そこに工場があるかぎり

著者 :
  • 集英社
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感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087816945

作品紹介・あらすじ

作家小川洋子氏による、おとなの工場見学エッセイ。
あのベストセラー『科学の扉をノックする』の工場版ともいえる本です。
幼いころから変わらぬ小川さんの好奇心と工場愛がじわじわ心にしみて、
今、日本のものづくりに携わる人々と、繊細で正確な数々の製品のこと、
あなたもきっと、とても愛おしく思うようになるでしょう!



細穴の奥は深い (エストロラボ)
お菓子と秘密。その魅惑的な世界 (グリコピア神戸)
丘の上でボートを作る (桑野造船)
手の体温を伝える (五十畑工業)
瞬間の想像力 (山口硝子製作所)
身を削り奉仕する (北星鉛筆)

著者プロフィール
小川洋子(おがわようこ)
1962年、岡山市生れ。早稲田大学第一文学部卒。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、同年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞を受賞。06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。07年フランス芸術文化勲章シュバリエ受章。13年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。20年『小箱』で野間文芸賞を受賞。他書に『薬指の標本』『琥珀のまたたき』『不時着する流星たち』『口笛の上手な白雪姫』など多数の小説、エッセイがある。海外での評価も高い。

感想・レビュー・書評

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  • 大人の社会見学的な感じで、とても勉強になった。
    コロナ禍になり、それぞれの工場も今までとは、違うかもしれないが、だからこそ…今作るべきものも見えてくると感じられた。
    ここには、六つの工場見学のストーリィがある。

    まさしく自分が体験しているような感じになり、夢中で工場の空気を吸ったような気になった。
    それほど、描写も丁寧であり、まるで作り手の息づかいや作業の音までも聞いているようだった。

    ① 株式会社エストロラボ〈細穴屋〉〜細穴の奥は深い

    ② グリコピア神戸〜お菓子の秘密。その魅惑的な世界

    ③ 桑野造船株式会社〜丘の上でボートを作る

    ④ 五十畑工業株式会社〜手の体温を伝える

    ⑤ 山口硝子製作所〜瞬間の想像力

    ⑥ 北星鉛筆株式会社〜身を削り奉仕する

    どの工場も魅力的に感じた。
    それぞれが関わっている製品への妥協のない探究心や尽きることのない誠意、そして真摯に取り組む姿勢が、素晴らしいと思った。

    作業に携わる方の美しい姿というのは、一心で、正確で、無駄がなく、静かでした。と記されていたが、それを伝えてくれたことに感謝している。

    散歩カーを作っている五十畑工業の代表の言葉の重みが伝わってきた。
    ものを作るということの根本は、時代がどう移ろうとも決して変わらない。
    ●地に足の着いた、コツコツした商い
    ●一番を目指さず、一定の器て社会貢献をする
    ●自分の手の延長上に製品がある
    手助け、とはつまり手の体温を相手に伝えること

    まさしく作業するその手、である。
    素晴らしい工場見学を体験した思いだ。

  • 大人の工場見学。
    日本を支えている、決して大きくはないけど、確かな技術を持った工場には、信念を持って、誠実に働いている人たちが集まる。
    社会から見たら、本当に小さなパーツでしかなくても、それがなくては成り立たない。
    世界は一人一人が作っているのだと感じる。
    この技術が失われることがないようにと心から思った。

  • 小川洋子さんが現地取材をした、次の6工場を紹介した本。
    ・(株)エストロラボ(細穴屋)
    ・グリコピア神戸
    ・桑野造船株式会社
    ・五十畑工業株式会社
    ・山口硝子製作所
    ・北星鉛筆株式会社

    作っているものはそれぞれ異なるが、いずれも利用者の安全安心に気を遣い、顧客のニーズを踏まえた使いやすいものを作り、届けようと日々工夫と努力を重ねていることが伝わってきた。
    日本のもの作りの技と心に、感謝とエールを送らずにはいられない。

    小川さんが子供の頃、岡山駅近くにあったお菓子工場のことを書かれているくだりでは、自身の遠い記憶も甦り、お菓子工場への思い入れなど、勝手に親近感を感じたりもした。

  • ◆濃密に戯れるひととモノの姿 [評]重里徹也(聖徳大教授・文芸評論家)
    そこに工場があるかぎり 小川洋子著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/88476?rct=book

    集英社学芸部 - 学芸・ノンフィクション
    http://gakugei.shueisha.co.jp/kikan/978-4-08-781694-5.html

    そこに工場があるかぎり/小川 洋子 | 集英社の本 公式
    https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-781694-5

  • 「作家小川洋子氏による、おとなの工場見学エッセイ」
    とある
    大好きな小川洋子さん
    こんなエッセイも魅力的です
    流石に洗練された文章
    余韻を残します

    見学された工場6社
    それぞれすごい

    物づくりの衰退した国は滅びます
    この国は大丈夫かなあ

    根っこがぐらついているような

    こんな工場があるのは心強いです
    職人さんたちに拍手です

    カバーの小川洋子さんがかわいいな

    ≪ つくりだす 小さな一部 心込め ≫

  • 東京から神戸まで6ヶ所の工場(こうじょう)訪問記。人の手で行う仕事は凄いと思った。

  • 著者らしい上品なフレーズで工場を語ると、甘い匂いがするスイーツ店に変わるとは、大げさかしら。

    いずれにしても、どの工場も魅力的。いろいろな技術の恩恵を受けていることが伝わってきます。

    中でも鉛筆工場のラボに行ってみたい。昔のようになかなか消費はできないけれど、部屋の傍らにあっていつも使ってる長い相棒だ。

  • 楽しく読めました。子供のころ工場見学に行ったこと、思い出しました。今まで自分の身近にあるものでも、どうやって作るのか考えたこともなくって、この本を読むと自分が知らなかった世界を小川洋子さんと一緒に見学している気分になりました。

  • 期待したほどではなかったが、まあまあ面白い~2006年設立の東大阪にある細穴放電加工の工場。菓子・食品の製造および販売会社グリコ。1868年創業滋賀県大津市にあるボート製造工場。1927年創業の墨田区にある大型乳母車工場。1925年創業京都市のガラス管の火炎加工とスリ研磨加工に特化した工場。園ペ角製造およびエコロジー商品の研究開発会社~1962年岡山生まれ、早大卒、芥川賞作家

  • 普段そんなに考えたことないけれど、絶対に誰もが1度は目にしたことがあるような、日々の生活に沿うものをつくる工場巡りエッセイ。

    小川洋子については小説をいくつか読んだことがあるのですが、静謐な美しさとちょっと仄暗いイメージがありました。しかし今作ではそんな雰囲気がなく、ものづくりに興味津々の少女と一緒に工場巡りをしているように感じられて楽しかったです!

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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