斬られ権佐

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 87
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087745818

作品紹介・あらすじ

好いた惚れたは八丁堀の顔にひとすじ体に八十八の刀傷。おとこ権佐のこころ意気。江戸暮らしの哀と歓。連作時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 名人の仕立て屋次郎左衛門を父に持つ権佐は岡っ引きをしている。吟味方与力菊井数馬の手先。数馬がずっと憧れ続けていた長崎へ修行中の外科医麦倉洞海の長女あさみがいよいよ兄と修行を終えて帰郷するという。数馬にいかに素晴らしい女性かとなんども聴くうちに権佐もいつしか憧れるようになった。
    数馬はもちろんのこと、いろいろなところから、嫁にと請われたがあさみは次々と断ってきた。
    ある晩、断られたことの腹いせに江戸詰の藩士が友人たちとあさみをむりやり襲ってきた。偶然にもそこに出くわした数馬と権佐。権佐は刀で斬られ八十八箇所もの傷を負う。
    とても助かるとは思えない傷だった。
    あさみは、文字通り身を呈して守ってくれた権佐と夫婦に。
    99箇所もの傷は完全にもとどおりにはならず、後遺症を残した。だが、数馬の元、岡っ引きとして働くうちに少しづつ回復していった。

    そんな権佐をいつしか『斬られ権佐』と人は呼んだ。
    この夫婦を主軸に、父親の元不完全な体で、仕立て屋を手伝い小者働きもする主人公は、悪いことをしそうな奴を諭し事件をおこさないようにできれば、、、と。そんなことを至福に仕事に励む。

    いくつかの事件を短編のように紡いだのがこの本。
    どれもこれも、話をして、互いの哀しみを慈しむように
    より良くと願う主人公の働きは、とても愛情豊かだ。
    いつまでも苦痛を纏う自分の体。いつ消えて無くなるかもしれぬ命。周りの人々に愛情深く接し、一つ一つ事件を解決してゆく。

    泣かせられ通しの一冊でした。

  •  主人公権左は、後に妻となる女医者あさみを護るため、無法な旗本に膾切り切りに刻まれ、全身に八十八箇所もの傷を負いながらも、奇跡的に生き残る。

     物語はその後、奉行所与力の配下として、江戸の犯罪に立ち向かう権左と、彼の妻となり、人の命を救い続けるあさみ、そして、二人の間に生まれ、両親と周囲の家族の愛情を一身に受けて育つ子供、お蘭の3人家族のある期間を描く連作。

     権左は、その傷の所為で、自らの命が永くはないことを知りつつも、限りある時間を、愛する者たちと共に、精一杯生きる。その日々の暮らしは、家族としての愛情あふれるものだが、一方で、彼の身には既に死が間近に迫っていることでの緊張感を秘めて流れる。権左自らはこう言う、「自分は生と死のはざまに生きている」と。

     権左が事件の犯人たちに向ける視線は、限りなく厳しく、そして優しい。峻烈なまなざしで、生きるということ、死ぬということを、彼らに徹底的に問いかける。時に無言のまま為されるその問いかけによって、罪人たちは断罪され、かつ、救われることにもなる。

     そして、自らを救うがために、命を投げ出してくれた男の、それからの人生と、その終い方を、彼に深い愛情と尊敬と抱きつつ、静かに見届ける覚悟をして生きる妻、あさみ。

     二人の物語は、とてつもなく熱く、静かに進む。

    最後に、権左は再びその命を、愛する者を護るために燃焼させる。

  • 岡引の権佐が主人公。

    あさみの命を助け、八十八箇所の傷を負う。あさみはそんな権佐に惚れ、ケガを直し結婚する。傷だらけの権佐は子供を設け、短い命をあさみと子供とお役目のために精一杯生き、あさみも必死に支えるが、とうとう最後は誘拐された娘を助けるため死んでしまう切ない話。

    岡引としての推理はちょっと跳び過ぎて無理がある感がある。

  • 女を助ける為に傷らだけになった権佐。
    長生きできないと言われながら仕立をし、小者を務め、そしてひとを愛して生きていた。
    連作人情捕り物話。いい話だった…!

  • 友人のすすめで読了。
    八十八箇所も刀傷があって、今生きているのも不思議なくらいっていう人が岡っ引きとして役目を勤めている。
    親子愛に溢れた人情捕り物帖。
    時代劇が好きな人は絶対はまると思います!

  •  読了。

  • いつの時代も、人の心は闇と光が同居してる。
    それにしても権佐、粋な男だな〜w

  • 権佐が何故「斬られ権佐」と呼ばれるか、ってそれは、妻であり、医者でもあるあさみとのなれそめに起因する。
    権佐は瀕死に一生を得たが、体中、顔中に切られた後が残った。
    その風貌とは裏腹に人情味が厚く、八丁堀の与力の菊井数馬の小者として町を守る。
    その彼の存在は、家族の中でも友達の中でも街でもでかかったなぁ。

    こちらまで寂しくなった。

  • 小者権佐の感と推理に与力はとても及ばない。妻で医師あさみも信念の人として描かれている。それに引き換え、与力は、当世役人評価とよく似ていており、妻に対しても権力風を、あまつさえ悪代官まがいの行動に!あらら。伊佐治に比して何とのう心もとないのもいいが、もう少し人物構成変えてほしいが無理かのう

  • なんでかなぁ・・・こういう話にはとことん涙腺が脆くなってしまうんですよねぇ・・・。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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