花折

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711691

作品紹介・あらすじ

“悪王女"鮎子が生きることの意味を探す、究極の純愛小説。

画家を父に持つ鮎子は、逆子だったため帝王切開で生まれた。一度お腹を開くと次から自然分娩はできない。出産が一番の快楽だという母は、それを奪われたとして鮎子を責めた。
両親の画才を受け継いだ鮎子は東京藝術大学に進学し、京都から上京する。ある日、藝大の裏山でイボテンと名乗る男と出会い、ひょんなことから関係を持つことに。それ以後、四六時中、セックスばかりの毎日を送るようになる。そんななか、夏休みに帰省することを告げた鮎子を、イボテンさんは殴って出ていった。
鮎子は、実家で小説家の我謝さんと会い、彼の故郷である沖縄で共に夏を過ごす。そして大学に戻ったとき、イボテンさんが自殺したことを知った。突然の“不在"に足元から崩れ落ちるような感覚に陥る鮎子。
こっそり忍び込んだ彼の家には、キャンパスに描かれた裸の鮎子が残されており、なぜだかその絵に釘づけになってしまう。そして鮎子は思いもよらずその絵を盗み出す。
イボテンさんの存在の大きさと絵を描くことの本質に行き当たり、ひたすら絵を描くようになった鮎子は、ついに自分だけのモチーフを見つけることに……。
若い女性芸術家の視点で描く、濃厚でみずみずしい長編小説。

【著者略歴】
1955年東京生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。98年『皆月』で吉川英治文学新人賞を、『ゲルマニウムの夜』で芥川賞をそれぞれ受賞。2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞受賞。『眠り猫』『なで肩の狐』『鬱』『二進法の犬』『百万遍 青の時代』『私の庭 浅草篇』『たびを』『愛情』『錏娥哢た』『少年曲馬団』『ワルツ』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  •  花村萬月さんが白血病に侵されながら描いたという作品。もう花村さんの作品が読めなくなるかもしれないという思いもあり、心して読んだ。

     この作品はなんだろう。この作品の登場人物、我謝さんに言わせれば「スケベーな小説」なんだろう。そして、大麻が出てきたり、ノワールとエロが混じったような、まあ、そう考えると、いつもの花村作品同様ということになるか。
     でも、花村さんの場合、どんな作品を描いてもそう思わせない(私の贔屓によるものかも)から凄い。高尚な文学を読んでいる気にさせられてしまうのだ。
     もし、花村作品を未読で、これを初めて読むならば、もしかしたら途中で投げ出していたかもしれない。ただのエロを小賢しい言葉を並べてもっともらしくしているだけじゃないかと。でも、すっかり花村ファンになってしまった私には途中で投げ出すことはおろか、早く続きを読みたくなってしまうのだ。

     有名な画家を父親に持つ鮎子は、幼少期から絵の才能があり、他の子たちとは一線を画していて、どこか達観しているよういなところがあった。鮎子は東京藝大に進み、初めて親元を離れ一人暮らしをするのだが、ホームレスと噂される「イボテンさん」と出会い、彼が描く超絶な作品に衝撃を受け、その日のうちに処女を捧げる。
     その日から毎日イボテンさんの性の奴隷よろしく絵を描く暇も与えられないほど性交を重ねていく。夏休みに入ったことを機に、帰省し、イボテンさんから解放された日々を過ごすが、大学に戻った鮎子を待ち構えていたのはイボテンさんの自殺だった。それから鮎子の人生にイボテンさんは多大な影響を及ぼしていくことになる・・・。

     性に奔放な生き方をする鮎子が、絵描きとしてその才能が開花する姿を清々しく描き切っている。思えば、これは私が大好きな『たびを』に似ている。鮎子は虹児の女版といったところか。虹児はカブで日本中を旅しながらたくさんの女性と出会い女性経験を積んでいく。初体験の女性が自殺したのも同じだ。
     それはさておき、世の男としては、鮎子にいつまでも愛され続けるイボテンさんを羨ましくもあり、また、そんな生き方しかできなかった彼を切なく思うのだった。

     読みながら、この物語は面白いかと自分に問いかけると、「うーん」となり、好きか嫌いかと問いかけると「好き」と思ってしまう。
     これから病気を克服し、セクシャルでバイオレンスで文学的な作品を量産していって欲しいと切に願う。

  • 女性画家の話。やたらエロい。凄みがある。面白かった。

  • 若い画家が、性の遍歴を重ねて一人前の画家となっていく物語。性の描写もいやらしい物でなく読んでいて納得させられてしまう。主人公の女性がどんな風に成長していくのか興味があり、読む手が止まりませんでした。

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著者プロフィール

1955年東京都生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。98年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞、2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『ブルース』『笑う山崎』『二進法の犬』「武蔵」シリーズ、『浄夜』『ワルツ』『裂』『弾正星』『信長私記』『太閤私記』『対になる人』など。

「2021年 『夜半獣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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