綴られる愛人

著者 :
  • 集英社
3.06
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本棚登録 : 268
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087710120

作品紹介・あらすじ

作家であり人の妻でもある女。地方に住む男子大学生。二人は立場を偽り、秘密の文通を始める。熱を帯びる手紙は、彼らを危険すぎる関係へいざない……。著者新境地、衝撃の長編恋愛サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  •  ずっと前にこの本気になるなって思った記憶があった。

     柚と夫のこじれた関係がちょっとなに言ってるかわからない状態だった。愛?契約?結局、柚はどっちなのか。死んで欲しいと感じているときと、そうでもなさそうなときとの感情の起伏が大きすぎて、どれが本心なのか最後までわからなかった。あ、むしろ作者はそういうことを書きたかったのかな?人間の感情って難しいのよ、移ろいゆくものなのよ、的な。だとしたら、確かに大学生くらいだと真に受けちゃうよね。さらに恋とかしちゃってたらもうね。自分に向けて発された言葉は全部その人の紛れもない本心で、その人そのもので、それが明日にはひっくり返ってる可能性なんか微塵も考えないで全部受け止めようとしちゃうクモオの未熟さとか若さは、身に覚えがある。
     全体を通じて抱いた微かな違和感の正体は、クモオにあんまり同情というか感情移入できなかったこと。なんだかよくわからないけどとにかくムカムカしてイライラして、だから凛子さんの手紙に溺れていつのまにかわけがわからなくなって思わず事件を起こしちゃったわけだけど、そこまでいく過程にもっと鬱屈エピソードがあったらよかったな。彼女とうまくいかない、友達がいない、くらいで会ったこともない相手にそんなにのめり込むかな。もっと底の底まで落ちないと文通相手の夫をわざわざ殺しには行かないんじゃないかな。なんて思ったのでした。

  • 読んだことを忘れてしまっていて、再読。手紙だけで殺人教唆をしてしまう女性作家の技。就職活動もしないでいる大学生がどんどん罠にはまる様がサスペンス。落ち着いて考えてみれば、そんな馬鹿なと思えることが起きてしまう。ネットだともっと多いんだろうね。荒野さん、こわいわ~。

  • 「言うべきことではなくて、言えることしかひとは言わない。」
    「いったいこの中に誰が、本当に本当のことを喋っているというのだろう」

  • 手紙だけでやり取りされる狂気
    すぐに連絡がとれて顔を見て通話することもできて、な現代だからこそ、妄想だけで膨らんでいく思いは加速するんだろうな

  • この時代にLINEでもメールでもなく、文通。
    手書き、選ばれた便箋、かすかな香り(多分)などから相手の存在を生々しく感じる。
    だから余計に引き込まれてしまうのかも……。
    でも、こんなお願いされたら文通やめるな。「あ、利用される」ってわかったら冷めてしまいそう。

  • 面白かった、し、そう来るか、って思った。けど、私は手紙が中心になる本には日本語遊びみたいなものを求めてしまう、なにその言い回し聞いたことない!みたいなの求めちゃう、だから、面白いけど星3くらい

  • 井上荒野ワールド全開
    「誰よりも美しい妻」「だりや荘」などにも共通する狂気の世界。一気に読み進んだ。
    大学生と作家である主婦の手紙の書き方をうまく書き分けているのはさすが。
    いるいるこんな大学生と何度も思わせられる。たかが文通が恐ろしいまでにされど文通であることを思い知らされる展開。

    二人が会ったときの航大の凛子に対する感情の表現が秀逸。もはやあれほど恋い焦がれた凛子にも、正体である絵本作家である唯にも見えず、ただの女にしか見えないと。なるほどそう来たかと思いつつ妙に納得。

    旦那さんの復讐が展開されることを予測させる終わり方かと思いきや、むしろその逆に…

    なるほどねぇ、荒野さん、まだまだ読み続けますよ〜〜。

  • 「切羽へ」タイプの作品、面白い〜。描写が良い〜。

  • 個人情報を明かさずに文通ができる「綴り人の会」。

    手紙は、書いてから相手に届き返事がくるまでに時間がかかる。その間、相手に対し様々に思いをめぐらせる。
    本当の日常と、手紙の中に創り上げた自分。でもそこには、日常に埋もれた自分の一片が現れてくる。
    面白かった。

    本当の中の偽り、偽りの中の本当。
    真実というのはある意味創造物なんだなと思う。事実がどうであれ、自分がそうだと思ったことがいつでも真実になる。

  • 登場人物に魅力がなく読みすすめづらかった。

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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