東京帝大叡古教授

著者 :
  • 小学館
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感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864084

作品紹介・あらすじ

日本初! 文系の天才博士が事件を解決!

それでも地球は動いている。――こう語ったイタリアの科学者の名前を冠した大ヒットシリーズがある。ミステリーの主人公には、かように天才物理学者や、天才数学者がしばしば登場する。たしかに、理系の天才は見えやすい。
しかしながら、天才は文系にも存在している。
中世の修道院を舞台にしたミステリー『薔薇の名前』で知られる哲学者ウンベルト・エーコなど、その一人であろう。
この物語は、そんな文系の天才が登場するミステリーである。
物語の主人公・宇野辺叡古(うのべえーこ)は、東京帝国大学法科大学の教授である。大著『日本政治史之研究』で知られる彼は、法律・政治などの社会科学にとどまらず、語学・文学・史学など人文科学にも通じる”知の巨人”である。
その知の巨人が、連続殺人事件に遭遇する。
時代は明治。殺されたのは帝大の教授たち。事件の背景には、生まれたばかりの近代国家「日本」が抱えた悩ましい政治の火種があった。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。

    近代日本史が苦手で全くわからず、
    ウンベルト・エーコのことはもっと知らなくても、です。
    (よく御存じな方にはたまらないんでしょうね…。)

    帝大の教授、宇野辺叡古と
    そこに縁あって居候することになる阿蘇藤太が
    殺人事件に巻き込まれていく話。

    登場人物が実在した名前そのままで出てきたり、
    本当にあった史実が出てきたり、
    本を片手に検索検索でした。

    叡古先生と藤太のやりとりが軽妙なので
    最初ちょっとふざけたミステリーなのかと思いきや
    どんどん重厚になっていき、
    その時代の雰囲気にどっぷりつかりました。

    日比谷公園ってそういうつくりなんだとか
    帝国ホテルってそうだったんだとか。
    赤門もそういうことだったんですね。

    ミステリーとしても面白かったのですが、
    叡古先生が藤太に諭す言葉。重みがありました。
    叡古先生の言葉が、打てばすぐに響く藤太。
    なんだか羨ましかったです。(私も響かせられるかな)
    近代日本史に興味が湧いた一冊です。

    最後の方に明かされる藤太の本名。
    えーーーーーって感じですよ☆

    門井慶喜さん、他の作品も読んでみたいです。

  • さて、何処までが実在して何処がフィクションなのか。
    彼が誰なのかそれが最大の謎。

    熊本から帝大の叡古教授に会うために上京してきた五高の学生の私。
    待ち合わせの図書館で教授らしき男性に声をかけるが、彼は床に崩れ落ちる。

    いろんなことが盛りだくさん過ぎる印象。
    漱石を出す必要があったのかな。
    連続殺人の動機も弱い気がするし、現実味がないので盛り上がらない。
    叡古教授ももう少し頑張ってほしかった。
    「私」と変わらないくらいに振り回されてる印象。
    そして、さくら子との関係が意味深な割りに酷い展開で、漱石出したのもコレが書きたかったからなのか。いらないかも。
    この時代の歴史を思い出しながら、なるほどなーと読む楽しみはあるけど、うーん。
    青春物語ということなのかな。

    人が学ぶのは、よい学位を得るためではない。よい職業に就くためでもない。道徳の涵養のためでもなく、人類の知の発展のためでもなく、学問そのものの愉楽のためですらない。人が学ぶのは、藤太よ、自分でものを考えるためだ。

    誰もがノーと言う日にイエスと言う。誰もが感情に身をまかせる日に冷静になる。それは口で言うは易しいが、おこなうは絶望的にむつかしいことなのだ。勇気がいるし、闘志がいるし、何より高い識見がいる。

    彼のことは「安物の万年筆」のエピソードしか知らなかったけど、かなり波乱万丈ー。

  • 直木賞候補なんですね~(予約いっぱいになる前に読むことができて良かったです)

    面白くて、勉強になりました。というのが正直な感想です。
    普段、まず使わない難しい言葉が多くて、辞書が手放せませんでした。
    実在の人物がたくさん登場して、気分はタイムスクープハンター♪
    叡古教授と藤太のゆるぎない信頼関係も、とても良かったです。

    そして、藤太の本名は?と持てる知識を振り絞って想像したけどわからず。
    (もしかしてアナグラム?とか…)
    最後にやっと、あの方か…。

    以下、ネタバレです。
    あの方について触れています。(名前は書いていません)



    かつて、お名前を読み間違えて覚えていた私が語るには、とてもおこがましいんですが…

    日本の外交の歴史において、不世出の方だと思っています。
    戦犯とされてはいても、あの時代において誰より戦争反対を訴え続けた方だと。

    あの日、どれほどの決意であの場に立たれたのか…
    どれほどの想いであの歌を詠まれたのか…
    今再び、同じ轍を踏むかのような危うい日本をご覧になったとしたら、どのように思われるのかと…
    ふと、考えずにはいられませんでした。

    そして、
    ミステリーのレビューで、このようにネタバレのようなことを書いていいのか迷いましたが、
    門井さんが藤太の本名として”今”あの人物の名前を書かれた…ということの、私なりの受け止め方として書くことにしました。

  • 主人公の正体が私がもっと近代日本史を知っていればわかったのになぁというやつ。今までの門井作品よりは軽い読み物な気がした。

  • 九州の旧制五高から夏の東京へ先輩を頼って上京してきた主人公は、待ち合わせ場所の帝大図書室に赴く。しかしそこは、頼って上京してきた同郷の叡古教授の殺害現場。と思いきや、その死体は別の教授なのだが、登場した叡古教授に藤太という名前にされてしまう。
    知能明晰な叡古教授のもと様々な事件と向き合うことになる藤太。
    漱石、徳富蘇峰などなど、実在の人物や事件を背景に明治・対象・昭和の歴史を巡る大舞台。

    最後の最後に、藤太の本名が明かされ、歴史を体感させる。
    歴史上の人物・事件を踏まえた大フィクション。面白かったけれど、歴史の知識に乏しい私は、もっと勉強しておけば良かったと悔やみました。

  • 門井さんの作品を初めて読んだけど、面白かったなぁ。
    ミステリーとしてより、歴史エンタテインメントとして爆笑してしまった。いろんな人物が登場するたびに「おいおい」とツッコミながら読了。一番の楽しみは語り手の阿蘇藤太が何者であるかなんだろうね。20世紀初頭の日本政治史に詳しい人ほど楽しめることうけ合い。

  • 歴史のおさらい。

  • 日露講和条約締結の前後を時代背景に、大学教授が連続して殺されるという事件と、それに絡む熊本の五高生阿蘇藤太くん(仮名)及び帝大の叡古教授のお話。

    発端であり柱となる殺人事件の犯人捜しと、仮名の主人公の謎があるのでミステリ、それも歴史ミステリにカテゴライズされるかもしれない。
    ただ、そんなミステリの部分はあまりに取って付けた感じ否めず、そちらがサイドストーリーのように感じる。おそらく主題は叡古教授が主人公藤太に伝える言葉の端々にあるのだろうし、その言葉を得た藤太が誰であるかがキモであるように思う。

    とにかくガジェットが多すぎて漠とした印象が否めない。明治中後期から昭和前期頃までの日本の政治史や外交史を頭の隅に置いて読むと分かりやすいかも。

  • う〜ん…

  • 最高学府で起こった事件から始まる連続殺人を巡るミステリ。……なのだけれど。本質はこれ、歴史ミステリかも。残念ながら私、この時代の歴史にはまーったく詳しくなかったので。あの人の正体が判明しても「?」だったのですが。そのあたりをよく知っている人なら衝撃なのかしら。
    でも個々の謎解きの部分は十分楽しめました。当時には考えも及ばなかったハイテクが駆使されるのも楽しく。なんといっても叡古教授の稚気が楽しいなあ。わざわざあんな暗号にしなくても(笑)。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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