ブレイクニュース

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717525

作品紹介・あらすじ

ある目的のため、女はひとり、立ち上がった。

ユーチューブで人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌なども相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると以外な過去が見えてきて……。
デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新な社会派小説。


【著者プロフィール】
薬丸岳(やくまる・がく)
1969年兵庫県生まれ。2005年に「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞、2017年に短編「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。他の著書に「刑事・夏目信人」シリーズ、『悪党』『死命』『友罪』『神の子』『ガーディアン』『蒼色の大地』『告解』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • 「ブレイクニュース」という野依美鈴という29歳の女性ユーチューバーの活躍する連作短編集です。
    短編が続いていって一つの長編小説にもなっています。

    野依美鈴はいつもパンツスーツ姿でブラウスのボタンを上から二つ目まで開けているのがトレードマークの活動的な女性に見えますが、最後まで読むと美鈴の意外な過去が現れて驚きました。

    ブレイクニュースは再生回数が非常に多いユーチューブチャンネルです。
    美鈴は言います。
    「世の中のほとんどの人はわたしを嫌うでしょう。おそらく99.99パーセントの人が。でも0.01パーセントの人は私を認めわたしの味方になってくれるかもしれない。一億人がわたしのことを知れば一万人が味方です」

    扱われる問題は「幼児虐待」「8050問題」「虚偽告訴罪」「パパ活」「ヘイトスピーチ」「SNS上によるネットリンチ」「医療過誤」など。

    「パパ活」「ヘイトスピーチ」などの言葉は恥ずかしながらこの小説で初めて知りました。
    「ヘイトスピーチ」の章がすごく社会性を感じられる内容で読みごたえがありました。
    美鈴の取材によって解決した問題も多く、読まされました。

  • 作品紹介に記載があるように、引きこもりやパパ活、冤罪、ネットの炎上など、現代の社会問題を取り上げたユーチューバーの物語。こうした事件について、真実を抉り出すのは、YouTubeか週刊誌の記者か。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、過激な動画。ユーチューバー野依美鈴の番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体は。

    組織に縛られないユーチューバーならではの自由度による疾走感と、一つ一つのニュースを通じた人間模様とどんでん返し劇が、漫画を見るようで面白かった。

    再生回数は知名度や資金となり、影響力となり、取材力となる。ペンは剣より強しだが、言葉にせずとも相手の反応を伝える動画はそれらより強そうだ。同じ目線で同じシーンを見れば、大抵は同じ感情を引き出す。そうして取材対象をストーリー化し、無言の主張も可能となる。

    しかし、取材される側はたまらないなという恐怖も。こうした新たな文化が、人間社会全体に監視の雰囲気を与え、クリーン化していく一因かも知れない。良し悪し。

  • これまでと趣向の異なる薬丸岳7冊目。youtubeを使った情報発信によって社会を煽動するが、真実、正義、女性の強さが垣間見える。人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』によって児童虐待、8050問題、冤罪事件、医療過誤を当事者から真実をあぶりだす。その話術は卓越している。自分を含め、何故youtubeを見るのか?SNSで情報を得るのか?多分、真実って何か?を知りたいという欲求に駆られている。それを知った後、何が変わるのか?独りよがりの満足感を得るだけなのかもしれない。今後、野依美鈴の続きが見たい。

    『きみはすべてを諦める前に死ぬ気になって闘ったことがあるのかな』

  • 構成は良かった。
    内容も面白かった(怖いけど)。

    しかし(専門用語を私は知らないのだが)なんというか活字の割り振り?配置?が悪い部分が何ヵ所もあった。
    というのも、視点を持つ人物が「1行の空白」によってどんどん変わるのだが、その「1行の空白」が見開きの右ページの最後(つまり見開きのほぼ真ん中)または左ページの最後にあると、その空白に気づきにくい。
    すなわち見開きの真ん中で、あるいはページをめくった時にメインの人物が変わってしまっていることがあり、しばらく混乱してしまうのだ。

  • 上司の指示で、ユーチューバーの問題を調べることになった、週刊現実の真柄。
    広告収入のため、裏どりもせずにアップする素人の記者ごっこ、と最初は見下していたが……。

    連作短編集。

    不必要な煽りや、炎上狙いではなく。
    どちらかの側につくのでもなく。

    真相をあぶりだして、視聴者に提示していく、野依美鈴。

    クールで切れ味鋭く、痛快。

    うまく行きすぎる感はあるけれど、ネットニュースがこんな風にいい影響を及ぼせたらいい。

    「正義の指」の最初の加害者家族の発言には、引っかかるものがあった。


  • ブレイクニュース
    巣立ち
    嫌疑不十分
    最後の一滴
    正義の指
    ハッシュタグ

    ユーチューブの人気チャンネル
    ブレイクニュース
    リポーターの野依美鈴は年齢経歴不明の謎の美女

    ブレイクニュースが扱うのは、
    目の前にある大きな社会問題の数々。

    マスコミとは違う独自の取材と切り口で、
    問題を鋭く切り裂いて過激な内容の動画を配信し
    視聴者を増やしていた。

    謎の人物である野依美鈴が、社会に向けて
    本当に配信したいニュースとは何か。

    SNSの怖さ、ネット社会の危うさ、
    人の心に潜む妬み、傲慢、身勝手、善悪を
    デジタル社会を背景に描いた小説。

    読み応えありました。
    一気読み。


  • ユーチューブやSNSといったネットツールとして欠かせなくなった媒体を使って、読ませるエンタメ作品として書かれた本作、これまでの薬丸さんの作風から言えば変化球のような味わい。最高に面白かった。
    「ブレイクニュース」の究極の目的は何か、野依美鈴とは誰なのか、という最初からのテーマでずっと引っ張っていかれて最終章で正にその謎がブレイクするのがたまりません。でも「あ、これで終わるの?」と感じたのは私だけではない気がします。
    これ、ドラマ化していただきたいなぁ。

  • 説明 (Amazonより)
    ある目的のため、女はひとり、立ち上がった。

    ユーチューブで人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌なども相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると以外な過去が見えてきて……。
    デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新な社会派小説。




    テレビは偏った報道が多く ネットは情報が多すぎて もはや何が本当のことなのかわからない。
    ネットニュースの見出しにちょいちょい騙される。
    内容を最後まで読んだら 見出しとは違うと思うことがしばしば...印象操作し過ぎ...
    なのに見てしまう自分が馬鹿なのか...
    このコロナ禍で人々はさらに分断されてしまうのかな?

  • 独自の取材で社会問題を切るネットで話題の「ブレイクニュース」。制作しているのは、身分の分からない「野依美鈴」と名乗る女性一人。
    「野依美鈴」とは何者なのか?
    週刊誌の記者・真柄はその存在を気に掛けるが、なかなか実態が暴けないまま、「ブレイクニュース」で取り上げる様々なニュースが気になっていた。
    児童虐待、ヘイトスピーチ、8050問題、パパ活など、時には過激に被害者だと思っていた人間を追い詰めることもある「ブレイクニュース」。美鈴の本当の目的は何なのか?
    個人的にYouTubeも観ないし、SNSと言うSNSもやっていないので、ネット上の誹謗中傷がどれほど人の心を傷つけているのか、でも、どうしてそんな中でみんなSNSを続けているのか、ちょっと理解出来ない部分もあるのだが、実際にニュースになっているSNSによる誹謗中傷の実態が少し分かるような気がした。
    匿名で人を批判して、何が面白いのか、個人的にはよく分からないが、作者が女性を主人公で作品を描くことは珍しく、これまでの作風と少し違うのが面白かったけど、重厚感が足りず、物足りない気もした。
    他の方のレビューにもあるが、個人的にはラストからの「野依美鈴」のその後が気になる。

  • 現代の社会問題について考えさせられる内容だった。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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