定本 岳物語

著者 :
  • 集英社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087743470

作品紹介・あらすじ

いつかあの背中にとび蹴りだ!すこし昔の激しくもウツクシイ父子のものがたり。加筆、再編成。あとがき42枚、"岳"本人のエッセイ。見返しには直筆原稿の未発表短編を収録。完全版。

感想・レビュー・書評

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  • 岳物語は続も含めて3回位は読んでいると思います。それなのにこの「定本」を読む理由。それは岳の文章が巻末載っているという事が大きいです。
    椎名誠を父に、そして僕の敬愛する野田知佑を友とする岳少年。年代で言うと恐らく僕と同年代だと思います。
    直情径行だけれども明るく自分の道を進む彼の姿は、弱腰な少年だった僕にはまぶしく、「ああ、やはり生まれた環境で色々ちがうんだな」と大人ながらに振り返っていました。
    しかし考えてみれば大ベストセラーの主人公たる少年に、図らずも抜擢されてしまった彼の心境を慮ると、そんなに単純な事でもないなあと感じています。

    僕自身は父親と遊んだ記憶も、二人で出かけた記憶もありません。確か8才くらいの時に帰って来なくなり、10才の頃には離婚して影も形も無くなりました。
    元々子煩悩さは皆無の父だったので全く寂しくもなんともありませんでしたが、この本読んでると、父息子っていいなあとしみじみ思います。
    椎名さんの岳に対する視線はとにかく優しい。厳しいと自分で思ったりしているかもしれないけれどとにかく優しい。実際うらやましいです。こんな父親欲しかった。
    忙しい仕事の最中を縫うように岳と釣りに出かけ、彼との貴重な時間を噛みしめるように文にしたためる父。仕事で、ノリで書いてしまったとはいえ愛が無ければ書かない本でしょう。
    そしてこの本の最後にある定本の椎名さんのあとがき、そして岳の文章が胸にずきんと来ます。彼の20才の頃に葛藤と戦いながら書いた文章がとてもいいです。父親の名声のくびきから自然と離れ自分の道を歩いている自信と不安が滲んでいて、そこはかとなく家族の信頼感も書かれています。この文章だけでも過去に読んだ人が再度手に取る価値があります。
    あとこの本の良い事は、岳物語、続岳物語で余計だった旅エッセイ部分が削除されて非常にすっきりしている事です。これによって長く読まれるに堪えうる本になっています。

  • 椎名誠の息子岳君と家族、父と息子の物語。
    ベストセラーであり、名作と言えるだろう。息子に好きなようにさせ、プロレスごっこをして、カヌーや釣りをして、一緒になって遊び回る。
    椎名誠氏の一番の教育方針は、自分のことは自分でする。いいなぁ、こういうの。
    だけど、こんなふうに書かれた息子が怒るのは、当然だよね。

  • 若い頃は岳君のおもしろエピソードを笑って読んでいたけど、人の親になるとまた違った目線から読むことができて興味深い。

  • 先日読んだ『岳物語』は意外に面白くなかったが、この本には岳本人のあとがきがあると知って読んでみた。
    結論。『続岳物語』は素晴らしい。
    親子がうまくいっている時より、ギクシャクし出した頃の方が小説の深みが増しているし、椎名誠の筆力も上がっている。
    正続つづけて読むと、少年の成長がよくわかる。書き手の父親は変わらないだけに、より印象に残る。
    岳本人のあとがきも大変良かった。岳さんは、いい息子である。グレなかった上に、父親を恨んでいない。まっとうに育って、椎名誠も心の荷が降りただろう。
    それにしても沢野ひとしの発言には腹が立った。
    父親は一日10分子どもの相手すれば充分って、母親はそれ以外の時間はほとんど相手していることはどう思ってんの?
    昭和の父親はある意味ほんと無責任だね。

  • なんとなく読み返したくなって。

    いまや三児の父となった岳少年。エネルギーのままに全速力で駆けている子ども時代が、永遠にここにしまわれている。岳君自身によるあとがきや、シーナ隊長の他の本でも書かれているとおり、そのことで父を恨んだり距離を置いたりした時期があるというのは、ファンとしては胸が痛むが、まあ当然の成り行きなのだろう。

    それでもこれは本当にいい本だと思う。岳君が「この物語とは関係なく自分の人生は続いてく」と書いているように、現実のシーナファミリーとは別のものとして、ここで書かれた家族の姿は永遠だ。

    蛇足だけど…。前から思っていたのだが、椎名さんや岳君が出会った学校の先生って、つまらない人やいやな人ばっかりのようだ。なんでかなあ。とても残念。

  • 【推薦文】
    この本ではプロレスと釣りが大好きなシーナ家の長男・岳の成長が描かれています。さらに、その内容は親子の愉快で、そして美しい愛情物語です。また、その軽妙さに時が経つのも忘れ、どんどん読み進んでいけます。国語の教科書で読んだことがある人がいるかもしれませんが、再度読むとまた感じ方が違うでしょう。
    (推薦者:知能システム科学専攻 M2)

    【配架場所】
    すずかけ台: 3F-一般図書 913.6/Si

  • こんな家族のありかたがあるのかと驚かされる内容。文章は面白いのですが、やはり共感というか理解はできないですね。

  • 小学校の時、初めて読んで、それから何度か読んで、今回久しぶりに読みたくなり。

    小学校の時は、岳が父親による散髪を初めて拒否した文章にとても共感した覚えがある。親の気まぐれで切りたくないっ、自分で決めたいって。

    もう少し大きくなってからは、岳が野田さんという大人の友達を持っている事にとても憧れた。

    そして、今、子供が2人いてさらにお腹に男の子がいるワタシが読んだら、シーナ的子育てに感心し、そしてこれから産まれてくる男の子との生活がヒジョーにワクワクどきどきしたもので、そして男の子との密な生活はあっという間なんだなという事を思い知らされた。

    家族がほんとに密な時間、どれだけその時間を面白がれるか。
    そんなテーマを自分の中で見つけることができた。

  • 知り合いにおすすめしてもらった本。
    わたしにはそこまで感動やらはなかった。
    だけどこーゆう家族がいるものなんだなぁと思った。

  • 父子関係、こうあるべし!
    すべての息子を持つ父親に、読んでほしい本です。

    [03.5.31]

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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