- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087607864
作品紹介・あらすじ
ある女性作家の幼い娘がニューヨークの自宅から消えた。事件の鍵を握るのは、パリに住むベストセラー作家の男。驚きの真相とは!?
感想・レビュー・書評
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小説家の娘が忽然と姿を消して… 小説家や登場人物になってしまう魔法をかけられる物語 #人生は小説
■あらすじ
有名な小説家の娘が、自宅のアパートから突然に姿を消した。哀愁に暮れる彼女だったが、頼りにしていた警察に疑われ、さらにマスコミに追いかけられ疲弊してしまう。彼女は拳銃をこめかみに当て…
■きっと読みたくなるレビュー
何これ…
耽美な小説な世界に浸ってたと思ったら…どういう話なんだ、これは…
なんとなく10年ほど前にやってた、あるドラマを思い出してしまいました。思いっきりコメディでしたが大好きなドラマでしたね…懐かしい。本作も読み終わってみると奇妙な奥深さを感じた作品でした。
とりあえず落ち着いて読み進めていくと、徐々にどういう枠組みの物語なのかわかってくる。叙述は美しく、小説家の幅広い知識や豊富な表現力が素晴らしい。
一方で登場人物たちの窮地に追い込まれていく様子は、やたらエグく描かれてゆく。なんとも酷い言われようだし、扱いもカワイソすぎる。小説家の苦悩や混乱が伝わってきました。
本作の焦点、二人の登場人物が大切なこと対して駆け引きするシーンが秀逸ですね。ここがまさに「人生は小説(ロマン)」。到底、理解不能な状況なのに、読まされるセリフが超現実的で胸が熱くなってきてしまうんです。
そして最後まで物語についていけるように慎重に読み進めるんですが、まぁ終盤に入ると怒涛の展開ですよ。ただ怒涛の展開と言っても、物語がうねるという感じではなく、まさに読者が小説家になってしまうような感覚に陥ってしまうんですよね。まるで魔法をかけられてしまったかのような体験でした。
■ぜっさん推しポイント
人生は小説であり、小説もまた人生である。この物語を通して我々は何を感じ取るのか。
本でも、漫画でも、映画でも、その他どんなコンテンツでも、さらに人との出会いや人生経験でもなんでも。結局はそれから学び取り、より磨き込みながら自身の人生に昇華させていかないと意味がないんでしょうね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フレンチ・ミステリの一冊。
とある小説家の娘が自宅から消失した、という不可解な密室消失事件になんとも心そそられるスタート。
が、そこから物語は次々と色模様を変えていき、まるで万華鏡を覗いているかのようなストーリー展開にびっくり。
とある小説家に絡むまた別のベストセラー作家、二人の世界の現実と虚構という複雑な模様に頭は大混乱しながらもページを捲り続けた。
最後に見せられたのは想像をぴょんと跳ね除けた予想もしなかった一つの色鮮やかな世界。
なるほど、こうもストンと着地するとは。
人生いろいろ、苦悩もロマンもいろいろ、ね。 -
ギョームさんの作品では1番好きかも。ニューヨークに住む作家の3才の娘が失踪した事から物語が始まる。出版社の社主、パリ在住の作家、と話が繋がっていく。どうなるの?ドキドキが止まらない。
フローラとロマンの対決、狂気のミステリとも言える作品に感謝。 -
この構成でこの説得力はすごいな。斬新すぎる。
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次々と予想を裏切るストーリー展開に、??という不思議な感覚のまま、絡め取られていくようだった。
読み終えて一番に感じたのは、作家とは大変な仕事なのだなぁ、、ということ。ひとつの作品ができるまでに、作家がどれだけ膨大なエネルギーを注ぎ込み、精神を疲弊させているのかがよく分かった。
普通のミステリーとは一味違った趣向の、複雑だけれど読み応えのある作品だった。すべてを知ったうえで、また初めから読み直してみたい。 -
メタもメタメタ、どうするのよ…と思いきや、えっそことそこ?なキャラクターが繋がっていて、愛に胸打たれる。さまざまな人物の視点と、現実虚構が入り混じり、ともすれば壊れそうなギリギリのところで世界を成り立たせた、この手腕はすごいな。ほぼ星4つ。
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やるなー、ミュッソ。
小説家フローラの3歳の娘が、アパートメントでかくれんぼをしていて忽然と消える、という始まりから、そう長くはない小説で、読者をよくこんな離れたところまで連れてきてくれるものだ。ラストもちょっと粋で清涼感も残る。
これまでで一番の出来では? -
若い頃、嵌まった仏文学のコケティッシュな世界、そして極上のミステリーときて面白いはずもなく、サクサクと読み始めたが・・3割ほどで見ごとに作者の陥穽に。
もともと正体不明の作家が朦朧とした設定で登場する。あれよあれよという間にその人の娘が誘拐され生死不明。悲嘆にくれる間もなく、警察、マスコミの餌食と化す。対岸に登場する作家、そしてその息子。此処はミッソの手腕の躍如たる怒涛の流れが始まるところで、会話と言い、状況説明と言いウィットが利いた、豊穣の語彙が躍って凄すぎる。
読み手(私だけか?)は呆気に取られて観覧席で前の座席バーを握っているだけ・・えっ!なに、これ、どうしてという間もなく畳み込まれてラストへ。
まさに『人生は小説」~「小説のような人生」
思ったことは一瞬一瞬の刹那で運命は分かれて行くし、出会った男女によっても川筋は反れて行く、そして己が辿り着いた場所は・・っていう人生の教科書。
ハルキ氏が作品とともに引用されている。
彼の作品も、え・・と言う間に、彼岸に放り出され、そこで宇宙遊泳の骸とかしたことも度々あった・・だけに、何マ上手くしてやられた愉しさの1冊。 -
小説と書いてロマンと読む。
ニューヨーク在住のベストセラー作家、フローラ・コンウェイの3歳の娘がいなくなった。
誘拐か? それとも・・・・・・?
始まりはこうである。
あなたのようなすれっからし――ではなく、練達の読書家ならば「はいはい、あれね」と予想するだろう。
・混乱状態の後についに現れた人物が、名探偵ぶりを発揮して娘を連れ戻し、「犯人はあなたです!」と指摘する。
・娘がいなくなった母親の苦悩を綿々と描き、彼女と彼女を取り巻く社会の混乱と、現代社会の問題を暴き出す。
どちらもちがう。
「じゃあ――」
ちがう。
「だったら――」
ちがう。
どの予想ともちがう世界がその後に広がっている。
読みながらたびたび頭に浮かんだのが、遊園地の乗り物である。
ぐるぐる回されたり、上下左右にふりまわされたりする類だが、眺めて自分がどうされるか知っていたはずなのに、自身がぶんまわされると想定外の動きに「きゃ――」と悲鳴をあげてしまう。
外から見るのと、乗ってみるのは大きなちがいだ。
ミュッソを読むのはそれと同じだ。
『予測不能な真相とは?』
帯には書かれているのは、使い古された言葉である。
「たいていの展開、たいていの真相は予想がつくよ」
そういうあなた!
これは予想外だから!
感心しきりなのは、文庫裏表紙にある紹介文である。
誰が書いたか知らないが、きっと編集のどなたかだろう、プロの手腕とはこういうものかと舌を巻く。
こんなわけのわからない小説を、よくここまでうまく紹介したものだ。
大丈夫。これで86ページまでだから、ネタバレにもならない。
Amazonなら概要、楽天ブックスならば内容紹介のところで、それを読むことはできる。
くわえて、表紙もいい!
読み終わる頃に、読者は何度も見て頷くにちがいない。
「ああ、なるほど・・・・・・」
作者ミュッソと編集の腕が光る一冊である。 -
著名な小説家フローラ・コンウェイの3歳の娘、キャリーがある日忽然と消えた。アパートの前に設置してある監視カメラには親子が入った後誰も来ていない。キャリーは当然アパートの中にいるはずだが…何処にもいない。
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この作品は作家が書いた小説の世界と作家の日常の世界が入れ子式に組み重なっている。しかし、単純な入れ子式ではないので混乱が生じる。
ミュッソの他の作品と同様に子煩悩な親とその子どもとのやりとり、食べ物の美味しそうな描写は緊張した状況の中でもほっこりさせられる。
この作者の作品はストーリーが二転三転するのが常套だが、私個人としては転がしすぎてる気がしている。途中でやめとけばいいのに、転がし過ぎてるせいで逆にリアリティーに欠けて興ざめしてしまうものもあった。ただ、この作品は最後の一転があったおかげで、しっくりとまとまったと思う。そういう意味では久々に面白い作品だった。