世界恐慌への序章 最後のバブルがやってくる それでも日本が生き残る理由

著者 :
  • 集英社
3.92
  • (4)
  • (15)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 93
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087815009

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ・欧州の銀行が資金をECBから借り入れるためには、担保を差し出さなければなりません。そうは言っても、何でもかんでも担保にできるということではありません。適格担保の主なものは安全資産の国債などです。LTROというこの新しいECBのオペでは、欧州の金融機関が資金供給を受ける際、適格担保の枠が拡大されました。例えば、サブプライム・ローンを原資とするABS(資産担保証券)なども担保にすることができるようになったのです。サブプライム・バブルの際、ABSなどの社債を大量に買い込んだのは、欧州の金融機関だったと言われています。半ば貸しはがしのような状態で喘いでいた欧州の金融機関で紙くず同然と思われたABSが、ECBが担保として受け入れることによって急に金のごとく価値のある証券となったわけです。ですから、LTROのおかげで資金調達がずいぶんと楽になったはずです。

    ・ドイツは日本とは対照的に、対GDP比で輸出比率が高い国です(日本は約1割、ドイツは約3割)。先進国の中でもオランダやスイスに次いで輸出依存度が高い国となっています。
    なので、ギリシャ危機の長期化でユーロ安となると、ドイツは好況になる。

    ・米ドルを印刷して日本からモノを買うだけでは、米国には赤字しか残りません。しかし、日本の輸出製品も米ドル表示にすれば、日本企業が海外で商品を売れば売るほど日本には米ドルが溜まっていくことになります。その後、日本の輸出企業が手持ちのドルを売って円に換えれば、為替レートが円高・ドル安に振れます。そして今度は「円高は悪」という大義名分のもとに日本政府がドル買い介入を行い、買ったそのドルが米国債に投資されることで米国に戻っていきます。こうしてまたもや、米国から出て行ったドル紙幣が米国内へと還流することになるのです。モノの値段が米ドルで表示されていること、これが米国に資金を集める鍵であり、その成否が借金体質の米国にとっては死活問題なのです。

    ・債権大国であるがゆえに、日本の場合は景気がよくなれば海外への新規投資が促されて円安、景気が悪ければそれがないため円高になるというシンプルな構図があります。

    ・2012年から2016~17年は資本主義最後で最大のバブルが生成されるものと思います。地球規模のバブルが生成・崩壊した後、そのツケを回収するような次の大きなバブルはあるのでしょうか。地球という資源に限りがある以上それは不可能でしょう。つまり、まもなくこうした雪だるま式にバブルを作り上げてきた経済システムは限界を迎えるだろうということです。

    →次のバブルは核融合だろうか。サービス業のGDPに占める割合が増え、労働効率の向上が経済拡大の多くを占めるので、グローバル経済→地球規模→限界、というのは短絡ではなかろうか。PC処理速度のムーアの法則と同様、分子の大きさによる限界みたいなものは存在しそうだけれど、まだ余地はあるのではなかろうか。ただ、バブルをレバレッジをかけた短期利益のための資金移動競争の結果と見るなら、そろそろコントロールできない規模になっている気がする。著者は新しい金本位制への移行が起きるのではないかと予測している。個人的には、参照するべき指標は金ではなくGDPなのではないかと思うのだけれど。

  • 220312岩本沙弓 最後のバブル☆
    世界経済=米ドル覇権基軸通貨体制の本質は「為替」
    だが経済学で為替の問題が扱われることは少ない
    基本は国内経済問題 $覇権体制に触れることはない
    学問=科学ではないというが、現実の経済問題はこちら
    「米ドル体制の揺らぎと補強」が1971年ニクソンショック以来、世界経済のメインテーマ
    現代、2008年リーマンショック後のつけ+コロナ禍対策のつけをウクライナ戦争のどさくさで一旦けりをつけようという腹のように見える
    ロシアの資産を元手に借金をチャラにする魂胆か
    何時の時代になっても「帝国主義」の本質は変わらない

    220228岩本沙弓 最後のバブル☆
    2017年の予言の書は難しい だがその心意気は良し
    リーマンショックの本を2022年10年後に読み直すのは可 歴史の評価を問う
    本書も観点は正当 劇的な金融緩和が資産価格だけを押し上げバブルを生成、巨大化!
    バブルはいつかは弾ける それはいつだ?
    世界の中央銀行の中で日本銀行はいち早く金融緩和、
    非正常の金融緩和
    しかしその資金はドル転しアメリカバブルの生成へ
    まさに金融緩和はバブルの産みの親
    日本の金融緩和を休止した途端に、リーマンショックの発生となったのは偶然ではない

    220225
    異常な金融緩和2016年米国バブル崩壊はズレたが
    トランプ政権のバブル拡大、2020年コロナ対策により更に拡大、2022年いよいよ①戦争か、②ハイパーインフレか、③デフレか、究極の三択!
    ウクライナで戦争が始まった!世界大戦に拡大するのか?

  •  金融コンサルタント・経済評論家の著者が、今年あたりから2016~17年にかけて“資本主義最後にして最大のバブル”がやってくると予測した一般向けの経済書。読者を煽り立てる感じのタイトルはトンデモ本風だが、読んでみたらまっとうな内容だった。

     金融の専門用語も頻出するのだが、そのわりには私のような経済オンチにもわかりやすい本だ。基本的には個人投資家向けの本だが、たんに世界経済・日本経済の先行きを概観した書として読んでもためになる。

     目からウロコの指摘がけっこうあった。
     たとえば、イラク戦争が起きた直接のきっかけは、じつは「原油決済のユーロ転換」にあったという指摘。

     「原油輸出の決済通貨を米ドルからユーロへという、イラクのかねてからの要求が国連で承認されたのが(2000年)10月30日」であり、それは「米ドルの信頼を貶め、世界経済における米国の覇権を根本から揺るがしかねない」出来事だった。
     だからこそ、米国はありもしない大量破壊兵器を根拠にイラクに戦争を仕掛けた。そして、2003年のイラク戦争終結直後、「イラクの原油代金の決済は、ユーロから戦勝国である米国のドルへと戻され」たという。

     ううむ、面白い(もっとも、著者以外にもこうした見立てをする人は少なくないようだが)。
     著者はこのような大胆な見立てを連打して、世界経済の未来を展望していく。
     たとえば、米国が近い将来金本位制を復活させ、そのことによってドルの基軸通貨としての地位を保とうとする、と予測している。

     そして著者は、数年以内に世界に「最後のバブル」が訪れるが、それはその後の世界恐慌の序章である、とする。

     私が3年ほど前に読んで感心した類書に、徳川家広の『バブルの興亡』がある。
     コワイのは、徳川家広と著者の予測が、「もうすぐバブルがきて、その後に大恐慌がくる」という点でピタリと一致しているところ。

     著者は、「最後のバブル」とその後の大恐慌の対策として、“2016年までの上昇気運の間に積極的投資を行い、バブルがはじける前に売り抜けること”を勧めている。

  • 通貨について勉強になりました。

  •  主要通貨を通じてマクロ経済の過去と現在を解説し、近い将来を予測する内容となっています。
     金融、経済のグローバル史をザックリおさらいできるうえ、今後の様々な資産運用についてのアドバイスもある。マクロ経済の本にしては珍しく実用的だ。
     また、過去幾度か世界を揺るがせた「事件」の根源に、じつは通貨を通じた国家の思惑が絡んでいたのではないかとの「仮説」も紹介する。これってある意味、信憑性のある「陰謀論」としても読めるんです。
     いろいろな楽しみ方が出来て飽きません。オススメです。

  • 2010 総務省統計局 GDPにおける日本の輸出に比率14.1% 輸出依存度は低い ドイツは3割以上 韓国40%
    ユーロ 2000/10/26最安値 イラクが原油決済通貨をドルからユーロへ変えた
    オバマ任期終了の2012まで輸出を倍増する、つまり通貨安戦略
    2008/2/17 イラン政府 IOB iranian oil bourese イラン国営石油証券取引所 
    世界3大指標原油 WTI,北海ブレント、UAEドバイ 全て決済はドル
    米ドルの基軸通貨としての価値は、原油価格のドル表示によって支えられているのではないか
    イランの天候は晴天がすくない 砂嵐 比較的天候がよいのは3-4月 イラク戦争の開始、短期決戦
    新規の為替介入で得た外貨で債権を買わずに金の購入へまわすという方法もある
    日本は対外純債権国で、海外から大挙して引き上げられてしまう資金などない
    最近の日本経済はモノを輸出してかせぐ金額よりも、海外からの利子や配当でうけとっている金額が多い

  • 私はバブルが最高潮であった平成元年に社会人になったので、前回のバブルの余韻をかすかに覚えています。それ以降下るばかりの時代が続いたので、私は良い思いをしませんでしたが、今までに何度どなくバブルが起きているのは歴史が示す通りです。

    バブルがはじけて25年になりますが、そろそろ再燃しても時期的には良いとは思いますが、日本の場合はデフレ基調が続いているので、バブルは来るのでしょうか。

    この本では岩本女史が「(資本主義時代の)最後のバブルがやってくる」と題して、これからの株高、そして円安、その後にくる恐慌について解説しています。ゴールドがこれから上昇する、という点では多くの識者と同じ考えのようです。

    岩本女史によれば、資本主義のシステムは2020-30年辺りに限界がきて新しいシステムに代わるだろうと予想しています。それまでアメリカを中心として既存勢力がどこまで踏ん張れるかは興味があるところです。

    この本で、橋本首相がその座を追われることになった彼の回答の全文を読みました(p143)、マスコミが如何に正しい報道をしなかったのかが良くわかりました。とても残念に思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・2015年、遅くとも2016年に株投資をやめる自信がないならば最初から手を出すべきでない(p19)

    ・震災後に原子力発電所が停止したとき、円高であったお蔭で代替エネルギーの材料(原油、天然ガス)が安く手に入った(p25)

    ・ギリシアがユーロから離脱してデフォルト宣言をすれば、欧州機関は総額100兆円とも言われているCDSの支払を迫られて甚大な打撃を受ける(p28)

    ・2012-2016年までが米国主導の資本主義最後のバブルとなる気配(p30)

    ・食糧価格が高騰した最大理由は、先進国の金融緩和による余剰資金が投機マネーとなって商品市場に流入しているから(p34)

    ・バブルの過程では、ドル高・株高・商品高になるが、2017年以降は逆の動きになる、米国覇権はこれをもって終了する?(p36)

    ・中国は2012-16年までは好調を維持し、中国バブルが崩壊するのも世界経済バブル崩壊と同じ時期となる(p37)

    ・2012年は円相場の転換点になる可能性がある、円安トレンドが本格化した場合には、今後3年間で1ドル=100-120円になる(p45)

    ・米国は連合国と結んだ条約である、ブレトン・ウッズ協定によって設立されたIMF協定での金平価の維持を平気で破った、ニクソンショックとは、他の国が受けたということ(p64)

    ・原油輸出の決済通貨をユーロへ変更するというイラクの動きに追随したのは、ロシア、イラン、インドネシア、ベネズエラ、OPEC(p78)

    ・ユーロからギリシアを切り離したら、旧通貨のドラクマを使用することになるので、離脱直後はドラクマ売りになる(p83)

    ・アルゼンチン政府の場合は、2004.6に債務不履行となったアルゼンチン国債と新債券のスワップをしている、元本が70%近く削減、償還期限は2033年(p85)

    ・イラン政府は 2008.2.17にペルシア湾のキシュ島に IOBという原油取引所を解説した、WTI、北海ブレンド、UAEドバイは米ドル建てだが、IOB決済では米ドル以外も使用することになっていた(p99)

    ・イラン原油が初めてIOBで売買されたのは、2011.7.13になってから、取引成立は8.18で50万バレル、1バレル=105.49ドル、実際にはユーロやアラブ首長国通貨で払われたようである、それを受けて2012.1には原油禁輸を含む追加制裁措置に合意した(p103)

    ・イランの天候は快晴となる日がほとんどない、比較的良いのが3-4月の1か月であり、米国が戦争をしかけるとしたらこの時期しかない、前回のイラク戦争開始日も3.20(p111)

    ・東証上場企業で海外売上が50%以上なのは、全上場企業:3618社のうち、287社であり、内需依存型の経済である、輸出が伸びても株主優先であり国民生活に富がいかない(p120,130)

    ・日本から輸出する場合、米国へは米ドル建てが多い(83%)だが、全世界では48%程度で、円建てが40%を占める(p133)

    ・これまでの金の最高値は、1980.1で約6500円/g、各国の通貨ベース並みに2倍になる可能性を考えれば、13000円まで視野に入れることができる(p162)

    ・海外保有者の少ない日本国債が売られるということは、日本人が全体で銀行預金を相当解約しなければ発生しない事態(p196)

    ・これまで日本国債の下落を仕掛けた海外投資家は数多いが、巨額な損失を被ってきた、ジョージソロスも大失敗した(p206)

    ・これまで14回の循環では、景気の谷から数えて10か月後に平均すると18か月でドル円は最安値をつけている、円安への転換は 2012.9である(p216)

    ・日経平均は 22000-24000円を目指す、長くて2016年までが上昇相場、3万円の手前で売り抜けること(p222)

    ・2016年、1ユーロ=1ドルとなり、ユーロはECUに戻る、現時点での各通貨の占める割合は、マルク:30%、フラン:19%、ポンド:13%、以下、リラ、ギルダー、ベルギーフラン(p227)

    ・新金部分本位制が各国で採用されるには通貨制度変遷の歴史から考えて、2030年あたりまでかかるだろう、各国通貨が米ドルではなく金にダイレクトで結びつくという点で、米ドル覇権は終焉する(p237)

    ・バブルを作り上げていた(資本主義)経済システムは、2020年あたりに限界がくる(p240)

    2012年6月17日作成

  • 今までの岩本沙弓氏の著書と少しおもむきが違い、予想に力が入っている。現状分析等はデーターをもとに解説しているのでとても参考になるが、肝心の「最後のバブル」の根拠が理解しづらかった。

  • 投資全般に役立つ。

    2013.2.10 再読
    出版時点での「2012年のいずれかの時点で円高が止まり、円安方向に動き出すという予想が成り立ちます。」という一節にシビレタ。
    通貨分散によるリスク分散は中止して、円のみで運用することにした。
    円安で損がなくなった米ドルMMFも2月6日に全部売却した。
    「2016年までが上昇相場」という一節もよく考えてみたくなった。
    3部作の残り2冊も読みたくなりました。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大阪経済大学経営学部客員教授。91年より外資金融機関にて外国為替を中心にトレーディング業務に従事。金融専門誌『ユーロマネー』誌で為替予想部門の優秀ディーラーに選出。為替のプロとして、いま大注目の経済評論家。『新・マネー敗戦』『世界のお金は日本を目指す』など著書多数。

「2013年 『経済は「お金の流れ」でよくわかる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩本沙弓の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
佐藤 優
高野 和明
宮下奈都
ジャレド・ダイア...
三浦 しをん
百田 尚樹
シーナ・アイエン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×