- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087718553
感想・レビュー・書評
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実在の阿部定事件のフィクション。定に関わった幼少期からの人物、金の付き合いの男達も含めて相当な厚みの内容だった。主人公は定に局部を切り取られた妾の息子が裁判記録や定の関わりに直接インタビューした記録と言う形をとっている。
内容がだけにエロい箇所は多いが、それ以上に人間の脆さと、壊れる前に踏みとどまる人間の対比が哀しく描かれている。 -
〈阿部定事件〉、恋愛沙汰の猟奇事件?というイメージしかなかったので、読む前に調べてみたらやはり私の苦手なグロ系事件…
読み始めるのには勇気がいったけど、結局めちゃくちゃ面白くて数日で読み終えてしまった!
ある青年が阿部定本人や関係者に話を聞き、〈阿部定事件〉の証言として手記にしていくんだけど、初めは私も好奇心剥き出しで読んでいたのが、いつのまにか阿部定にシンクロしている…
事件の山場ではもう、阿部定に乗り移って私まで一生分の情念を使い果たしたかのようで、しばらく茫然としてしまった。
調べたとき「グロっ!」と思ったのに、この感情は、全然遠い世界のことじゃない。人を愛すれば誰でもこんなふうになるのだとさえ思わせられる…
いろんな人への思いが高まりすぎて、最後の証言では、名前を見ただけで涙が溢れてしまった…。 -
凄いものを読んでしまった…。
有名な阿部定事件。幼少期にTVでチラッと見てあまりの猟奇的事件に恐怖を感じた。阿部定の幼少期から事件後を周りの証言と共に多角的に、事実と虚構を交ぜ描かれている。何故事件は起きたのか…。
現代で言う境界性パーソナリティ障害、愛着障害なんだろうなと感じた。執着、依存。どちらか一人が少しでも冷静でいられたら…出会うべくして出会ってしまった二人。
出会ってから25日であそこまでのめり込み殺してしまうとか。
愛なのか…? -
最初はちょっと読みにくく感じたけれど、すぐに慣れて物語の中に引き摺り込まれた感じ。
阿部定事件は名前とざっくりした内容しか知らなかったので、興味が湧いてしまいこれから調べようと思う。
2人は純愛だったのかど変態だったのか。
今となってはわからないだろうけど、定のおにぎり食べてみたかったな。
読み応えがあったのでまだ阿部定の濃厚な余韻がムンムンする。 -
#読了 #二人キリ #村山由佳
『アベサダ=首を絞め殺し局部を切り取った』としか事件を知らず、まさか懲役六年のところを恩赦でたったの五年で出所していたのにはびっくり。
定の生い立ち、人となりと事件に至るまでの経過、そしてたった25日間の狂気の愛のすべてが描かれている。
インパクト大です。 -
うわー、これまたすごい本を読んだな。
有名な「阿部定事件」を題材にした本作。
フィクションなんだけど、これが事実のような気がしてしまう。
226事件の同じ年にあった事件だったのか。
恩赦で5年で出てきたとか、坂口安吾がインダビューしたとか、今とは当たり前だけど時代が違うのだなぁと。
定を知る人の証言の読んでると、彼女の悋気に辟易し、なんて嫌な人なんだろうと思っていたのに後半は、彼女にやっぱり共感は出来ないんだけど、ちょっと愛しく思えてくるから不思議だ。
ほんのひと時の恋というか大恋愛が一生を変えてしまい思いもよらない所に来てしまった感じが怖くもあり運命だったのかなとも思う。
ただ14歳のときに無理やり処女を奪われたとなってるけど、無理やりなのか?仕掛けたのは定からなのでは?そこだけ被害者ぶられるのがちょっとだけ微妙。
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とうとう読み終わりました。
『阿部定事件』を舞台とした小説を書くために取材を続ける吉弥さんのストーリーと取材をした人たちの証言のパートがあり、分かりやすく物語に入り込めました…が、時々これって吉弥さんが書いた物語に入り込んでる??って混乱してしまうところもあり、いつもより時間をかけて読んでしまいました。
読んでみての阿部定さんの印象としては相手を燃え尽くす程の愛情?独占欲?、、、なんとも言葉にし難いものをもつ女性だったんだなと思いました。
実際の阿部定さんの証言なども書かれていたので。
その熱のようなものを持つ一方でズブズブと沈み込むような孤独が根っこにあって抜くことができなかったんだなとも思いました。
本書を読むまでは阿部定さんは『炎』のような人かなって思っていたので、表紙の2人で水に沈み込むような様子が??ってなっていました。
読み終わって納得、2人きりでうんと深いところで、誰にも邪魔をされない世界でずっとって思っていたのかなぁなんて。 -
阿部定という奔放な美しい女性が、なぜ愛人を殺害し、男性器を切り取り持ち去ったのか。
彼女は愛人を独り占めしたかったからそのような行動に及んだのだと思う。
自分は片時も離れたくない、と思っているのに、相手は本宅へ帰ろうとしていることも、定の感情を駆り立てた一因だ。
一緒に居た期間は短かったものの、定と吉蔵の燃えるような数日間は凄まじかった。これほど互いを求め合う者達をこれまでに見たことがない。
吉弥も自分の父親を殺されているのにも関わらず、定の魅力に浸かっていく様子が分かる。(性的な意味では無い。)
定を知っている者の証言を読んでいくと、定を悪く言う人、良い印象を持っている人、悪く言いながらもどこか憎めない人など様々で、彼女の人間的魅力に感服する。
定が吉蔵との関係を「悲恋ではない」と言うシーンが好きだ。全力で愛したからこそ、後悔がないのだと思う。
吉蔵は死ぬ時に、大して抵抗しなかったように思う。まるで定になら殺されてしまっても良いと言うように、あっけなく逝ってしまった。
吉蔵がそのまま生き続けていたとしたら、2人の関係はどうなっただろうと考えると、別れる運命しか思い浮かばない。やはり、定はああするのがきっと良かったのだろう。 -
定の置かれていた状況とその時々の心情が丁寧に描かれていた。これまで、定が強行に至った動機がよく分からなかったが納得した。
定と吉蔵には、当人同士にしかわからない愛の絆が存在し、縛られずにはいられなかったことが伝わってきた。お互い片時も離れられないくらい愛する人と出会えることは幸せだけれど、維持できなくなるとその苦しみは計り知れないと感じた。