低欲望社会 「大志なき時代」の新・国富論

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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798716

作品紹介・あらすじ

なぜアベノミクスでは景気が上向かないのか

なぜアベノミクスでは景気が良くならないのか? 日本が“借金漬け”から脱する日は来るのか? 「皆が等しく貧乏になる国」で本当にいいのか? それらの難題を読み解く鍵は「低欲望社会」にあり――。
日本では今、世界に先駆けて未曽有の危機が進行している。人口減少、超高齢化、“欲なき若者たち”の増加……。こうした事態に対し、従来の20世紀的な経済対策や金融政策は全く通用しなくなっている。それは、世界的ベストセラー経済書の著者であるピケティ教授やノーベル賞経済学者のクルーグマン教授らの理解をも超える深刻な現実なのである。
ところが、安倍首相主導のアベノミクスは、相変わらずの中央集権的なバラ撒き政策で税金を湯水のごとく使い、やみくもに公共事業を増やし設備投資や消費を煽ろうとするばかりだ。安倍首相の暴走を止めなければ、いずれ日本は奈落の底に落ちていくことになる。
今、必要なのは、“借金漬け”から脱し、人々の「心理」に働きかけることで経済を活性化させ、国全体を明るくするような“新たな国富論”である。そして、その契機となる政策はまだ残されている。都心再開発、移民政策、教育改革、道州制と国民DBの導入……。
世界的経営コンサルタントが「アベノミクス破綻」に警鐘を鳴らす、ビジネスマン必読の書。


【編集担当からのおすすめ情報】
「低欲望社会」という言葉は、著者の大前氏が使い続けている、日本経済の現状を説明するキーワードです。近年、ますます生活が厳しくなり、閉塞感すら覚える日本の現状は、単に不景気だとかデフレだからという理由では説明しきれない、構造的な問題を内包しています。アベノミクスは、その問題解決にならないどころか日本を破綻に導くものであり、この難問を克服するために残された時間はもうわずかだと大前氏は強く主張しています。
著者が力説してきた「心理経済学」の集大成となる一冊です。ぜひご一読ください。

感想・レビュー・書評

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  • はぁ~この書籍は正直なところ書評したくありません。何故なら私の尊敬する、わが日本国の総理大臣・安倍晋三首相のアベノミクスはもとより、日本の現在の社会システムを全否定した書籍だからです。

    理由は大前研一先生がバブル期から、日本国に提唱されていたことが無視されていたところにあると思います。

    まず、大前さんはピケティ教授の指摘は正しくないと喝破されます。その理由はバブル期から現在まで資本収益率が大して上昇していない、というものです。従って、資産家に課税するのはおかしい、と言っています。

    ではどこに課税するか。日本人全体の流動資産と固定資産は三千兆円ありますから、これに1%の税率をかけて三十兆円の税金。その他、日本のGDPは五百兆円あるので、付加価値税(ご存知の通り、GDPは付加価値の総額)これに10%の税金をかけて50兆円。合わせて80兆円の税収。これでゴーだそう。

    次の矛先は移民問題に向きます。団塊のジュニアのジュニアは少子化でいないのだから、そこは移民で賄うしかない、と断言されます。特に介護・医療の人材難には大胆な規制緩和をやるべきであると提唱しています。詳しくは本書を。

    そもそもなんでこんなに景気が悪いの?という話に帰結しますが、やはりこの本の題名のように、日本の若者が「低欲望」になっているからだ、とのことです。

    金利がこんな下がったのに、車を買わない、家を買わない。会社に入っても社長を目指さない、このような「低欲望」な若者が跳梁跋扈するからだと説きます。

    彼らは、テレビはおろかパソコンも持たず、全てスマホで済ませてしまう。そんな彼らはコンビニにたむろし、一日千円ぐらいで生活する。おまけに上昇志向がない。このような世の中になってしまった、と懸念をするのです。

    これらの現状を変える手法が大前さん的で素晴らしい。まず少子化ではフランスのモデルが参考になるとのこと。フランスでは産めば産むほど、政府から補助金が下りるそうです。

    次に教育改革。これはドイツの職業訓練校の制度を利用し、またスェーデンのような職業再教育制度を設け、所謂ゾンビ企業は市場から撤退してもらうとのことです。


    他にも数多、日本の諸制度の改革が述べられているのですが、教育信託制度(1500万円までなら祖父母が孫に教育資金を贈与税非課税で贈与する制度)であるが「教育」だけでなく、使途を設けず全ての支出に行うべきだ、と説きます。

    というのは、学校代、塾の費用でなく、子供が旅行をするのも、ゲームを買うのも「教育」の一環であるという。即ち現行の制度では縛りが強すぎて、不便すぎるというのだ。これは私も大いに同感。さすが大前さん。

    と、ここまで大前研一さんの「低欲望社会」をレビューしてきたのだが、実に今の日本の制度にチャレンジグな著書であり、「日本ってなんかおかしくね?」と思われる方は、是非一読をお勧めします。

    皆さん、特に「俺が、私がこれからの日本を良くしたい!」と思っている方、老若男女を問わず良書になってます。皆さんも大前さんの慧眼に触れられたらどうでしょうか?

  • 「平成維新」以来、ずっと著書を読み続けて四半世紀。
    今でも、あのときの都知事選挙で、青島さんでなく大前さんだったら、その後の東京はどうなったのだろう、と思わずにいられません。

    残念ながら、この先どういう社会にするのかがわからないまま、
    自分たちで決められないまま四半世紀過ぎてしまったことがよくわかります。

    この本でも言っているように、大前さんに指南された官僚はたくさんいるはずです。
    そして、「維新」の提言のいくつかをまじめに考えていれば、今でも正しいはずの政策が、いくつもできるはずなのに。

    細かい制度の追加、継ぎ接ぎ、そして、あからさまに「こうしなさい」という
    強い拘束力で作られる法律、条例などなどなど・・・。
    今や、「マイクロマネジメント」が最悪であることは、大抵のひとが実感していることと思います。

    形だけ競争入札にして、市区町村ごとに違うシステムを入れ、
    システムを接続するためのシステムを次からつぎにつくり、
    社会全体として使えるものは何も残らない。

    残念ですが、そういう「今」が、とてもはっきりわかる本です。

  • 現在の日本の問題点
    ・アベノミクスがなぜ上手くいかないか
    ・マイナンバー制度の問題点
    ・地方創生の愚策
    ・金利がつかない銀行にお金を預けるのは、世界では異常
    ・農業改革の間違い
    ・法人税を下げても、企業誘致は出来ない
    ・国の仕組み、ドイツとの比較
    ・マイナンバーと日本人のデーターベースの違い
    などなどの事について、見事に対策が記されていました

  • ★2015年7月25日読了『低欲望社会』大志なき時代の国富論 大前研一著 評価B+

    彼の時代認識は、歴史的にも世界的にも例を見ない低金利にもかかわらず資金を借りようとする個人、企業がいない今の日本の現在の減少は一過性のものではない。

    その対策には、これまでの20世紀的なケインズ政策では対処できず、新しいグランドデザインに基づく国家プロジェクトで日本を立て直せなければ、手遅れになるという彼の考え方を本書では述べている。
    以下は私が理解した彼の論点と主張、まとめ間違っていたらご容赦下さい。

    ①高所得層から合計50%を超える所得税で、働く意欲を無くさせ国外逃避を促す、相続時に多額の相続税で資産移動を促進する世界一の社会主義的資本主義の考え方を見直して、資産税と付加価値税を中心とする税体系に変更する。

    ②正式な結婚を前提とする各種社会保障を様々な生き方に対応する社会保障体制に変更して、出生数が上向くように支援して、人口減少を20ー30年の長いレンジで見て食い止める。

    ③プア充にとどまることなく、付加価値を生み出す人を支援する仕組みすなわち、教育制度の改革で、世界的にも戦える人間を育てる多様な職業訓練を施すシステムを構築する必要がある。

    ④既にアイデアの出尽くしたアベノミクスには、超肥満化した従来の政府主導の財政赤字が残る効果しか期待できない。結果、国としての超多額な赤字が副作用としてきいてくる可能性が高い。よって、大幅な規制緩和 建蔽率の緩和 日照権見直し 建物容積率緩和などにより都市中心部の再開発を民間主導により実行して、より安全で機能的な都市再開発を行うべきである。

    ⑤地方は、道州制として、より大きなエリアでのそれぞれの地方の特性を活かしたグランドデザインで、世界でも有数の伝統、文化を発信して、街を整備し世界からの観光客移民を誘致するべきである。

    ⑥幻想の食料自給率に基づく議論を止め、オランダのように企業主導のより付加価値にの高い競争力のある農業育成を後押しすべきである。

    ⑦元々ない地方自治体での立法権を前提とするような無駄な地方議会は無駄なコストがかかるだけで、早急に見直すべきである。

    ⑧彼は、eゼネコンと呼んでいるが、各省庁、各地方公共団体は分かれていることを悪用して、無駄なバラバラシステムを構築して、システム会社は税金の無駄使いを誘導している。マイナンバー制度などではなく、国民の生活に便利となるようなグランドデザインに基づく国民データベースを構築して、真のe 政府を作り出す必要がある。その好例が、ヨーロッパの小国130万人のエストニアにはある。

  • 長野の駐車場経営者 景気がいいと、1万円札ビンサツ、わるいと1000円札、100円玉、しわくちゃのお札

    日本の最大の問題は人口減少、団塊ジュニアの次がいない

    低金利なのでだれもお金を借りない

    日本が変わらない元凶 老人の居座り

    異次元緩和に出口なし、まず日銀がパンク

    優れたトップは一つのことだけをいう

    悪い上司 マイクロマネジメント

    時価3%の配当を維持するため余力が必要 内部留保

    節税スキーム ダブルアイリッシュ、ダッチサンドイッチ

    ハイパーインフレで地獄を見るのは年金受給者 カネの価値は変わっても、受け取る金額は同じだから。定額預金やタンス預金も紙くず同然になってしまう
    資産をもっているひとはハイパーインフレに備えて、キャッシュを産む不動産(好立地のマンションなど)や株にしておくべき

    穀物 アメリカ、オーストラリア、カナダなど面積大国が勝つ

    オランダ 1986にスペインとポルトガルがECに加盟 無課税の安価な農産物が入ってきた 危機感を抱いたオランダは、選択と集中で施設園芸にフォーカスするとともに、農業を農民中心に考えずに産業と捉えて地域別に農地と生産品目を集約するなど改革を断行し、付加価値の高いクオリティ農業にシフトした

    米が自給できても、いざというときには石油の備蓄が先に切れるので、灌漑もできない、トラクターも動かない、肥料も作れない

    オランダは世界第二位の農業輸出国でありながら穀物の自給率は14% 日本の半分

    施設園芸 トマト、パブリカ、きゅうりの3品目で栽培面積の8割 スマートアグリ

    エストニア eガバメント
    x-road 世界でもっとも進んだ国民DB
    ICチップの入ったIDカード
    国民IDチップを格納したSIM
    カード入りのスマートホンでeガバメントのポータルサイトにログインや電子文書への署名もできる
    銀行口座の取引も国が把握
    税金は自動計算 納税申告不要
    税理士、会計士が消滅

  • 低欲望社会から脱していくのがこれからの日本の課題であり、それへの道筋を示すところから始まった論文が段々とそれていき、常日頃から大前研一が言っていることが並んだ感じの本だった。ただ、この人の本は定期的に読んだほうがいいと思う。大前研一の考え方や分析力、構想力を自分の現在の仕事に当てはめてみると大きな刺激になる。自分の業務回りがそれで多少改善しても日本全体が相当ダメみたいだから役に立たないかもしれないが…
    ウチの会社でイノベーションを起こすとしたら何から始めるべきだろうか?

  • 2020/11/17:読了

     若者の欲望が低くなっているという前提が、おかしい気がする。
     1つには、国のお金の回り方が、国民にいかない問題で、これは国内政治だけの閉じたものでない可能性が高い。でも、脅し/すかしに耐えられない政治家ばっかりということかもしれないけど。
     1つは、欲望とか満足について、高度成長の時代と、今とでは、何かが変わっていて、それと、家族制度を含めて、いろいそな社会システムが、まだうまく調和できてないように思える。
     欲望が低くなっているのでなくて、欲望の質が変わって、それを受け入れるような制度にしたうえで、安心して結婚や家族を持てるような状態を作り出さないといけない気がする。
     いま少し混乱しているようにみえるかもしれないけど、そういう方向に動いているんじゃないかと思う。

  • 失われた20年で育って底欲望社会を生きてるけど、個人的にはホントに日本の成長とかに興味がない。経済的な豊かさを求めてない。家も車も買おうと思ったことがない。自分の周りに居る人達で楽しく過ごして行ければいいと思う。給料明細見ても額面から引かれる税金見てげんなりしてしまうし、今の政治に全く期待してない。はやく老人達よ引退してくれと思う。

    メモ
    戸籍があるのは中国、韓国、日本だけ
    人口を増やすには出産、育児への手厚い公的支援、戸籍制度廃止
    良い会社の経営者は問題点を1つしか言わない。4.5年かけて徹底的に実行させる

  • 晩婚化、ITの発展、地方の衰退、少子高齢化といった、戦後の日本からは大きく変わった時代に、政治も法律も経済も置き去りになっていると感じる。

    これから来る日本の財政赤字の克服のためのハイパーインフレに備え、自分の能力を高め、時代を生きる力を身に着けておくべきだと強く感じる。

    特に、エンジニアの私にとって、日本人データベースは興味深い。この構想を自分なりに高めておこうと思う。

  • Yotsuya

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著者プロフィール

1943年、福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。(株)日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。 以来ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を務める。現在はビジネス・ブレークスルー大学学長を務めるとともに、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして活躍のかたわら、グローバルな視点と大胆な発想で、活発な提言を行っている。

「2018年 『勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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