日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087816525

感想・レビュー・書評

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  • 身内に自衛隊員がいながら、今頃このようなもの読んでいる自分のアンテナを先ずは猛省。

    フリージャーナリストの布施祐仁氏が防衛省・自衛隊の日報隠蔽を調査報道して稲田大臣達を辞任に追い込んだ事件は記憶に新しいが、隠蔽ばかりがフォーカスされた結果、肝心の南スーダン情勢そのものは然程クローズアップされずに森友・加計問題に突入してしまったから、三浦英之氏パートは貴重。

    「自衛隊大事」ならぬ「自衛隊派遣大事」の日本政府には今更驚かないけれど、南スーダンでの状況を「武力紛争」と認めるかどうかの競り合いの側面に、国際法的な問題点のあることが指摘されている。
    軍法会議が存在しない自衛隊。市街戦になって非戦闘員を誤射した場合、刑法に国外犯規定がないのに「業務上過失致死罪」で処理するのか?って…かなり無理がありませんか?

    ウガンダ北部の難民キャンプ内にある「元少年兵」施設もすごい。そもそも、キャンプの6、7割が子ども、戦災孤児。

    巻末対談で気になったのが、国連PKOの変質。それと、非軍事的な国際貢献。

  • 武力行使にかかる憲法理解には同意できないが当時の経緯がよくわかる

  • 他書の引用で紹介されていたので、自分には珍しくドキュメンタリーを手に取りました。政府の隠蔽体質を暴く丹念な取材は、稲田大臣とは好対象なファクトを積み重ねた結果だったと言えるだろう。著書のようなジャーナリストが居なければ、政府の現実無視(南スーダンの戦闘状態)、実績作りありきで政策をを操る政府の危うい運営の結果、自衛隊から犠牲者が出ていたかもしれない。こんなご都合主義の政権が軍隊を操れる危うさを恐ろしく思う。ただ、著書の考える憲法9条を遵守すれば良いという考えには同意できない。平和は尊いけれども隣国中国と共存していくには、各国と協調しながら自国の責務を果たせるだけの武力は必要だろう。だからこそ、シビリアンコントロールも同時に機能させなければならないと思う。

  • 警察、外務、経産と読んできて今度は防衛省の日報隠蔽事案について読んでみた。情報公開を武器に防衛省に迫るフリージャーナリストの布施氏と南スーダンの現地を取材する朝日の三浦記者の共著。読みやすさ、両者のコラボレーションもさることながら、問題に当事者として取り組んでいった布施氏の着眼と問題を炙り出した能力には脱帽。

    両者の分析を一言で言うと、防衛省・自衛隊は十分な権限の無い中で戦闘に巻き込まれる危険性を、現地部隊中心に認識していたが、安保法制の適用実績を作りたい官邸、自衛隊を売り物にしつ国連常任理事国に入りたい外務の思惑もあり、現地の生情報は出せなかった。そのため、情報公開請求に不存在で対応し、矛盾をつかれ、後手後手の対応と相俟って、最後は大臣、事務次官、陸上幕僚長というトップの退任まで話が拡散したという事案。

    布施氏の分析を読んでいて気付くのは、
    ・やはり正確な情報提供による国論が必要不可欠であること。そうしないと国益を害する可能性がある。
    ・現状の憲法9条の状況は明らかにおかしい。改正して権限をきちんと与えて派遣するか、9条を金科玉条のように守って別の形での貢献とするべき。現状のままでは、事実を捻じ曲げてなんとか憲法の身の丈に合わせて論理構築して派遣するという中途半端な状態に。これでは派遣される自衛官が気の毒であり、国民も半ば騙すことにもなる。
    ・情報の隠蔽は結果としてバレる(部内に不満が必ず残る)。政敵を葬るためのリークもあるだろうが、本件でリークした官僚・自衛官の多くは義憤に駆られたのでは無いかと思う。やはり、物事には大義が重要だと思う。
    ・古賀茂明氏、佐藤優氏の著書にあった行政の無謬性の原則がここでも登場する。一度、不存在にしたものが存在することがあってはならない、国会対策上もたないという黒江事務次官の内部での発言。こうした無謬性を日本の官僚は捨てる必要があるだろう。
    ・布施氏の情報公開の使い方が水際立っている。複数の文書からヒントを見出して問題点を炙り出す。これで国会議員やメディアに火がつくと一気に事案として拡大するというメカニズムになっている。
    ・記者クラブメディアの中でも、右寄りのフジテレビやNHKも本件を追っている。これは、やはり防衛省の対応に問題があれば、メディアスクラムが発生するということ。

    パッと思い浮かぶだけでも以上の発見点あり。良い読書だった。

  • ☆行政の無謬性のゆえ

  • 在野のジャーナリストによる情報公開請求が端緒となり、稲田朋美氏を防衛大臣辞任に追い込んだのか。そして、現地取材記者との見事なタッグでその顛末を届けてくれた。こうして記録で振り返れば、派遣隊員によるかけ替えのない報告を即座に処分したなんて偽りとしか考えられないが、「日報」の存在に着目した布施氏はエライ。正直、隠蔽なんて官民あらゆる組織で茶飯事だろうが、コトがコトだけに晒された意義は絶大だ。それにしても、南スーダンの腐敗ぶりの凄まじさを知る。レイブ、略奪、殺戮。彼らが手にしている武器を製造し、武器商人とつながっているのは国連安保理常任理事国なんだよなぁ。マッチポンプだわ。

  • 南スーダンでのPKOにおける防衛省・自衛隊の日報隠ぺい事件。
    本書は、その端緒となった文書請求を行ったジャーナリストによるルポ。合間合間に、朝日新聞のアフリカ特派員の現地取材が挟まっていることで、さらに臨場感を増している。「戦闘」を「衝突」を言い換え、守るべき自衛隊員を危険にさらしながら、言葉遊びと忖度を続ける上層部。どこまで国民を馬鹿にしたものなのか。
    ありきたりの言葉だが、国民の知る権利を守るジャーナリスト魂に喝采を送りたい。

  • 内容自体はSNSで著者さんたちの発するものをリアルタイムで目にしていたので目新しい何かが得られたわけではないのだけれど、こうしてまとまった形で出ることにご本人も書いてらしたけど意味があると感じられる本だった・これまたご本人も書いてらしたけど稲田氏の‘キャラ‘が立ってたことが幸というよりは不幸だったように感じたけど、問題化したのはそこも大きかったのかな…

  • 布施さんや三浦さんがいてくださる世界とそうでない世界。全く違う世界になる。
    それほどの仕事のできない私(たち)は、せめて彼らの仕事がムダにならないようにしなければならない。

  • 日頃ニュースを追っていないし政治にも自衛隊にも疎い私ですが、すごく分かりやすかった。
    日報隠蔽の深刻さ、PKOの危うさ、現政権の異常さ、日本人の無関心…などなどが理解でき、恐怖しました。
    同時にジャーナリスト、報道の力に期待が持てました。憲法9条のありがたみを改めて感じています。誰かに任せきりじゃなくて、自分たちで守っていかなければと思います。

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著者プロフィール

1976年生まれ。ジャーナリスト、「平和新聞」編集長。著書に『経済的徴兵制』(集英社新書)『主権なき平和国家』(共著、集英社クリエイティブ)『日報隠蔽』(共著、集英社)ほか。

「2023年 『日本は本当に戦争に備えるのですか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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