光のない海

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 255
感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716399

作品紹介・あらすじ

建材会社の社長を務める高梨修一郎。50歳を過ぎ、心に浮かぶのは過去の秘密と忘れがたい運命の人……。個人と社会の狭間にある孤独を緻密に描き、成熟した大人に人生の意味を問う長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 白石さんの本は3冊目。
    久しぶりに読んだ。
    前読んだのが『ほかならぬ人へ』で2011年10月のことだから、実に7年ぶり!

    登場人物の過去が皆、過酷すぎて…
    なかなか感情移入できない一冊だったが、なぜだか途中放棄する気にはならず。
    気が付けば、さらさらと読んでいた。

  • 人との縁とは不思議なもの。
    什器の入れ替えで古い名刺を処分していたら、今、必要な人の名前を見つける。
    仕事ではなく、水入れのことで。
    体調が整う水入れ自体にも興味はあるが、これを売っていた花江も気になる存在だ。ここから付き合いが始まるなんて誰が思うだろうか。
    誰にでも、必要なときに必要な人に出会えるような場面が用意されているに違いない。

  • 主人公は50歳の建材卸会社社長。水を浄化する、蛇の水瓶を割ったところから話が始まり、過去のあれやこれやがいろいろ思い出されながら、会社経営もいろいろあり…のような話。
    世の中にはいろんな人がいろんな歴史を背負って生きているし、そこで関わり合った人たちによって自分も歴史と人生を作っていくのはそうなんだけど、いかんせんみんな暗い。人との繋がりはなんだか演歌調でネトネトしていて、全体を通して暗い。水に吸い込まれていくところは、ハリガネムシに寄生されたカマキリのことを思い出した。

  • だとすれば、私たちは一体何のために人生という長ったらしい物語を描き続けなければならないのだろうか?どうせいずれかは消されてしまう文書を、私たちは一体どんな目的のために黒板にかきつけているのか、しかも私たちはそうやって自分の物語を書き連ねることで、近くにいる別の人たちの物語にも余計な一行が決定的な一行を絶えず書き加えてしまっているのだ。

  • 主人公の高梨が昔の出来事を回想しながら事が進んでいき、花江との仲も深まっていった。とてもページ数が長く心情を捉えるのが難しかった。

    最初の方を読むと、自分も水瓶ボトルで浄水した水を飲みたいと思った笑

  • 普通

  • 2020.01.28
    良くもこんな小説を書けるものだと感心した。題名の付け方がすごいと思った。もう少し読んでみよう。

  • 主人公は、従業員500名の中堅建材商社の社長で、経済小説みたいな雰囲気で話は始まってゆく。
    が、読み進めるほどに、主人公やその周囲に縁を得た人々が体験してきた、悲劇と愛憎に塗れた過去が紐解かれ、その壮絶さに驚かされることになる。

    その紐解かれる過去は極めてドロドロしたもので、それらが少しずつ明かされることにより、先を読む興味が喚起される。
    他方、小説の語り口や登場人物たちの造型は淡々としており、語られる過去の情念が中和されるところに妙味がある。
    例えば、主人公の会社がある水道橋・神保町界隈や、会社の寮がある浅草橋、かつて暮していた川崎の地理が、実名入りでかなり詳細に説明されるあたり、読む側に冷静な印象を与え、現実感が生まれる。
    食べものや飲みものに関する描写が多く登場するあたりからも地に足がついた安心感を覚える。

    主人公を含め、3組の家族の悲劇的な過去が詳らかになってゆくのだが、それら3本の線は絡み合うようでいて、絡まない。
    ラストはやや曖昧で、ミステリとしてパズルのピースが埋まる快感を求めて読み進めた向きにはやや物足りなさがあるかもしれない。
    が、その曖昧さにこそ、人の世の、人の生き様の複雑さと深みが反映されているように思う。

  • 現在よりも過去の話が中心
    でもそれが全て繋がってくる

    いのちの支え

    ラストは支えがなくなってしまうのかとドキドキしたが、

    社長さーん

    で号泣

  • よく分からないラスト。
    琵琶湖かな。光はあるのかないのか。希望の光か。水が光るのか。
    恩人の女性会長と密通して、その娘と結婚するも離婚。妻もまた不義で別の男の子供をもうけ、不倫相手から会社乗っ取りを仕掛けられる。妹もまた妻子ある男と付き合ったのか。傷心のためかバリで水死。社員寮の管理人、息子は殺人を犯し、二人の娘のうち、下の娘は息子から性的虐待を受ける。それを娘の彼氏に聞かされ、生きる勇気をなくす。
    救われない関係ばかり、気が滅入るというか、どうでもよくなる。それだけにすっきりと終わって欲しかった。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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