砂の王宮

著者 :
  • 集英社
3.63
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本棚登録 : 209
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716177

作品紹介・あらすじ

闇市で薬屋を営む塙太吉は、持ち前の商才を発揮し、流通業界日本一の大企業の会長まで上り詰める。己の信念を愚直なまでに遂行しようとする男が作り上げた砂の王宮の行方は。著者渾身の経済小説。

感想・レビュー・書評

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  • 戦後の闇市からのし上がっていく。目の前に転がる運を逃さない力、時代を先読みすること、そういうの本当にすごいですね。

  • ★★★
    今月10冊目
    久々の楡周平。
    ダイエー創業者のオマージュ系小説。
    戦後闇市から始まりネットまで、面白かった。

  •  戦後間もなく三ノ宮で薬屋を営んでいる塙は闇市で莫大な財を成したが戦後5年も経つと社会秩序や法整備等が厳しくなり闇の商売や安売り薬の商売が厳しくなってきた。根っからの商人である塙は次の一手をスーパーマーケットにした。大阪門真の大手家電メーカーの近所にスーパー''誠実屋''をオープンさせた。大量仕入でコストを下げ薄利多売が戦略で次々と出店しコストを下げ薄利多売その繰り返しで店舗数も急拡大した。

     次なる目論みは、中部地区に出店し最終的には関東圏迄勢力を伸ばす事だが、大型店舗の出店には地元商店街の抵抗が激しい上に次期誠実屋塙の経営者候補の2人の息子はセンスが無さすぎる。

     一代で築き上げたスーパーマーケット帝国の王、塙の人生、戦後のドサクサで儲け数々のアイディアを実践し帝国を築き上げたが気がつくと信頼出来る右腕や仲間が居なく孤独な老人だった。昨今、高齢者や過疎地の買い物難民と巨大資本の進出による弊害を描いた食品物流の物語です。

  • タイトルの通りですね。
    ラストはハッピーエンドと言っていいのかな。
    この後が読みたいですね。

  • 主人公塙太吉、ダイエー創始者中内功が、モデル。
    深町信介とのコンビで、闇市で薬の安売り店を成功させる。薬の定価販売を覆す。
    現金商売で、スーパー1号店を開店。
    レジスターの営業、川端安治が加わる。
    店舗拡大に際し、深信がもどって来る。
    オーストラリア産の子牛を沖縄で、生育。牛肉の安売りを目玉にする。
    信頼していた深信が、やり手の不動産王にはめられ、生命線の沖縄の牛肉の会社の株が担保にとられていた。
    深信は、口止めのため、ヤクザにさされる。致命傷でなかったのに、自ら命を断つ。

    一大帝国を築いた塙太吉だが、後継者に恵まれない。
    甘やかした長男は、商売人ではない。
    リニアモーターカーの駅候補地に巨大モールを計画。
    地元の反対運動のリーダー瀬島との対決。
    瀬島は、ちかんの冤罪により、留置。
    罪を認めないと保釈されない。

  • 小説仕立てのノンフィクションかと思っていたが、実在の人物から着想を得たフィクション。それでも、闇市から商売を始めて、薬屋で全国規模の商いを広げ、そしてスーパーマーケットの立ち上げ、牛肉を核とした顧客の取り込み、という流れは史実と思われ、興味深く読んだ。

    作者インタビュー
    http://seidoku.shueisha.co.jp/1507/try01_nire.html

    内容紹介
    ーーーーーーーーーーーー
    戦後、神戸三宮の闇市で薬屋を営んでいた塙太吉は、進駐軍の将校相手に御用聞きをしている深町信介と出会う。薬を大量に売り捌くという深町の提案に乗った塙は、膨大な儲けを手にする。?
    昭和32年、門真にスーパーマーケット「誠実屋」を開業。その後、格安の牛肉を店頭に並べることに成功し、業績は劇的に向上した。?
    東京への進出計画も順調に進むが、不動産王・久島栄太郎に弱みを握られ、さらに意図せず深町の死に関わってしまい、塙は絶体絶命の危機に陥る。?
    ーーーーーーーーーーーー

  • 【作品紹介】
    戦後、神戸三宮の闇市で薬屋を営んでいた塙太吉は、進駐軍の将校相手に御用聞きをしている深町信介と出会う。薬を大量に売り捌くという深町の提案に乗った塙は、膨大な儲けを手にする。
    昭和32年、門真にスーパーマーケット「誠実屋」を開業。その後、格安の牛肉を店頭に並べることに成功し、業績は劇的に向上した。
    東京への進出計画も順調に進むが、不動産王・久島栄太郎に弱みを握られ、さらに意図せず深町の死に関わってしまい、塙は絶体絶命の危機に陥る。

    【感想】
    楡作品に外れ無し。
    ダイエーの中内功をモデルにした小説。
    以前、城山三郎の「価格破壊」を読んだことがあるのでストーリーは何となく予測ができたが、優秀な人材を見抜く力、目玉商品を安く販売するアイデア、そのアイデアを実現する実行力は、やはり「並」の人間ではない。
    なんにしても、商売の原点は「みずからが体験」し、消費者のニーズを「肌で感じる」ことである。

  • 読んだけれどあまり内容は覚えていない。

  • 一代でのし上がっていく前半は面白かった。
    フカシン意外と小物だった感じ。

    後半の瀬島がらみのはいまいちだったな。

  • 楡さん、
    経済小説も書かれるのねぇと驚いたのが最初の感想だ。
    私のイメージは
    やはり薬物に関するハードボイルド小説、だから。

    この作品は、
    昭和22年の戦後の混乱期にある神戸三宮から商売をはじめ
    やがて一大企業のスーパーを立ち上げた塙太吉を主人公とし、
    ひとりの実業家の人生を描いた骨太の経済小説となっていた。
    ヤミ屋のような薬問屋から
    持ち前の商才を発揮して、
    次にヒットしそうな流通経路や販売方法をかぎ分けて
    どんどんと商売を発展させた塙。
    才能は持つべきものなんだなあ、と感心するばかり。

    でもその才能は確実に子孫に伝わるか、といえばそうではない。
    太吉が一代で築いた王宮だが、
    後継者である長男とはやり方も経営手腕も違っていて
    太吉にはこれ以上の発展はないという気がし、
    自分の築いた王宮は砂でできていた王宮で、
    やがて崩れ去るんだなと、万感の思いで悟っていた。

    なるほどね。
    これがタイトルのいわれ、だった。
    でもこの手のストーリーは人生誰もが味わうことではないだろうか。
    栄枯盛衰・・・、永遠につづくもの、絶対的な繁栄、
    そんなものはありえないだろう。
    王にまで上りつけた人には、残念で仕方がないだろうが、
    凡人でいまだに夢を追うことしかできない一人の庶民には
    一代限りでも
    夢の実現ができれば最高だと思えて仕方がない。
    どんな最後が訪れても
    それまでの軌跡は消えないものだ。
    この物語の主人公、塙太吉の軌跡とその実績は
    どこかで誰かが必ず紡いでいくのだろう。
    そして崩れ去った砂の王宮は、
    大きな砂山ぐらいにまでは、すぐに復帰できるに違いない。

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著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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