ダブル・フォールト

著者 :
  • 集英社
3.30
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本棚登録 : 421
感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715774

作品紹介・あらすじ

殺人犯の弁護を任された新米弁護士。法廷で被害者の悪事を挙げると、被害者の娘から悲痛な叫びが!
「父は殺されたのよ! 」この弁護は許されるのか? さわやかな感動を呼ぶ傑作ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 新米弁護士の本條務は、ある殺人事件の弁護をするにあたって加害者と接見するが、彼に対してある種の疑念が生じる。いったいなぜなのか…

    お仕事小説である。主人公が働く事務所や法廷の風景、言葉遣いなどすべてがリアルに構築され、流れるように物語は進む。加害者を弁護する者として、被害者の落ち度をできるだけたくさん集める作業を進める中、被害者の娘の存在が大きくのしかかる。弁護士としての悩み、責務を正直に見つめる主人公は全体の中では非常に地味な描き方だ。一方、被害者の娘成瀬香菜のキャラクターは突出している。二人の関係性が、いかにも作り話的で、やや違和感があった。

    ところでタイトルの「ダブル・フォールト」は何を意味しているのだろう。テニスで2本続けてサービスミスをする意味だが、この物語で、主人公は何か決定的なミスをしただろうか…。香菜との会話がテニスのラリーになぞらえている場面があったが、それが関係しているのか…。

    詳細な描写には敬服するが、何か決定打に欠けた話のように思えるのである。

  • 冒頭──────
     よくできた人形劇を見るようだった。
     子どものころテレビでかかさず見たのは何という番組だったか。放課後に寄り道しようと、必ず陽が沈む前には家路につき、テレビの前に座ったものだ。
     僕はいつも手に汗握って、その番組を楽しんだ。中でも、はかなげな美しさの女───もちろん人形なのだが、僕には艶っぽい女性に見えた───がくるりと一回転したとたん、般若の面にも似た恐ろしい形相に変わって主人公に襲いかかるシーンがお気に入りだった。人形の顔が一瞬のうちに様変わりする早業を見て、いたく感心したのを覚えている。
     目の前に座る女性も、手慣れた化粧で整えた仮面が、ぼろぼろと無残にはがれかけていた。
    ──────

    僕は高校生のとき、大学に行ったら法学部に入って司法試験合格を目指すつもりだった。
    当時愛読して憧れていた高木彬光の「検事霧島三郎」と同じように、捜査検事になりたいと考えていたからだ。
    はじめは弁護士になりたいと思っていたのだが、殺人を犯すような極悪人を弁護できるのか、この僕が? という疑問が頭をもたげた。
    被害者の無念さ、或いはその遺族の哀しみを思ったとき、怒りややるせなさのほうが勝り、容疑者を積極的に弁護するような人間に自分はなれないだろうと感じたのだ。
    結局、法学部に行けなかったために、その夢は断念することになったが。

    あの頃は、司法試験を通って弁護士になったらエリート中のエリート、将来は順風満帆を約束されていたはずだった。
    しかし、この作品を読んで分かったのだが、今はそうでもないようだ。
    数年前の司法試験制度改革によって、弁護士は供給過剰になり、生活していくのも結構大変らしいと知って驚いた。
    時の流れというのはあらゆることを変えてしまうものだ。

    さて、その豊かでもなく普通のサラリーマンと大差ない生活を送る現代のイソ弁(居候弁護士)が、この作品の主人公である。
    この主人公が、なんとも悩ましい。
    自分の仕事に自信の全くない若造であり、経験も浅い。
    その主人公が、初めて殺人事件の弁護を任される。
    被告人やその家族、弁護士事務所の所長や先輩などと意見を交わしながら、弁護方針を組み立てようとするのだが、生来の気の弱さが災いしてか、何とも頼りない。
    読み手としては、イライラするばかり。
    こんなウジウジと悩んでいる弁護士だったら、即刻解任したいほどだ。
    “お前なんかに弁護士は務まらん、即刻辞めてしまえ!”と何度叫びそうになったことか。
    それほどのヘタレ主人公なのに、なぜか終盤になって、俄然“弁護士の使命とは何か?”と正義感に燃え出し、大きなお世話とも思える大胆な行動を起こし始める。
    ここのところが分からん。
    主人公の心境の変化に全くついてゆけない。
    人格が180度変わってしまうのだ、たいした前触れもないのに。
    その理由となる感情の変化の部分が緻密に書き込まれていれば納得するけれど、この転換部分の事件の書き方が浅いので、違和感だけが残る。
    主人公を敵視していた被害者の娘の心変わりも同様だ。

    「ダブル・フォールト」というタイトルも、取ってつけたようで、物語との関連性が見えない。
    終盤、何の脈絡もなく、主人公の弁護士がテニスをプレーする場面が出てきて、そこでサーブの薀蓄を語る話から取ったのだろうが、それまでの法廷オンリーの話題から、いきなりスポーツを引き合いに出して意味付ける後出し的な展開は唐突すぎて無理がある。
    タイトルのほうこそ、まさに“ダブル・フォールト”で失敗作だ。

    真保裕一って、こんなつまらん小説を書く人だったかな?
    あまりにつまらない小説だったので、僅か四時間弱の一気読みだった。

  • #読了。新米弁護士の本城は、初めて殺人事件の弁護を担当することに。被害者の娘からの怒りに当初は反発を覚えた本城だったが、その裏に隠された真実があるのではと動きだすと。。。法廷モノによくある、真実とは、人とはということ描かれるが、かた苦しくならず、青春小説にも近い感じがした。

  • どんな職業もそれぞれに大変だとは思うけれど、弁護士はなかでも大変そう。
    真実がわかればいいけれど、どこまで本当のことを話してくれているのかもさっぱり確信がもてないような気がする。
    日々勉強なんだろうな。

  • タイトルから、もっと後味の悪い結末が待っている
    ものと思っていたので、思いがけない結末に、
    ちょっとうるっときてしまった。
    新米弁護士くんのがんばりが空まわっている様子が
    もどかしいながらも、ちょっと微笑ましいような感じ。
    ボスである高階弁護士、かっこいいなぁ。
    海外ドラマ「スーツ」と重ねて見たところもあり。
    被害者娘のやんちゃぶりにはちょっと苦笑。

  • ストーリーは割りと面白いんだけど、なぜその二人に恋愛感情が起こるのかが? そのあたりの描写が丁寧じゃないなー。

  • 弁護士と言う仕事の難しさと苦悩が表現されていた。 犯人の弁護士を担当する人は、大変だな~

  • sg

  • 新米弁護士が主人公の法廷サスペンス。
    読み始めたときはいったいどのような展開になるか、どのようなどんでん返しがあるのか想像もできなかった。なかなか事件の背後にあるものがわからず、主人公のお人好し加減にもいらいらしながら読み進めていった。しかし半ばを過ぎた辺りから予想しない展開になっていき読者をひきつけていく。
    「真実」とは何か? 世間一般の真実と裁判における真実のずれを利用した法廷サスペンスである。今まで読んできた法廷サスペンスとはひと味違う読後感をもった。

  • 3.0 新米弁護士の奮闘記。手に汗握る、という感じなくたんたんと話しは進みます。ちょっと期待外れ。

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著者プロフィール

真保裕一(しんぽ・ゆういち)
1961年東京都生まれ。91年に『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞。96年に『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年に『奪取』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門、2006年『灰色の北壁』で新田次郎賞を受賞。他の書著に『アマルフィ』『天使の報酬』『アンダルシア』の「外交官シリーズ」や『デパートへ行こう!』『ローカル線で行こう!』『遊園地に行こう!』『オリンピックへ行こう!』の「行こう!シリーズ」、『ダーク・ブルー』『シークレット・エクスプレス』『真・慶安太平記』などがある。


「2022年 『暗闇のアリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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