近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087880304

作品紹介・あらすじ

2004年11月の球団消滅からちょうど15年。個性あふれる球団「近鉄バファローズ」の真実に迫る。

「私の愛した近鉄は、ただ単にメチャクチャで破天荒な球団だったわけではなく、恐ろしいほどの練習量を誇り、先輩を敬い、伝統を大切にし、同僚を尊重する、今思えば理想的な球団だったのかもしれません。元永氏との取材を通じて、もう一度あの時代を振り返ることができたのは、私の野球人生でも大変貴重な経験となりました。かつての近鉄ファンはもちろん、今の“12球団"のプロ野球を愛するすべての方にも、あのときの歴史を改めて知ってほしいです」(礒部公一)

最後の選手会長として球団合併問題やストライキ問題に奔走した礒部公一。彼とともに、梨田昌孝、栗橋茂、金村義明、ラルフ・ブライアント、水口栄二、岩隈久志ら近鉄に在籍した監督・選手に加え、最後の球団代表だった足高圭亮や、いまも近鉄バファローズを愛し続ける熱烈なファンなど、多数の関係者に徹底取材。近鉄バファローズの歴史をトピックごとに伝える9つの「表」章と、今回深く取材した選手ら近鉄関係者、個人の想いに迫った9つの「裏」章が交互に展開していく、まさに野球のような「表・裏」構成のプロ野球ノンフィクション。

「僕は西本幸雄の分身みたいな感じで“近鉄バファローズ"の血が入っている」(梨田昌孝)
「近鉄というチームは、私にとってすべて。人生の中で大きな意味を持っている」(ラルフ・ブライアント)
「できる限り長く野球を続けたい。近鉄の選手だった誇りを持ってプレイしていくつもりです」(岩隈久志)

プロローグ 本当に故郷がなくなった球団
1回表 「お荷物球団」を優勝に導いた西本幸雄 1回裏 梨田昌孝の近鉄魂
2回表 近鉄から見た「江夏の21球」 2回裏 栗橋茂の近鉄魂
3回表 仰木彬と「10・19決戦」 3回裏 金村義明の近鉄魂
4回表 野茂英雄の出現、そして…… 4回裏 ラルフ・ブライアントの近鉄魂
5回表 「球団を見返すために」という選手も増えた迷走期 5回裏 水口栄二の近鉄魂
6回表 球史に残る劇的な“最後"のリーグ優勝 6回裏 浅川悟の近鉄魂
7回表 近鉄最後の監督、梨田昌孝のチーム作りの哲学 7回裏 岩隈久志の近鉄魂
8回表 合併交渉、ストライキをめぐるそれぞれの想い 8回裏 足高圭亮の近鉄魂
9回表 最後の大阪ドームもサヨナラ勝ち。すべての背番号は永久欠番に 9回裏 礒部公一の近鉄魂
エピローグ そして、近鉄魂とはなんだったのか?

元永知宏 もとなが・ともひろ
1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。『期待はずれのドラフト1位――逆境からのそれぞれのリベンジ』(岩波書店)、『『敗者復活 地獄をみたドラフト1位、第二の人生』(河出書房新社)、『荒木大輔のいた1980年の甲子園

感想・レビュー・書評

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  • 2004年の球界再編問題の際、近鉄バファローズはオリックスと合併することになり、球団創設以来55年の歴史に幕を閉じました。本書は近鉄が初めてリーグ優勝をした1970年代から年代ごとに球団でキーマンとなった人たちのインタビューをもとに、2004年までの約30年間を振り返るノンフィクションです。
    1970年代の証言者は故西本幸雄氏。阪急ブレーブスを常勝チームに鍛え上げた名監督西本氏が近鉄に移籍した当時の状況を語っておられ、西本氏の監督像を当時現役であった梨田昌孝氏が証言しておられます。
    1970年後半から1980年代は”あの”「江夏の21球」の日本シリーズの時代を栗橋茂氏が証言しておられます。穏やかな印象の西本氏が、実は大変な熱血漢であった描写など、興味深いエピソード満載です。
    1980年代は仰木彬氏です。ロッテとの「10.19のダブルヘッダー」は勿論ですが、その翌年に西武ライオンズとの天王山で4打数連続ホームランを放ったラルフ・ブライアント氏、主力選手であった金村義明氏の証言も興味深いです。
    1990年代は野茂英雄氏のデビューとメジャー移籍のころ。優勝はなかったのですが、当時の様子を水口栄二氏が語ります。
    そして2000年以降は、最後のリーグ優勝となった2001年の模様を当時監督の梨田氏、岩隈久志氏が証言されています。
    最後は2004年当時の選手会長であった磯部公一氏、球団代表であった足立圭亮氏が、選手会ストライキを経て球団合併に至るシーズンの内幕を証言されています。
    他にも各シーンで登場する元選手は羽田耗一、マニエル、小野和義、山崎慎太郎、鈴木貴久、阿波野秀幸、佐野慈紀、中村紀洋などなど、近鉄ファンなら「懐かしい!」と思える名前がズラリと。
    こうしてみると、どの時代のエピソードも「あー、そうだったなぁ」という物ばかり。私が小学生のころ、甲子園球場まではちょっと遠いこともあってプロ野球観戦と言えば日生球場か藤井寺球場の近鉄戦がほとんどでした。近鉄バファローズを応援していた人ならば、どの部分を読んでも懐かしい気持ちに浸れると思います。

  • 1950年から2004年まで存在した近鉄バファローズについてチームの変遷と選手や関係者へのインタビューから球団の真相に迫った一冊。

    野茂英雄、梨田昌孝、中村紀洋とスター選手を輩出するだけでなく、4度のリーグ優勝や江夏の21球や89年の3連勝の後の4連敗など数々の名場面を残した球団近鉄バファローズ。
    球団がなくなって10数年経った今、関係者が語る球団についての話を読んで昭和の古き良きプロ野球を体現してる球団だと感じました。
    チームを初優勝に導いた西本幸雄氏がそれまでのチームの考え方を変えたことや江夏の21球の裏側、仰木彬氏と10.19決戦を超えて翌年の優勝へと繋がることや90年代の選手と球団との確執、01年優勝、球界再編問題と昭和から平成にかけて激動の時代を生きた近鉄という球団は球史にその名を刻むとともに藤井寺という地を中心として破天荒に激しく球界を生き抜いてきたとも感じました。
    また、梨田昌孝氏やラルフ・ブライアント氏、岩隈久志氏など歴代在籍した選手や浅川悟氏や足髙圭亮氏といった球団と関わりの深い方などへのインタビューも当時の熱量を感じるされるものとなっており興味深い内容でした。

    個性的なメンバーが揃って時代を彩った近鉄という球団の歩みを知るとともに野茂から始まった日本人大リーグ挑戦の流れや球界再編後のプロ野球人気の拡大は近鉄という球団が無くなってから拍車がかかった事も何か因縁めいたものを本書を読んで感じました。
    冒頭にあるようにOB会もなくなり、どんどん風化されていく中でもその歴史を語り継いでいかないとも感じた一冊でした。

  • 経営者界隈で避けては通れないのが野球の話。
    とんでもなく興味ないけど、そんなに熱をあげる理由は知りたくなるので、定期的にスポーツの本を読む。

    当著は、1970年の近鉄リーグ優勝から2004年の球団消滅までのノンフィクション。
    ※近鉄バファローズはオリックスに吸収され楽天ゴールデンイーグルスに

    江夏の21球
    野茂英雄のトルネード投法と任意引退
    ラルフ・ブライアントの覚醒
    ホリエモンも登場した合併問題。選手会主導の初のストライキ

    など、聞きかじった内容が裏表ひっくるめて文章化されていてそそられた。

  • 子供のころ一度スポーツチームのファンになると、一生それを代えがたいことが、この本を読んでみて改めてわかった。消滅して15年超、いまだにこのような本が存在して買う人がいるということ自体その証明になると思う。
    本の構成として、9イニングスに分割しているので、各年代のエピソードがほぼ均等に割り振られるイメージになっており、真のファンならどのイニングも楽しめるはず。とはいえ自分としては88年~89年をもっと掘り下げてほしかった。

  • あれからもう15年。消滅した球団近鉄バファローズの関係者に取材したプロ野球愛満ちたノンフィクション。

    2004年11月、近鉄バファローズはオリックスに吸収され楽天ゴールデンイーグルスという新球団が誕生。思えば当時はセパの格差が大きく有望なドラフト候補者が在京セを希望するのが当たり前だった。

    近鉄バファローズ、本書は1979年球団初優勝時の監督西本幸雄から1989年の10.19と翌年優勝の仰木そして2001年代打逆転満塁サヨナラホームランで優勝した監督梨田昌孝を中心にバファローズの歴史を辿る。実際に取材した最後の選手会長礒部公一ほか栗橋茂、金村義明、水口栄二、岩隈久志、ラルフ・ブライアント。もちろん江夏の21球から野茂英雄のトルネード投法と任意引退扱いでのメジャー入りなど、懐かしいエピソード多数。

    本書には出てこないが外国人マネー騒動だったり近鉄バファローズのいてまえ打線、オッサン指数は本当に高かった。阪神タイガースと異なり真に大阪の球団。コテコテさが今となっては本当に懐かしい。

    球団は消滅したが楽天の仙台、日ハムの札幌、ソフトバンクの福岡と千葉ロッテ。パ・リーグの豪快野球が巨人を除けばセ・リーグより地域密着、魅力のある野球をやっているように思う。ある意味でそのための人柱、捨て石となったバファローズの存在があったからこその現在なのだろう。

    近鉄バファローズの魅力を余す所なく伝える楽しい一冊でした。

  • 近鉄バファローズは、近鉄ファンは、人柱となったのだ。

    近鉄が消滅したことによって、パ・リーグは地域密着と健全な球団経営を目指し、ファンサービスを強化したことによってますます球場に観客が集まっている。

    だからこそ、近鉄ファンの心は、宙ぶらりんとなり行き場がなくなってしまった。球界再編で分配ドラフト先となったオリックスや楽天、もはや閑古鳥が鳴く光景はなくなった球団を応援することもできず、プロ野球ファンという大きな括りから溢れだその想いを、一生忘れてはならない。

  • 私は1971年から1982年まで藤井寺に住んでた。

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著者プロフィール

1968年愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。近著に『補欠のミカタ』、『それぞれの甲子園』『野球と暴力』他多数。

「2022年 『トーキングブルースをつくった男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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