- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716887
作品紹介・あらすじ
すぐそこにある未来は、こんな奇妙なものかもしれない。
廃墟化した高層マンションの老人が消えるわけ。汎用型AIが人を超えた時に起こる異変。
アグリビジネスから逃れた種の行き先――。
『小さいおうち』『長いお別れ』の著者が贈る、初の近未来小説。
とつぜんあの女があらわれた日は、雷鳴が鳴り響き、雹がばらばら降った日だった。しかも、あろうことか彼女は海からやってきたのだ。ドーニを一人で操縦して――「キッドの運命」
十四歳のミラは、東洋人の祖母が暮らす田舎で夏休みを過ごす。おばあさんばかりがいるその集落には、ある秘密があって――「種の名前」
人工多能性幹細胞から作った子宮? ぼくは、寝起きの顔をぶん殴られたような衝撃を受けた――「赤ちゃん泥棒」 他、全6編。
【著者プロフィール】
中島京子(なかじま・きょうこ)
1964年東京生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。出版社勤務ののち、フリーライターに。米国滞在を経て、2003年『FUTON』で小説家としてデビューする。10年、『小さいおうち』で第143回直木三十五賞受賞、14年『妻が椎茸だったころ』で第42回泉鏡花文学賞を受賞。15年、『かたづの!』で第3回河合隼雄物語賞、第4回歴史時代作家クラブ賞作品賞、第28回柴田錬三郎賞の三冠を達成し、同年『長いお別れ』で第10回中央公論文芸賞、第5回日本医療小説大賞を受賞。
感想・レビュー・書評
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SF苦手〜
ごめんなさい。
赤ちゃん泥棒は、まあまあ好きだったけど。
でも、これがあればいいなあって思うこともたくさん出てきてちょっと羨ましかった。
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2度の原発事故で、人間の暮らせる場所が減った日本だったり。
体外受精はもちろん、人工子宮も当たり前に使われたり。
人間より賢い、汎用型人工知能が可能になったり。
近未来を舞台にした短編集。
「種の名前」がよかった。
家電でも種でも、なんにでも名前を付ける、瑠璃おばあちゃん。
そのネーミングセンスがたのしく、名付け方に愛情が感じられ、ほっこり。
孫のミラとの距離感も心地よかった。 -
著者初の近未来小説とのことだが、それを意識しないで読んだので、何となく違和感が感じられた。しかし内容はとても面白く、著者の新境地が体験できて良かった。
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「ベンジャミン」「ふたたび自然に戻るとき」「キッドの運命」を読んだところで嘆息した。本や映画が、近未来をユートピアでなくディストピアとして思い描くようになった転換期はいつからだったろうか・・・。初めて中島京子さんが近未来に取り組んだ作品は6話の短編集。作品に共通するのは、日本は2度の原発事故に遭い列島の半分が沈没し首都は福岡となる設定だった。そう来て当たり前だろうと実感できるのが悲しい。3作読んだところで読むのを控えようかと迷った。
でも4つ目の「種の名前」で踏ん張れた。
主人公・ミラは母親を日本人に持つアメリカに住む十四歳の少女。日本の田舎に住む祖母を訪ねる。深い森に老女たちが農業をしながら共に暮らしている。瑠璃おばあちゃんは細い腕には自動翻訳機付き通信機、腰から下には運動補助機能ロボットを付けていて歩行が楽そう。実は私も年を取って足腰が弱くなったら少々値が張っても補助ロボットを買い山に登ろうと計画しているので少し気持ちが上向きになれた。家には介護ロボットがいて”お清”とお祖母ちゃんは呼んでいる。名前を付ける事で、機械が生活の中に溶け込み人間と機械との関係が温かく感じられた。
次の1編「赤ちゃん泥棒」には、生殖技術が発達した未に人工子宮が一般化した世界が現れ、ゲイカップルや高齢者夫婦の出産・子育てへの道が開かれている。妊娠した妻が勝手に堕胎。憤慨した夫は人工子宮手術を受けて子供を産むというストーリー展開。凍結した卵子や精子を体外受精して受精卵を子宮に戻すのは”今は昔”なのだとつくづく思わされます。
最後の「チョイス」は安楽死を扱った話。
星新一のSFショートは読み辛い私ですが、本作はそれなりに愉しめました。 -
近未来の短編集。
思っていたより近い未来の話で、実際にこんな風になるのかなと思った。
その様子がちょっと奇妙なものなので、読後感はあまり良くないかも。
「種の名前」は好きだった。 -
近未来小説の六作品が収録された短編集。
どの作品も「奇想天外な未来」ではなく、現代から予測できる将来、未来を描いており、「あり得る未来」ではないかと思わせる内容だ。
単なる未来を面白おかしく描くのではなく、小説として登場人物たちの心情等を丁寧に描き、読者を小説世界へと導く。さすが中島京子だという作品。 -
6つの近未来短編。どう紹介すべきか、かなり困ってしまいます。
共通した背景は2度目の地震と原発事故によって壊滅しつつある日本。それをベースに各短編で遺伝子工学、生殖技術、ロボット、AIなどを扱います。各短編の世界感のつながりは極めて弱く、背景だけは共通。その為に却って中途半端感が有ります。
全体的には技術革新に対してネガティブなディストピア小説です。とは言え、優れたSF小説の様に一つの近未来を構築して見せるようなリアリティは無く、寓話という見方でも強いメッセージ性を感じられません。中島さん自身がインタビューで言っているように「ふだん目にする情報や身近な話題の中からひっかかってくるものを」テーマに「自分の心配や、あるいは若干の希望を織り込みながら、『こんな未来を考えてみた』」という作品です。そうなるとSFでとも言えず、さらに中途半端な感じがします。その上に基本的にディストピアを描いているため、中島さんの最大の長所と言うべき「不思議な可笑し味」があまり出て来なのです。
と言うわけで、それなりに面白く読めるのだけど掴み所の無い作品。そんな感想です。 -
R6/2/14
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中島京子さんに求めるものではなかったかも
大いなる皮肉を感じた