あるいは修羅の十億年

著者 :
  • 集英社
3.35
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本棚登録 : 120
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716573

作品紹介・あらすじ

2026年の東京。心臓に“原子炉"を埋め込んだ、東京生まれの少女・谷崎ウラン。隔離された「森」からやってきた天才騎手・喜多村ヤソウ。彼らが出会うとき、東京を揺るがす事態が巻き起こる──。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は震災、原発事故、東京オリンピックを経た近未来の日本とフランス。野性的な生命力をもった少年ヤソウとロボット化された少女ウランの出逢い。クジラの歌、疾走する馬。あらすじだけ読んで、龍さんぽいかも!と思って手に取ってみた。
    読む者の心臓の鼓動とシンクロするような龍さんの流麗で端正な文体と異なり、古川さんのそれは、かなりいびつで詩的で実験的とでもいうのかな。あれ?もしかして、英語の語順で日本語書こうとしている?と思わせられるところもあったり。私にはちょっととっつきにくいというか、乗りにくい文章ではあった。そして何より内容が私には難しかった……。
    しかし、意外にも終盤は一気読み。最後にタイトルの意味がわかって暗澹たる気持ちになったけど、希望(というか祈りに近い?)が提示されるのがよかった。
    ふと思ったのは、龍さんが世界全体を描きながら、あくまで個人の生き方を問う一方で、古川さんは個人の生き方を描きながら、世界全体を突きつけようとしているのかな、ということ。よくわからないのだけれど。しつこく龍さんと比べられても迷惑だろう。すみません。
    もう古川さんの作品を手に取る機会はないかもしれないけれど、たまにはこうして自分には難しい作品を読む余地を残していたいと思った。
    追記:作品中に出てくる「疑似家族」みたいなものは、結局なんだったのかよくわからなかった。気になる。

  • 断念
    すげーつまらん 日本嫌いなのかなこの人…私も好きじゃないけど

    大都市が水没して、都市の上に大樹が茂り人々はそこに住んで、透明標本のような魚が空を浮遊している みたいな未来予想図は私も中1の夏休みに考えたことあるけど、今考えたら誰かの書いたイラストの押し売り なんかそれを思い出した
    本は全部読まなきゃとおもう、タチですが これ以上は時間の無駄と思い、諦めた むねーん

    117pまで

  • とても思索的な小説。難しい。
    東日本大震災を発端とした原発の爆発が核としてこの小説にはあって、やや近未来的な描写の中に、現実が透けて見える。
    放射能に汚染される地域に対して、どんなスタンスで相対するのかが、常に問われていて。
    報復のように、バイオロジカル(=B)&ケミカル(=C)=BC兵器を使って、他の地域も汚染するのか。キノコの性質を利用して、汚染を除去するのか。
    植物や馬や牛(草を食む者)が除染する様は、ナウシカの腐海そっくり。

  • 独特の世界観で一回じゃ理解が難しい。たぶん分かったらとても面白いのだと思うけど、ついていくのがやっとだった。最近古川さんの本はそんな感じが多くて読むのに一苦労するな。

  • 2019/7/29購入

  • 良くも悪くも、2011年3月以降の古川日出男氏"らしい"作品。
    舞台は東日本大震災とその後に連なる出来事を、現実とは違う形で経験したパラレルワールド。
    きのこ、鯨、馬、などといったモチーフを登場させてつなぎとして使いつつ、それぞれの世界を緩やかにリンクさせてはいるが、如何せんすべてが拡散し過ぎ、気持ちの良い収斂までは至っていないので、雰囲気ものとして終わってしまっているような印象を受ける。
    長くても例えば「アラビアの夜の種族」や「聖家族」なんかはちゃんと論理的にも纏められてカタルシスが得られる読後だったので、それらと比すると期待を外されるかも。

  • 地震と津波、そして原子力発電所の爆発で被爆した「島」。そこで15年間そのまま暮らす人たち。東京オリンピックの会場として整備され、セレブが集まる街だった、今ではスラム化した鷺ノ宮。そして南フランス。3つの場所を軸に話が展開されていくんだけど、脳みそ湧きそうだった。なんとか分かったのはクジラの死骸から東京が生まれたという物語をビジュアル化していこうとすることと、放射能を吸収する茸を培養していく話が基軸なんかなということ。とにかく、疲れた。けど、必死で読みました。3回くらい読んだら分かるかも?古川さん、好きなのですが、難しい~~。世界に入り込めない・・・。

  • 鯨。そして馬。茸。

  • 田中信昭の現代合唱曲を思い出した。
    卵のカラのように、細かく割られた物語の破片が、ランダムに貼り付けていかれながら、物語を作り上げていく。
    ただ、合唱曲の場合は複数の物語が同時に音を鳴らすことによって、複合の音を鳴らすことができるのと異なり、文字でそれを行うと、ひとつひとつの破片を頭で覚えておきながら、物語を構築するという頭の中の作業が必要になる。
    いずれにせよ、物語は流れていって、次の原発事故後の世界に繋がっていく。

  • ジャンルは一応SFにしたけれど、近未来小説。shimaと森から菌類を運んできた少年と胸に原子炉を埋めこんだ少女が出会い、鯨の唄を導き出すという話…
    とつまみ出した内容は抽象的だけれどもなぜか深く心の奥に沁みる文章。
    どこに着地点を見いだせばよいのかがわからないのでしたが、荒れつつあるこの国にも未来が訪れてくれることを気付かせてくれました。

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著者プロフィール

1966年生まれ。著作に『13』『沈黙』『アビシニアン』『アラビアの夜の種族』『中国行きのスロウ・ボートRMX』『サウンドトラック』『ボディ・アンド・ソウル』『gift』『ベルカ、吠えないのか?』『LOVE』『ロックンロール七部作』『ルート350』『僕たちは歩かない』『サマーバケーションEP』『ハル、ハル、ハル』『ゴッドスター』『聖家族』『MUSIC』『4444』『ノン+フィクション』『TYOゴシック』。対談集に『フルカワヒデオスピークス!』。CD作品にフルカワヒデオプラス『MUSIC:無謀の季節』the coffee group『ワンコインからワンドリップ』がある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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