みどりいせき

  • 集英社
3.51
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087718614

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な疾走感がある文体で、一気に読まされました。世界の多様性。

  • すばる文学賞の受賞の筆者のスピーチに胸を打たれて読んだ。

    小説の冒頭部分はなかなか入り込めなかったが、次第にふつうの純文学の小説になってきて、ようやくリズムが掴めた。

    何度も隠語を検索して、ほー、なるほど!と思いつつ読み進めた。なんでもかんでも調べてたらアルゴリズムが発動して、Googleさんは私をヒップホップに憧れてるウブな田舎の女子高生と認識しちゃったらどうしよう⁈と思ったりしつつ笑

    大麻でキマった状態を言語化しつつ、途中でハラリの認知革命の話なんかも散りばめて、なかなかのバランス感覚。

    ただ、社会問題のノンフィクションも好きなので、その読書経験から、この小説に出てくる子たちの置かれた状況や将来を憂える大人の私が読んでるうちに何度も出現してしまい、純粋に小説を味わうのを邪魔してしまった。
    小説にそんな倫理は必要ないんだけどね。

    ただ、リアルなのか?というと、その点ではこの小説にはいい子たちしか出てこないのが、どうなんだ?と思う。密売組織の元締めらしき大人とていい人だし。そんなことはないでしょうよ。そこは描きたくないのかな?

    だから、この小説にはこの子たちの背景も描かれてないし、マイナスの部分(例えばここで行われるであろうセックス)が描かれてなさすぎにも思えた。この「ヤサ」の中では、肩を寄せ合う友情ばかりが描かれているが、いやいや実際はそんなもんではないよね、と冷ややかな目で見てしまいがちになってしまう。
    なにもかもリアルであれとは言わないが、流石にこんな心身ともに清らかな若者たちが薬物を売ったりはしないよー。

    つまりはやはり、シャイな小説なのである。

    ハッピーになるには、小説を書くの頑張らなくては、と受賞式でも言ってたし、生まれてくる子どものためにも、次回作を期待したい。

  • なにこれ、めちゃくちゃおもしろい!!!
    自分の肌で感じてるみたいに、
    桃瀬の感覚がそのまま流れ込んでくる。
    そこは普通だったら踏み入れない世界で、
    でも内側から見てみれば、
    ある意味無垢で、
    キラキラした開けた場所のようでもあり、
    袋小路のようでもあり…。
    眩しさが痛かった。
    こんな刹那的な青春を
    羨ましいなんて思うわけにいかない。
    いかないけど、あれ?
    桃瀬たちのことを思い出してたらすでにもう、
    あそこに戻りたい、
    もっかい読みたい、ってなってる…。
    中毒性、、、ヤバ…!

    すばる文学賞の「受賞のことば」として、ふぁにーちゃん(と呼んでほしいと書いてた)がリリックを披露する場面を音声で聞いたんだけど、それがすごく胸に迫ったので以下に一部抜粋。

    すばる販売されても前途は多難
    書く前に人間生きるのは苦難
    11月号の発売の翌日から
    イスラエルでハマスのテロ
    みどりいせきへのレビュー
    増えれば増えるほど
    比例して増すガザへの
    報復の惨状の報道も
    わけも分からず
    20分おきに死んでく子ども
    生きてるだけで罪悪感
    社会の傷もう見たくない
    世界の裏を知りつつも
    目をふせ綴る平和な日常
    そんなくだらないの書いて
    意味あんの?
    小説家って社会の何に役に立つの?
    歩みを止めて自問自答
    虐殺を止められない国際社会の一員
    それがうち

  • 最初は何を読まされてるのかと思ったけど、ふいに訪れる疾走感に乗ったらそのままブチ上がる。
    なるほど。これがバイブスか。

    すばる文学賞の受賞スピーチを先に読んでるから特にそう思うけど、作者の平和に対する希求をものすごく感じるよね。
    それが登場人物にも溢れてるよ。
    みんなめっちゃいい人なの。びっくり。マジびっくり。
    特筆すべきは鳴海先輩ね。そんなことあるってくらいの器の大きさだよ。マジ憧れ通り越してキュンですだよ。
    グミ氏も大好きだなぁ。

    彼らを縄文人と言うつもりは作者とてないんだと思うけど、みんな根っこは同じだよねってことだよね。

    こういう青春の描き方もあるんだなぁと思うよね。
    ともあれ出てきたみんなに幸あれ!

  • 第47回すばる文学賞受賞

    うわーそこで終わっちゃうのか。
    こういうのめちゃくちゃ好きだ。

    「わからないことは少し寝かせたいから、僕は家に帰ったとしてもなるべく眠るだけになっていた」

    熟考することが難しくて道を外れてしまうときにこそ感じる生きづらさを書くのががすごく上手。

    受賞スピーチをきいて、そこに目を向けさせてくれてありがとうと思った。

  •  すばる賞授賞式における圧倒的にラップなスピーチに心惹かれて読んだ。スピーチで魅せた言語感覚が小説にそのまま持ち込まれており読んでいるあいだずっとワクワク、フワフワしていた。そして概念としてのヒップホップが小説の中にきっちり取り込まれており最近のブームと呼応するようで嬉しかった。そしてこの装丁よ…!人生トップレベルで好きです。
     主人公は高校生。うだつの上がらない毎日に退屈する中、大麻のプッシャーをやっている幼馴染に巻き込まれる形で大麻稼業に巻き込まれて…というあらすじ。非行に走る若者達というプロット自体は特別新しくはないが本著は文体と視点のユニークさがとにかく際立っている。文体については口語スタイル、具体的には若者言葉やギャル語が大量に使われており小説でこういった言葉に触れる新鮮な体験に驚いた。「キャパる」とか本著を読まないと一生知らなかっただろうし、こういった分かりやすい単語に限らず、ひらがなの多用、ら抜き言葉などカジュアルな崩しも多い。一時が万事、正しい方向へと矯正されていく世界に抗うかのように、イリーガルに戯れる高校生たちが瑞々しくユルく崩れた日本語で描写されている。一番分かりやすいのは皆でLSD摂取したシーン。文字だからこそできるゲシュタルト崩壊のようなトリップ表現がユニークだった。
     視点については冒頭のバタフライエフェクトスタイルで度肝を抜かれた。卑近になってしまいがちな青春小説のスケールを一気に大きく見せて本著の世界がどこまでも広がっていくようなイメージを抱かせる。それは後のドラッグ描写へと繋がっていき文を通じて世界のダイナミズムを目一杯いや肺一杯に吸い込むことができる。また主人公の幼馴染である春という人物の性別を限りなくファジーにしている点も示唆的で男女を区別する世間の記号を入れつつも裏切ってくる。他者が性別を明確にする必要はなく春は春なんだという意志を感じた。
     大麻が題材になっており売買や吸引時の様子など含めてかなり細かく描写されていた。ウィードカルチャーとヒップホップは不可分だ。具体的な固有名詞の引用があったりステルスで仕込まれたりしている。(個人的にブチアガったのは「どんてす。」これはNORIKIYOもしくはブッダブランドか。)こういった具体的な引用以外にも前述した文体を含めて小説の中に大量のコードがあり、そこに概念としてのヒップホップを感じたのであった。またプロットやカルチャーの引用など含めて波木銅の『万事快調』を想起する人も多いはず。しかし明確に棲み分けがあり波木氏が直木賞、大田氏が芥川賞をとる。そんな未来がきたとき文学においてもヒップホップが日本で根付いたといえるのかもしれない。

  •  小学校の時に少年野球でバッテリーを組んでいた主人公とヒロインが高校で再会するお話。

     青春小説というジャンルではなく、読後感はこんな小説があってよいのか?という衝撃を受けた作品です。

     一言で言えば、

     「文字による麻薬」

     です。

     私は、この1年間、本の虫と思うくらいの読書をしたという自負がありますが、読書って薬だなと思うことはあっても「麻薬」だと思ったのは間違いなく本作品が初めてです。

     まず、冒頭20ページくらいの感想は、正直、何を書いているのかサッパリわかりませんでした。

     何なら、これは読み切れる自信がなく挫折入だろうなと早々に思ったのは、2年前に出会った『三体』以来です。

     今、1日100ページペースで本を読む私が60ページ読むのに3日かかったというのがこの本の意味不明さであったり、ただ、文字を追うだけの地獄を経験したことを物語っていると思っていただいて大丈夫です。

     序盤で楽しめるなら最高の作品だと思います。

     そんな、もう無理!と何度挫折しかけたかわからない本作品ですが、本作品の恐ろしさは、慣れたときの麻薬感です。

     これ、本作品のダジャレなんじゃないかと思うくらいに、本作品の表現に慣れると、変に癖になります。

     作者が狙ってやっているのか、はたまたま意図せずにやってるのかわからないですが、どっちにしろ天才だと思うほどに、ハマるととことんハマる文章だなと思いました。

     60ページ読むのに3日かかった私が残りの150ページを2日で読み切ったことでお察ししていただければと思います。

     何を感じたかというのが私の読書感想であったり、レビューなのですが、本作品はそれよりも文章の中毒感が凄い作品だなと思いましたので、何を感じたとか、バカバカしいくらいです。

     もちろん、いろんなことを思うところはあるのですが、それはもうええわとなるくらいに、中毒性のある作品だなと思いました。

     いやぁ、麻薬って、怖いですね。

  • あまり気にしたことなかった「すばる文学賞」受賞作。紹介文に金原ひとみさんと川上未映子さんの選評コメントが。この二人がおすすめしているとなると読むしかない

    #みどりいせき
    #大田ステファニー歓人
    24/2/5出版

    #読書好きな人と繋がりたい
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    #読みたい本

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  • 最初は読んでいて慣れるのかなーって思ってたけど、段々面白かった。人を選ぶと思う…
    内容も淡々と人の会話を覗き見ている感じで新鮮。こんな小説はじめて!て感じ
    あとは、ほんとに文章が見たことないけどうちらには馴染む、って感じだし、その上で文学性を感じれる文章だから凄く新鮮で勉強になった。影響を受けれて感謝!と思う。文章を見るだけでも読む価値あり。

  • まるでラリってなくてもラリってるような会話の連続な上、分からない言葉(例えば『フォグってる』『ブリっちゃった』等)の嵐の中に巻き込まれている感じだった。
    ただ、仲間内でしか分からない言葉と言うのは、使っていて気持ちが良いんだろうなと何となく思う。

    昔バッテリーを組んでいた春と再会し、なし崩しに闇バイトをすることになってちょっとお金も貰えたりしていい気分になってたけど、それなりに(身体的に)痛い思いもするという話で、普段関わることのない世界をかいま見たよう。
    悪いことに脚を突っ込んだ若者たちが危機感もなく楽しく生きており、(現代の日本の若者は皆楽しくなさそうに私には見えているので、それに比べてこの小説の若者たちは)幸せそうに思えた。とは言え、やっぱり危ないことには首を突っ込んでほしくないな。

    彼らがこの先どういう生き方をするのか、将来どうなるのかなんて関係ない。今を楽しめばいいのだ。

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