水の匂いがするようだ 井伏鱒二のほうへ

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711493

感想・レビュー・書評

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  • 小説を読む人に会う機会が多いほうだと思っているのだが、井伏鱒二を愛好する人に会ったことがない。有名どころはひとしきり読んだファンとしては寂しい。冗談で(あってほしいが)「今どき井伏鱒二を読む人なんて誰もいない」などと言われてこっそり傷ついたりしている。しかし井伏は大転換や大恋愛を書かない。地味だし爽快感がない、むしろすっきりさっぱりを避けて回っている。一言で良さをプレゼンするのが難しい。

    そういう孤独な井伏ファンに、この本は野崎さんと井伏鱒二愛を共有する貴重な時間をくれる。井伏のよさを急がず丁寧に語る文章を、ひたすらうなずきながら幸せに読んだ。作品の向こうにいる井伏さんの強さ、求めたもの、こらした工夫を教えてもらえて、とてもよかった。そして筑摩の全集があらためて欲しくなった。

    井伏鱒二の基本を押さえたブックガイドでもあるので、1冊2冊読んだ人が次に読む作品を探すのにも役立つ。おすすめ。

  • 井伏鱒二の作品は、黒い雨と荻窪風土記しか読んだことはなかったけど、その鷹揚で懐の深さを感じる文章が気になっていた。その中で、フランス文学を専門としていると思っていた野崎氏が井伏鱒二を論じているこの本を見つけた。
    野崎氏の水と魚を軸にした読み解きは説得力があり魅力的。
    井伏の作品をもっと読みたい。

  • 引用豊富、未読の井伏作品を読みたくなる。筆者の井伏愛が迸る部分が多々あるが、これも微笑ましい。

  • 尾崎 真理子の2018年の3冊。
    幸福感に包まれるエッセー。

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著者プロフィール

1959年新潟県生まれ。フランス文学者、翻訳家、エッセイスト。放送大学教養学部教授、東京大学名誉教授。2001年に『ジャン・ルノワール――越境する映画』(青土社)でサントリー学芸賞、2006年に『赤ちゃん教育』(講談社文庫)で講談社エッセイ賞、2011年に『異邦の香り――ネルヴァル「東方紀行」論』(講談社文芸文庫)で読売文学賞、2019年に『水の匂いがするようだ――井伏鱒二のほうへ』(集英社)で角川財団学芸賞受賞、2021年に小西国際交流財団日仏翻訳文学賞特別賞受賞。プレヴォ、スタンダール、バルザック、サン=テグジュペリ、ヴィアン、ネミロフスキー、トゥーサン、ウエルベックなどフランス小説の翻訳多数。著書に『こどもたちは知っている――永遠の少年少女のための文学案内』(春秋社)、『フランス文学と愛』(講談社現代新書)、『翻訳教育』(河出書房新社)、『アンドレ・バザン――映画を信じた男』(春風社)、『夢の共有――文学と翻訳と映画のはざまで』(岩波書店)ほか。

「2022年 『無垢の歌  大江健三郎と子供たちの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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