手塚治虫の収穫 アドルフに告ぐ〔全3巻〕 (1) (ビッグコミックススペシャル 手塚治虫の収穫)
- 小学館 (2008年6月30日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091820655
作品紹介・あらすじ
▼第1章~第11章
●主な登場人物/峠草平(協合通信記者。ベルリン大学留学中の弟が命がけで入手した極秘文書に関わったため、ナチスから追われる身に)、アドルフ・カウフマン(神戸在住のドイツ人少年。ナチス党員である外交官の父と、日本人の母を持つ)、アドルフ・カミル(神戸在住のユダヤ系ドイツ人少年)
●あらすじ/1936(昭和11)年8月、ベルリン。オリンピック取材中の記者・峠草平は、ベルリン大学留学中の実弟・勲から、大事な物を渡すので会いたいとの連絡を受ける。約束の時間と取材のピークが重なり、2時間遅れで弟の下宿を訪れた草平だが、そこで目にしたのは無惨に殺された弟の姿で…(第1章)。
●本巻の特徴/思いがけずヒトラー生誕に関わる秘密文書を入手した峠草平。特高警察に眼をつけられ職を失い、さらにゲシュタポにも察知されて、逃亡生活を歩むはめに。一方、日本で育った2人の“アドルフ”少年は、ユダヤ系とナチス党員の息子という立場を超えて、互いに親友の絆で結ばれていたが…?
感想・レビュー・書評
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これは面白いな。引き込まれる。
『ブッダ』を読んで面白かったので
続けて読んでみた。どちらが先なのだろうか?
芸者・絹子の絵が艶っぽくて絵柄が
新しい気がした。実際『ブッダ』が1972年、
本作が1983年だった。
ミステリー調でワクワクする。
現在おぞましいことにロシアがウクライナを
侵攻している。世界中はどよんと暗く落ち込んでいる。
許可書で教えられた歴史のようなことが
目の前で起こっている恐怖ってない。
『ブッダ』も戦争の描写があり
シャカ族の全滅シーンでウクライナ・ブチャ
を思った。
本作は第2次大戦の話なのでなお一層深刻に
感じられる。
人類は何をやっているのだろうかと思う。
そういった意味で、現在読むべき本だと真に思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
嗚呼、アセチレン・ランプ…
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第二次世界大戦前後、ナチスの台頭から終焉までを背景として、日本とドイツで繰り広げられる人生劇場。アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミル、アドルフ・ヒットラーの3人を主軸に添えた、ドイツ人、ユダヤ人、そして日本人の悲しい物語。手塚治虫作品の中でも最も頻繁に読み返す作品のひとつです。文庫本に収録されている、関川夏央による解説が秀逸。
今年2008年は手塚治虫生誕70周年。『アドルフに告ぐ』に限らず、改めて各作品が再評価されることでしょう。 -
新ジャンル「タイトル買い」
個人的に所謂「歴史もの」というものが好きになれなかった。
結末をわかっているもののどこが面白い?という疑問に自分で答えることが出来なかったからだ。
それでも、この「アドルフに告ぐ」はすごいスピード感で一気に(愛蔵版で3冊分、約1200ページ)読ませた。
手塚治虫という稀代のストーリーテラーにかかると情報の出し入れとキャラクターでひっぱるんだなぁと目から鱗だった。
でも「正義」の脆さ、危うさを描こうとするなら、最後のエピローグの部分(タイトルの理由が描かれているくだり)はもう少しじっくり書いてもいいと思った。
結論を急ぎすぎというかなんというか。
それ以外がすばらしいだけに目についてしまう