やめられない ギャンブル地獄からの生還

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087753950

作品紹介・あらすじ

国内推定200万人。まさか自分は…と侮るなかれ!ギャンブル依存症は、進行性の病気なのだ。様々な症例と共に、この病の全貌を紹介し、立ち直りへの具体的な治療を明らかにする。患者のギャンブル依存と闘う、作家・精神科医の緊急レポート。

感想・レビュー・書評

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  • ギャンブル依存って、意志が弱いからなってしまうのだと思っていた。でも違うんですね。覚醒剤と一緒で意志の力ではどうにもならないらしい。全く理解できないけど。一万円を見ると10万円に増えると思ってしまうらしい。脳内物質ドーパミンが関係しているらしいがギャンブル依存になったら家族が気の毒。自助グループで立ち直る人も多いらしいが一日一日が大変だなぁと思った。それも覚醒剤を止めるのと同じ。

  • 著者は山本周五郎賞や新田次郎文学賞などを受賞している小説家だが、メンタルクリニックを開業している現役の精神科医でもある。
    そして、医師としてギャンブル依存の治療にかかわりつづけ、啓発活動も積極的に行なっている。

    本書は自らの治療経験をふまえて書かれた、ギャンブル依存(本書の表記は「病的ギャンブリング」)についての入門書である。

    ギャンブル依存がどれほど恐ろしいか、どうやったらそこから抜け出せるのかが、実例をちりばめてわかりやすく書かれている。

    ギャンブル依存といっても、本書で取り上げられた実例の大部分はパチンコ/パチスロ依存である。競馬狂の例がごく一部だけ出てくるが、その人もパチンコ依存を“併発”している。

    なぜそういう構成になっているかといえば、じつは日本ではギャンブル依存のうちパチンコ依存が圧倒的多数であるため。これは世界で日本だけの特殊事情である。

    著者のクリニックを初診した病的ギャンブラー100人の統計をとったところ、そのうちじつに82人(しかも、女性患者は全員)がパチンコとパチスロによってギャンブル地獄にはまり込んでいたのだという。

    ギャンブル地獄といえば競馬や競輪、あるいは非合法ギャンブルにのめり込む人を思い浮かべがちだが、じつはパチンコ依存のほうがずっと“身近な地獄”なのである。

    我が国のギャンブル産業の規模は年商約30兆円だが、そのうちパチンコ・パチスロ業界が22兆円以上(出版業界の11倍以上)を占めているという。

    《要するにわが国のギャンブル産業の年商の約8割を、パチンコ・スロットが占めている計算になります。従って、病的ギャンブラーの8割強がこのパチンコ・スロットによって生み出されているという統計上の事実も、ごくごく当然の帰結なのです》

    本書の前半は「ギャンブル地獄の手記」になっており、6人の病的ギャンブラーが著者のクリニックにくるまでの軌跡がまとめられている。

    それは著者が聞いた話をプライバシーに配慮したうえで文章化したものなのだろうが、さすがに第一線の作家だけあって、迫力がものすごい。「面白い」と言ったら語弊があるが、ギャンブル依存に陥った者の心理が我がことのようにわかる内容なのである。

    私も昔1年間ほどパチンコにハマった経験があるから、他人事とは思えなかった。幸い私はやめられたが、一歩間違えばこの手記に登場するような状態になっていたやもしれないのである。

    後半は、自助グループへの参加と定期的通院によって、患者が社会復帰していく道筋がたどられている。地獄に堕ちた人々が這い上がり、蘇生していくプロセスは感動的である。

    こんな一節がある。

    《精神科の臨床医として、人間性を回復した患者を目にするときほど嬉しく、感銘を受けることはありません。
     人間性を回復した患者は次の三つが自然に口をついて出るようになります。

     ・ありがとう
     ・お世話かけるね
     ・ごめんね

     そうです。普通の人なら日常生活でよく口にするこの三つの言葉を、病的ギャンブラーは一切言うことができなくなっています。それは、感謝とねぎらい、謝罪の気持ちが、失われているからに他なりません。
     まさしくこの意味で、病的ギャンブリングは生活習慣病であり、その治療は生涯教育なのです》

    「ギャンブル依存など私には関係ない」という人であっても、人間心理の一つの究極が描かれた本として、興味深く読めるだろう。
    優れた文学がそうであるように、ここには「人間が描かれている」のである。たとえば、次のような一節――。

    《(家族が問いただしても)本人はすべての借金を白状しません。180万円の借金があっても、150万円としか言いません。6社くらいのサラ金に借金があっても、1社くらいは口をつぐんでいることが多いのです。
     これは病的ギャンブラーの見栄でしょうか。180万円の借金よりも30万円少なく言うことは、見栄なのか自尊心なのか、それともプライドの表れでょうか。
     そうではないのです。全く借金のない状態が怖いというのが真相でしょう。借金まみれの生活を長年してきているので、全く借金のない生活が居心地が悪いのです。
     あるいはこう考えてもいいかもしれません。借金を少し残していれば、次の借金がしやすくなります。借金ゼロの状態から借金するのと、少々借金がある状態から借金を増やすのとでは、とっかかりやすさが違うのです。しかも、少し借金が残っていると、その借金をまたギャンブルで返してやろうと、自分を奮い立たせることもできます。借金のない状態では、ギャンブルに対して気合いがはいりません。
     そんな馬鹿げた心理など、到底理解できないと言う家族の方もいるでしょうが、これほど、病的ギャンブラーの頭の中では常識では考えられないことが起こっているのです。その意味では、借金の一部を白状しないで黙っておくのは、次のギャンブル再開への準備段階と言えます》

    ギャンブルと人間をめぐる深い考察にも満ちているし、歴史から拾い出したギャンブルをめぐるエピソードの数々も興味深い。

    たとえば、第2次大戦後にシベリアに抑留された日本人兵士の、無惨なエピソード。
    兵士たちは手製の花札を使って賭博に興じていたが、「ある兵士は、なけなしの食事3食分を賭け、負けてしまい、餓死した」という(!)。

    要は、ギャンブル依存に陥ると脳がイカれてしまい、正常な判断ができなくなるのである。
    その点についても医師の著者らしく、ドーパミンの代謝異常による脳内報酬系の不均衡などと、ギャンブル依存がもたらす脳の異常について考察されている。

    パチンコ依存の恐ろしさを知り抜いている著者は、普通の市民がたやすくパチンコ地獄にはまりやすい状況が放置されている日本の現状に、警鐘を乱打している。たとえば次のような一節を読むと、「たしかに異常だ」と思わされる。

    《最近では、託児所を設けるパチンコ店も多くなりました。ギャンブル場に託児所を置く国など、どこを探してもないでしょう。生まれたときから、ギャンブル場で過ごす幼児が、大きくなってどうなるのか、自明の理です。光と音とざわめき、臭いの刺激が幼い脳に刻印され、将来パチンコ店に入ったとき、母胎回帰のような安心感に包まれるはずです。
    (中略)
     また2007年からは、パチンコ店の中にATMを設置する動きも始まりました。上限値は設けられるものの、顧客はいとも簡単にその場でお金を引き出せるのです。高齢者を引きつける点で、パチンコ業界と銀行業界の思惑が見事に一致したのでしょう。ギャンブルの害などは一顧だにしない、儲け優先の情けない姿勢です》

  • やめられない
    帚木蓬生

    依存症は「虚言」「借金」が必ずある
    ギャンブル産業は30兆円、医療産業と同じ!

  • 自分はパチンコ含めギャンブルはしないのでわからないが「手記」を読んで人道を外れている内容に驚愕した。借金の肩代わりをしないこと、情けをかけず本人の借金のはあくまで本人が少しずつでも返済していく重要性、さらにカジノの誘致や利権問題など取り締まれないことが課題。自助グループの代表のギャンブラーズ・アノニマス(GA)、悩める家族のための自助グループ、ギャノマノンの存在を初めて知る。

  • 借金と嘘(「これっきりギャンブルはしない」)が2大特徴
    親族が借金を肩代わり返済するのは無意味
    ※エネイブラーになるだけ。また隠れて借金する。

    月一回の通院と、週一回のGA通いで
    依存症を克服できる
    薬が出せない治療に、医師は冷淡、との指摘も

    112 パチンコ・スロットが入り口。500万台。海外では賭博扱い
    123 シベリアの日本兵。花札に3食かけて餓死
    201 医師の冷淡
    212 耐性=大穴狙いになる。離脱症状、幻覚はさすがに少ないが不眠と焦燥の中で、競走馬の名前呼ぶ患者も
    227 ニアウィンの仕掛け。パチンコ店内にATM?
    儲け優先の情けない姿勢

    現実を見ざる
    忠告を聞かざる
    本当のことを言わざる

    本人に大きな金額の金を持たせない
    領収書などで出費を確認する
    借金は本人んい返済させる。場合によっては債務整理も。

  • 日本でパチンコがギャンブルとして規制されてないのはなんか匂いますね。縦割り行政、法のイタチごっこ。怪しい。そもそもこの本を読むまでパチンコをギャンブルだと思っていた自分が恥ずかしく、また、なかなか刺激的な本でした。まだパチンコも競馬も競輪もやったことがないピュアな僕ですが、依存症の恐ろしさをここまで突きつけられると、いい意味か悪い意味かは分からないがギャンブルをやってみようという思いが阻害されます。少しでもやってしまうとそこがよの末で、そのままズルズルと。ギャンブルだけでなくお酒とかタバコとかもです。もしかしたら、戻れなくなってしまうかもしれない自分が怖い。いい予防薬になったのかな?

  • 伊集院さんのオススメ。いつか読んでみたい

  • 患者の手記が、救いがなくて怖い。
    レバーを押すと脳内麻薬が出るというマウスの実験。
    人間は理性的でその辺の動物とは違うという意識があったけれど、結局このネズミと同じというのがショックだった。意志が弱いという次元の話ではないのだ。
    今の日本には、ギャンブル依存に陥るきっかけとなるものが溢れすぎている。
    先進国とは思えないな。

  • パチンコはギャンブルじゃないって警察が強弁したり、ギャンブル依存症の母親のために治療所ではなく託児所つきのパチンコ屋があったり、パチンコ屋の中に銀行ATMがあったり。狂ってる。

  • 興味深く読ませてもらいました。
    治る病気なら 早く治してあげた方が幸せな人は
    いっぱいいるんだろう。この病気広く知られた方がいい。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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