- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716573
作品紹介・あらすじ
2026年の東京。心臓に“原子炉"を埋め込んだ、東京生まれの少女・谷崎ウラン。隔離された「森」からやってきた天才騎手・喜多村ヤソウ。彼らが出会うとき、東京を揺るがす事態が巻き起こる──。
感想・レビュー・書評
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舞台は震災、原発事故、東京オリンピックを経た近未来の日本とフランス。野性的な生命力をもった少年ヤソウとロボット化された少女ウランの出逢い。クジラの歌、疾走する馬。あらすじだけ読んで、龍さんぽいかも!と思って手に取ってみた。
読む者の心臓の鼓動とシンクロするような龍さんの流麗で端正な文体と異なり、古川さんのそれは、かなりいびつで詩的で実験的とでもいうのかな。あれ?もしかして、英語の語順で日本語書こうとしている?と思わせられるところもあったり。私にはちょっととっつきにくいというか、乗りにくい文章ではあった。そして何より内容が私には難しかった……。
しかし、意外にも終盤は一気読み。最後にタイトルの意味がわかって暗澹たる気持ちになったけど、希望(というか祈りに近い?)が提示されるのがよかった。
ふと思ったのは、龍さんが世界全体を描きながら、あくまで個人の生き方を問う一方で、古川さんは個人の生き方を描きながら、世界全体を突きつけようとしているのかな、ということ。よくわからないのだけれど。しつこく龍さんと比べられても迷惑だろう。すみません。
もう古川さんの作品を手に取る機会はないかもしれないけれど、たまにはこうして自分には難しい作品を読む余地を残していたいと思った。
追記:作品中に出てくる「疑似家族」みたいなものは、結局なんだったのかよくわからなかった。気になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
断念
すげーつまらん 日本嫌いなのかなこの人…私も好きじゃないけど
大都市が水没して、都市の上に大樹が茂り人々はそこに住んで、透明標本のような魚が空を浮遊している みたいな未来予想図は私も中1の夏休みに考えたことあるけど、今考えたら誰かの書いたイラストの押し売り なんかそれを思い出した
本は全部読まなきゃとおもう、タチですが これ以上は時間の無駄と思い、諦めた むねーん
117pまで -
独特の世界観で一回じゃ理解が難しい。たぶん分かったらとても面白いのだと思うけど、ついていくのがやっとだった。最近古川さんの本はそんな感じが多くて読むのに一苦労するな。
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良くも悪くも、2011年3月以降の古川日出男氏"らしい"作品。
舞台は東日本大震災とその後に連なる出来事を、現実とは違う形で経験したパラレルワールド。
きのこ、鯨、馬、などといったモチーフを登場させてつなぎとして使いつつ、それぞれの世界を緩やかにリンクさせてはいるが、如何せんすべてが拡散し過ぎ、気持ちの良い収斂までは至っていないので、雰囲気ものとして終わってしまっているような印象を受ける。
長くても例えば「アラビアの夜の種族」や「聖家族」なんかはちゃんと論理的にも纏められてカタルシスが得られる読後だったので、それらと比すると期待を外されるかも。 -
鯨。そして馬。茸。
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田中信昭の現代合唱曲を思い出した。
卵のカラのように、細かく割られた物語の破片が、ランダムに貼り付けていかれながら、物語を作り上げていく。
ただ、合唱曲の場合は複数の物語が同時に音を鳴らすことによって、複合の音を鳴らすことができるのと異なり、文字でそれを行うと、ひとつひとつの破片を頭で覚えておきながら、物語を構築するという頭の中の作業が必要になる。
いずれにせよ、物語は流れていって、次の原発事故後の世界に繋がっていく。 -
ジャンルは一応SFにしたけれど、近未来小説。shimaと森から菌類を運んできた少年と胸に原子炉を埋めこんだ少女が出会い、鯨の唄を導き出すという話…
とつまみ出した内容は抽象的だけれどもなぜか深く心の奥に沁みる文章。
どこに着地点を見いだせばよいのかがわからないのでしたが、荒れつつあるこの国にも未来が訪れてくれることを気付かせてくれました。