- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784092906471
作品紹介・あらすじ
明日への希望をリリカルに描く!
国際アンデルセン賞受賞作家ジャクリーン・ウッドソンの代表作であり、自伝的作品。
―――言葉が意味を集め、
それが思いとなって、
頭の外に出て行き、文章になる。―――
「言葉をつかまえたい」と願う作者が、本当に求めていたものはなんだったのか……。
自分の誕生から子ども時代の思い出、文字やことばに興味をもったきっかけ、作家への夢、様々な人間模様などを、イメージに富む散文詩でリリカルに描く。人間として生きる権利とは何かを少女の目を通して語られる。
【編集担当からのおすすめ情報】
現代のアメリカの児童文学を代表する作家の自伝的作品。
少女の目を通して語られる人間模様は、現代アメリカの社会問題を浮き彫りにしていて、BLMの背景について、当事者たちの心情を深く理解できます。
不条理なことの多い世の中においても、明日への希望を信じ、夢をみることをあきらめない強い意志が、日本の読者をも勇気づける作品です。
感想・レビュー・書評
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1963年の2月12日、アメリカの南部オハイオ州コロンバスで「わたし」は生まれた。その頃の南部はアフリカ系アメリカ人への差別撤廃のために大きく揺れていた。
アフリカ系アメリカ人の家庭に生まれた筆者の、その後の両親の離婚やサウスカロライナへの引っ越し、祖母からの「エホバの証人」信仰、ニューヨークへの引っ越し、友だちや学校でのできごと、親戚の不幸、作家になりたいという想いなど、著者の半生の思い出を、解放運動の動きとともに美しい文章の連なる散文で描いた一冊。
******* ここからはネタバレ *******
正直、詩の形式を取った話は読みにくくて好きでないことが多いのですが、この本は違いました(でもレビューは書きにくい(涙))。
訳者がさくまゆみこさんだと知ったときから期待していたのですが、裏切られなかったです。
筆者は、「ワシントン大行進」のマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「私には夢がある」の演説や、アフリカ系住民に対する人種差別に強硬な姿勢を取ったケネディ大統領の暗殺などがあった年に生まれています。
大きなうねりが始まったときですが、筆者は、声高に叫ぶこともだれかと衝突することもなく、淡々と日々を重ね、その時の思いを綴っています。
きっとこの率直な思いがこの本の心地よさの理由ではないかと私には感じられます。
当時のアフリカ系アメリカ人のコミュニティを、1人の少女の視点で等身大に描いた作品です。
元アメリカ大統領のバラク・オバマさんは、著者の2歳年上。ほとんど同世代ですね。そのオバマさんが人種問題を理解するのにこの本を勧めています。
難解な作品ではないので読める子なら中学年からでもいいと思うのですが、時代背景がわかったほうがより楽しめると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アメリカを代表する児童書作家ジャクリーン・ウッドソンの自伝的な作品。オハイオ州での幼児時代から、両親が離婚して母の故郷である南部のサウスカロライナ州へ。そして母が新天地をもとめて移り住んだニューヨークへ。
ウッドソンには「マディソン通りの少女たち」というシリーズがあるので、ああ、こうしてマディソン通りの少女になったんだ、と合点がいった。南部の文化も、ニューヨークの街の文化も、あらゆるものが体のなかにとけこんでいるんだな。
ウッドソンが生まれたのは1963年。時あたかも公民権運動が高まりを迎える時代。おさないウッドソンがその渦中に飛びこむことはなく、また母がエホバの証人だったそうで(しらんかった!)ほかの子どもたちが触れていたようなポップカルチャーからも遠ざけられていたようだけど、やはりその空気を呼吸して育つというのは大きいのだと思った。
でもなによりもすてきなのは彼女が自分のなかにある作家性に気づいていく描写。
あるとき、ふだん無口な兄のホープが学校の舞台で歌を歌ったことがあった。兄は、カリブ海で歌われている「ティンガレーヨ」という歌を低くやわらかい声であまやかに歌い、拍手喝采を浴びる。
「だれの中にも宇宙からの贈りものがあって、
発見されるのを待っているのかもしれない」とジャクリーンは思う。
ジャクリーン自身は、物語を読むことと語ることに特別な喜びを感じていた。あるとき、オスカー・ワイルドの「わがままな大男」が大好きになり、何度も何度もくりかえし読んですっかりおぼえてしまった。
学校で先生から「前に出てこの物語を読んで」と言われたとき、ジャクリーンは本を持たずに丸ごとそっくり語ってきかせる。
「それでわたしにはわかる。
言葉が、わたしのティンガレーヨなのだと。
言葉こそが、わたしのかがやきなのだと」
とてもとても美しい瞬間だと思った。
だれもが自分のティンガレーヨを探しあてられたらなあ。 -
詩のように描かれた物語。人や景色や、匂い、空気、手触りなどの感触…。全て目に見えるように感じた。胸に抱えたい本。
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人種差別が残る時代にオハイオ州で彼女は生まれた。
ニューヨークに移り住む前は、サウスカロライナの祖父母のところで暮らしていた。散文詩調文章が南部の美しい情景を引き立たせる。
#中高生 -
アフリカ系アメリカ人の少女の話なのに、なぜこんなにも共感してしまうのでしょうか。「子ども時代」にはすべての人に共通するものがあるのでしょうか。
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アメリカの現代を代表する児童文学作家であるジャクリーン・ウッドソンの自伝的小説。散文詩形式の物語。ここ最近、たまたまかこういう散文詩形式の児童文学、YA小説を手に取る機会が多い。『詩人になりたい私X』も散文詩形式でブラック・ライヴズ・マターについてかかれたものであった。散文詩形式のため、読みやすいが孕んでいるテーマは考えさせられる。