道をたずねる

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093801188

作品紹介・あらすじ

地図の空白地帯を埋めろ!

人はみな「自分の道」をゆく英雄である。
友情、青春、仕事、人生。
俺たちは、ただ前だけを見て歩いてきた――。

地図会社キョーリンの調査員・合志俊介。彼の仕事は日本各地を歩き、家の表札を一軒ずつ書き留めること。
俊介には一平と湯太郎という幼馴染みがいた。三人は十五歳になる年、裏山のクスノキで誓いを立てた。
一つ、友のピンチは助けること、二つ、友の頼みは断らないこと、三つ、友に隠し事はしないこと。
その日から、男たちはそれぞれの“道”を歩き始めた。

地図づくりに生涯を捧げた男たちの熱き物語!

感想・レビュー・書評

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  • /_/ 感想 _/_/_/_/_/_/ 
     
     仕事に生きた俊介がお話のメインですが、わたしたちも生きていくためには、多くの時間を収入を得る手段にあてており、直接的に収入を得ていない場合も含め、いろいろな形はあるでしょうが、誰しもが仕事に生きているかもしれないですね。そんな仕事に対して、全力を尽くしていこうと思える作品だったと思います。

     「友の憂いにわれは泣き、わが喜びに友は舞う」という言葉が出てきます。先日読んだばかりの、「幸せになる勇気」にでてくる共同体感覚の極みのような気がします。これは旧制一高の寮歌のようです。現在の東京大学教養学部および、千葉大学医学部、同薬学部の前身となった旧制高等学校らしいです。

     この本の中でも、「自分のとこだけ儲かればええっちゃう商売は下の下です。」という言葉がでてきます。
     その行動が、誰かの幸せにつながるといいなと、意識して生きていきたいと思います。いろんなことを、感じることができる作品でした。


    /_/ あらすじ _/_/_/_/_/

    昭和の激動の時代、ゼンリンの成長を舞台とした、友情、仕事、戦争がテーマになっています。
    キョーリン社員となる俊介がお話のメインで展開していきます。

    プロローグ 2017年、夏
    俊介 73歳

    一章 1958年、春
    俊介 15歳

    二章 1964年、夏
    俊介 21歳

    三章 1972年、春
    俊介 28歳

    四章 1973年、秋
    俊介 30歳

    五章 1984年、秋
    俊介 40歳

    六章 2002年、夏
    俊介 58歳

    エピローグ 2017年、夏


    /_/ 主な登場人物 _/_/_/ 

    ■幼馴染
    合志俊介 ごうし
    天沢一平 あまざわ、俊介親友
    湯太郎

    ■父親達
    合志葉造 俊介父、キョーリン社員
    天沢永伍 一平父、キョーリン社長
    衛藤純一 …、天沢葉造

    ■関係者
    合志花奈 俊介母
    川上未希
    川上義八 未希父


  • 地図の調査員の仕事は、日本各地を歩き一軒ずつ表札を書き留めること。
    地図の空白地帯を埋めていくことは、地道な仕事であるがなくてはならないのが地図である。
    今や、カーナビでもお世話になるとても便利なもので、迷わずに目的地へ行けるというのは、とてもありがたいことだと改めて感じた。


    1958年、中学に通う幼馴染みの三人は裏山のクスノキで誓いを立てた。
    約束は三つ。一つ、友のピンチは助けること。二つ、友の頼みは断らんこと。三つ、友に隠し事をせんこと。
    この日から彼らは、それぞれの道を歩き始めた。

    地図づくりに生涯を捧げた男たちの姿に感動し、父親たちの友情から子どもたちの友情、そして親子愛も存分に心の中を熱くした。




  • 『道をたずねる』|感想・レビュー - 読書メーター
    https://bookmeter.com/books/17648201

    ◎編集者コラム◎ 『道をたずねる』平岡陽明 | 小説丸(2023/07/11)
    https://shosetsu-maru.com/column_editors/2023-07-04

    「小説現代」インタビュー・対談集|〝世代〟は〝物語〟を生むのか。 平岡陽明インタビュー|tree(「小説現代」2022年8月号)
    https://tree-novel.com/works/episode/7435ea2e1c097bd35d66f4658e5dd420.html

    道をたずねる | 書籍 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09380118
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    湖永(こと)さんの本棚&maomaoさんの本棚&くるたんさん心の栄養&mofuさんの本棚から

  • 「世の中には、絶対に間違えちゃいけん印刷物が三つある。電話帳、新聞の株式欄、住宅地図や。誠実を胸に刻んで歩こう」

    日本中の全建物と全氏名が入った住宅地図。
    今や当たり前にある住宅地図が、こんなに汗水流して作られていたなんて。
    時に犬に吠えられ時に地域住民に怒鳴られながらも、首から画板をぶら下げて表札を一軒ずつ書き留めていく。ただそれのみ。
    地図の空白地帯を埋める、というその地道な調査は、誰にでも出来そうで誰にでも出来る仕事ではない。

    日本中をひたすら歩いて回り、正確な地図を作る。
    調査の仕事は百点満点で当たり前。一軒でも書き漏らしがあれば欠陥商品。
    そんな厳しい仕事に、時に投げ出したくなることもあるけれど、誰も足を踏み入れたことのない土地を歩き、たずね、しるす。そんな発見と創造の醍醐味を知った男たちは、ただひたすら丁寧に道をたずね歩く。
    たとえ時代が移ろおうとも、男たちが築き上げた信念は変わることはないのだろう。

    今やググれば瞬時に出てくる地図も、そのベースとなるものは先人たちの足で稼いだ汗と涙の結晶なのだ。
    NHKの『プロジェクトX』の題材になりそうな物語だった。

  • 涙腺崩壊の一冊。

    友とのクスノキの誓いから歩む主人公の人生。
    それは自分の足で歩いて地図を作る人生。

    当たり前にある住宅地図のその裏側にある地道な作業に敬服せざるを得ないと共にどんな山奥でも一軒ずつ確認し記す作業はたしかにそこに人が存在し生活している事を優しく証明してくれるようで温かいものが込み上げた。

    終盤のあの手紙から一気に涙腺崩壊。

    あの時が明確な意味を持って輝きだす瞬間だった。

    単なる仕事、友情という熱いだけの世界じゃない。

    離れ見守る愛、支える愛で包みながら涙の世界へとも見事に変化させてくれた良作。

    まだ涙…。

  • 昔を描いたお話でした。

    俊介、一平、湯太郎の三人が、自分の父親達と同じように誓いを立てるシーンが素敵でした。一平と誓いを立てたことにより、湯太郎は大阪に転校せずに済み、中学校を別府で卒業できてよかったと思いました。
    登場人物が素敵な人物ばかりでした。方言があるっていいな。

  • タイトルに惹かれた。

    今やメジャーの地図メーカーが地図屋だった頃から勤める俊介の地図作りを通じて人生を描いた話。
    タイトルから勝手に想像していた話とは違っていたけど、最後まで読んで良かった。


    以下は所感
    -------
    地図を見るのは結構好きで、
     そこには何があるんだろう
     どんな人が住んでいるのか
     どんな風景なのか
     何でこんな地形になっているのか
     ここからだとどうやって行けばいいのかなど
    見ていて飽きることがない。

    きっと自分の中にも道を訪ねたい欲求があるんだと思う。
    日本の道って、どこまでも繋がっていて本当にすごい。どこを歩いてもゴミだらけという事はほぼ無くて、誰かれなくキレイに使っている。本当にすごい事だと思う。

    地図を作る仕事がこんなにも地道で大変な作業だったとは、そしてそれが今の便利な社会にとてつもなく大きく貢献していたと考えるらば、壮大な話だったと思う。

    人生の中で会社生活が占める割合は今もやはり大きくて、人生そのものを形作る事も多い。そこで志を立て仕事を通じてそれを実現していく事。それもまた素晴らしい事だと思う。地上の星⭐️

  • 住宅地図が延べ何十万人、何百万人の足で全国一軒一軒回り、表札を確認、記録して作られていたなんて知らなかった
    読書によってまた新たな世界を知らせてもらった

    キョーリンの創業者であり一平の父の永悟の地図屋としての使命と展望にもただただ舌を巻く
    その意志を調査員がしっかり受け止めた仕事ぶりにも頭が下がる
    犬に吠えられ漁師に怒鳴られながらも、山陰に隠れた民家はないか、廃屋に人は住んでいないか聞き込んでいく

    手を抜こうと思えばいくらでも抜ける、単純な仕事を支えているものは何か
    その答えは、調査員研修で語った葉造の講演の中にあった

    「一人のために地図を作っていると思えばいい。ラーメン屋の出前もちが殴られないように、正確な地図を作ろう。それは自分の子どものために地図を作っているのと同じことだ」

    永悟しかり葉造しかり、一平、湯太郎、俊介、先輩調査員・・・出てくる人がみんな活力に満ち、清々しく、語る言葉にも含蓄がある

    俊介の母花奈、妻の未希も明るく、可愛く、聡明で読んでいて気持ちが良い

    最後は、登場人物が自分の役目を果たし、次々と一生を終えていくが、静かなで爽やかな余韻に包まれた

  • 道をたずねる。人の道、人の生き方もたずねる、そんな大きな物語を読んだ。

  • 住宅地図を作るために日本各地を歩き、家の表札を一軒ずつ書き留める調査員を主人公にした小説。
    平岡陽明さん、初めて読みます。あまり上手いとは感じません。ハッとさせる様な表現も無いし、話の持っていき方も何処か素人っぽい。最初はこの本に手を付けたのは間違いだったかな~と思いつつ、読んでいました。しかし、途中からはドンドン惹き込まれて行きました。
    登場人物は皆、善人です。そんな話は山ほどあって、またかと思います。大抵は砂糖をたっぷり使った甘さだけで味わいの無いお菓子、そんな物語になります。ただ、この物語では登場人物が単に善人というだけでなく、全員がそれぞれの状況の中で、それぞれの歩幅で前向きに生きていく。そうした姿が、心地良く。
    実在する地図会社・ゼンリンの誕生期から全国展開までを描いた企業小説という側面もあります。得てして、ヨイショだらけで嫌らしくなりがちですが、それもあまり感じずに済みました。

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著者プロフィール

平岡陽明
1977年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2013年『松田さんの181日』(文藝春秋)で第93回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。19年刊行の『ロス男』で第41回吉川英治文学新人賞候補。22年刊行の『素数とバレーボール』は、「本の雑誌」が選んだ「2022年度エンターテインメントベスト10」第3位。他の著書に『ライオンズ。1958。』『イシマル書房編集部』『道をたずねる』『ぼくもだよ。神楽坂の奇跡の木曜日』がある。

「2023年 『眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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