。

  • スクープを追うマスコミと事件を追う警察との間の立場の違い。
    それぞれの正義と価値観の違いがこれほど鮮明になるものもそうないと思いました。
    主人公多香美と帝都テレビの姿勢は、読む人によって印象がだいぶ変わるとも。
    自分的には「少女を本当に殺したのは誰なのか」
    この真相を考えさせられる物語作りはさすが中山作品。
    面白いミステリーでした。
    そしてここでも、ポンコツ弁護士宝来の安定感が見事。

  • 面白かった!
    事件を追う刑事と、主人公はマスコミの新人。
    大きなテレビ局の報道「アフタヌーンJAPAN」誤報から始まり大先輩は左遷させるも、新人とイケメン刑事とで解決へ。

    後半でバタバタと集結、事件も解決、タイトルにも言及。
    ミステリーというよりは、報道のあり方や社会、弱者、イジメ、家族間のドロドロ…な一冊。
    内容は少し重いが、痛快な感じで終わるのは良い。
    さすが中山氏。
    宮藤刑事、他でも探したい!


    体制を批判し、その抑止力になろうとしている。不安や疑問の渦巻く社会の木鐸になろうとしている。p181

    サイレンは、ギリシャ神話のセイレーンという妖精が語源。上半身女、下半身が鳥。岩礁の上から美しい歌声で船員を惑わし、遭難や難破に誘う。
    君たちマスコミはまるでそのセイレーンだよ。 p186

  • はじめて報道についての本に触れた気がする。

    報道の難しさ、過酷さ、残酷さがすごく伝わってきた

  • 中山さんの小説はメッセージ性が高く、そしてそのメッセージが自分と同じ温度で共感部分が多いので読んでいて爽快感がある反面、同属嫌悪で反発心も湧いてくる不思議な感覚でいつも読んでる。実際この物語に出てくる登場人物のような体験・経験はしたことはないものの、TVのニュースを見ていて思うところが一緒だったりするので、「そうそう、それそれ」って思いながら、居酒屋でくだを巻くおっさんの戯言じゃんっていやーな気持ちにもさせる。
    さて、内容的にはベテラン記者と新米記者(?)とのコンビを描いたものだが、記者の割にはあまりにあほすぎてイライラしながらも誘導的でわかりやすくすらすら読めてしまう。
    記者の作る冤罪が警察の冤罪に比べて如何なる業であるか、犯罪に対する警察と記者の明確な違いが物語を追って明るみになる結末が面白い。フィクションならではの「そんなわけ」ってご都合主義も盛り盛りではあるが十分に有り得そうな話で一気に読めた。全体の仕上がりとしては普及点。

  • マスコミは世間から嫌われていて、事件の際には野次馬と変わらない醜悪さを見せる。犯人として報じた相手が、偽りで誤報であったならば、それはとんでもない過ちだ。それでも、謝らない。謝ることはできない。真実を伝えるのが我々で、その座を揺るがすことはできないと考えているからだ。

    今作品は、新人の朝倉多香美が、先輩の里谷太一と共に殺人事件を追っていく物語です。彼女らが所属する帝都テレビはヤラセ報道や誤報を行ってしまった過去を持つ。地位や世間からの評価は失墜していく一方。挽回を目論む帝都テレビは、都内に住む少女が誘拐された事件の犯人を他局よりも早く報道することを目標に掲げる。起死回生を賭けて、多香美と里谷も事件現場へと駆り出されていく――――。これは新人である多香美が社会の荒波に呑まれながら、現実を知り、苦しみもがいて、成長していく物語である。

  • 読みやすくざざーっと進んだ。

    誤報から始まる物語

    マスコミが最後は頑張った感あるけど、警察が頑張ったんだよね、って言う冷静な感想

    2021.2.1
    11

  • 女子高生誘拐事件の発生を受け、帝都テレビ「アフタヌーンJAPAN」のベテラン報道マンの里谷太一と2年目の朝倉多香美はスクープを狙って奔走する。
    警察が犯人を追うようにマスコミも追う、目的は同じはず·····。多香美を通して報道のあり方を問う。事件は殺人事件へと変貌し思いもよらぬ方向へと向かう。被害者 加害者 その家族へとマスコミの報道は加熱する。
    ミステリーとしてどんでん返しもあり面白いが、マスコミのあり方を問う部分が多く、未熟な多香美の物言いや他の登場人物にも感情移入出来なかった。
    ★★★✩✩ 3.0

    「セイレーンの懺悔」

    目次
    一 誘拐報道 5
    二 協定解除 67
    三 大 誤 報 147
    四 粛 清 211
    五 懺 悔 272

  • あまり期待せずに読み始めたのだが、リアリティある筆力に驚かされた。筋も捻ってあって興味深い。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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