カム・ギャザー・ラウンド・ピープル

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716771

作品紹介・あらすじ

第161回芥川賞候補作
高山羽根子『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』
7月18日発売決定!!

おばあちゃんは背中が一番美しかったこと、下校中知らないおじさんにお腹をなめられたこと、自分の言いたいことを看板に書いたりする「やりかた」があると知ったこと、高校時代、話のつまらない「ニシダ」という友だちがいたこと……。大人になった「私」は雨宿りのために立ち寄ったお店で「イズミ」と出会う。イズミは東京の記録を撮りため、SNSにアップしている。映像の中、デモの先頭に立っているのは、ワンピース姿の美しい男性、成長したニシダだった。
イズミにつれられてやってきたデモの群衆の中、ニシダはステージの上から私を見つけ、私は逃げ出した。敷き詰められた過去の記憶とともに、私は渋谷の街を思い切り走る、ニシダにつかまらないように。

【著者略歴】
高山羽根子(たかやま・はねこ)
1975年富山県生まれ。2010年「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作を受賞し、デビュー。2015年、短編集『うどん キツネつきの』が第36回日本SF大賞最終候補に選出。2016年「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞を受賞。2019年「居た場所」で第160回芥川龍之介賞候補。「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」で第161回芥川龍之介賞候補。

感想・レビュー・書評

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  • ヘルメット、おばあちゃんの背中、雪虫、ダウンジャケットの羽毛、ハクチョウ、チャイカ、工事現場、学生寮と、一見、何の脈絡もない数々のキーワードが、最後に綺麗にまとまる様には、美しさと悲しさが同居しており、何とも言えない切なさを感じたのだが、どこかユーモアめいて見えるところと、まんまと作者の術中にはまってしまったという爽やかさもあって、しんみりとならない感じは、高山さんの作品の好きなところかもしれない。

    私の中で、オチの衝撃度、整合性が凄かった感覚が未だに忘れられず、これだから小説を読むのは止められないですね。

  • 「私」の今までの人生で起こった出来事が淡々と、テンポよく語られていく。
    背中の綺麗なおばあちゃん。小学生のころ、お腹を舐めてきたおじさん。中学生だった「私」の身体を触ってきた大学生。人身事故(飛び込み自殺?)の電車に乗っていたときのこと。嵐の夜、立ち寄った店で出会った人たち。高校のとき、自分の話を面白がってくれたニシダ。

    デモの中心人物(シンボル的存在?)となっていたニシダと再会した「私」は走って逃げ出す。
    ニシダは追いかけてきて「私」に謝る。当時のレイプのことを謝る。

    -------------------------------------------

    本当に淡々と幼少期からのエピソードが並べられていくので、面白エッセイを読むような感覚でページをめくっていた。けれど、語り手の「私」が小学生、中学生、高校生の時期に性被害に遭っていて、それを今まで誰にも話していないということがわかっていくなかで、これは単なるほのぼのエピソードではないとわかった。

    オートバイに乗る際にかぶるヘルメット。
    おばあちゃんが見たがっていた雪虫。
    人身事故のとき舞っていたダウンジャケットの羽根。

    いままで「私」が誰にも言ってこなかった過去の記憶が、何かの象徴のようなものとしてヘルメットや羽根を何度も何度も「私」の頭に浮かばせていたんだと思う。

    淡々と進むのに、本当に言いたいことは言わない。けれど、だんだんとわかってくる。
    これぞ小説、という感じだった。こういう作品に出会えたときが一番嬉しい。タイトルと表紙も素敵。秀逸。

  • 『うどん、キツネつきの』が良かったので、このところ芥川賞候補になっていて、やっぱりただのSF作家ではないよなあと思っていたのだが、候補作は読んでいなかった。で、読んでみる。
    老眼で細かいものが見えないおばあちゃんとお母さんのバトルや、「しょうゆで煮しめたような」顔のおばあちゃんの背中が白くてきれいだったとか、小学校のとき変質者(と昔は言われていたが、今考えると小児性愛者)と出会った(と言えば聞こえがいいが、被害にあったと言うのが正しい)とか、通勤電車が人身事故で止まったとか、自然災害でいつもと違う駅を使ったとか、あるあるみたいな話が淡々と続き、それはそれで面白いのだが、一体どうなるんだろうと思っていたら、ちゃんと最後に繋がったので驚いた。
    それから、これ、性犯罪被害の話だってことにも驚いた。
    すごい。
    命に関わりない犯罪、特に「いたずら」と言われるような軽微な(と男社会は思っている)犯罪がどれだけ普通に転がっているか。
    もちろん、この作品が伝えたいことはこれだけじゃないけど、私にはこの点が一番心に響いた。
    高山羽根子、他も読まなきゃ。

  •  起こったこと・存在することを、宙にただよう小さな虫のように気にせずに生きる主人公。存在するものが視力の問題で見えなくなった祖母。でも祖母は、祖母にしか感じ得ないものを感じていたのではないか。飛び込み自殺した人・高校時代の友人・たまたま入ったバーの店員。デモにつどう人々。他人同士は簡単にはつながれない。つながる必要もない。成長するとは例えば、その人が自分では気づけていないものを見出し、いつくしむことができるようになること。怒りの表明ではなく、世の隅にただようかすかなものを見出すために、手を握りしめよう。

  • 読んでいる時よりも読み終わってからじわじわとくる。
    同じ物を見ていても、人によって見えているものたと見えていないものがある。おばあちゃんが見えていないものはなかったことにしているお母さんの優しさとか、カメラを回すと映画のような映像がとれるイズミの視点とか。主人公が冷静に受け止めている様子がよかった。


  • ある女性の四半世紀程の人生。
    人の記憶って、何でもないことが忘れ難かったり、逆に忘れているふりをしていたり、そんなことがあるよなぁ。この小説を読みながら、自分の記憶の都合の良さや曖昧さのことを思いましたね。

  • 嫌なものを嫌とはっきり言えないけどその時に感じたなんでもないようなことをめちゃくちゃ覚えているみたいなのはあるよね
    読み終えたあとなんとも言えない気持ちになりました

  • めちゃくちゃおもしろかった。
    主人公の小さい頃、学生の頃、今、ついさっき、場所もバラバラのいくつもの小さな記憶やストーリーが、最後にジュルジュルっと繋がっていくスピードが、読むのが気持ち良すぎた。
    高山さん、初めて読んだ。全部読みたい。

  • なんの先入観もない文体。純粋というのか空虚というのか。終盤に行くにつれ、白いふわふわのキーワードが集約されていくさまに、なんとなく西加奈子「ふる」を思い出した。

  • 文章が素晴らしい。
    透き通っていてとても瑞々しい。ずっとこの文体に溺れていられる。凄く好き。
    POPなだけじゃ終わらせない。

    おばあちゃんの背中 一番きれいで、しかもエロかったんだよ。

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著者プロフィール

1975年富山県生まれ。2010年「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作を受賞し、デビュー。2015年、短編集『うどん キツネつきの』が第36回日本SF大賞最終候補に選出。2016年「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞を受賞。2019年「居た場所」で第160回芥川龍之介賞候補。「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」で第161回芥川龍之介賞候補。2020年「首里の馬」第163回芥川龍之介賞受賞。その他、『オブジェクタム/如何様』『パレードのシステム』などがある。

「2023年 『ドライブイン・真夜中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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