雨降る森の犬

著者 :
  • 集英社
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感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711479

感想・レビュー・書評

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  • な、涙が、涙が止まりません……。
    この文を書きだしたら、止まっていた涙が、また出て来ました。
    ワルテルありがとう、ワルテルが居てくれて、本当に救われた。

    雨降る森の犬 
    2018.06発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。

    父が亡くなり、母がボーイフレンドとアメリカに行って、一人残された中学生の雨音は、蓼科に居る山岳写真家の叔父道夫と暮らすために道夫のログハウスへ行きます。そこに居たのが、力強くて、優しいく、賢いが強情なスイス原産の大型犬バーニーズ・マウンテン・ドッグの雄犬ワルテルです。

    この物語は、家庭に事情のある雨音と、ワルテルの心温まる物語です。
    そして同じく家庭に事情のある高校生の正樹、雨音を温かく、そしてしっかり見守る道夫が脇を固めています。
    蓼科の自然が素晴らしく、特に雨降る森がとてもいいです。
    雨音を目下としか見ない男尊女卑のワルテルが、次第に雨音を受け入れ、最後には、雨音の帰りを待ってその腕の中で息を引き取って行きます(涙)

    392ページ、
    北アルプス穂高岳山荘でアルバイトしている雨音のスマホに、道夫から「ワルテルが危篤だ」と電話が入ってからは、な、涙が、涙が一気に膨らんで、こんなに出るのかというほど出て来ます。この文を書きだしたら、止まっていた涙が、また出て来ました。
    本当にワルテルありがとう。
    最後の418ページまで(涙)
    馳星周さんの本を読むのは初めてです。
    2021.01.30読了

  • 男を追いかけ、ニューヨークへ行ってしまった母。
    ひとりになった雨音は、山岳写真家の伯父・道夫と立科で暮らし始める。

    男尊女卑の犬のワルテル。
    最初は懐かなかったワルテルと雨音は、だんだんと心を通わせていく。

    親子関係に問題をかかえる、雨音と正樹。
    ふたりに、そっと寄り添いつづけるワルテル。

    筆者が犬好きが、伝わる。

    美しい自然と、地元の食材を使ったおいしい食事。
    そして、犬との生活。
    ワルテルとの交流に心あたたまる、スローライフな物語。

  • 時が飛んで・・・。

    切ない物語でした。

    僕自身は今後も犬と過ごす体験をすることはないと思います。

    臆病なので。

    でも、自分が犬を飼って、その犬と心を通わせることができたなら、どんなに幸せだろう。

    そんなことを想像しながら、ずっと読んでいました。

    雨音や正樹の甘酸っぱく感じる直情的で純粋な心の動き。

    久しぶりに数十年前の自分の頑なさやまっすぐさが蘇ってきて、とても懐かしかったです。

    aoi-soraさん、いい物語の紹介、ありがとうございました。

    • shukawabestさん
      aoi-soraさん、ありがとうございます。この本、最初は緑と深い森のイメージ(雨が降っても自分の体には落ちてこないほどの)で読んでいたので...
      aoi-soraさん、ありがとうございます。この本、最初は緑と深い森のイメージ(雨が降っても自分の体には落ちてこないほどの)で読んでいたのですが、最後の方は、aoi-soraさんが書かれていたように感涙でした。55歳のおっさんですが。

      ペット禁止のマンション住まいなので、始めから犬を飼える状況にはないのですが、たとえ飼えたとしても、死なれたときのことを想像すると辛すぎて何もできませんわ。代わりにYouTubeで動物たちの動画を観て癒やされている感じです。飼われている動物たちは、その動画一つで飼い主の注ぐ愛情が伝わってきます。

      ワルテルや40数年前の融通の利かなかった自分が思い出されて、苦笑いでなく、懐かしく清々しい気分になれました。

      今後も、ちょっといいな、とaoi
      -soraさんが思われた本がありましたらぜひ教えてください。

      馳星周さんは、原作の『不夜城』という映画は何度か観たことあるのですが、原作本は初めてでした。

      充実した二日間をありがとうございました。
      2022/11/22
    • aoi-soraさん
      素敵な週末でしたね^⁠_⁠^
      信州の深い森にワープでしょうか。

      馳星周さんは、不夜城などノワール小説って言うんですか?
      を多く書かれている...
      素敵な週末でしたね^⁠_⁠^
      信州の深い森にワープでしょうか。

      馳星周さんは、不夜城などノワール小説って言うんですか?
      を多く書かれている作家さんのようです。
      実は私も本書と「少年と犬」の2冊しか読んでないので、そちらの暗黒世界は知らないのです。

      最後は泣けましたよねー。
      物語の世界に入り込むのに、年齢は関係ないし、思いっきり泣きましょう。⁠:゚⁠(⁠;⁠´⁠∩⁠`⁠;⁠)゚⁠:⁠。

      私の感想の方にもコメントを頂きまして、ありがとうございます♪
      2022/11/22
    • shukawabestさん
      ハハハ、泣いていいのですね、というか、思い切り泣きましたわ。

      「ノワール小説」というのですか。『不夜城』とあまりにもイメージが違うので、は...
      ハハハ、泣いていいのですね、というか、思い切り泣きましたわ。

      「ノワール小説」というのですか。『不夜城』とあまりにもイメージが違うので、はて、同じ作家なのかな? ずっと疑問を抱えたまま読んでました。

      次、aoi-soraさんの本棚、追いかけるとしたら、『月の満ち欠け』ですかね。佐藤正午さんは初めて知りました。恐らく来年になると思いますが、また、じっくり読ませてもらおうと思っています。
      2022/11/22
  • 少し前のマンガみたいな展開のところもありましたが、かえってそれが、すがすがしくてよかったです。

    バーニーズ・マウンテンドックのワルテルとその家族(疑似家族)のお話しです。
    信州の別荘地に伯父と暮らす、主人公の中学生雨音。
    雨音の描いた、凛々しいワルテルと隣の家の高校生正樹が森で戯れている姿のスケッチが、思い浮かぶようです。
    二人はお互いに実の親との関係が上手くいっていません。
    が、ワルテルを仲介に、じょじょに心をひらいていきます。

    雨音「ワンコって、神様みたいだね。それとも天使かな?」
    正樹「犬ってそういう存在なんだよ。死ぬとか生きるとか関係なくさ、ただ愛してくれるんだ」

    最後はやはり、涙をこらえきれませんでした。

    • 大野弘紀さん
      江國氏の初期の作品の犬の話を、思い出しました。

      動物という、生き物、
      犬という、愛をふりまく、生き物のことを。
      江國氏の初期の作品の犬の話を、思い出しました。

      動物という、生き物、
      犬という、愛をふりまく、生き物のことを。
      2018/10/06
    • まことさん
      落語の好きな犬の話でしょうか。
      あおのお話は江國さんの作品の中でも大好きなもののひとつです。
      『雨はコーラがのめない』も好きです。
      落語の好きな犬の話でしょうか。
      あおのお話は江國さんの作品の中でも大好きなもののひとつです。
      『雨はコーラがのめない』も好きです。
      2018/10/07
  •  大いに泣かされた。この物語は犬好きには反則です。

     私も犬を飼っているので、犬を喪う悲しみがよくわかります。その時はもう犬は飼えないなと思っても、やっぱり喪った悲しみよりも、一緒に過ごした時の喜びの方が優ってまた飼ってしまうんですよね。

     さて、この物語は、山岳小説でありながら、青春小説でもあり、また犬の物語でもあります。雨音と正樹との関係も気になるところです。

     そう。とにかく贅沢な小説。

     東京で暮らしていた雨音は、母親との関係が悪く、信州の山奥で暮らす叔父の元に来て一緒に暮らすようになる。山岳写真家である叔父はバーニーズマウンテンドッグのワルテルを飼っている。先代は同じ犬種のマリア。マリアと違い、雨音に対してバカにしたような態度のワルテル。

     初めのうちこそ、そんなワルテルにヤキモキしていたが、やがて関係を深めていき、雨音はワルテルのことが大好きに、ワルテルも雨音のことが大好きになっていき、信頼関係を深めていく。

     また、叔父の別荘の隣の別荘の持ち主である金持ちの息子の正樹。最初は感じが悪かった正樹だが、雨音には心を許し、頼れる兄貴のような存在になっていく。

     やがて雨音は大学生になり、ワルテルと会えるのも年に2回くらいに。それでも会える時は思う存分ジャレあっていた。雨音のバイト先に叔父からワルテルの危篤を報せる電話が入り・・・。

     最後は大号泣必至。ただ、悲しいだけじゃなく、前向きに考えられる結末がまた良かった。

  • 馳星周はデビュー当時のノワール小説を書いていた頃によく読んでいた。「不夜城」のシリーズ等である。その後、馳星周のノワール小説にも飽きて、しばらく読まない時期が続いた。数年前に、「少年と犬」という作品で馳星周が直木賞を受賞したことを知り、その作品を読んでみた。その他にも、馳星周が、犬を主人公にした小説を書いていることを知り、それも読んでみた。馳星周が、犬を愛していることがよく分かる、面白い、心を動かされる小説が多かった。
    この作品も、同じようなテイストの小説だと思って手に取ってみた。確かに、ワルテルという名前の犬が登場し、題名も、「雨降る森の犬」となっているが、犬が主人公の小説ではない。広末雨音という中学生の少女を主人公とした小説であった。小説の中で、ワルテルも重要な位置づけとなっているが、主人公ではない。また、犬に対しての人間の想い・感情が作品のテーマになっているわけでもない。ということなので、思っていた内容の小説ではなく、少し肩透かしを食った感じで読んだ。
    小説としての出来は良くないと思う。400ページを超える、けっこう長い小説であるが、冗長であり、ストーリーとしては省ける部分も多く、テンポの悪い小説であった。

  • 犬が登場する本が好きで、読み始めると舞台は信州。そして山登り。好きなもの尽くしの作品でした。
    親との関係で傷ついた14才の少女雨音が、伯父とバーニーズ・マウンテン・ドッグのワルテルの住む蓼科高原の家にやってきて、隣の別荘に来る高校生の正樹との交流もあり、少しずつ成長していく。
    ワルテルが雨音に心を許して絆が生まれていく様子が、読んでいて愛おしく感じる。
    後半、もう少し読みたかった、と読み足りなさを感じるほど、終わるのが寂しくなる作品でした。

  • 「少年と犬」の著者、馳星周さん。この作品は、「少年と犬」よりも先に書かれた作品とのこと。
    私自身は、馳さんはノワール小説の印象が強く手に取ることなく来てしまったのだが、「少年と犬」の読後に、馳さんが愛犬家で犬を題材にしている作品が他にもあることを知り、手に取った本作。
    心が傷ついた都会の人間が、自然豊かな土地に生活拠点を移すことで、自然やおおらかな人達に癒されていく、犬などの動物に癒してもらう。よくある設定と言えば設定なのだが、
    愛犬家だと言う馳さんらしい、犬の表情や動きや性格や、犬と一緒に生活する日常が丁寧に描かれていて、心が穏やかになるお話だった。

    最後は涙、涙で、ちょっと嗚咽しながら読み切る形になってしまったけど、読後、しばらくしてからは、心の中に温かなものが残っていることに気づき、これはワルテルが雨音に(そして没入して読んでいる私に)与えてくれた、日々の無償の愛だな、と思うのだ。悲しみも深く強くあるけれども、確かに残る愛情の記憶は消えてなくなりはしないのだと。
    威張りんぼでプライドが高いけど、優しくて、大きな愛で人間を包んでくれたワルテル、ありがとう。

    「動物が幸せなのは、今を生きているからだ。不幸な人間が多いのは、過去と未来に囚われて生きているからだ。おれは、こいつらみたいに生きたい」
    『ワルテルは見返りなど求めない。ただ無条件に雨音を受け入れ、愛してくれるのだ。』
    『犬の愛に触れる度、自分もだれかにとってのそういう存在でありたいと思う。人間には犬のように振る舞うことはとても難しい。それでも、努力することで近づけるはずだ。見返りを求めず、愛し、見守り、寄り添う。シンプルなそれだけのことがどれだけ難しいかを知れば、他人に対する鬱憤や不満は薄らいていく。』
    「犬は今を生きてるんだ。おまえに会えて嬉しい。ワルテルが今思っているのはそのことだけだ」
    「ワルテルは逝くんだ、雨音。ワルテルだけじゃない。他の犬も動物も、基本的にはみんな人間より早く逝く。それでも、人が動物と暮らすのは、別れの悲しみより一緒にいる喜びの方がずっと大きいからじゃないのかな」

  • 家族の問題、中学生高校生が思う色々な悩み
    山の暮らし
    犬もいる
    家族って少しずつ作っていくものなのかもな
    そして子供は色々なことを乗り越えて大人になっていく

  • 暖かすぎる
    一月の下旬の日曜日
    何かのんびり小説でも
    と行きつけの図書館へ

    おっ こんなのが
    ある
    と手に取った一冊
    馳星周さんの「ソウルメイト」を
    読んだばかりでもあり、
    きっと これなら
    と 家に帰って ゆったりと

    信州の山々の描写が
    素晴らしいなぁ
    もちろん
    犬くん(本作ではバーニーズ・マウンテン・ドッグのワルテルくん)
    の描写が また いいなぁ

    ただ
    「ソウルメイト」が
    あまりに良かったので…
    「もうちょっと感」は
    どうしても残ってしまいました

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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