ペニー・レイン 東京バンドワゴン

著者 :
  • 集英社
3.72
  • (25)
  • (72)
  • (62)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 593
感想 : 69
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087754643

作品紹介・あらすじ

人が人を呼ぶ、この下町の温かさよ……!
銭湯、豆腐屋さん、花屋さん、和菓子屋さん、染小物店……語られてこなかったご近所とそこに暮らす人々にスポットライトがあたる、下町ラブ&ピース小説。
堀田家の絆はますます深まる、大人気シリーズ第18弾!

堀田家の暮らす下町に〈日英テレビ〉のロケ隊がやってくる!? そして迎える、“大引っ越し大会”。そんな慌ただしい日々に飛び込んでくるのは、新規開業するお店の謎や、突然の放火疑惑、思いがけない告白に、大事な家族のメンバーとの別れ……。巡る時代を共にしてきたご近所の仲間たちと、改めて「LOVE」を分かち合う。

【著者略歴】
小路幸也 (しょうじ・ゆきや)
北海道生まれ。広告制作会社退社後、執筆活動へ。2002年、『空を見上げる古い歌を口ずさむ』で第29回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。代表作「東京バンドワゴン」シリーズをはじめ、「旅者の歌」「札幌アンダーソング」「国道食堂」「花咲小路」シリーズなど著書多数。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  東京下町。この昔ながらの人情豊かな町で、古書店東京バンドワゴンを営む堀田家の1年を描く。本作は冬から翌秋まで。シリーズ18作目。
              ◇
     立春といえどまだまだ寒い2月上旬。堀田家は忙しそうだ。理由は2つある。

     1つ目は大掛かりな引っ越しが迫っているということだ。

     春になればイギリスから藍子とマードックが帰国する。藤島ハウスにある2人の居室及びアトリエには現在、研人・花陽・芽莉依が住んでいる。そのため藍子たちの帰国前に部屋を空ける必要が出てきたことで研人たちの移る部屋を確保するべく、大シャッフルが行われることになったのだ。

     ちょうど建築中の新居が完成する増谷夫婦と会沢一家、かずみのいる老人施設に移る池沢百合枝が退去するので、居室の数は合う。ということで、堀田家では引っ越しが立て込んでいるというわけである。

    2つ目は、堀田家のある町内がTV番組で取り上げられるためロケ隊がやってくることになったことだ。
     しかもナビゲーターが町内の大スター我南人と女優の折原美世 ( 亜美の弟の妻で本名は佳奈 )ということで、堀田家が控室( 楽屋?)として使われるのである。

     そんなある日、番組を製作する日英テレビの浦田麻理というディレクターが菓子折を持って挨拶に訪れたのだが……。( 第1話「冬 カフェの向こうに紅茶も出番」) 全4話。

          * * * * *

     久しぶりの『東京バンドワゴン』シリーズですが、堀田家ゆかりの人間が増えすぎて、関係を整理するのに手間取りました。
     でも作品のテンポを思い出せば、そこは馴染んできたハッピーエンドのホームドラマです。楽しいひとときを過ごしました。

     今回はシリーズの大きな転機となる内容でした。

     まず、町内図が変わります。

     かつて町内の角地にありギャンブル好きのマスターが借金で潰した純喫茶サザンクロス。一家離散となりますが、その当時は幼かったマスターの娘が跡地に店を再建することに。

     堀田家の隣のアートギャラリー。経営不振で廃業寸前のところを青が買い取りクリエイターズ・ヴィレッジとして修復再生することに。

     小料理屋「はる」の隣の空き家。長屋造りのためコウ・真奈美夫妻が買い取り一軒に改築。新生「はる」として再生することに。

     居住者も入れ替わります。

     まず、我南人と内縁関係にある大女優の池沢百合枝が、老人施設へ入所するため堀田家を去ります。
     また、元刑事の茅野が妻の郷里の岡山に転居するため町内を去ります。

     レギュラー格の大物2人の退場は、長年のファンとしてはショックでした。( 施設入所や転居の理由については作品をお読みください。)
     
     その代わり、角地に建設予定の純喫茶には新店主となる浦田麻理が母と祖母を連れ埼玉から帰還しますし、増谷夫婦と会沢一家が完成した新居に入居します。
     ( 藤島ハウスには藍子とマードックが入居しますが、これは予定どおりですね。)


     さらに忘れてはいけないのが、人間以外のものの去就です。

     祐円さんの神社の物置に眠っていた刀剣が堀田家に引き取られてきます。江戸時代のもので書付があり、元の持ち主は堀田州次郎(!)であるとわかります。

     そして天寿を全うして逝った飼い猫・ベンジャミンに代わって白い仔猫が堀田家にやってきます。飼い主が現れなければ堀田家で飼おうという話になり、名前をつける段になって、かんなが天啓を受けたように叫びました。「ルウってつける!」。

     州次郎とルウ。堀田家はますます安泰のようです。

  • 第18弾。安定のいいお話。東京バンドワゴンのご近所さん、銭湯、豆腐屋さん、花屋さん、和菓子屋さん、染小物店。変わらない風景、変わっていく風景。
    ベンジャミンの最期には、さすがに涙が出た。かんなちゃん鈴花ちゃんを含めた堀田ファミリーが受け入れている姿にも感動。

  • もう18作目 あっという間に読み終わってしまった。寂しい。というのは次作がまだだから...
    終盤 長年飼っている猫が天国へ、そして次の日に子猫が散歩中についてくる。名前を勘の鋭いかんなちゃんが るう と名付ける。
    その るう 東京バンドワゴン零 スピンオフ作品に登場する女の子。
    繋がるね〜拍手してしまいました。
    次の作品が待ち遠しい。

  • 遠い親戚のおばさんの様な気持ちで読んでいます。
    2011年に「東京バンドワゴン」に出会いました。
    それから出版されているシリーズを読み、毎年楽しみにしています。
    最初に読んだのは、花陽ちゃん、研人君が小学生だったと思います。
    下町で育ったので、なんとなく身近に感じて楽しんで読んできました。
    長く読んでいると、新しく登場した人は何か東京バンドワゴンに関係してくるんだろうなとはわかります。
    いつも大家族の堀田家ですが、昔はそう珍しくなかったんでしょうね。
    今は、なかなか見られませんが。
    勘一さんが元気なうちは、このシリーズ続くと思っています。100歳まで大丈夫かも?

  • 【収録作品】冬 カフェの向こうで紅茶も出番/春 恋の空き騒ぎ/夏 答えは風と本の中にある/秋 ペニー・レイン

    シリーズものとして、序盤での状況説明は親切。親切なんだけれども、シリーズ読者としては少々ウンザリ。なじみの登場人物が顔を出す度の説明も。親切なんだけれども。
    すでに知っていることが多すぎて、新たな事件が薄く感じられる。

    確かに、このシリーズに気持ちの良い読み心地以外は求めていないのだが、それにしても、才色兼備の人格者ばかりが集まり、とんとん拍子に成功していくので、正直浅い。いや、このシリーズにイヤミス要素は求めていないから、いいといえばいいのだけれども。安定感抜群で、それが持ち味といえばそうなのだけれども。ないものねだり、なんだろうなあ。

  • 2004年から毎年、単行本、文庫本が発行される『東京バンドワゴンシリーズ』

    『東京バンドワゴン』の文庫本は単行本発売の1年後。
    だが、これはかなり異例のことのようだ。
    というのも、通常、文庫化までは2~3年と言われている。
    そこには出版業界の事情がある。
    つまりは”出版にかかった費用の回収”ということで…
    それが『東京バンドワゴン』は翌年文庫化される。
    それだけ待ち望むファンが多いという証明か⁉

    そんな『東京バンドワゴン』も今年は第18弾!
    18年間続く人気シリーズということだ!

    「東京バンドワゴン」は東京の下町にある古書店。
    そこに持ち込まれる謎を堀田家の人々が
    人情味あふれる方法で解決する。

    「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ」
    昭和のホームドラマへのオマージュが根底に流れるこの小説。
    そのタイトルはずっとビートルズの曲名。
    今年は『ペニー・レイン』

    著者の小路幸也さんによると
     <レイン>となると日本人はどうしても<雨>を思ってしまうのですが、
    原曲の題名は<Penny Lane>
    つまり無理やり日本語にすると<銅貨通り>で町の<通り>の名前なんですね。
    ならば<ペニー・レーン>と表記したくなりますが、
    日本での正式な曲名表記が<ペニーレイン>なのですよ。
     今回はそのタイトル通り、
    <東京バンドワゴン>と堀田家がある下町の<通り>を主役にした物語になりました。
     読者の方はご存じの通り、堀田家周辺ではこの春に多くの引っ越しを控えています。
    ならばビートルズも歌う<懐かしいあの通り>という<ペニー・レイン>に乗せて、
    堀田家がある<通り>のご近所さんたちのことをきちんと書いてみようと思いました。
    今までも物語の中で、
    ご近所に多く存在するお店のことはちょこちょこと書いていましたが、
    メインにすることはありませんでした。
    (引用:集英社「東京バンドワゴン」シリーズ)

    読み終えると、また来年堀田家の人々と出会うことが待ち遠しくなる『東京バンドワゴンシリーズ』
    今から楽しみだ。

  • <羅>
     巻頭にある「登場人物相関図」に度肝を抜かれる。これは思うにバンドワゴン初心者の為にあるのだろうけど,僕らの様にのっけの巻からずっと読んで来ている者にも十分貴重で役に立つ。そしてズバリ言ってしまうと,これがあっても、初心者には何がなんだかわけが分からないだろう。笑う。ではどうする。初心者は何度も読め!わはは。あ,すまぬ。早くも高言だった。

     もうとっくに亡くなっている現店主勘一の嫁(名前覚えてない 調べるのも面倒)が 東京バンドワゴンという名前の由来や 家族全員の紹介やらをすませて,その日の朝ごはんをみんなで食べるところまでに優に40ページ近くを毎巻消費する。よく毎年この部分書くよなぁと感心する。が,一方で毎巻同じような事を書けばなかば自動的に40ページも進むんだとしたら そりゃあまあ17年でも続くはなぁ,とまたも天邪鬼的りょうけんは思ってしまうのだった。すまぬ。

     各場面の登場人物がとにかく多いので,いちいち全員の挙動を書き表わさないと行けない。全部件の亡くなったおばあさんが語るのだが,でも 天の声/神の声ではないので色々気づかう事もある。まあ 言うたらめんどくさい,と云う事なのだ。ここでも、まあ良く飽きずに書いているなぁ,小路君。

    段々と哲学的領域の落ちで巻が締めくくられる展開になって来ている。別に悪くはない。力の続く限りシリーズを存命させてくれたまえ、ジョージくん。

  • 今回も様々な出会いもあり別れがありました。あまりにも話が出来過ぎ?な面もありますが、それがこのシリーズの醍醐味なのかもしれません。今後の東京バンドワゴンも益々楽しみです。

  • 東京バンドワゴンの第18弾。
    今年もまたお会い出来ました。
    子供達の成長は目覚ましいものがありますが、それを見守る勘一さんや我南人さんも健在です。
    色々な別れもあるけれど、益々家族の輪が広がって、一層の賑わい。
    さて、青の活躍が次回には楽しめますかね。

  • どう生きるかは、自由なのです。誰と比べるものでも、比べられるものでもありません。
    喜びや嬉しさを感じるその力で、前に進んでいけばいいのですよ。
    サチさんの言葉が心に染みる。

全69件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1961年、北海道生まれ。広告制作会社勤務などを経て、2002年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction』で、第29回メフィスト賞を受賞して翌年デビュー。温かい筆致と優しい目線で描かれた作品は、ミステリから青春小説、家族小説など多岐にわたる。2013年、代表作である「東京バンドワゴン」シリーズがテレビドラマ化される。おもな著書に、「マイ・ディア・ポリスマン」「花咲小路」「駐在日記」「御挨拶」「国道食堂」「蘆野原偲郷」「すべての神様の十月」シリーズ、『明日は結婚式』(祥伝社)、『素晴らしき国 Great Place』(角川春樹事務所)、『東京カウガール』『ロング・ロング・ホリディ』(以上、PHP文芸文庫)などがある。

小路幸也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×